ウェザーニューズが発表した「猛暑見解2024」によると、2024年の夏(7~9月)の気温は全国的に平年より高く、観測史上最も暑くなった2023年の夏に匹敵する猛暑となる可能性があるという。7月7日に静岡市では40度を観測し、国内では2024年初となる40度越えを観測。都内でも連日最高気温が35度前後となるなど、危険な暑さが続いている。もはや35度以上の猛暑日が続いたり40度を超える日があるのが夏の“ニューノーマル(新常態)”となりつつあるが、猛暑はECにどう影響を与えるか。2024年の猛暑下のEC消費動向について考察する。
猛暑と消費の関係は?「気温の上昇が常に消費を押し上げるとは限らない」
観測史上最も暑くなった2023年夏、消費全体の動向はどうだったか。2023年7~9月期の実質GDPにおける個人消費は前期比0.2%減。第一生命経済研究所の新家義貴氏は6月27日発表の経済分析レポート「猛暑・酷暑と個人消費~暑過ぎる夏が消費を冷やす?~」のなかで「猛暑効果」について、夏場の個人消費を刺激すると言われることが多いものの、「気温の上昇が常に消費を押し上げるとは限らない」と指摘した。
2024年はどうなるか。2024年夏を取り巻く状況として物価高の影響が大きい。帝国データバンクの調べによると、7月は食品411品目で値上げ。引き続き家計には厳しい環境が続く。今後も猛暑による生育不良などで野菜価格が上昇する可能性があり、家計支出に影響を及ぼす可能性がある。
一方で、賛否はあるものの政府による「定額減税」「酷暑乗り切り緊急支援」といった負担軽減策がある。小売業としてはポジティブな「猛暑効果」発現の後押しになることを期待したいところだ。
2024年は「巣ごもり」の夏になる可能性
そんななか、マーケティング支援などを手がけるLifeTimeTechLaboが実施した「猛暑の行動・消費への影響に関する意識調査」によると、2024年は「巣ごもり」の夏となりそうだ。
調査では、2024年の夏が2023年に匹敵する猛暑となった場合に増えると考えられる「行動(時間)」について聞いた。高いものから、「在宅時間」(31.0%)、「ネット配信動画の視聴」(22.7%)、「ネットショッピング」(20.1%)、「テレビ視聴」(19.1%)と続いた。一方、「減る」ものとして、「外出頻度」(36.1%)、「運動・スポーツ」(27.9%)、「友人・知人とのお出かけ」(27.1%)だった。EC業界として巣ごもりによって「ネットショッピング」の行動時間が約20%増える見込みがあるという部分に注目したい。猛暑による「巣ごもり需要」にはチャンスがありそうだ。
LifeTimeTechLaboの調査によると在宅時間増+ネットショッピングにかける時間が増えるとい
また円安や物価高の影響もあり、この夏の旅行動向も昨年より鈍くなりそうだ。JTBが7月8日に発表した調査では、この夏休みの旅行意向は「行く」が前年比2.4%減の34.1%となった。7月26日からはパリオリンピックが開幕する。猛暑に加えてこれらもこの夏の「巣ごもり」を後押ししそうだ。
JTBの調べでは今夏の旅行意向は前年比で2.4%減に
そんな夏の「巣ごもり消費」で注目したいのが、「暑さ対策」と「食品」、「おうちレジャー」だ。
暑さ対策、食品
エアコンについては6月の時点で家電量販店で好調。エディオンの6月の月次売上速報によるとエアコンの商品受注売上は前年比27.4%増。ヤマダホールディングスでも6月はエアコンが好調だったという。イエナカの暑さ対策として、接触冷感の寝具や服といったアイテムもこの猛暑で需要増が期待できそうだ。
LifeTimeTechLaboの調査では、猛暑の影響で消費の変化が増えるものとして「水道光熱費」(51.4%)、「食費・飲料費」(23.7%)といった回答が上位になった。「巣ごもり」による外出控えは外食機会も減るとみられ、「節約」「自炊」といった訴求で食品関連のECはニーズを拾っていきたいところ。また猛暑による外出控えから、フードデリバリーやネットスーパーなどの利用動向にも注目したい。
LifeTimeTechLaboの調査で2024年夏に増える支出のツートップは「水道光熱費」「食費・飲料費」
おうちレジャー
コロナ禍の夏のヒットをひも解いてみたい。「Yahoo!ショッピング」では2021年、「家庭用プール」の取扱高がコロナ禍前の2019年から4倍になったという。2024年夏もこうした「おうちレジャー」関連の需要増に期待したい。
また、2024年の夏はパリ五輪の「おうちレジャー」消費も期待したいところだ。エディオンでは「テレビ」の6月の商品受注売上が前年比16.1%増となった。パリ五輪にあわせた買い替え需要も発生していると見られる。食品など関連消費も上手く取り込みたいところだ。
「巣ごもり」以外の需要
暑さ対策の定番アイテムとなった「日傘」「日除け帽子」「接触冷感服・機能性インナー」「携帯扇風機(ハンディファン)」「ネックリング、冷却タオル」は今夏も需要が高そうだ。楽天グループでは、「日傘」「日焼け止め」「子ども向け暑さ対策アイテム」は楽天市場において流通額の大きく伸びている注目アイテムという。
「楽天市場」における日傘の流通総額は2019年からの4年間で約4.3倍に拡大。なかでも同期間における男性による購入は約23.8倍と大きく伸長した。男性向けの日焼け止めも2023年の流通総額は前年比約3.8倍、日焼け止め機能を持つBBクリームは約4.3倍となっている。男性向けを中心に日焼け対策全般のグッズにチャンスがありそうだ。
子ども向けの暑さ対策も、日常的に使用するアイテムに冷却機能などを追加できる商品が人気。ランドセルパッドの2023年における流通総額は前年同期比で約1.7倍、ベビーカー保冷パッドは同約1.2倍となった。日傘は子ども用も同約1.3倍と伸びたという。
物価高などネガティブな要因もあるが、この夏の猛暑による「巣ごもり消費」を上手く取り込みたいところだ。気温の推移を含め、動向を注視したい。
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オリジナル記事:猛暑はECにとってビジネスチャンスか?ニューノーマルになりつつある“猛暑”のネット通販消費を考える
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