【レポート】デジタルマーケターズサミット2026 Winter

もうクーポンに頼らない! 行動経済学×生成AIで「つい買ってしまう」顧客体験はどう設計する?

人の非合理な心理を突く行動経済学と、施策を量産するAIの最強タッグで「つい反応してしまう」体験を作る極意を、Brazeが解説する。

野本 纏花[執筆]

7:05

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「クーポンや値引きキャンペーンに頼らないと、モノが売れない……」そんなマーケターの共通の悩みを、行動経済学の知見と生成AIの力が解決する。派手なインセンティブは短期的には成果を生むが、過度な依存は顧客の飽和を招き、ブランド価値や利益率を圧迫しかねない。

そこで鍵となるのが、人間の「つい反応してしまう」非合理な心理を理解し、AIを駆使して最小限の工数で顧客体験を設計することだ。「デジタルマーケターズサミット 2026 Winter」に登壇したBrazeの紺野氏は、AIが苦手な“問いの再定義”を人間が行動経済学で補完する重要性と、報酬に頼らずにブランド構築を加速させる実装戦略を解説した。

AIの「最適化」では届かない深層心理へ――人が“つい”反応する行動経済学の力 

そもそも、なぜマーケティングに行動経済学が必要なのだろうか。伝統的な経済学では「人間は常に合理的に動く」とされてきたが、実際は、さまざまな状況や思い込みによって非合理な行動をしてしまう。

たとえば“今だけ”や“限定”といった言葉を見ると、つい欲しくなってしまう。通常価格3万円を提示された後に、期間限定1万9800円といわれると、非常にお買い得に感じて衝動買いしてしまう。このような“合理的ではない”購買行動をしてしまった経験は、誰にでもあるはずだ。

こうした人間の非合理な行動や思考のクセを体系化し、どのようなメカニズムで意思決定が行われているのかを明らかにしてきたのが、行動経済学の理論だ。これをマーケティングに応用することで、単なる価格インセンティブに頼ることなく、人間の意思決定の特性を理解したうえで顧客体験を設計できるようになる。

「報酬×開発」という従来の前提を、「行動経済学×AI」によって刷新し、最小工数で成果を得ることを目指す
「報酬×開発」という従来の前提を、「行動経済学×AI」によって刷新し、最小工数で成果を得ることを目指す

AIを搭載した顧客エンゲージメントプラットフォーム「Braze」の活用支援に加え、早稲田大学 消費者行動研究所との共同研究を担当する紺野氏は、現職の傍らで行動経済テクノロジストとしても活動している。

AIは消費者の表面的な行動に合わせた“改善” や“最適化”は得意ですが、消費者の深層心理を探って前提を疑う“変革” や“再定義”は苦手です。だからこそ、人間が学術的アプローチでその不足分を補完する必要があるのです(紺野氏)

表面的な行動に合わせたチューニング(改善)を超え、実験と分析に基づき前提から見直す「改革」が重要となる
表面的な行動に合わせたチューニング(改善)を超え、実験と分析に基づき前提から見直す「改革」が重要となる

一例を挙げよう。ECでよく用いられる「カート放棄リマインド」は、メールやアプリのプッシュ通知でリマインドを送る定番施策だ。慣習的に1時間後や1日後に送るケースが多いが、研究データによると、1時間後のリマインドはむしろ逆効果であり、9〜12時間後が最適だという。

ここで重要なのは、単に最適なタイミングを見つけることではない。「カート放棄されたらすぐにリターゲティングすべき」という前提そのものを問い直すことだ。前提が正しいかどうかを疑い、消費者の心理に立ち返って顧客体験を設計する際に、行動経済学の視点が大きなヒントとなる。

学術研究によれば、即時のリターゲティングは心理的リアクタンス(反発)を招く恐れがある
学術研究によれば、即時のリターゲティングは心理的リアクタンス(反発)を招く恐れがある

 「きっかけ・反復・定着」の3フェーズで設計する顧客体験フレームワーク

次に、人が“つい”反応してしまう仕掛けをつくるうえで参考となる「内発的動機を刺激するための心理的フレームワーク」を見ていこう。このフレームワークは「きっかけ」「反復」「定着」の3つのフェーズから成る。

  • きっかけ:楽に選びたい! / 失敗したくない!
  • 反復:完了させたい! / もっと知りたい!
  • 定着:欲しい・手放したくない! / 誰かと関わりたい・認められたい!
消費者の「楽に選びたい」「完了させたい」「手放したくない」といった本能的な欲求を各フェーズで刺激する
消費者の「楽に選びたい」「完了させたい」「手放したくない」といった本能的な欲求を各フェーズで刺激する

それぞれの心理に対して、行動経済学のどの理論を応用して、どんな施策が考えられるのか、具体的に見ていこう。

きっかけ① 楽に選びたい!
「選択のパラドックス」を活用したパーソナル診断

「選択のパラドックス」とは、選択肢が多いと満足度が高まるはずが、実際には迷って選びにくくなり、満足度も下がる現象だ。消費者は「楽に選びたい」が、同時に「多くの選択肢から選んだ」という満足感も得たいという矛盾した願望を抱いている。そこで、「AI診断があなた専用のプランを推奨します」といったコミュニケーションが有効だという。

豊富なラインアップを見せつつ、AIが「運命の3本」を厳選することで、選択の心理的ハードルを下げる
豊富なラインアップを見せつつ、AIが「運命の3本」を厳選することで、選択の心理的ハードルを下げる

きっかけ② 失敗したくない!
「プロスペクト理論」を用いたシミュレーター

人は得することよりも、損することを嫌う。これが「プロスペクト理論」だ。「もしもあのときから投資を始めていたら、資産はいくらになっていたか」を可視化するシミュレーターは、得られるはずだった利益を「損失」として認識させ、「これ以上損をしたくない」という焦りを生む効果がある。

反復① 完了させたい!
「目的勾配効果」を狙うバッジ獲得チャレンジ

家計簿・資産管理アプリの「マネーフォワード ME」では、オンボーディングにバッジ機能を活用している。人は目標に近づくほど行動が加速する「目的勾配効果」と、未完成なものに興味を惹かれる「ツァイガルニク効果」を応用した施策だ。報酬はデジタルバッジのみだが、追加連携率5%向上、有料会員登録率最大15%向上という成果を生み出した。

コストをかけずに、達成感という心理的報酬を提供することで継続利用を促す
コストをかけずに、達成感という心理的報酬を提供することで継続利用を促す

反復② もっと知りたい!
「不確実性低減理論」に基づくクイズ配信

不確実な状況はストレスとなるため、人は情報収集でそれを解消しようとする。これが「不確実性低減理論」だ。これに「他者と比較したい」という社会的比較理論を掛け合わせ、クイズやゲームで他者と競争させる施策は、リテンションに非常に効果的だ。

定着① 欲しい・手放したくない!
「サンクコスト効果」を引き出すランク制度

「サンクコスト効果」とは、すでに支払ったコスト(時間・労力など)を惜しみ、やめられなくなることだ。エグゼクティブ向けの配車アプリ「Blacklane」では、運転手向けにランクとバッジ制度を導入した結果、配車頻度が10%高まった。また、自分で手間暇かけて作ったものに愛着を感じる「IKEA効果」を狙い、アバターのカスタマイズ機能を提供することも有効だ。

投資した実績を可視化することで、他サービスへの乗り換えを防ぎ、ロイヤルティを高める
投資した実績を可視化することで、他サービスへの乗り換えを防ぎ、ロイヤルティを高める

定着② 誰かと関わりたい・認められたい!
「カテゴライズ効果」による投資スタイル診断

複雑な物事でもカテゴリー分けされると理解しやすくなる。施策例として、質問に答えると「動物タイプ」で投資スタイルを提示する診断がある。複雑な金融商品をカテゴライズすることで、選択のハードルが下がると同時に、自分向けの商品であると感じられるようになるのだ。

「型」に分類されることを好む日本人の特性にも合致し、深いエンゲージメントにつながる
「型」に分類されることを好む日本人の特性にも合致し、深いエンゲージメントにつながる

エンジニア不要! BrazeとAIで実現する高度なマーケティング実装術

こうした理論を実装するには、AIを標準搭載したプラットフォーム「Braze」が最適だ。あらゆる顧客接点を単一プラットフォームで網羅し、データの取り込みからアクションまで平均1.1秒という処理速度を実現している。

顧客の「つい」という瞬間を逃さず、鉄を熱いうちに打つ。それがBrazeのリアルタイム性が提供できる最大の価値です(紺野氏)

目先のROAS追求(短期)だけでなく、予算の60%を長期的なブランド構築に充てることが、最終的な利益最大化につながる
目先のROAS追求(短期)だけでなく、予算の60%を長期的なブランド構築に充てることが、最終的な利益最大化につながる

実装のハードルも劇的に下がっている。かつてはエンジニアやデザイナーへの依頼が必要だった画像生成やHTML/CSSの実装も、今や生成AIに任せられる。生成AIでコードを作り、それをBrazeにコピー&ペーストするだけで、高度な施策をマーケター1人で完結できる時代になったのだ。

課題に応じた理論を選び、AIでコンテンツを生成して、Brazeで即座に検証する。この流れにシフトすれば、エンジニアの工数を気にせずに施策を量産できます(紺野氏)

分業体制による遅延を解消し、1人のマーケターが戦略立案から実装までをリードする「スーパーマーケター」へ
分業体制による遅延を解消し、1人のマーケターが戦略立案から実装までをリードする「スーパーマーケター」へ
「理論選定」「AI生成」「Braze検証」という新しいサイクルを回すことで、開発リードタイムを極小化できる
「理論選定」「AI生成」「Braze検証」という新しいサイクルを回すことで、開発リードタイムを極小化できる

紺野氏は「このように、課題に応じた理論選定から実行までを高速化すれば、報酬頼みのマーケティングから脱却できる。真のブランド構築を実現できるマーケターを目指してほしい」と呼びかけ、セッションを締めくくった。

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