イオンの吉田昭夫社長は、現在の消費環境、それを踏まえての戦略、トランプ関税などについて、4月11日に実施した2025年2月期決算説明会の質疑応答のなかで言及した。
消費環境は二極化
吉田社長は小売市場の消費環境において「二極化」が進んでいると指摘。「日常のベーシックな部分は節約、特別な『ハレ』の場にはしっかりお金を使う購買行動を感じる」と評した。その上で生活者の低価格志向への対応として「イオンビッグ」などディスカウント業態の店舗拡大、専用のPB商材の開発に注力していくとした。
また、「価格だけで判断される商品と、クリスマスや正月といったハレ型商材では売れ方が大きく異なる。お客さまの目線に立った品ぞろえが必要」(吉田社長)とも話した。
スケーラビリティで原価低減に努め利益も確保へ
PB開発強化などによる利益確保の考え方について、「スケーラビリティを活用することで原価を下げることができる」(吉田社長)と言及。たとえば箱入りの商品にラベルを付けない、トラックの積載効率を高めるなど、サプライチェーン全体でのコスト削減に取り組むとした。ある程度ロットが固まることで取引先の協力を得るなどし、原価を下げて利益確保を図る考えを示し、「単に値下げするだけではいけない」(同)とコメントしている。
PBは商品開発力や提案力も重視
PB戦略には低価格商品だけではなく、商品開発力や提案力も重要であると指摘。「PBは顧客の声を反映することが最も大切。現場で聞いた要望をすぐに商品に反映し、売場に並べて反響を確認するという短いサイクルでの対応が可能」(吉田社長)であり、利益を生み出すことができるとPBのメリットについて解説した。
その例として2024年11月に立ち上げた、Z世代向けプロジェクトであるオリジナルブランド「NIRMATA(ニルマータ)」について説明。オリジナル靴下を販売し、成果を得たという。「違う世代の感覚からは『売れないかもしれない』と感じた商品が予想に反して売れた。Z世代の嗜好をうまく捉えた結果で、PB構成比を高めるポイントになる。NBとのトレードオフだけでは不十分で、PBの価値をどう高めるかが重要だと感じている」(同)と述べた。

24年11月に立ち上げたオリジナルブランド「NIRMATA(ニルマータ)」がヒット
生産性の改善などについても説明した。2024年10月、事業会社に対して生産性向上のKPIを設定。「経費構造や荒利率の改善だけでは厳しいという世の中のトレンドを踏まえた取り組みを行い、実際にそのKPIを達成することができた」(吉田社長)。トップバリュを活用したリピーター獲得施策も打ち出し、成果が出つつあるという。
トランプ関税「景気後退の懸念感じる」
米国のトランプ政権による関税の影響について、吉田社長は「現時点で明確な答えは出せない」としながらも「景気後退への懸念を感じた」(同)と話した。「愛知・豊田など米国向け輸出が多い地域は景気が良く、店舗の売上も好調。今後は売上が下がるのではないかという不安もある。小売業としてはしっかりと考えておくべき課題だと捉えている」(同)とした。
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オリジナル記事:イオン社長が語る現状の消費環境+価格戦略+トランプ関税の影響
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