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「楽天市場」出店者のインフルエンサーマーケティングを支援。人選から「Instagram」投稿の依頼を支援するマーケツール

5 years ago

楽天は「楽天市場」出店者向けに、「Instagram」上のインフルエンサーと連携したマーケティング施策を行うための「MIHA Casting for Instagrammer」の提供を始めた。

「MIHA Casting for Instagrammer」は約5500人のインフルエンサーから適切な人材を選定し、自社の商品などに関する「Instagram」への投稿を依頼するまでをワンストップで行うことができる「楽天市場」出店者けマーケティングツール。利用料は月額5万円(税別)。依頼が成約した場合には、別途インフルエンサーに対する報酬が必要となる。

楽天は「楽天市場」出店者向けに、「Instagram」上のインフルエンサーと連携したマーケティング施策を行うための「MIHA Casting for Instagrammer」の提供を始めた
出店者向けマーケツール「MIHA Casting for Instagrammer」

楽天グループの動画クリエータープロダクションであるMIHAが企画し、デジタル・キャスティングプラットフォームを提供するBIJIN&Co.が開発した。

「楽天市場」の出店店舗は「MIHA Casting for Instagrammer」を通じて、「年齢」「ジャンル」などの条件で自社のマーケティング戦略に適したインフルエンサーを検索、店舗や商品の魅力を訴求する投稿を依頼することができる。

「MIHA Casting for Instagrammer」に登録されているインフルエンサーに対して募集を行い、応募者のなかから適したインフルエンサーを選定することも可能。

投稿内容には「PR」の表記を必ず明示するほか、消費者の誤解を招く表現になっていないかなどの観点から、BIJIN&Co.が投稿内容の審査を事前に行う。

「MIHA CASTING for Instagrammer」のサービス紹介動画

インフルエンサーを通じて商品の魅力を訴求する「インフルエンサーマーケティング」は、消費者の観点を取り入れた情報発信による訴求力の高さなどから、商品の認知獲得や販売促進に効果的なマーケティング手法として注目されている。

楽天は、「MIHA Casting for Instagrammer」の提供を通じて手軽にインフルエンサーマーケティングを実施できる環境を提供。また、「楽天市場」で販売している商品について、インフルエンサー視点での情報発信を増やすことで、より多くのユーザーと商品との出会いの創出をめざす。

石居 岳
石居 岳

「ZOZOTOWN」のリニューアル、ラグジュアリー&コスメ専用モールのオープンなど戦略・サービス概要まとめ

5 years ago
大幅なリニューアルを実施した「ZOZOTOWN」。戦略やラグジュアリー&コスメへの参入などの概要を解説

「ZOZOTOWN」がリニューアルオープンし、ラグジュアリー、コスメへ参入する――。ZOZOがリニューアルに合わせて2021年3月18日に開いた「ZOZOCOSME CONFERENCE」から、ZOZOの戦略やサービスアップデート、新サービスの概要などを見ていく。

ラグジュアリー&コスメへの参入

ラグジュアリーゾーン「ZOZOVILLA」をオープン

カンファレンスの冒頭で語られたのが、ZOZOが近年掲げる経営戦略「MORE FASHION×FASHION TECH」だ。

「ZOZOTOWN」には、ファッション好きなお客さまが多く集まっている。原点に立ち返り、ZOZOはファッションを理解している会社で(あると示すために)、ファッション好きの方に提供できるコンテンツ、ブランド、施策に注力していこうと考えている。(ZOZO 取締役兼COO 伊藤正裕氏)

その一環としてスタートしたのがラグジュアリーゾーンの「ZOZOVILLA」だ。

ZOZOは2021/3/18にラグジュアリーゾーン「ZOZOVILLA」をオープン
2021/3/18にラグジュアリーゾーン「ZOZOVILLA」をオープン

「LOEWE」「MARNI」「KENZO」など90以上の高級ブランドが出店(オープン時)。画像の見せ方を含め、「ハイブランドらしく世界観の演出にこだわって作っている」(伊藤氏)という。

2020年から先行出店している「LOEWE」は、京都で作られた専用デザインの風呂敷で包んだ状態で配送。「ここ(ZOZOTOWN)でしかない体験を作ってきた。この先も展開していく」(伊藤氏)

「FASHION TECH」については、「試着ができない、手に取れない」というECのペインポイントを解消するために、ZOZOが取り組んでいる全身計測用の「ZOZOSUIT」、足のサイズ計測を行う「ZOZOMAT」に加え、新たにコスメサービス向けのフェイスカラー計測ツール「ZOZOGLASS」を導入する。

ZOZOTOWNアプリ内で紹介されているZOZOGLASS
「ZOZOTOWN」アプリ内で紹介されている「ZOZOGLASS」

インターネットで買いづらい点をテクノロジーで解決する。パーソナライゼーション(の強化)や、お客さまが好きなモノを提案するために、あらゆる開発をしている。「ZOZOTOWN」が進化していくためには、「FASHION TECH」が極めて重要だ。(伊藤氏)

初のロゴ刷新&「シューズ」「コスメ」への導線

「ZOZOTOWN」としては初となるロゴの刷新。「この先のZOZOの展開も見据えてデザイン一新に期待を込めた」(伊藤氏)

同時に、検索窓の下に「すべて」「シューズ」「コスメ」の3つのタブを用意した。

刷新したZOZOTOWのロゴと、新たに追加された「シューズ」「コスメ」タブ
刷新したロゴと、新たに追加された「シューズ」「コスメ」タブ(赤線での囲みか所)

シューズは、「ZOZOMAT」の開発・提供も含めて「ZOZOTOWN」が力を入れているジャンル。「コスメ」も加え、トップページから「シューズ」と「コスメ」専用モールへの導線を作った。なお、シューズやコスメの専用ページからも、ラグジュアリーゾーン「ZOZOVILLA」への入り口を設けており、ブランド別にシューズやコスメを厳選し紹介している。

「ZOZOCOSME」オープン

「DIOR」「BOBBI BROWN」「POLA」など、「ZOZOTOWN」初出店ブランドを含む、国内外のコスメブランド500以上を取り扱うコスメ専門モール「ZOZOCOSME」をオープンした。

ZOZOCOSME出店ブランド
「ZOZOCOSME」出店ブランド

コスメ参入の背景について、伊藤氏は次のように説明する。

「ZOZOTOWN」会員の平均年齢は34歳。特に大きな山が、16〜24歳のZ世代となっている。男女比では7割が女性で、若い女性ユーザーが多い。533万人いる女性のアクティブ会員(1年間に1回以上の購入者)に「興味があること」についてアンケートを行ったところ、ダントツ1位のファッションに次いで、コスメが2位だった。(伊藤氏)

また、「MORE FASHION&FASHION TECH」の理念、買いにくいモノをいかに買いやすくするかを念頭に、コスメ領域においてもイノベーションが必要だとして、「ZOZOGLASS」をリリースした経緯も明かした。

「ZOZOGLASS」を利用することで、家にいながら肌の色を正確に計測できるので、ECでもコスメを買いやすい。(伊藤氏)

肌の色を構成する成分「ヘモグロビン量」と「メラニン量」を画像から推定し、肌の色を計測。アプリと併せて利用する。「ZOZOGLASS」を使用すると環境光に影響されないことから、オンラインでも高精度の計測が可能という。

悩み×欲しいを掛け合わせる検索UI

「ZOZOCOSME」は、ECにおけるコスメ購入時の課題解決をめざしている。その方法として、2つのソリューションを紹介した。1つは「検索」だ。

「スキンケア」「フレグランス」などの大カテゴリの中から、商材、肌悩みや形状(ミスト、ローションなど)、質感といった細かい要望を掛け合わせて検索精度を高め、最適な商品をレコメンドする。

ZOZOCOSMEの検索UI。条件を組み合わせることで検索精度を高める
「ZOZOCOSME」の検索UI。条件を組み合わせることで検索精度を高める

「ZOZOGLASS」で肌色マッチング

もう1つは、フェイスカラー計測ツール「ZOZOGLASS」を利用したカラーマッチングだ。ZOZOCOSMEオープン時は20ブランド以上、400点以上のファンデーションにのみ対応するが、順次、リップ、チーク、マスカラなど対応範囲を拡大していく予定だ。

「ZOZOGLASS」を利用した場合の流れ。計測した後に、ZOZOCOSMEで販売されている中からユーザーの肌色に適した色味のファンデーションが表示される
「ZOZOGLASS」を利用した場合の流れ。計測した後に、ZOZOCOSMEで販売されている中からユーザーの肌色に適した色味のファンデーションが表示される

なお、「ZOZOGLASS」は3月18日時点で、50万件の予約申込みを突破しているという。

公文 紫都
公文 紫都

ZOZO、週2出社週3リモートのハイブリッド型勤務へ/アーバンリサーチのECサイトに不正アクセス【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

5 years ago
2021年3月12日~18日にアクセス数の多かった記事のランキングを発表! 見逃している人気記事はありませんか?
  1. 「ZOZO」の新しい働き方構想、週2出社・週3リモートワークのハイブリッド型勤務へ

    ZOZOは、社員同士の対面でのコミュニケーションも引き続き重要だと捉えており、オンライン・オフラインのハイブリッド型の勤務形態を採用する

    2021/3/12
  2. アーバンリサーチのECサイトに不正アクセス。個人情報が漏えいの可能性、クレジットカード情報の流出はなし

    ECサイト「アーバンリサーチ公式オンラインストア」に対して外部からの不正アクセスが発生。流出した可能性がある個人情報は、ECサイトと連携している「URCLUB会員情報」のうち31万7326人分。クレジットカード情報の流出はなし

    2021/3/11
  3. 「横浜」「鎌倉」「湘南」「小田原」「箱根」などの製品をネット販売、テレビ東京グループと横浜銀行・横浜振興がタッグ

    神奈川県内の良質な製品や商品、それらとマッチする認知の高いIP(キャラクター、アニメなどの知的財産)を組み合わせた商品化事業、EC事業を始める

    2021/3/15
  4. 百貨店の構造からの転換へ――大丸松坂屋百貨店が始めたサステナブル重視のファッションのサブスクEC業「アナザーアドレス」とは?

    100%Web注文、サブスクリプション型のストックビジネスとすることで、従来の百貨店ビジネスが抱えるリアル店舗依存、フロービジネスからのビジネスモデル分散につなげる

    2021/3/16
  5. 楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon、各ECモールにおけるデータ活用法

    ECモールは新規ユーザー獲得のための分析やデータ活用が必須です。各社のデータ活用についてまとめました(連載2回)

    2021/3/16
  6. 楽天が2400億円を調達しモバイルへ投資。日本郵政、テンセントグループ、ウォルマートが出資

    テンセントグループ、ウォルマートも楽天へ出資する。すでに各社は協業関係にあり、米国小売大手、中国EC大手、日本EC大手による小売・ECの一大勢力となる

    2021/3/16
  7. 北の達人・木下社長が語るEC関係者は知っておくべき「知財管理」の重要性。「権利を守ることがお客さまを守ることにつながる」

    北の達人コーポレーション 代表取締役社長 木下勝寿氏がインタビューで語る「はぐくみプラス訴訟」【前編】(連載第17回)

    2021/3/17
  8. 配送料は全国一律60サイズ382円~、当日配達も提供へ。ヤフーとヤマト運輸が出店者向け「フルフィルメントサービス」を刷新

    ヤフーとヤマト運輸は「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」出店店舗向け「フルフィルメントサービス」をリニューアル。全国一律での配送料金の提供を開始する

    2021/3/12
  9. 「Amazonビジネス」は世界で500万社超が利用、日本は時価総額上位100社のうち80社以上が使用

    「Amazonビジネス」について、日本では時価総額上位100社のうち80社以上が利用(2021年2月19日時点)。3000万種類以上の商品を法人価格で提供されているという

    2021/3/17
  10. 「ウォルマート」「ルルレモン」の事例にみるリテール競争の変化と顧客体験の重要性

    顧客時間 共同CEO/代表取締役 岩井琢磨氏による米国リテール競争要因の変化についての考察

    2021/3/15

    ※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

    内山 美枝子

    電通グループ、デジタル事業会社を再編

    5 years ago

    電通デジタルが電通アイソバーを吸収合併する。また電通ダイレクトマーケティングはDAサーチ&リンクを吸収合併し、社名を電通ダイレクトに変更する。合併は7月1日の予定。

    電通ジャパンネットワーク、ビジネスフォーメーションの変革を始動
    https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000412.html

    noreply@blogger.com (Kenji)

    コロナ禍で消費行動はどう変わった? デジタル移行が加速したEC最新事情【セールスフォース・ドットコム調査】

    5 years ago

    セールスフォース・ドットコムが3月16日に発表したEコマース年次調査レポート「Eコマース最新事情」(第1版)の日本語翻訳版では、消費行動の世界的なデジタル移行の現状をまとめている。

    コマース分野のリーダー約1400人を対象とした調査に加え、全世界で10億人を超える一般消費者、企業の購買担当者の行動分析をセールスフォース・ドットコムのリサーチ機関であるSalesforce Researchが実施した。

    実店舗からデジタルコマースへの移行は顕著で広範囲に及んでいる。全世界で10億人を超える消費者の購買行動を分析すると、2020年にECが広く普及。ECによる収益は2020年第2四半期(4-6月期)に前年同期比で75%増、第3四半期(7-9月期)に55%増。サイトへのトラフィック以上に、コンバージョン数が大きく伸びている。

    セールスフォース・ドットコムが3月16日に発表したEコマース年次調査レポート「Eコマース最新事情」(第1版)の日本語翻訳版
    ECの収益とトラフィックの前年同期比

    購買行動のデジタル空間への移行が消費者とブランドの関係に影響を及ぼしている。生活必需品(通常は食料品店の棚にあるもの)をメーカーから直接デジタル購入する割合が拡大。2020年の年末商戦では食品や飲料がオンラインショッピングの支出カテゴリーとして上位に入っている。

    また、新型コロナのリスクが下がっても生活必需品をオンラインで購入する予定について、「可能性は高い」と応えた割合は68%に達した。

    セールスフォース・ドットコムが3月16日に発表したEコマース年次調査レポート「Eコマース最新事情」(第1版)の日本語翻訳版
    生活必需品のオンライン購入予定

    パンデミックの影響で対面での対応が減り、デジタル空間での対応が拡大。消費者は実店舗からアプリ、ECサイト、あるいはそれ以外のデジタル空間に向かっているという。

    実店舗は投資先として上位に位置付けられているが、ソーシャルメディアやWebサイトでの露出は、それ以上に重要視されている。新型コロナウイルスの影響で、商品の検索と購入が急速にデジタル空間へと移動。以前は商品探しの中心的な場所であった店舗は、注文に対応する場所に変わってきている。

    セールスフォース・ドットコムが3月16日に発表したEコマース年次調査レポート「Eコマース最新事情」(第1版)の日本語翻訳版
    コロナ禍における消費行動の変化について

     

    石居 岳
    石居 岳

    BtoB(法人向け取引)企業が投資拡大を計画する領域は「EC」がトップ

    5 years ago

    セールスフォース・ドットコムが3月16日に発表したEコマース年次調査レポート「Eコマース最新事情」(第1版)の日本語翻訳版では、BtoB-ECの現状についてまとめている。

    調査は、コマース分野のリーダー約1400人に加え、全世界で10億人を超える一般消費者、企業の購買担当者の行動分析をセールスフォース・ドットコムのリサーチ機関であるSalesforce Researchが実施した。

    デジタルへの急速な移行は、あらゆる企業で進行。BtoB企業の83%はすでにオンラインで販売を行っており、ほとんどがデジタルへの投資を継続している。ECは投資先の販売チャネルとしてトップにあがっており、その割は65%となっている。

    セールスフォース・ドットコムが3月16日に発表したEコマース年次調査レポート「Eコマース最新事情」(第1版)の日本語翻訳版 BtoB企業の投資先販売チャネル
    BtoB企業が投資を計画している販売チャネル

    「対面営業チーム」の役割については、業界によって意見がわかれている。医薬品、食料、飲料、医療機器、消費財のBtoBリーダーは、「対面営業チーム」への投資強化を支持。その他の業界リーダーは、「BtoBのEコマースソリューション」への投資強化をあげる傾向があったという。

    BtoB企業がECプラットフォームを選ぶときの優先事項は、パフォーマンス分類によって大きく異なった。3つのパフォーマンス分類すべてで「顧客満足度」が上位に。パフォーマンスが高い企業と中程度の企業は「デジタルイノベーション」も重視している。

    これに対して、パフォーマンスが低い企業は「収益」を重視。パフォーマンスが高い企業は「コスト」の優先度は低い。「プラットフォームのカスタマイズ」への関心については、パフォーマンスが高い企業、中程度の企業、低い企業で共通して低い傾向にある。

    セールスフォース・ドットコムが3月16日に発表したEコマース年次調査レポート「Eコマース最新事情」(第1版)の日本語翻訳版 デジタルソリューションを選ぶ際の要素
    デジタルソリューションを選ぶ際の要素について

     

    石居 岳
    石居 岳

    EC売上510億円、ベイクルーズが推進するDX改革の実例。戦略、組織・仕組み作りを解説

    5 years ago
    ベイクルーズのEC事業を統括する加藤利典氏と、ECエバンジェリストの川添隆氏がベイクルーズのDX戦略を解説

    アパレル大手のベイクルーズは、2020年8月期決算でEC売上高が前期比29%増の510億円を記録した。この成長の基盤となったのが、社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)と、ユニファイドコマース(パーソナライズした情報や体験を通じて、ブランド全体で消費者の購買体験を向上させる概念)戦略の推進だ。取り組み内容と成果について、ベイクルーズでEC事業を統括する加藤利典氏(執行役員 EC/Digital Marketing Div.)に、ファッションECに詳しいEコマースエバンジェリストの川添隆氏が聞いた。

    DX推進が加速、流れは不可逆に

    新型コロナウイルスの感染拡大でアパレルや小売業界の事業環境は激変し、企業はかつてないほど変化への対応力とスピードを求められている。川添氏は、現状の分析と今後の予想について次のように話す。

    3~5年とされてきたDXやOMO(Online Merges with Offline)への準備・移行期間は、イメージとしては3年以内に短縮し、且つその流れは不可逆だ。変化に適応し計画的にチャレンジを続ける企業と、対応を後回しにする企業の収益率の差はどんどん広がっていく。(川添氏)

    一方で川添氏は、「DXは(短期的に利益を生む)魔法の杖ではない」とも指摘。『アフターデジタル2 UXと自由』(日経BP)の著者であるビービットの藤井保文氏が、「行動データをUXに還元しいつも使われる魅力的なサービスにすることで、そこからビジネス成果を生み出していく」ことがDXであると指摘する通り、「足元の利益を獲得できる強いビジネスモデルを確立し、それに沿ったDX推進の戦略的かじ取りが必要」との認識を共有した。

    ECエバンジェリスト川添氏が考える、戦略レイヤーにおいて、企業文化と強みに併せてどうデジタルを介在させるかを示した図
    川添氏が考える、戦略レイヤーにおいて企業文化と強みに併せてどうデジタルを介在させるかを示した図(画像:川添隆氏作成、提供)

    その意味でベイクルーズは、顧客の体験価値向上に注力したDXをブランド横断的に推進し、EC売上高を伸ばしてきた「強い企業」(川添氏)だ。

    ベイクルーズはアパレル業界の中でもEC化率が高く、全社売上高の約30%をEC売上高が占める。なかでも自社ECサイト「ベイクルーズ・ストア」の貢献が大きく、2020年8月期にはEC売上高に占める比率(以下、自社EC化率)が77%に拡大。売上高は前期比37%増の391億円と、直近5年間で6倍に増加した。

    データ可視化で意思決定を支援、5大行動指針も

    ベイクルーズは2014年にオムニチャネル戦略強化を打ち出し、物流拠点の一元化、在庫や会員データ、ポイントプログラムの統合などを進めてきた。2016年ごろまでにオムニチャネル化を完了。2017年には新たな成長戦略としてユニファイドコマースを掲げ、DX推進を加速させている。

    加藤氏によると、DX推進の下準備としてまず取り組んだのが、EC事業部を中心とする「データドリブンな組織」への変革だ。データを基に必要な意思決定を行い、行動計画を実行していく組織と定義した。

    その一環として、「KPIツリー」を作成。「AC(アクティブ)会員数」「ARPU(顧客あたり平均売上高)」「顧客維持率」「クロスユース(店舗、EC双方で購入)」などの指標ごとにデータを可視化することにより、売上増を妨げる問題が数値として分かるようにした

    問題の所在が明確になれば具体的に解決策を検討し、効果を検証することが可能になる。現在はEC事業部以外の部署にもKPIツリー作成の狙いを説明し、全社的な導入を呼び掛けているという。

    ベイクルーズのEC部門におけるKPIツリー
    ベイクルーズのEC部門におけるKPIツリー(画像:ベイクルーズ提供)

    組織改革と同時に、社員の意識改革にも乗り出した。加藤氏はDX推進のための行動指針として、次の5つを紹介。

    1. 顧客を知り尽くす、そして寄り添う
    2. データドリブンな組織を作る
    3. 「チャレンジマインド」を持つ
    4. スピードを重視し、まず行動する。そして結果を出す
    5. 自分のチームだけでなく、会社全体のために行動する

    まずはEC担当者間でこのマインドを浸透させ、次に全社的に広げたい。(加藤氏)

    ベイクルーズ 加藤 利典氏
    ベイクルーズ 加藤 利典氏
    執行役員 EC/Digital Marketing Div.
    大手レコード会社でWEBディレクター兼フロントエンジニアとしてキャリアをスタートし、外資系ファッション企業のシステムエンジニアを経て、2004年ベイクルーズに入社。ベイクルーズでは基幹システムの開発や店舗POSシステムの刷新、インフラの刷新に従事した後に、2007年自社ECサイトの立ち上げに参画。2013年からはオムニチャネル戦略を推進し、現在はグループ全体のEC事業、WEBシステム開発全般、デジタルマーケを掌握。

    DX推進強化ポイント360°全方位支援プログラム

    では、ベイクルーズはDXに対するアクションとして具体的に何を行ってきたのか。加藤氏は、重点施策の1つとして、約2年前に開始した「360°全方位支援プログラム」をあげる。

    EC事業で蓄積した知見・ノウハウを体系化し、販社(ブランド)が抱える多様な課題を360度全方位で支援、解決していく。(加藤氏)

    ベイクルーズが展開する「360°全方位支援プログラム」の概念図
    ベイクルーズが展開する「360°全方位支援プログラム」の概念図(画像:ベイクルーズ提供)

    顧客データを基にアナリストが分析した結果から課題を抽出し、ブランド側と事前合意したKPI達成に向け、EC事業部が「総合代理店」的な役割に徹しブランドを包括的に支援する。戦略策定からCRM、メディアやコンテンツのプランニング、クリエイティブの制作全般に至るまで、支援範囲は幅広い。DX推進の「エバンジェリスト的な役割」も持ち、加藤氏は手応えを感じているという。

    DXに対する社内の理解度が高まり、徐々に意識改革ができているようだ。ブランド側の意向で、人材育成的な役割も担っている。(加藤氏)

    DX推進強化ポイント:データの民主化

    加藤氏はデータの民主化を、「誰もがデータにアクセスできる環境を作り、データを基に意思決定できる文化を醸成すること」と説明した。すでにダッシュボードからさまざまなデータを閲覧できる仕組みを整備しており、今後はアドホック的分析のための訓練やスキル向上を進める予定だ。

    ベイクルーズが実施している「データの民主化」概念図
    ベイクルーズが実施している「データの民主化」概念図(画像:ベイクルーズ提供)

    顧客がオンとオフを行き来する構造がある程度見えるようになり、顧客視点で物事を捉える意識や、チャネルに関係なく顧客の体験価値を高めようという意識が強くなってきた。(販促施策の成果について)感覚に頼るだけでなく、その感覚が正しいかどうか、ファクトで答え合わせも行われているようだ。(加藤氏)

    ユニファイドコマースに注力、自社EC売上が加速

    こうした一連の取り組みを土台にユニファイドコマースを進化させてきたベイクルーズは、ユニファイドコマースを「オムニチャネル化で実現した統合プラットフォームをベースに、リアルタイムに顧客を理解し、顧客1人ひとりに価値あるショッピング体験を提供すること」と定義。

    いつでもどこでも買い物ができるというだけでなく、店舗とECの垣根を完全に取り払いデータやサービスをリアルタイムに共有することにより、個々の顧客のニーズに沿ったサービスの実現をめざす。(加藤氏)

    ベイクルーズが推進する「ユニファイドコマース」のイメージ図
    ベイクルーズが推進する「ユニファイドコマース」のイメージ図

    ユニファイドコマース戦略の成果は業績に表れており、本格始動した2017年以降に自社EC売上高が急伸。2016年度には44%に過ぎなかった自社EC化率は、2020年度、77%まで伸長した。

    クロスユースの売上シェア50%超え、顧客満足度も向上

    店舗とECの役割を棲み分け、サービスにおいては店舗とECでの垣根を撤廃し統合したことで、ECと店舗の両チャネルで買い物をするクロスユース会員の売り上げ(以下、クロスユース)も増えている。

    直近の2020年度には、会員売上高に占めるクロスユースの割合が前期比3ポイント増の52%と、50%を超えた。加藤氏が特に注目するのが、コロナ禍で店舗売上高が減る中、クロスユース会員による店舗売上高は増えていることだ。

    クロスユーザーの購入単価が高いことなどを示した図
    クロスユーザーの購入単価が高いことなどを示した図(画像:ベイクルーズ提供)

    ユニファイドコマース推進で最も重要なことは、クロスユースを増やすこと。それがビジネスへの影響が一番大きいからだ。(加藤氏)

    NPS(顧客ロイヤルティ)も向上した。

    顧客の要望を積み重ねると、オムニチャネルやユニファイドコマース(という形)に辿り着く。顧客満足度が1ポイント上がると、売上高で数億円単位のインパクトがある。(加藤氏)

    ユニファイドコマース戦略により、NPSが向上したことを示したグラフ(画像:ベイクルーズ提供)

    CRM強化、MAでコミュニケーションを個人最適化

    ユニファイドコマース戦略の一環で、CRM強化にも取り組んできた。ECや店舗の行動・購買データ、ECアプリの行動データ、その他外部データなどを分析し、個々の会員に最適なコミュニケーションを実現する「リアルタイムパーソナライゼーション」はその1つ。マーケティング自動化サービス(MA)を利用し、電子メール、LINE、アプリのプッシュ配信に対応した93の「稼働シナリオ」を展開する。

    リアルタイムパーソナライゼーション経由の売上高は2019年度に119.4億円と、EC売上高の24%を占めた。

    加藤氏によると、売上高が高いベスト3シナリオは次の通り(カッコ内は年間売上高)。

    1. 「お気に入り登録」×「在庫通知」(約4億円)
      ECでの商品お気に入り登録者へ、在庫数が残りわずかになったことを通知
    2. 「閲覧落ち」×「在庫通知」(約2.6億円)
      直近1週間に同じ商品を3回見たが購入しなかった人へ、在庫数が残りわずかになったことを通知
    3. 「お気に入り登録」×「値下げ情報通知」(約2億円)
      ECでの商品お気に入り登録者へ、商品の値下げ情報を通知

    これを見る限り、値下げ情報よりも、在庫数が残り少なくなったことを知らせるコミュニケーションの方が購買モチベーションを上げることが分かる。

    コンバージョン率が高いシナリオは、「カート落ち」へのフォローアップだ。商品を1時間カートに入れたが購入しなかった顧客に対し、後日「買い忘れ」をリマインドしたり、類似商品の入荷を知らせたりする。加藤氏によると、コンバージョン率は平均4.5%と、通常の4倍以上も高い。

    ベイクルーズは、リアルタイムパーソナライゼーションを約4年前に開始した。現在の完成度は6割程度。データ分析の完全リアルタイム化と、個々の顧客ごとの配信のタイミング・頻度・チャネル・人工知能(AI)を使った情報の最適化が今後の課題という。

    Eコマースエバンジェリスト 川添隆氏
    1982年生まれ、佐賀県唐津市出身。
    全国のEC担当者を応援し、ECビジネスの可能性を伝えるECエバンジェリスト。企業再生を2社経験し、EC売上2倍以上に携わったのは 5社。アパレル関連企業3社を経験後、2013年7月よりメガネスーパー(現 VHリテールサービス)に入社。7年でEC関与売上は7倍、自社 ECの月間受注は13倍に拡大。現在は親会社のビジョナリーホールディングス 執行役員として、E C / デジタル領域・IT・新規事業を統括。2017年より代表を務めるエバンでは小売企業、大手メディア、B2Bスタートアップ、D2Cブランドへデジタル実装やEC領域のアドバイザーに従事。

    ネイティブアプリでロイヤルユーザーを創出

    スマホ用ネイティブアプリをユニファイドコマース戦略の重要ツールと位置づけ、過去2年間、2カ月に1度のアップデートを継続して行っている。

    会員カード機能や、店舗で商品タグを読み込み購入と自宅配送手続きを完了できる『手ぶらで買い物機能』を備えたアプリは、オンラインとオフラインをつなぐハブとなるツール。アプリの体験価値向上とともにクロスユースも増えると考えている。(加藤氏)

    ベイクルーズが運用するスマホアプリにまつわる各種実績(画像:ベイクルーズ提供)
    ベイクルーズが運用するスマホアプリにまつわる各種実績(画像:ベイクルーズ提供)

    実際にアプリ利用者はクロスユース率が高く、2020年度は全社(19.6%)の約3倍に迫る55.3%、つまりアプリ利用者の半数以上がクロスユーザーだった。コンバージョン率、1人あたりの訪問回数、ARPU、平均滞在時間といったデータも優れており、アプリは「ロイヤルユーザーを作るツール」(加藤氏)となっている。

    次世代型EC組織で課題解決を迅速化

    ベイクルーズは自社EC強化のため、ブランド横断型のEC専門組織を内製化することにこだわってきた。エンジニアやウェブデザイナーはもちろん、UI・UXデザイナーやウェブディレクター、アナリストといった専門職も多い。技術とビジネスの両人材を集めた多様性のある組織をめざし、次の3点を実現したという。

    • 専門職の採用に特化したチームを設置。優秀な人材の採用に貢献
    • 各ブランドのエース級の人材をEC組織へ異動。EC組織とブランドの橋渡し役として、ブランドとの連携を強化
    • 基幹・店舗システム担当とウェブ担当エンジニア組織の統合。オンラインとオフライン融合の店舗接客支援アプリなどの仕組みが具現化

    DX推進組織として、ベイクルーズが外部パートナーに求めることは3点ある。まず、製品やサービスの質と精度が高いこと。次に、ベイクルーズの顧客を思い、ベイクルーズと共に「泥臭い業務」をやってくれること。

    そして最後が、「自社製品やサービスを愛してやまない人」がいること。

    自社製品やサービスを愛してやまない人は総じてパフォーマンスが高く、製品に対する思いも伝わってくる。そういった人が作っているサービスはぜひ使ってみたい。(加藤氏)

    AIで「着心地を科学する」

    ベイクルーズは、顧客への商品レコメンド、画像認識、商品タグ付けなど、ECのさまざまな側面で業務にAIを取り込んできたが、その集大成として「AIブランド構想」に着手した。「着心地を科学する」のコンセプトのもと、「AIによって新しい“サイズ”“価値”“基準”を創造し、既製品の限界に挑むブランドを立ち上げる」(加藤氏)という試みだ。

    ベイクルーズが進める「AIブランド構想」(画像:ニューロープ提供)
    ベイクルーズが進める「AIブランド構想」(画像:ニューロープ提供)

    ブランド立ち上げの取っかかりとして、デザイナー、パタンナー、マーチャンダイザー(MD)、販売パートナーなど、アパレルブランドを形成する職域ごとにその業務を支援するアルゴリズムの開発を開始した。これまで勘と経験に頼ってきた部分をAIで自動化し、精度を高めていく。AIはあくまで人の優秀なアシスタントという位置づけで、最終的な意思決定は人が実施する。

    需要予測や在庫配分、商品値引きを最適化するアルゴリズムを開発。実証実験を行っており、誤差が±10%程度にまで仕上がってきているという。アルゴリズムによる部分最適化を積み上げていくことで、「売れるものは売り、売りにくいものは適正量を作り、欲しい人に届けて利益を生むブランド」をめざす。

    モデレーターを務めた川添氏は、以下のように締めくくった。

    ベイクルーズのDX推進は、長年かけて準備してきたことが今まさに成果として花開き、事業の本丸にどんどん入っていき、かつ顧客の期待に応える段階にある。DXはこれから推進を始めるという企業も、まずは第一歩を踏み出すことが肝心だ。ただし、デジタル化が目的になってはいけない。

    企業やブランドとしての大義や存在意義を定義しない限り、提供したい価値もUXも定まりにくい。根幹となる地盤を固めた上で、そこから具体的に何かを変えたい、改善したいときにデジタル技術は必ず使えると思う。ベイクルーズの取り組みは参考になるだろう。

    鶏内智子
    鶏内智子

    2021年のキャンペーンに活用したい「メールマーケティング」6大トレンド | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

    5 years ago
    メールマーケティングは、2021年もECマーケターにとって重要です。テクノロジーの進歩によって、より効率的になっているメールマーケティングの2021年6大トレンドを解説します

    メールマーケティングは、多くの企業やECサイトにとっての生命線です。世界的なコロナ禍の中、ECのプロモーションと売り上げを増やすために、デジタルが最も重要なマーケティングチャネルとなりました。今回は2021年押さえておきたい、メールマーケティングキャンペーンに活用できる6大トレンドをご紹介します。

    メールマーケティングによるROIは前年比14ドル上昇

    DMA(一般社団法人データ&マーケティング協会)が発行したレポート「2019 Email Tracker」によると、メールマーケティングによる投資収益率(ROI)は、前年に比べて約14ドル上昇。1ドルあたりのROIは58ドル強となっています。

    他のマーケティングチャネルと同様、メールマーケティングも常に変化。コンバージョン率の向上やカスタマーサービスの質を高めるために、メールをより効率的に活用するトレンドが生まれています。メールは10年以上使われている技術ですが、企業側と消費者側の両方で、メールマーケティングは絶え間ない進歩を続けてきました。

    それでは、ここから2021年のメールマーケティングキャンペーンに活用できる6つのトレンドを見てみましょう。

    1. インタラクティブなメールデザイン

    メールの構成要素の1つにコールトゥアクション(CTA)があります。CTAは、ユーザーをWebサイトに誘導し、オンラインストアでの交流や閲覧を開始させるものです。

    CTAがメールキャンペーンの中心であることに変わりはありませんが、技術の進歩により、インタラクティブな機能を追加することも可能になりました。これにより、ユーザーはサイトに行く前にメールで詳細を確認できます。

    インタラクティブなメールの最もわかりやすい例は、Googleのサービスである「Googleドキュメント」「Googleスプレッドシート」などです。それらのドキュメントにコメントや提案を残すと、関係者はメールを受け取り、同じメールから自分の回答を追加したり、変更を許可することができます。

    しかし、こうしたインタラクティブな機能は、必ずしもドキュメントに関連したものである必要はありません。ECのメールキャンペーンには、次のような特徴的な機能を加えることもできます。

    • アニメーションやインタラクティブな画像
    • 商品のカルーセルやロールオーバー効果(編注:マウスオーバー効果とも呼ぶ。Webブラウザに表示された画像上にマウスポインタを置くと他の画像に切り替わり、マウスポインタを画像の外に出すと元の画像に戻る効果)
    • アニメーション付きCTA
    • インタラクティブなアンケートや投票
    • 長文メールの短縮表示

    AMP(編注:Accelerated Mobile Pages、Webコンテンツを瞬時に読み込んで表示するための手法)のおかげで、上記のような機能が可能になり、プログラマーはメールのなかにWebサイトのような機能を作ることができるようになりました。

    この機能により、メール受信におけるカスタマーエクスペリエンスの向上、メール内でのアクションの完了、ダイナミックでリアルタイムに更新されるコンテンツの提供が可能になります。

    2. メールマーケティングの自動化

    ソーシャルメディアに関するトレンドや最新ニュースを発信する「Social Media Today」が実施した調査「State of Automation」によると、75%のマーケターがメールマーケティングに少なくとも1つのオートメーションツールを使用しているそうです。

    さらに、メールマーケティングプラットフォームを提供する「Omnisend」社の調査によると、カスタマイズされた自動化ツールを使う場合、画一的なソリューションと比較して、17.27%高いクリック・スルー・レート(CTR)を獲得しています。

    上記2つの事実から、Eメールの自動化がトレンドであることは明らかで、最新のソリューションは、企業やオンラインストアにさらなる収益をもたらしていることがわかります。メールマーケティングを最大限に活用するためには、これらの取り組みを支援するソフトウェアソリューションをいくつか検討することが賢明です。

    Eメールキャンペーンを作成するためのアプリケーションは数多くあります。また、キャンペーンのニーズに合わせてさまざまなアプリケーションを組み合わせることも可能です。メールマーケティングサービスを分析し、最新のソフトウェアソリューションを選択する際に考慮すべきいくつかの重要な機能を以下にあげました。

    • メールの連絡先の一括追加
    • メールオートメーション機能
    • SMS送信機能
    • 詳細なレポート
    • 高い到達率
    • 顧客セグメンテーションツール
    • キャンペーン管理ツール

    3. モバイルデザイン

    サイトデザインの最新トレンドにも理由があります。ミニマルでモバイルファーストのアプローチ、ダークモードなどの機能はほとんど、ユーザーエクスペリエンスを高めるため、データに基づいて採用されています。

    メールマーケティングソフトウェアを提供する「upland」の調査によると、62%の人が携帯電話でメールを開いています。

    uplandの調査によると、約62%の人がモバイルからメールを開封
    約62%のユーザーがモバイルからメールを開封している(画像:「Top 10 Email Clients in March 2019」より編集部が作成)

    さらに、Android関連情報を発信する「Android Authority」が実施した調査では、回答者の約82%が可能な限りダークモードを使用していることがわかりました。これらは、人々がどのように情報を消費することを好むかを示す、的を射た指標です。

    「Android Authority」が実施した調査によると、回答者の約82%が可能な限りダークモードを使用
    ダークモードをしている回答者の割合は約82%(画像:「We asked, you told us: Just about everyone uses dark mode」より編集部が作成)

    メールキャンペーンを作成する際に、上記のような事実を踏まえたデザイン機能を利用することができます。まず、モバイルファーストの考え方でメールを作成し、スマートフォンからのアクセスを容易にします。そして、ダークモードでの利用を意識した配色を検討してみてはいかがでしょうか。

    4. プライバシーへの配慮

    クロスサイトスクリプティング(編注:Webアプリケーションにおいて、Webサイトの脆弱(ぜいじゃく)性を利用した攻撃手法)からフィッシングまで、いくつものサイバー攻撃が日々、サイトやオンラインストアを脅かしています。

    さらに、何百万もの機密データがインターネット上に残されるような情報漏洩の増加により、データのプライバシー保護は世界的に話題になっています。

    NTTデータが行った調査によると、回答者のうち、ブランドが自分の情報を安全に保管してくれると信頼している人はわずか8%。消費者はサイトに自分のデータを入力することに懐疑的であるだけでなく、メールを通じて個人情報を求められることにも懐疑的なのです。

    メール登録者との信頼関係をさらに構築するために、Brand Indicators for Message Information(BIMI)を採用することができます。メールに情報が少し加わるだけですが、そのメールが信頼できる合法的なブランドから送信されていることを保証する規格です。

    同時に、顧客から収集した機密情報は、ハッカーが侵入しにくい別の安全なデータベースに保管しておく必要があります。

    BIMIのイメージ図。画像内では「Groupon」と「Aetna」がBIMIの対象(出典:LitimusBlog「What is BIMI and why should email marketers care?」

    5. メールのパーソナライゼーション

    データが安全に保管されているという信頼感を顧客に与えることで、メールのパーソナライゼーションとい、貴重なメールマーケティングの手法が使えるようになります。

    メールマーケティングソフトウェアを開発する「Campaign Monitor」によると、セグメント化されたメールキャンペーンは760%の収益増加が期待でき、一般的な一律のメールキャンペーンよりも効率的です。

    さらに、市場・消費者データを扱う「Statista」が2016年に行った調査によると、パーソナライズされたメッセージの開封率は、一般的なメッセージに比べて1.5倍近く高いことがわかりました(それぞれ18.8%、13.1%)。

    「Statista」が2016年に実施したメールのパーソナライゼーションに関する調査結果(画像:「Marketing e-mail open and click rates in the U.S. in 2016, by personalization」より編集部が作成)

    興味深いことに、件名とメッセージの両方がパーソナライズされていた場合、開封率は5.9%に低下しました。

    パーソナライズされたメールがメールキャンペーンの成功率を高めることは明らかですが、自社のオンラインストアには何が最適か、試してみることも可能です。

    顧客を特定のアイテムに興味のあるグループにわけることで、一般的なプロモーションを作成するよりも、はるかに効率的なキャンペーンになります。

    ほとんどのメールソフトで、顧客の興味に応じてメールリストをセグメント化し、並行してメールキャンペーンを行うことができます。

    6. 情緒的なつながり

    デジタルの世界では、私たちは匿名性に慣れているため、感情的なつながりを期待していません。オンラインストアの主な目的は買い物ですが、消費者との感情的なつながりを作ることで、ビジネスをさらに発展させることができます。

    調査によると、人は感情的なつながりを感じた企業にお金を使いたいと思うそうです。感情的なつながりを感じている企業と、そうでない企業を比べた場合、その消費額の差は、実に2.5倍にもなります。

    愛用ブランドで満足している顧客感情的つながりがある顧客感情的つながりによる効果
    年間消費額275ドル699ドル2.5倍
    購入期間3年4か月5年1か月1.5倍
    表:Cision「New Retail Study Shows Marketers Under-Leverage Emotional Connection」より編集部が作成

     

    感情的なつながりを実現するには、メールキャンペーンを単なるメッセージ発信や一般的なプロモーション以上のものにする必要があります。誕生日のお祝い、個人的なプロモーション、名前入りの割引コード、フィードバックのお願いなどを送りましょう。

    あなたのECサイトがソーシャルコマースの原理を活用していれば、より多くの信頼を得ることができます。リピーターが増える可能性も高まりますし、口コミで新規顧客を獲得することもできます。

    ◇   ◇   ◇

    オンラインストアのマーケティングに導入を検討すべき、6つのメールマーケティングのトレンドを解説しました。

    これらのトレンドのなかには、インタラクティブ性、自動化、デザインなど、純粋に技術的なものもありますが、プライバシー、パーソナライゼーション、感情的なつながりなど、心理的な要素も含まれています。2021年に効果的なメールマーケティングキャンペーンを行う際は、この2つの側面を組み合わせて使用する必要があります。

    この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

    Digital Commerce 360
    Digital Commerce 360

    JIAA、ネット広告についての意識を定性調査

    5 years ago

    日本インタラクティブ広告協会が「2020年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定性)」を実施。2019年に実施した定量調査から導かれた仮説を検証した。

    2020年インターネット広告に関するユーザー意識調査 「定性調査」の結果を発表
    https://www.jiaa.org/news/release/20210309_user_chosa/

    noreply@blogger.com (Kenji)

    通販・EC実施企業は必見! 新たな販路になる政府の景気刺激策「グリーン住宅ポイント制度」とは?「交換商品事業者」の要件は? | 2019年10月の増税、キャッシュレス、軽減税率制度の情報まとめ

    5 years ago
    「グリーン住宅ポイント制度」は、グリーン社会の実現、地域における民需主導の好循環の実現などに資する住宅投資の喚起を通じ、新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ経済の回復を図ることを目的とする制度

    コロナ禍の景気刺激策として、国土交通省が2021年4月から始める新たな住宅ポイント制度「グリーン住宅ポイント制度」。一定の省エネ性能などを有する住宅の新築やリフォーム、一定要件などを満たす既存住宅の購入に、商品や一定の追加工事と交換できるポイントを付与する制度で、新築で最大40万円相当、リフォームは最大30万円相当などのポイントを発行する。商品を消費者に提供する「交換商品事業者」の要件は、消費者向けの通信販売の実績があることなど。通販・EC事業者の新たな販路になる「グリーン住宅ポイント制度」を解説する。

    「グリーン住宅ポイント制度」とは?

    「グリーン住宅ポイント制度」は、グリーン社会の実現、地域における民需主導の好循環の実現などに資する住宅投資の喚起を通じ、新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ経済の回復を図ることを目的とする制度。

    一定の省エネ性能などを有する住宅の新築、リフォーム、または一定の要件などを満たす既存住宅を購入する場合、商品や追加工事と交換できるポイントを付与する。

    • 新築は最大40万円相当、リフォームは最大30万円相当のポイントを付与
    • 一定の要件を満たす場合、新築は最大100万円相当に付与ポイントを引き上げる(たとえば東京圏からの移住のための住宅、18歳未満の子ども3人以上を有する世帯が取得する住宅、三世代同居使用の住宅など、災害リスクが高い区域から移住のための住宅)
    • 「新たな日常」などに対応した追加工事にもポイント交換できる
    • 若者・子育て世帯がリフォームを行う場合などにポイントの特例あり
    「グリーン住宅ポイント制度」
    「グリーン住宅ポイント制度」について(国交省発表の資料からキャプチャ)

    対象は、2020年12月15日から2021年10月31日までに契約を締結した一定の省エネ性能を有する住宅の新築(持家・賃貸)、一定のリフォームや既存住宅の購入。

    消費者は、付与されたポイントを「新たな日常に資する商品」「省エネ・環境配慮に優れた商品」「防災関連商品」「健康関連商品」「家事負担軽減に資する商品」「子育て関連商品」「地域振興に資する商品」、追加工事との交換ができる

    制度全体の流れ(画像はグリーン住宅ポイント事務局のWebサイトからキャプチャ)

    この商品を供給する事業者は「交換商品事業者」と呼ばれ、通販・EC事業者などが対象となる。

    「グリーン住宅ポイント制度」を活用する消費者は、グリーン住宅ポイント事務局を通じて商品交換を申し込み。交換商品事業者は消費者へ直接、納品する。その後、事務局から交換商品代金相当額の支払いを受けるという仕組みになる。

    「交換商品事業者」の要件とは?

    「交換商品事業者」についてグリーン住宅ポイント事務局は2月22日、交換商品の提供を希望する事業者の募集をスタートした。

    商品交換のフロー(画像はグリーン住宅ポイント事務局の公表資料からキャプチャ)

    募集期間(登録申請期間)は2021年10月31日まで。事業予算は1094億円(事務費込み)。商品交換期間は2021年6月上旬~2022年1月15日

    交換商品事業者の要件

    原則として、以下の1~5の要件を満たすことが必要。

    1. 日本国内に法人登記している企業、団体
    2. 日本国内で消費者向けの通信販売の実績を有すること。「通信販売の実績」とは、Web上に自社が運営または管理する通信販売サイト(ECモールへの出店を含む)を有し、当該サイトから商品の閲覧、注文ができること。商品の問い合わせについて、メールだけでなく電話でも受け付けていることなど。また、受注した商品の配送について、配送会社と物流委託、定期集荷などの基本契約を締結していることが求められる
    3. 商品交換期間を通じて提供できる十分な在庫を有する商品を3点以上提供できること
    4. 事務局が定める「グリーン住宅ポイント制度 交換商品事業者登録規約」(規約)「商品交換ガイドライン」(ガイドライン)および事務局が制作するマニュアルなど(運用マニュアル)に沿って運用を行えること
    5. 暴力団または暴力団員である者、不正の利益を図る目的もしくは第三者に損害を加える目的で暴力団もしくは暴力団員を利用している者などに、該当しないこと。

    募集する交換商品

    「新たな日常」に資する商品

    ウィズ・コロナ時代の生活様式の変化に対応した「新たな日常」の実現に資することについて妥当と考えられる内容が明示されていること。対象カテゴリは次の通り(対象カテゴリ・要件は今後追加・変更されることがある)。

    • テレワーク家電
    • テレワーク環境整備用品
    • テレワーク用品
    • ステイホーム家電
    • DIY用品
    • 園芸用品・アウトドアリビング
    • 楽器
    • 感染予防家電
    • 感染予防用品
    • 自転車

    省エネ・環境配慮に優れた商品

    生産・加工等の工程において環境上の課題に対し、一定の妥当な配慮がなされていることについて、認証制度の取得状況等により妥当と考えられる内容が明示されていること。対象カテゴリは次の通り(対象カテゴリ・要件は今後追加・変更されることがある)。

    • PC・プリンタ・スキャナ・ディスプレイ(その他周辺機器・サプライ含む)
    • テレビ・レコーダー・プロジェクター
    • エアコン
    • 照明機器・電球
    • 寝具
    • カーテン・ブラインド
    • 園芸用品

    防災関連商品

    災害発生時の被害の防止・抑制や円滑な避難、生活手段の確保・維持等に資することについて、妥当と考えられる内容が明示されていること。対象カテゴリは次の通り(対象カテゴリ・要件は今後追加・変更されることがある)。

    • 食料品(非常食・保存食)
    • 住宅内の被害防止・抑制に資するもの
    • その他の防災・避難用品

    健康関連商品

    健康の保持増進や高齢者が安心して生活できる環境づくりに資することについて、妥当と考えられる内容が明示されていること。対象カテゴリは次の通り(対象カテゴリ・要件は今後追加・変更されることがある)。

    • 食料品
    • アウトドア用品・自転車
    • スポーツ用品(例:グローブ、ボール、バットなど)
    • 健康器具
    • 健康家電
    • エアコン・扇風機・ストーブ・ヒーター

    家事負担軽減に資する商品

    家事負担の軽減に資することについて、妥当と考えられる内容が明示されていること。対象カテゴリは次の通り(対象カテゴリ・要件は今後追加・変更されることがある)。

    • キッチン家電
    • 掃除・洗濯家電
    • スマートスピーカー
    • キッチン・バス・トイレ・洗濯・掃除用品
    • 自転車

    子育て関連商品

    子どもや保護者が使用する子どもの健やかな成長に資することについて、妥当と考えられる内容が明示されていること。対象カテゴリは次の通り(対象カテゴリ・要件は今後追加・変更されることがある)。

    • 家具(学習机等に限る)
    • 文具、事務用品、ランドセル
    • 玩具
    • 絵本
    • 参考書、辞書、図鑑
    • ベビーカー、ベビーシート、チャイルドシート
    • ベビー・キッズ用品
    • 自転車

    地域振興に資する商品

    国内の特定の地域における地域資源を活かした生産・加工等を経た農林水産物、畜産物、加工食品・飲料、伝統工芸品等の地場産品であり、「地域の振興」に資することについて、妥当と考えられる内容が明示されていること。商品例は次の通り。

    • 肉、魚、野菜、果物
    • 練り物、缶詰
    • 酒、ジュース
    • 陶磁器
    • 木製家具
    • 織物、編み物、染め物
    ◇◇◇

    3月下旬から登録事業者・商品情報の公表をスタート。4月下旬からポイント発行申請の受け付けを始める。6月初旬~商品交換申込をスタートする予定。

    瀧川 正実
    瀧川 正実

    「Amazonビジネス」は世界で数十万社が利用、日本は時価総額上位100社のうち80社以上が使用

    5 years ago
    「Amazonビジネス」より

    アマゾンジャパンによると、法人・個人事業主向けの通販サービス「Amazonビジネス」は現在、個人事業主から数万人の従業員を抱える多国籍企業まで、世界で500万を超える法人顧客にサービスを提供しているという。

    日本では時価総額上位100社のうち80社以上が「Amazonビジネス」を利用している(2021年2月19日時点)。

    世界では、フォーチュン100社のうち80社以上が「Amazonビジネス」の顧客に。また、フォーチュン500社のうち300社近くが「Amazonビジネス」のアカウントを保有。「Amazonビジネス」の販売事業者は世界で数十万社の規模で、その半数以上が中小規模という。

    「Amazonビジネス」は数億種類の商品を販売。「Amazonビジネス」の年間売上高は世界で250億ドル超に達し、その半分以上は販売事業者による売り上げという。

    国内では、日本の国立大学の90%以上が「Amazonビジネス」に登録。3000万種類以上の商品を法人価格で提供している。

    アマゾンジャパンが「Amazonビジネス」を日本でスタートしたのは2017年。オフィス、建築/建設、飲食サービス、病院/クリニック、ホテル/レジャー、工場、自動車整備、理美容業、大学/学校、研究所、行政機関、農業などを対象にした商品を幅広くそろえている。

    Amazonが直販で扱っている法人向け商材のほか、「Amazonビジネス」に出品した販売事業者の商品を販売している。

    クロス・マーケティングが行った調査では、「Amazonビジネス」を利用している事業者にその理由をたずねたところ、上位は「配送速度」「求めやすい価格」「豊富な品ぞろ」をあげている。

    「Amazonビジネス」を利用している理由
    「Amazonビジネス」を利用している理由(Amazonブログ「dayone」から編集部がキャプチャ)

    「Amazonビジネス」は、突発的に必要になった商品を購入する場合の「注文から到着までの時間がかかる」「価格の比較ができない」「売っている場所が分からない、探すのが手間」といった課題に対応できるのが特徴という。

    突発的な商品の購買についての課題など
    突発的な商品購入について(Amazonブログ「dayone」から編集部がキャプチャ)

    加えて、購買データの蓄積やデータ活用できるため、デジタル化による購買業務の可視化を「Amazonビジネス」の利用理由としている回答も一定数あった。コロナ禍の2020年4月に「Amazonビジネス」を本格導入した事業者からは、「『Amazonビジネス』で購入することで、それまで必要とされていた稟議書の申請や承認が不要になり、購買業務の効率化という改革が実現した」というコメントが寄せられている。

    石居 岳
    石居 岳

    北の達人・木下社長が語るEC関係者は知っておくべき「知財管理」の重要性。「権利を守ることがお客さまを守ることにつながる」 | 竹内謙礼の一筆啓上

    5 years ago
    北の達人コーポレーション 代表取締役社長 木下勝寿氏がインタビューで語る「はぐくみプラス訴訟」【前編】(連載第17回)

    このくらいのことはネット通販の広告で言ってもいいだろう」「この程度の嘘ならバレないだろう」――。ネット通販の業界であやふやになりがちな認識が、改めて違法であると証明された。2月9日、不正競争防止法に関する裁判で、東京地方裁判所は原告である北の達人コーポレーション(本社・札幌市北区)の主張を認め、被告のはぐくみプラス(本社・福岡市中央区)に対し損害賠償金1835万7803円の支払いを命じた。

    筆者は以前から、Eコマース業界に関わる人は正しい法律の知識と情報を持つべきだと考えていた。裁判の経緯や判決について詳細な話を聞きたいと思い、北の達人コーポレーションの木下勝寿社長に取材を申し込んだところ、2月26日にClubhouseで公開取材をさせてもらう機会をいただいた。

    当日は100名以上の聴講者が参加、非常に勉強になる時間を過ごさせてもらった。少しでも多くのEC事業者に、不正競争防止法について理解してほしいという思いもあり、インタビューの内容をこの場で発表させていただく。インタビューをそのままに文字を起こしてしまうとわかりにくい表現があるため、会話のやり取りに若干のアレンジを加えている。ご了承いただきたい。

    なお、Clubhouse上で公開取材を行う際、木下社長には事前に記事化の承諾を得て、ルーム作成にあたり聴講者には『ネットショップ担当者フォーラム』で記事にすることを事前にお伝えしている。

    どんな行為が「不正競争」にあたるのか

    • 他社の有名なロゴマヤマーク等を不正に使用する
    • 他人の商品の形態を模倣した商品を提供する
    • 窃取 、詐欺、脅迫その他不正な手段により営業秘密等を取得する
    • 原産地、品質、用途、数量等について誤認させる表示を行う
    • 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知、流布する ……など

    「不正競争防止法」は、事業者間の公正な競争を確保することで、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律(不正競争防止法第1条)。表示規則などはその性質上、事業者を保護するとともに、消費者をも保護する側面もある。

    これまでの経緯

    2018年2月7日、北の達人コーポレーションは、はぐくみプラスを被告として、品質誤認表示・信用毀損行為の差止め、品質誤認表示の抹消、虚偽の事実を記載した文書の回収、13億7944万円の損害賠償のうち一部である1億円の支払いなどを求め、東京地方裁判所に訴訟を提起した。
    2021年2月9日、東京地方裁判所は北の達人コーポレーションの訴えを認め、はぐくみプラス社に対し損害賠償金として1,835万7,803円の支払いを命じた。

    始まりは1つの模倣品

    ──まずは訴訟の経緯を教えて下さい。

    木下勝寿氏(以下、木下): 当社では健康食品や化粧品などのオリジナル商品を取り扱っています。その中の看板商品の1つが「カイテキオリゴ」という商品です。今回、訴えた「はぐくみプラス」という会社は、その看板商品の競合商品を売っていました。商品名は「はぐくみオリゴ」という名称でしたが、配送の外装箱のデザインから、ページ上の開発秘話のストーリーまで、そっくりなものを作ってきました。

    パッケージ写真:北の達人コーポレーションの「カイテキオリゴ」と、はぐくみプラスの「はぐくみオリゴ」
    北の達人コーポレーションの「カイテキオリゴ」(左)と、現在発売されているはぐくみプラスの「はぐくみオリゴ」(右) Amazonの商品ページより編集部でキャプチャ

    ──それはひどいですね。

    木下: 実物を見た時、うちの商品の大ファンじゃないかと思ったぐらいです(笑)。本当にそっくりでした。でも、問題はそれよりももっと重要なところにありました。

    ──それは何でしょうか?

    木下: 「はぐくみオリゴ」は「オリゴ糖純度100%」を宣伝文句としていたのですが、今の科学技術では100%純度のオリゴ糖を製造することは不可能なんです。

    ──つまり、嘘の表記をして売っていたってことですね。

    木下: その通りです。だけど、私も「どうせ素人が勘違いして売っているのだろう」と、当時は目くじら立てず、そのまま放置することにしました。

    ──勘違いや誤解は誰にでもありますからね。

    木下: しかし、あるアフィリエイトのイベントで、はぐくみプラスの社員がアフィリエイターに対して「北の達人のカイテキオリゴは純度100%じゃない。はぐくみオリゴの方が商品として優れている」と、自社の商品を宣伝していることが発覚したんです。

    嘘の情報で自分たちの商品のほうが優れていると売り込むのは、さすがに見過ごせないと思い、弁護士を通じて正式に抗議しました。すると、はぐくみプラスから弁護士名義で謝罪の連絡が来ました。

    ──謝ってきたんですね。

    木下: ところが、謝罪をしたのにも関わらず、その後もはぐくみプラスは自社商品を「オリゴ糖純度100%」をアピールして売り続けたのです。

    1回目だけなら知らなかったで済まされますけど、謝罪した上で2回目以降も純度100%の謳い文句で売り続けましたからね。これは悪質だと判断し、訴訟という形で対応せざるを得なくなりました。

    表示をする際に留意すべきこと

    • 誤解を招くような表示をしない
      虚偽の表示をしないことはもちろん。取引先や一般消費者が誤認するような表示がないか、注意が必要
    • 困ったら経済産業省や専門家に相談
      例えば「A県で生産された原料をB県で加工、さらにC県でも加工して完成した商品の場合、どこが原産地になるか?」「衣料品にデザインとして国旗を描いた場合、その国が原産地だと誤認されるおそれはないと言えるか?」など、疑問に思うことがあるときには、「経済産業省知財産政策室」に問い合わせるか、弁護士などの専門家へ相談を。

    そして法廷へ

    ──裁判では何を訴えたんですか?

    木下: 事実にはないことを表記した「品質誤認表示と信用棄損行為の差し止め請求」と、「損害賠償請求」の2点で訴えました。

    当社で「はぐくみオリゴ」のオリゴ糖の成分を調べたところ、53.29%しかありませんでした。それを「オリゴ糖純度100%」と表示をした行為に対して、東京地方裁判所は品質誤認表示に該当するという認定を出しました。加えて、はぐくみプラスに損害賠償金として1835万7803円の支払いを命じました

    ──札幌近郊で新築一戸建てが買える金額ですね。

    木下: 買えませんよ(笑)。もうちょっとしますよ。

    ──すみません、話を元に戻します。もう1つの品質誤認表示と信用毀損行為の「差し止め」はどうなりましたか?

    木下: はぐくみプラス側が裁判中に「オリゴ糖純度100%」の表記を少しずつホームページ等の表記から削っていきました。これは本気でマズいと思ったんでしょうね。そのおかげで、「差し止め」に関しては判決の中には含まれないことになりました。

    ──裁判はどんな流れで進んでいったんですか?

    木下: 最初は裁判所から訴状を相手に送るところから始まりました。ですが、はぐくみプラスの社長が訴状を受け取ってくれなかったんです。

    ──えっ、会社に送ったんですよね? 社長が訴状を受け取らないってありえるんですか?

    木下: 社員の方が受け取ってもいいんですけどね(笑)。でも、何回送っても訴状を受け取ってくれないんです。自宅に送ったら、今度は古い住所だということで戻ってきて。結局、新しい転居先をこちらで調べて再送付したところ、ようやく受け取ってくれました。

    ──対応としては最悪なパターンですね。

    木下: 心証は良くないですよ。この時点で相手はまともに話し合う姿勢がないと思いました。本当に自分達が正しいと思うのであれば、正々堂々と裁判は受けるべきだと思いますし。

    ──はぐくみプラス側は、どんな言い分を主張してきたんですか?

    木下: 提出してきた資料は稚拙なものが多かったですね。例えば「そもそもオリゴ糖という定義自体が明確ではないので、オリゴ糖が100%ではないという証明ができない」という話とか。何を言っているのかわからない話に終始していました。

    100パーセントではないという証明はできません。

    ──それって「カレーの定義が明確ではないから、カレーが辛いとは証明できない」って話に似ていますね(笑)。揚げ足取りというか、論点がずれているというか。少なくとも誠意のある主張ではないですね。

    木下: おそらくオリゴ糖の製造をOEMで外部に出していると思うので、成分や製造の知識をほとんど持ち合わせていなかったんだと思います。でも、裁判は結審まで主張を続けられる権利があるので、結局、相手の稚拙な言い分に最後まで付き合うしかありませんでした。

    ──判決が出るまでの道のりは大変だったんですね。

    木下: 最終的には、当社で分析をした「はぐくみオリゴのオリゴ糖の純度は53.29%」という主張が認められて、ようやく判決に至りました。

    偽装表示を発見した場合の対処法

    当事者間で解決を図る
    他社の偽装表示によって営業上の利益を侵害されている場合、営業上の利益を侵害される恐れがある場合には、偽装表示の行為者に対し、警告状を送り、侵害行為を止めるよう交渉する。

    裁判所以外の期間を利用して解決を図る
    第三者に調停人となってもらい、当事者間の合意によって紛争を解決するのが「調停」。第三者に仲裁人となってもらい、仲裁人の判断によって紛争を解決する「仲裁」などの手続きを利用して、偽装表示をやめてもらったり、損害を賠償してもらう。調停や仲裁は、弁護士会の紛争解決センターなどが実施している。

    裁判所の手続きを利用して解決を図る
    他社の偽装表示によって営業上の利益を侵害されている場合、営業上の利益を侵害される恐れがある場合には、その差し止めや損害賠償を求めて、裁判所に訴えを提起する。

    捜査機関に刑事事件の追及を求める
    不正の目的で誤認惹起行為を行った者などには刑事罰が科せられる。偽装表示を発見した場合、警察や検察庁に対して刑事責任の追及を求めることができる。

    なぜ訴訟に踏み切ったのか

    ──木下社長の話を聞いて、改めて裁判はお金も手間もかかると思いました。しかし、それがわかりながらも、なぜ訴訟に踏み切ったんでしょうか。

    木下: 私も争い事は好きではないんです。競合よりもお客さまのほうを見て、全力で仕事をしたほうがプラスになりますから。でも、はぐくみプラスがオリゴ糖の純度が50%程度しかない自社商品を、純度100%と謳って販売し続けることは、巡り巡って、当社ではなく、お客さまが被害者になるのではないかと思うようになったんです。

    ──市場そのものが消費者から信頼されなくなったら、それこそ真面目に商売をやっている会社の商品も売れなくなりますからね。

    木下: ディズニーは著作権が厳しいことで有名です。しかし、それは自分たちの権利を独り占めにしたくて厳しくしているのではなく、お客さまのことを粗悪品から守るために厳しくしているんです。この裁判があるまでは、私もディズニーの著作権に対して、「厳しいな」と思っていました。でも、実際に自分がお客さまを守る立場になって、権利を守ることがお客さまを守ることにつながるんだということがわかりました

    ──自社の利益だけを考えたら、裁判を起こすことは割が合わないですからね。

    木下: 今回の裁判を機に、当社では「競合模倣対策室」を設置することにしました。社内弁護士2人体制で模倣品や虚偽の広告などの監視を行っています。市場を開拓した先駆者として、今後もお客さまを粗悪な商品から守る活動は続けて行こうと思います。

    後編「弁護士に全力で戦ってもらうために必要なこと」「もしも訴えられる側になったら」(3/24公開予定)に続く

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    竹内 謙礼
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