インタビュー

編集長交代! 教えて安田さん、なぜ私が編集長なの!?(新旧編集長スイッチインタビュー・前編)

立ち上げから12年の今、編集長を交代する理由は何なのか? 新編集長の四谷が真面目に訊く。
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現編集長・安田英久と新編集長・四谷志穂(撮影・鹿野宏)

Web担当者Forumは、サイト立ち上げから丸12年の2018年7月24日、初めて編集長が交代する。

現編集長の安田英久は、12年間、何を考えてきたのか。

新編集長の四谷志穂は、これからWeb担をどう変えていくのか?

前編と後編で、聞き手と語り手をスイッチしながら、Web担の過去・現在・未来について語り合う、新旧編集長のクロスインタビュー。今回は前編。後編はこちら

新編集長の四谷が、現編集長の安田に訊く。

最初は雑誌から始まった

四谷: 今回は、新編集長の私・四谷が聞き手になって、現編集長の安田さんにいろいろ聞いていきます。

安田: おう! なんでも聞いてよ。

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安田 英久
株式会社インプレス Web担当者Forum 編集長(2006~2018)
雑誌『インターネットマガジン』などの編集や出版営業を経て、Webサイト 「Web担当者Forum」編集長。
趣味は素人プログラミングと上方落語と南インドカレー。

四谷: 編集長を引き継ぐにあたって、Web担当者Forum(以下、Web担)の成り立ちをきちんと聞いておきたいのですが。Web担を立ち上げて12年。そもそも、なんでこの媒体を立ち上げようと思ったんですか?

安田: 雑誌で出来ないことをやりたかった。もともと僕は、『iNTERNET magazine(インターネットマガジン)』という月刊誌の編集をやっていて、この雑誌は1994年から2005年まで刊行していたんだけど、2003~2004年にここにいたの。月刊誌だから毎月大きなトピックを取り上げる必要がある。今月はCMS、来月はSEO、再来月はリスティング広告、その次はアフィリエイト、今のWeb担の柱となっているトピックを、もうすでに扱ってはいたんですね。

四谷: そうなんですね。

安田: ただ、それは『iNTERNET magazine』という枠組みの中で個別に扱っていただけだったんだけど、それってなんかテーマとしてつながってるよね、という話が編集部内で出たことがあって、その言葉がずっと頭に残ってたの。それで、『iNTERNET magazine』の担当を外れた後に、それをひとまとまりとして扱ってみようかなと。そのときに作ったのが、2005年に発行した『Web Master 完全ガイド』というムック。それがWeb担へとつながっていくんです。

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四谷志穂
株式会社インプレス Web担当者Forum 編集者
物流企業で営業兼Web担当者を経て、Web担当者Forumの編集者、2018年から編集長となる。1日の至福のときは、仕事終わりのビールと枝豆。

「Web担当者」という言葉はなかった

四谷: 最初は紙媒体からだったんですね。ところで、「Webマスター」って、今はもう、あまり使わない言葉だと思うんですが、当時だと一般的だったんでしょうか?

安田: いいや、全然。Webマスターとは「専門職として企業のWeb戦略を担当して全体を管理するような仕事」という意味合いなんだけど、当時、Webサイトを作る企業は増えてきてはいたものの、組織の中で明確に役割として定めていた会社はまだほとんどなかったと思う。だから、「『Webマスター』では、自分事として認識できる人が少ないんじゃないか」ということで、Webサイトを立ち上げるにあたって、違う名称を考えることになったわけ。だいぶ悩んだけどね、最終的にはシンプルに「Webを担当する人」を縮めて、「Web担当者」という呼び名を作りました。

四谷: 当時は「Web担当者」という言葉は、世の中にはなかったんですね。

安田: そう。以前コラムでも書いたんだけど、「『Webマスター』のような大仰なものではなく、全体の予算も足りない中、まずは企業Webの形を作って成果につながっていくために、現場の作業をがんばって、少しずつ実績を作っていく人」というイメージね。ただ、今となっては、少し後悔してるの。ちょっと、狭すぎたな、と。

四谷: 確かにそうですよね。今のWeb担当者って、ホントに仕事の範囲広いですから。

Webサイトをいろんな人が集まる「場」にしたかった

安田: そんな感じで、2006年から始まったWeb担なんですが、最初は隔月ムックとWebの同時並行だったんですよ。ちなみに、ムックのタイトルは『Web担当者 現場のノウハウ』。

四谷: ちょっと笑っちゃう名前(笑)。

安田: まぁね。ただ、根本のコンセプトはとっても真面目なもので、企業のWebサイトを担当する人にとって、現場に役に立つ情報、ノウハウを提供しましょうというのが、その目的。当時は、徐々にWebサイトを活用したいと考える企業が増えていたんだけど、そのために必要な情報があまりなかった。当時のWeb担当者にとっては、仕事に必要なノウハウや情報を探すとういうこと自体が、結構切実だったんです。

四谷: そうだったんですね。サイトの名称は最初から「Web担当者Forum」ですけど、ムックと違う名前にしたのはなぜですか?

安田: 紙媒体と違って、Webサイトは、一方的に情報を発信するだけではなく、いろんな人が集まる「場」にしたかったんです。

四谷: 「Forum」には、安田さんの理想が込められているんですね。

安田: そうなの。我々の日々の仕事って、言ってしまえば、記事を作る、編集する、公開する、の繰り返しなんだけど、それはあくまでも、Webサイトを作る作業でしかない。本当の意味での僕らの仕事って、Webとかマーケティングの仕事をしている人に、役立つ情報やノウハウを伝えること。彼らの役に立って、彼らがハッピーに仕事をできるようになる助けとなることが、僕らの存在意義だと思っているんです。

四谷: はい。

安田: そのために、Webサイトで情報を提供したり、メールを送ったり、イベントやオフ会を開催したりしてきたけど、それぞれのWeb担当者が目的を達成するための手段を、いろいろなチャネルで発信するというのは、本当はもっともっとやりたかったなぁ。

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「Web担をいろんな人が集まる“場(forum)”にしたかった」

Webの位置付けは12年で大きく変わった

四谷: たとえば、どんなことをやりたいと思っていたんですか?

安田: 記事コンテンツ以外に考えていたのは、ツール、データベース、マッチング、動画、クイズ、検定、あたりかなぁ。それらのチャネルごとに最適な形で情報提供しつつ、そこからデータや定性的なフィードバックを得たら即座に改善していく仕組みを作りたいな、と思っていましたが、なかなか手が回らなかったです。

四谷: まだまだ、Web担でやりたいことはいっぱいあったんですね。

安田: そうね。ただ、12年前と今では、あらゆる状況が変わっちゃったから。12年前のWeb担当者って、本当は、情シスや広報が本拠地なのに、Webをやりたいから自発的に兼務していたって人が結構いたんですよ。でも、今のWeb担当者って、配属されて来る人が多い。12年前と今のWeb担当者は、明らかにキャラクターが違うの。つまり、必然的に、Web担の読者層も、大きく変わったと言えるわけ。

四谷: 確かにそうですね。

安田: Webというものの位置付けもこの12年で大きく変わった。昔はWebサイトがありさえすれば良かったけど、今のWebは企業の広報、マーケティング、コミュニケーションにまたがる戦略の一部。それに伴って、Web担当者として必要な記事も、個々の実務をうまく回すための記事だけでなく、組織や社会の中でどう仕事を進めていくべきかという記事も必要になっている。

四谷: 実際、今のWeb担の記事も、Webばっかりってわけじゃないですもんね。

安田: これは、企業にとってWebが重要になった結果、1人や1部署ではできない規模の仕事ができるようになったという意味で良いことなんですが、じゃぁ、Web担だけが、Web担を作った当時の考え方のままでやっていいかというと、あかんやろう、と。

四谷:「Webが変わり、Web担当者も変わった。私たちも変わらないといけない」ってことですね。

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「私たちWeb担も変わっていかなくちゃいけませんね」

Webメディアが爆発的に増えた

安田: もうひとつ、12年前との大きな違いは、個人メディアや企業のオウンドメディアなど、我々のような編集のプロが介在しないWebメディアが爆発的に増えた、ということ。

四谷: 増えましたよね。ある意味、ライバルメディアが一気に増えたような状態。

安田: ちょっと流れを振り返ると、まず、2004年頃にブログが世の中に出てきて、その後、ソーシャルメディアという概念が一般化していきます。その流れを受けて、オウンドメディアが出てきました。そういうものそれぞれで、その道のプロフェッショナルが直接コンテンツを出すようになって、場合によっては、我々メディアを凌駕するような存在になっているものもあります。

四谷: ただ、特に個人ブログなんかがそうだけど、急に更新が止まっちゃったり、エビデンスが甘くてフェイクニュース化してしまう、ということもままあったりするんですよね。

安田: そう。こうなると、内容は良くても、役に立つソースとしては頼りづらい。そこが、我々と大きな違い。我々はこれまで12年間、「Web担当者」をキーワードに現場の担当者に役立つ情報を発信し続けてきたんだけど、その姿勢はこれからも変わらないということは、様々なメディアが乱立する中で、強くアピールしなくちゃいけないと思います。

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「現場の担当者に役立つ情報を発信する姿勢は変わらない。それは強くアピールし続けたいね」

ズバリ、なぜ私を編集長に指名したんですか?

四谷: ほんとにそうですよね。ところで、安田さん、次の編集長は、なぜ私だったんですか? いい機会だから、ここで聞いておきたいです(笑)。

安田: なんでだったかなぁ。

四谷: マスコミ未経験で、30歳でインプレスに転職してきたから、まだ前職の方がキャリアとしては長いんですよ。

安田: 説明しづらいんだけど、「あ、いける、大丈夫」って、思ったのよ。この人は、自分の理想をきちんと形にできる人だ、と感じたの。そもそも、僕がやってきたことを引き継いでほしいとは思っていないしね。我々は年齢がひと回り違いますが、そうなると、社会の中での位置も1世代違う。Webやインターネットに対する意識だけでなく、あらゆる場面で、そもそもの視点が異なります。だからこそ、僕とは違う方向にWeb担を引っ張って行けるはず、と思ったわけです。

四谷: なんだか緊張してきたなぁ。

安田: ただ、年齢だけが決め手じゃないよ。今のWeb担当者って、Webに関するスキルだけ身に付ければいいわけじゃなく、組織の中での立ち位置やふるまい方、他部署とどう連携するかといったビジネス的なスキルも必要ですよね。四谷さんは、前職は企業でWeb担当者をやっていた経験があるというのは大きな強み。その上で、今の現場世代の人と、年齢的にも意識的にも近いというのがポイントかな。

四谷: この後は、安田さんはどうされるんですか?

安田: 具体的なことは決めてないんだよね。ただ、まだしばらくは、編集統括としてWeb担当者Forumと、ネットショップ担当者Forumに関わっていきます。四谷さん、瀧川(ネットショップ担当者Forum編集長)さんが、純粋に編集長業務に集中できるようにするための業務フロー作りや、Web担全体の制作効率を上げるための仕組みづくりなど、裏側からみんなをバックアップしていきますよ。

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「聞き手と語り手をスイッチして、後編に続きます」

「編集長交代! 四谷さんはWeb担をどう変えていきたいの?(新旧編集長スイッチインタビュー・後編)」を読む

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