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ウィジェットで50万リンクを集めたリンクベイト——スパム扱いされる境界線はどこなんだ?

僕はリンクを構築する。毎月幾万ものリンクを。それが僕の仕事だ。

どうやるんだって?

お遊びのオンライン診断クイズを作成し、ブロガーやウェブサイトのオーナーがそのテスト結果を自分のサイトに埋め込めるように、HTMLコードを提供してるんだ。その良い例がこちらのウィジェットで、これを使えば、自分のブログ記事の長さが他人のブログと比べてどうなのかがわかる。

またこっちは、月で生き延びられる能力を診断するクイズだ。クイズに回答すると、その結果を表示するためのHTMLコードがもらえるので、その短いコードを自分のブログに埋め込めばいい。そのコードには、クイズへのリンクだけでなく、僕が勤めている出会い系サイト「JustSayHi」へのリンクを、僕が選んだアンカーテキストと一緒に付け加えてある。

僕はこうやって、「無料出会いサイト」(Free Online Dating)や「出会いサイト」(Online Dating)といったキーワードで、何とかJustSayHiを検索結果の上位にランクインさせたんだ。また、このリンクはCSSやJavaScriptを使って非表示にしたりはせず、お望みとあらば、ユーザーが削除することもできるようにしておいた(で、実際多くのユーザーが削除している)。

widgets from justsayhi

読者の中には、僕が昨年SEOmozを辞めて、世界で最大かつ最高の無料オンライン出会いサイトを作成するため、JustSayHiに参加したのを覚えている人がいるかもしれない。有料リンクやディレクトリスパムをはじめ、限りなく黒に近いSEO戦術が幅を利かせている市場において、僕はこういう診断クイズを利用して、自分たちのサイトを競合の激しいキーワードで検索結果の上位にランクインさせるという独創的な方法を採った。そして僕たちは、「無料出会いサイト」「出会いサイト」など、競合の激しい多くのキーワードで1位にランクされた。JustSayHiには1日平均2000人が新たに加入し、メンバー数は50万人を突破した。

やりすぎた!

だが、その後まもなく、僕らはゴジラ級の過ちを犯してしまった。

2007年の第4四半期ごろ、JustSayHiの親会社であるネクストインターネット社が、ペイデイローンのサイトや教育関連のリードジェネレーションを行うウェブサイトを多数買収した。同社の関連会社には、何百ものドメイン名が含まれているけど、このときに獲得したサイトは今もその中にあるよ。そしてネクストインターネット社は、僕らがJustSayHiで実施したSEOの取り組みが成功しているのを見て、運営しているサイトのプロモーションを支援するよう依頼してきたんだ。

僕らはクイズやウィジェットのHTMLコードに、JustSayHiへのリンクではなく、依頼されたサイトへのリンクを組み込むようになった。するとまもなく、これらのサイトは、「資金前借り」(Cash Advance)、「ペイデイローン」(Payday Loans)、教育関連のいくつかの語句など、競合の激しいキーワードで検索結果の上位にランクインした。

しかし、僕らがこんなやり方で成功を収めた結果、グーグルはスパムの苦情を数多く受け取る羽目になり、僕のことを天才だの悪魔だのと書いた不愉快な記事がGuardian紙に掲載される事態となった。こうしたことの結果として、僕らはグーグルにペナルティを科せられた。JustSayHiはもはや、「無料出会いサイト」などの出会い系関連のキーワードで検索結果の上位にランクインしなくなってしまった。実際のところ、「JustSayHi」などのブランド名を直接示したキーワードでも検索結果に表示されなくなってしまった。つまり、僕らは完全に検索結果から追放されたというわけだ。

ペナルティが科せられたことを知るやいなや、僕らはさっそく再評価を申請した。この件に関しては、グーグルのマット・カッツ氏が直接に関わっていたのだが、何回かメールをやり取りした後も、ペナルティは解除されなかった。ペナルティの理由として、以下の点が挙げられた。

  • JustSayHi上のウィジェットやクイズを使用して、他サイトのクロスプロモーションを行った。
  • 僕らがプロモーションした他のドメイン名は、非常にスパムの多い分野に属するもので、重複コンテンツの問題もあった。
  • JustSayHiのリンクの中には、有料リンクや有料登録制のリンクページがあった(それらは僕が参加する前からあったものだが、それでもサイトの一部であることは間違いない)。
  • 提出した再評価申請には真実を記載したが、しかるべき情報を載せていなかった。スパム行為に関与したドメイン名を全部リストアップするよう求められていたが、僕は、クイズを使用してプロモーションした2つのドメイン名しか記入せず、別の会社が所有するネットワークを全部は挙げなかった。自己弁護すると、これらのドメイン名について(沿革やドメイン名の実数など)僕らはほとんど何も知らなかったんだ。でも、ちゃんと調べて報告すべきだった。

僕らが完全に大失敗したということに疑いの余地はない。

しかし問題は、この件について僕らには何ができるんだろうかということだった。すべての人たちに問題のリンクを削除してくれと頼むことは不可能だったし、スパムの多い分野にちょっと手を出してしまったおかげで傷ついたJustSayHiの評判を挽回することもできなかった。また、検索結果に再び入れてもらうこともかなわなかった。

新たなスタート

僕らは、新しいドメイン名を登録して、文字通りゼロからやり直すのが最も賢明だろうと判断したんだ。

しかし今回は、可能な限り100%清廉潔白であろうと努め、グーグルのガイドラインの許容範囲内に留まるよう最善を尽くすつもりだった。どちらにしても新たなデザインが必要だったので、新鮮なイメージのブランドやアイデンティティを作り出そうと考えたんだ。

新しいサイトができ次第、ユーザーと外部の人たちの両方に変化が伝わるようにする。これによって僕らは、サイトの機能を改善できるほか、グーグルで新たなスタートを切るチャンスが得られるだろうと思った。

今回は、OnePlusYou(スクリーンショットはこちら)というサイトを作成することにした。JustSayHiのアップグレード版で、これまでのユーザーにはすべてこちらに移行してもらうつもりだった。JustSayHiはそれまでおよそ7年間の歴史があり、新しいサイトを作ることによって僕らのブランド価値とドメイン名の経歴は失われてしまうけれど、検索結果にまったく表示されないよりはマシだろう。

widgets from justsayhi

OnePlusYouの開発と同サイトへの移行にはかなりの時間がかかるだろうから、新しい出会い系ポータルの開設に先立ち、リンク構築に関してはスタートダッシュを切ろうと考えた。「無料出会いサイト」というアンカーテキストを使用して、OnePlusYou.comへのリンクだけを含んだ新しいウィジェット一式を公開して、ペナルティを課せられる以前のJustSayHiが享受していた繁栄を再現しようと試みたんだ。

ユーザーに対し、このウィジェットにはキーワードを使用したリンクが含まれていること(そしてユーザーが任意で削除できること)と、そのキーワードがOnePlusYouに関連するものだということを明確に伝えておけば、こういうリンクビルディングのやり方は適正だと僕らは心から信じていた。過去にも、このやり方はとても上手く行っている。僕らのほかにも、多数のサイトがこれと同じ戦略で成功を収めているから、グーグルがGuardian紙の取材に対して次のように説明した際、僕たちはこの方法が公けに認められたのだと考えた。

「作成したサイトに対するバックリンクを備えたウィジェットの配布は結構だ。しかし、これをさらに進めてリンクを第三者に販売すると、われわれの品質ガイドラインに反する。そういうウィジェットを採用したり配布しているサイトは、検索結果から追放される可能性がある」と、グーグルは説明している。

ところがその数週間後、OnePlusYouに関する通知がグーグルから届いた。「今回のサイトでも以前とまったく同様に、サイトのテーマから外れたウィジェットによる不正行為」が行われており、OnePlusYouがJustSayHi.comと同じ運命を辿る可能性があるという内容だった。

ウィジェットから自分たちのサイトにキーワードを使用したリンクを張ることが、グーグルにおいて最大級の禁止事項だなんて、このときが初耳だった。

僕らは直ちに、ウィジェットのコード内にあるリンクを、

Created by OnePlusYou-Free Online Dating

から

Created by OnePlusYou

に変更した。

僕らは、プロモーションの取り組みにおいては潔白であろうと最善をつくしているが、そのためには、適正なリンクベイト(グーグルはこれを公式に奨励している)と不適切な「テーマから外れたウィジェットによる不正行為」との境界が明確に判断できなければならない。埋め込み可能なウィジェットにキーワードを使用したリンクを追加することは適正なのか? これらのウィジェットがテーマに沿っている場合のみ適正なのか? つまり、クイズそのものが出会い系サイトに関するものだったら、こういったリンクビルディング手法を採用してもいいのか?

そうであるならば、テーマから外れたリンクベイティングはすべてダメなのだろうか? たとえば、リンクベイト用のブログ記事を作成し、それが出会い系サイトとは何の関係のないDiggやRedditに投稿されて信頼性の高いバックリンクを獲得した場合、こうしたケースもガイドラインに反しているというのだろうか? グーグルは可否の境界線をどこに引いているのだろう? これについては、SEOmozのジェーンが「検索エンジンがリンクベイトにペナルティを与える日は来るのか?」(日本語記事)の中で触れている。

僕らはまず、ペナルティを受けた理由を理解している。また、再評価依頼の際に情報をもっと明らかにすべきだったと、今では認識している。グーグルがあるサイトについて検討する際には、サイトだけではなく、サイトオーナーの素行についても考慮するということもわかった。

しかし一方で、僕らにできることと言えば、自分たちの件について熱心に訴え、今後は100%正しいやり方をすると誓約する以外になさそうだ。

JustSayHiのペナルティは永続的なものなのか、または解除してもらえる手立てがあるのか。あるいはOnePlusYouがペナルティを科せられる可能性はどのくらいなのか、僕らのリンクビルディング戦略は是なのか非なのか、僕らにはわからない。

いずれにせよ、クイズとウィジェットを使って、最終的には50万以上のリンクを構築したので、これらすべてのブロガーやウェブサイト・オーナーにリンクを削除するよう求める通知を送ることなど、どうしたって不可能なのだ。

用語集
CSS / Google / HTML / JavaScript / SEO / SEOスパム / アンカーテキスト / ガイドライン / ディレクトリ / ドメイン名 / リンク / リンクビルディング / リンクベイト / 検索エンジン / 重複コンテンツ
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