好調のI-ne、ECモール事業。Amazon、楽天、LINEヤフーの担当者3人が語るI-ne流の運用術 | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2024年7月31日(水) 08:00
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EC事業が好調に推移しているI-ne。国内3大モールでも顕著な実績をあげている。それぞれのモールの担当者に成功の秘訣をインタビューした

「BOTANIST」「SALONIA」などで知られているI-ne(アイエヌイー)では、優秀店舗を表彰する「Amazon」、「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」のアワードを受賞するなど、モール事業が好調だ。2023年12月期(通期)連結決算の国内ECモール売上は前年同期比32.7%増で、全体の増収に貢献。各ECモール店舗の責任者にモール運用成功の要因を聞いた。

国内ECモールのアワード受賞

  • LINEヤフー主催の「Yahoo!ショッピング Best Store Awards 2023」:「コスメ、美容、ヘアケア部門賞」の第3位
  • 楽天グループ主催の「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー 2023」:「スーパーDEAL賞」を受賞
  • Amazon主催の「Amazon.co.jp 販売事業者アワード」:ヘルス・ビューティー部門の「カテゴリー賞」を受賞
I-ne流、国内ECモール運営とは ヤフー店舗は顧客目線のコミュニケーション設計+モール研究が奏功

――まずは、「Yahoo!ショッピング」の運営について教えてください。

佐藤 誠彦氏(Yahoo!ショッピング責任者)「Yahoo!ショッピング」でのI-ne出店店舗の受賞は今回が初めて。LINEヤフーの表彰は、1年間の売り上げ、お客さまからの評価、LINEヤフー、「Yahoo!ショッピング」運営側の評価で選出されます。I-neの商品をラインアップする店舗「and Habit(アンドハビット)」が「コスメ、美容、ヘアケア部門」の3位となりました。

I-ne ダイレクトマーケティング本部 ECグロースハック部 佐藤 誠彦(さとう まさひこ)氏【「Yahoo!ショッピング」責任者】
I-ne ダイレクトマーケティング本部 ECグロースハック部 佐藤 誠彦(さとう まさひこ)氏【「Yahoo!ショッピング」責任者】
2021年、I-neに新卒入社。「楽天市場」出店店舗の運営を担当したのち、現在は「Yahoo!ショッピング」「Qoo10」の店舗責任者を務める。大学時代は、自身でアパレルEC事業、イベント事業を経営。徳島県出身。

佐藤氏:「Yahoo!ショッピング」内で自社ブランドの認知や売り上げを拡大するために、「Yahoo!ショッピング」ならではの特徴や、他のモールとの違いを分析しました。アルゴリズムの理解や、チャレンジングな施策を繰り返して、PDCAを回しながら、効果の高いアクションを分析し続けたことが売り上げが伸びた要因だと考えています。2023年1~12月の売り上げは、当初の目標の約1.3倍になりました。

「Yahoo!ショッピング」でお客さまが買いたいと思う動機付けを分析し、モール側が打ち出す企画をキャッチアップして、スピード感を持ってアクションに落とし込むことを意識してきました。このことが受賞にもつながったと見ています。

「Yahoo!ショッピング Best Store Awards 2023 」にて、コスメ、美容ヘアケア部門賞を受賞した(画像中央は佐藤氏)「Yahoo!ショッピング Best Store Awards 2023 」にて、コスメ、美容ヘアケア部門賞を受賞した(画像中央は佐藤氏)

――「Yahoo!ショッピング」の店舗責任者を担った2022年当初、どのような課題がありましたか。

佐藤氏課題はリピート率でした。このため、既存のお客さまが離脱してしまうのをいかに防ぎ、リピーターとして戻ってもらえるかを意識してきました。たとえばメルマガやLINEの配信は、お客さま目線に立ち、「どのようなメールやLINEが届いたらクリックしてもらえるか」「I-neからのLINEを楽しみに待てるか」といった視点を持つことです。商品そのものの訴求もしつつ、ブランドそのものを好きになってもらえるようなアクションを心がけました。

旧ZホールディングスとLINEは2023年10月にLINEヤフーとして新しいスタートを切りましたが、その影響を見越してLINEの施策に力を入れたり、CRM施策の強化にも取り組んできました。

実際、LINE経由の売り上げも当初計画した売り上げを数倍高めることができました。事前情報や「Yahoo!ショッピング」の店舗コンサルタントと戦略を落とし込み、「Yahoo!ショッピング」ならではの優位性をしっかり捉えられたことが奏功したと思います。

たとえば、セール「超PayPay祭」のときはお得に買えるタイミングを楽しみに待ってもらえるようなクリエイティブやクーポンの配布を打ち出し、お客さまの購買意欲が高まるタイミングを逃さないようにしました。

顧客の購買意欲が高まる訴求やクリエイティブを追求顧客の購買意欲が高まる訴求やクリエイティブを追求

――「Yahoo!ショッピング」では、ヤフーが定める一定基準を満たした出店店舗の商品ページや検索結果に「優良配送」アイコンを表示するといった特徴がありますが、どのように対応していますか。

佐藤氏:お客さまによる引き合いダウンを防ぐため、「優良配送」表示にはマストで対応するようにしています。

「Yahoo!ショッピング」での工夫を語る佐藤氏「Yahoo!ショッピング」での工夫を語る佐藤氏
Amazonでは「データの可視化」「検索順位」「セール強化」を意識

――Amazonについて教えてください。

木野 皓生氏(Amazon担当):ECグロースハック部のキープラットフォーム2課に所属しています。2024年からは2課の課長を務めながら、AmazonとZOZOTOWNの責任者をしております。

I-ne ダイレクトマーケティング本部 ECグロースハック部 木野 皓生(きの ひろき)氏【Amazon担当】
I-ne ダイレクトマーケティング本部 ECグロースハック部 木野 皓生(きの ひろき)氏【Amazon担当】
2022年、I-neに新卒入社。2024年よりキープラットフォーム2課 課長に就任。Amazonを中心に複数販路の責任者を務めつつ、ミニマル美容家電ブランド「SALONIA(サロニア)」、新ヘアケアブランド「Qurap(キュラップ)」新規D2Cブランド「murphy(マーフィー)」のECを担当。

――「販売事業者アワード」での受賞は今回が初めてとなりました。成果につながった施策はどのようなものですか。

木野氏:主に3点あります。1点目は、チェックするべきデータの可視化です。Amazonにおける流入、CVR、客単価、広告各指標などのデータがこれに該当します。Amazonは何かしらの検索キーワードで流入されてから購入に至るお客さまがほとんど。このため、市場での検索ボリュームや、多く検索されているキーワードを調べて、検索されたときにI-neの商品のSEOの順位や広告状況を定点観測できる社内分析体制を作りました。

それぞれの短期的な指標だけでなく、LTVや新規・定期のお客さまの動向も確認・対策できる体制を整え、長期でもビジネスの状況がポジティブかどうかも重視して運営する両軸の運営ができる体制への転換に尽力しました。

「Amazon.co.jp 販売事業者アワード 2023」ではヘルス・ビューティ部門のカテゴリー賞を受賞「Amazon.co.jp 販売事業者アワード 2023」ではヘルス・ビューティ部門のカテゴリー賞を受賞

木野氏:2点目はアクションの高速化と資産化です。1点目でデータの可視化ができるようになったことで、「どこが1番ボトルネックで、どこに伸びしろが1番あるのか」の把握が早くなり、アクションに割ける時間も増えました。同時に、重要度の高い課題に対して優先的にアクションをすることで、結果への反映も早くなりました。

LPの改善による「資産化」にも注力しました。前年までと比べて10倍以上のABテストを試行することで、競合が模倣することが困難な資産(ABテストから得られた結果)を積み重ねることができ、かつセールや広告の投資効果を最大化させることにもつながりました。

3点目はAmazonセールに対する取り組み強化です。Amazonはセールがうまくいくとセール後のベース売上が向上することが多くあるため、セールのときはなるべく多くの広告コストや在庫を積んで、大きな売り上げの山を意図的に作り出すことも重視した運営をしました。

セール時にはECモール内だけでなく、デジタル上のお客さまとの各タッチポイントからの流入も図るために他部署とも連携して、それぞれのブランド全体でセールに注力するようにしました。

――3つの改善点は、木野さんが担当される以前は、Amazonの運用において重要視されてこなかったのでしょうか。

木野氏:重要視してこなかったというよりも、「しきれていなかった」と思います。一番優先して実施するべき施策が何かは、担当者によって分析の仕方や粒度が異なるため、実際のアクションよりも、膨大なデータを整理する業務に追われていたと思います。

その改善のためにデータ分析を標準化して、アクションに時間を多くあてられるようになったことが好循環につながりました。それにより、LP改善などの緊急性は低くとも重要性が高いアクションや、ブランド全体を巻き込んでのセールに向けたアクション、さらには商品自体の改善など、消耗戦にならずに本質的な取り組みに注力できるようになってきました。ポジティブな変化ができていると感じています。

Amazon販路の2023年1~12月の売り上げは、当初の目標の約1.3倍となりました。

Amazon販路を担当する木野氏Amazon販路を担当する木野氏

――Amazonでは、ユーザーの検索結果に対して「自社商品がいかに上位に表示されるか」がキーファクターになりやすいです。どのような取り組みをされていますか。

木野氏:検索キーワードで上位にランクされるワードは、広告出稿を細かく調整して、なるべくコストを抑えてランキングの上位を取れるようにチューニングしています。

また、Amazonでは「このキーワードの場合、この商品とすごく関連性があると見なされる」といった一定の特徴があるため、商品ページに関連性の強いテキストを盛り込みつつ、日々の広告動向を常に商品ページで確認するといった取り組みを愚直に行ってきました。

「楽天市場」では広告のインハウス化+PDCA高速化で施策をスピードアップ

――「楽天市場」について教えてください。

森 麻利央氏(楽天市場担当):佐藤さんと同じキープラットフォーム1課の課長で、「楽天市場」の店長とともに、「楽天市場」店全体の運営や中長期戦略を担っています。

I-ne ダイレクトマーケティング本部 ECグロースハック部 森 麻利央(もり まりお)氏
I-ne ダイレクトマーケティング本部 ECグロースハック部 森 麻利央(もり まりお)氏
企業による、優秀な自社の退職者を中途採用する人事施策「アルムナイ制度」で2022年にI-neに再入社。前回の在籍時は2015~2018年。「BOTANIST」初速の時期に在籍し、ECビジネスからブランドマネジメントまで幅広く経験した。現在はキープラットフォーム1課 課長に就任し、モールの成長拡大・新規販路拡大を務めている。

――「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」の受賞は4年ぶりとなりました。 

森氏:これまでの受賞歴としては、総合賞で6位、ジャンル賞で「生活家電ジャンル賞」、サービス賞で「ラ・クーポン賞」を獲得してきました。

ポイント高還元サービス「スーパーDEAL」を積極的に活用したショップに贈られる賞、「スーパーDEAL賞」を受賞した今回の評価ポイントは2点あると見ています。

広告をインハウス化したことと、施策のPDCAを強化したことです。店舗、ブランド、SKU別でKPIを設定し最適化したことにより それぞれの費用対効果が把握できるようになりました。これにより、効率的に広告投資ができるようになったことでROAS(ロアス)の改善につなげられています。

「楽天市場」出店店舗の2023年1~12月の売り上げは、当初の目標の約1.5倍に上振れしました。

「& Habit(アンドハビット)楽天市場店」が【楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー 2023】の「スーパーDEAL賞」を受賞した「&Habit(アンドハビット)楽天市場店」が【楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー 2023】の「スーパーDEAL賞」を受賞した

――「楽天市場」におけるPDCAの高速化とは。

森氏:売り上げを作りやすいのは、「楽天市場」が主催するセールイベントに参加すること。セールでの売り上げを最大化するためには、毎回同じ施策を打っていくよりも、毎月新しい施策をプラスアルファで打ち出していくことがポイントになってくると思っています。それを振り返ってPDCAを回すことで売り上げの最大化を図っています。

「楽天市場」での取り組みを語る森氏「楽天市場」での取り組みを語る森氏

――「楽天市場」では、平均して、セールが毎月2回ほどあります。セールに向けて毎月多忙な状況のなか、高速でPDCAを回すためにどのような取り組みをされていますか。

森氏:セール企画が走り出した翌日からは、「今回のセールでこの施策が失敗したとしたら、次のセールではどういうことをしようか」という会話がチーム内で自然に行われています。

また、セールを中心としたPDCAのほかに、中長期の戦略も意識しています。このため、施策を行う1か月半~2か月ほど前から、「各ブランドでどのような訴求をするか」「販路全体でどのような見せ方をしていくか」「既存のお客さまに対する施策はどうするか」といったテーマを、販路担当者と会議を続けながら施策を決めています。

――「楽天市場」では、SKU対応による商品管理への移行、出店者向けのクーポンサービス「ラ・クーポン」有料化など、モールのそのものが過渡期を迎えています。どのように対応していますか。

森氏:2024年の「楽天市場」の変革を背景に、I-neの店舗でも2023年からUXの改善に取り組んでいます

SKU単位の商品登録・保持を行う「楽天SKUプロジェクト」は、1つの商品からテストして、手探りで改善点を探りながら他の商品にも広げてきました

クーポンの有料化はコスト面でネガティブな部分もありますが、現状よりもお客さまのセグメントがしやすくなるという利点もあるので、従来以上に新規のお客さまや既存のお客さまに対して、最適なクーポンを提供できるようになると感じています。

ダイレクトマーケターとして俯瞰的な視点が養われる「M.D.M」

――今回はI-neのモール戦略とともに、I-neが独自に構築している社内人材育成システム「Master of Direct Marketing(M.D.M)」を受講されています。「M.D.M」の成果と、生かせていることを教えてください。

森氏:「M.D.M」のカリキュラムには、自分のスキルや知識のレベルを点数形式でチェックできるオンラインテスト「スキルクエスト」というものがあります。これを通じて自分の今の実力をいつでも把握できるので、自らの中長期目標に対して何が足りないのか、どこを伸ばせば目標にたどり着けるのかを都度、認識できています。

また、「M.D.M」の受講者向けに月に一度社内勉強回が開催されており、そこではECだけでなく、営業、ブランディング、経営など、さまざまな視点の内容をインプットすることができるので、自分の課や担当しているモールの店舗で実行できそうなことを取り入れるようにしています。

「M.D.M」では受講者それぞれの実力を可視化してダイレクトマーケティングの知見を深める仕組みをとっている「M.D.M」では受講者それぞれの実力を可視化してダイレクトマーケティングの知見を深める仕組みをとっている

――森さん自身が今後、成長していきたいことや抱負は。

森氏マネジメント業務に磨きをかけていくことと、自身が携わっているEC販路を通じて、I-neの商品をお客さまに広く届けていきたいと思っています。課長職に就任した現在、自分の考え方や行動次第でチャレンジできる環境だからこそ、他のメンバーにも仕事を通じてI-neでチャレンジすることを楽しめる環境作りを行っていきたいです。次の人材を育てていけるヘッドでありたいと思っています。

D2Cの理解が深まり、ブランド運用に好作用

――木野さんは「M.D.M」の成果をどのように捉えていますか。

木野氏スキル面・マインド面それぞれで成長できていると感じています。ECモールは、そもそものプロダクト、集客、ページでの訴求、CRM、広告の費用対効果など、複合的な要素が絡み合ってお客さまの購買行動が決まる売り場となります。優れたダイレクトマーケターをめざす「M.D.M」のカリキュラムや、「M.D.M」のプログラムの一環で、他部署や外部講師を招いた講義を受講したことにより、物事に対する俯瞰的な考え方やマインドがインプットされてきたと感じます。

――特に自身の成長を感じているのはどのようなところですか。

木野氏:特に、他部署に対する理解が深まってきたと思います。PR、物流、ファイナンス、商品開発、ブランディングといったさまざまな観点で他部署の方と深い会話ができるようになりました。自分が担当している、スキンケアのD2Cブランド「murphy」においてもブランドの運営に生かせています。

――今後めざしていくことは。

木野氏:今後めざしていることは、Amazon販路では、I-neがお客さまにとって「Amazonに強い企業」の第一想起になりたいと思っています。そのためには、ECメンバー全員がAmazonに詳しいスペシャリストになり、「M.D.M」を通じてダイレクトマーケターになるための網羅的な知識を身につける必要があります。まずは自分自身がAmazonのスペシャリストとD2Cのゼネラリストの両立をめざしていきたいと思います。

そして、将来のキャリアプランとしては、I-neを代表するマーケターとして、ECに強みを持つブランドを育成できるリーダーになりたいと考えています。

マネジメントについても勉強しているところなので、「D2C/デジタル」「ブランドマーケティング」「マネジメント」の3つの領域で自分の価値を見いだしていきたいです。

すべてのECモールで「勝てる」人材をめざす

――佐藤さんは、「M.D.M」受講の手ごたえと今後の抱負について、どのように感じていますか。

佐藤氏:「M.D.M」については2点あります。まず、ダイレクトマーケターになるための考え方を学べたこと。「なぜ商品が売れるのか」「お客さまがこの商品を買いたいのか」を明確に理解して、しっかりアクションや施策に落とし込むのはマーケターとして必要不可欠です。お客さま目線に立ったとき、どのような商品で、どういった導線だったら買いやすいのか、買ってくれるのか――という視点を持てるようになったことは、「M.D.M」を受けて良かったと思っています。

2点目は視座が高くなるというところです。外部の講師を招いて話を聞いたりディスカッションしたりすることで、自分の視座が高くなったと感じています。自分が主語ではなく、会社が主語になって、そこから戦略や戦術が生まれてくるような感覚を得られました。

自身の成長戦略については、「すべてのモールで勝てる人材」になりたいと思っています。

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オリジナル記事:好調のI-ne、ECモール事業。Amazon、楽天、LINEヤフーの担当者3人が語るI-ne流の運用術
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