デジタル施策で狙うべきは、新規獲得よりも既存顧客のLTV向上―なぜ“ファンベース”が重要なのか【前編】

さとなお(佐藤尚之)氏によるファンベースが必要な理由と背景の解説
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Salesforceが7月10日に都内で開催した「少数チーム&少額予算でもできる!『お客様と長くつながる』デジタル施策実践セミナー」では、“ファンベース”の重要性が語られた。

Salesforceによると、成長している企業の多くは、新規獲得だけでなく既存のロイヤルカスタマー(ファン)にも注力した施策を取っているという。なぜだろうか。その理由や背景の解説とともに、ディノス・セシール、日本ピザハット、ボタニストによる実践事例が語られた。前編となる本記事では、さとなお氏の基調講演をお届けする。

「ファンベース」は効率よりも誠実さ

さとなお(佐藤尚之)氏
株式会社ファンベースカンパニー チーフファンベースディレクター さとなお(佐藤尚之)氏

ファンベースカンパニーのさとなお(佐藤尚之)氏は、「ファンベース ―支持され、愛され、長く続けるために」と題して基調講演を行った。

さとなお氏によるファンベースの定義は以下の通りだ。

ファンを大切にし、ファンをベースにして(ベースには、土台、支持母体などの意味がある)、中長期的に売上や価値を上げていく考え方

マーケティングにおけるファンとは、「企業やブランド、商品、サービスが大切にしている価値を理解し支持してくれる人」のこと。さとなお氏によれば、商品、創業の志、方向性、社会貢献等々を支持してくれる人がファンであり、“にわか”の客はファンとは呼ばない。そして、ファンベースは、短期のやり取り(顧客争奪戦)には向いていない

ファンベースは、マスマーケティングやこれまでの一般的なデジタル施策と比べると少人数かつ少額でもできる。しかし、人の“感情”を相手にするため、効率とは真逆のアプローチとなる。重要なのは“誠実”さだが、“誠実”さは、デジタルマーケティングの得意な分野だ。時間や距離を超えて、One to Oneでコミュニケーションできるからだ(さとなお氏)

<ポイント>
  • ファンを増やすのではなく、既存のファンを大切にするのがファンベース
  • 少人数、少額からできるが、感情を相手にするので効率は望めない

ファンベースが必要な3つの理由

では、なぜファンを大事にすべきなのか。ファンベースが重要な理由が3つの観点で解説された。

その① ファンは売り上げの大半を支え、伸ばしてくれる

有名なマーケティング用語に「パレートの法則」がある。「20%の優良顧客が、80%の売り上げを支えている」というものだ。ファンの気持ちに添ったコミュニケーションを取って、ファンで居続けてもらう、あるいは追加で商品を買ってもらう(LTVがアップする)ことは、売上の維持や増加につながる。

<ポイント>
  • ファンの離脱を防ぐ施策を行えば、現状の売上をキープできる
  • ファンのLTVがアップすれば、売上が増える

その② 時代的・社会的にファンの重要度が増している

今の日本は人口が急減するフェーズに入っており、シニア層も将来の不安から購買しなくなっている。さらに、単身者は増え続けると予測されており、結婚・出産などの需要も減る。このように、顧客が物理的に減っている現在、「新規顧客獲得は修羅の道」だとさとなお氏は言う。

また、企業はどうしても、ユニークセリングプロポジション(USP:差別化された商品特徴)をアピールし、磨き上げたくなるものだが、どんなに画期的な商品を開発しても、後発に研究されてあっという間に追いつかれ、陳腐化する時代である。そこで、さとなお氏は、「コピー可能な“機能価値”より、“情緒価値”を大事にしなければならない」と主張する。

さらに、現代は流通している情報量が膨大過ぎて、企業が露出を増やしても気づいてもらえる可能性、覚えてもらえる可能性は非常に低い。

また、デジタルの時代と言われていても、実際には、東京以外では「メールやLINE、ソシャゲはやっているが、検索はしない」という人の方が多い。SNSのトラフィックの80%は20%のヘビーユーザーによって生み出されている。つまり、Twitterでバズったといっても、20%の人々の間で話題になったに過ぎないというわけだ。もちろん、絶対数としてはかなり大きいが、自社のユーザーがそこに含まれるかどうかは、よくよく考えてみる必要がある。

そのような中、ファンには企業からのメッセージが確実に届く

<ポイント>
  • 顧客が物理的に減り、新規獲得が難しい時代
  • USP(差別化された商品特徴)が効かなくなり、情緒価値が重要になる
  • 流通情報量が膨大過ぎて、興味・関心のない人に露出で認知してもらうことは困難
  • デジタルの利用者は二極化・分断されている
  • 企業のメッセージが確実に届くのがファン

その③ ファンこそが新規の顧客を増やしてくれる

情報過多かつユーザーが二極化した時代に力を持つのは、「友人からのオススメ」だ。さとなお氏は、「家族や友人が最も信頼できる情報源である」という最近の調査を示し、その理由を、家族や友人は価値観が近いからだと話した。これを、「ホモフィリー」と言う。

ホモフィリーは、「同じような属性や価値観を持つ人とつながろうとする人間の傾向のこと」だ。そして、何かをオススメしてくれる友人がその商品のファンであれば、話には熱意が加わり、さらに強い影響を受ける。

<ポイント>
  • 類が友を呼ぶ「ホモフィリー」
  • 人は価値観の近い人の影響を受けやすく、ファンの熱意が加わるとさらに届きやすい

デジタル施策を単発で終わらせずファンベース施策につなげる

以上のように、ファンの離脱を防ぎ、LTVをアップさせるためのファンベース施策が企業にとって大事である一方で、新規獲得のためのデジタル施策が不要というわけではない。重要なのは、デジタル施策を単発で終わらせず、ファンベースの施策と連携して相乗効果を出すことだ。広告を見て、いいなと思って買ってくれた顧客も、そのままにしておけばすぐに忘れてしまう。いいなと思った気持ちを維持してもらうために、ファンベースの施策と連携させることが重要だ。

もうひとつ忘れてはならないのは「ファンは少数である」ということだ。ファンと呼べる人たちの総数を増やそうとすると、そのための施策を打つことになる。すると、総花的で特色のないつまらないものになり、いたはずのファンもいなくなるだろう。

ファンを増やすのではなく、ファンを探し、そのファンたちのツボを知ることがファンベースでは重要となる

<ポイント>
  • ファンベースの施策と新規顧客向けデジタル施策を両方やる
  • 新規顧客をファンベースに取り込んで、ファンで居続けてもらう
  • ファンを増やすのではなく、今いるファンを大切にする

ファンの支持を強くするための3か条

さとなお氏は、ファンの支持を強くするための3か条として、以下の3点を挙げた。

  1. ファンが支持している価値自体をアップさせる
  2. ファンが支持している価値を他に代え難いものにする
  3. ファンが支持している価値の提供元の評価・評判をアップさせる

1では「共感」が、2では「愛着」が、3では「信頼」が得られる。注意点としては、前述した通り、機能価値は陳腐化するため、商品特徴(機能価値)を、「情緒価値」に言い換えることが重要だ。

さらに、共感・愛着・信頼の先には、ファンよりももっと濃いコアファンが生まれる。

  • 共感のアップグレード:熱狂
  • 愛着のアップグレード:無二
  • 信頼のアップグレード:応援

ちなみに、BtoBでもファンベースの重要性は同じだ。「課題感が同じ人たちが情報交換をするので、良いお客さんを連れてきてくれるのは既存の顧客」とさとなお氏は述べる。

まとめると、ファンベースは下記の2点が肝だ。

  • 買ってくれている20%を見て施策を打つことによって、LTVを上げる
  • 悪いところを直すのではなく、いいところを伸ばす

いいところを見つけるには、ファンの言葉を「傾聴する」ことが重要だが、そのために一番良いのは「ファンミーティング」だ。アンケートやインタビューよりも、ファン同士で盛り上がって話すことでいろいろと思い出すことができる。ただし、ファンミーティングの参加者は本当のファンでなければ意味がないので、公募条件を厳しくするなどの工夫も必要だという。

ファンベースは、手間も時間もかかり、手離れも悪い。しかし、「ファンを笑顔にすることほど楽しい仕事はない」とさとなお氏は語り、基調講演を終えた。

大変好評だった本イベントの内容の一部を変更して、11月6日(水)に再度開催が決まりました。
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【後編】ディノス・セシール、日本ピザハット、ボタニストによるファンベースの実践事例はこちら→

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