スピーディーな配送サービスの提供は、いまやEC事業者に不可欠です。多くの事業者はすでに、業務効率と顧客満足度を向上させながら、スピーディーな配送ニーズに対応しています。EC事業者はコスト、スピード、ブランドの信頼性を保つなどの要素を考慮しながら配送戦略を計画し、適切な物流パートナーを選択することで、自社の成長を促進し、顧客ロイヤルティを長期的に育成しなければなりません。
複数の配送オプションの提供でニーズに柔軟対応
昨今のEC市場では、消費者のニーズの変化と激しい市場の変化によって、多くの企業がよりスピーディーな配送サービスの提供に力を入れています。最近のある調査では、配送が遅いと感じることを理由に、消費者の23%が注文をとりやめてしまうという調査結果がありました。顧客離れ防止と顧客満足度において迅速な配送が重要な役割を果たしていることが浮き彫りになっていると言えます。
昨今の配送手法は多面的で、物流会社は配送のタイムスケジュールや荷主の予算に合わせてさまざまな配送メニューを提供しています。その一例をあげてみます。
- 標準配送(エコノミー配送):荷主が最も配送コストを抑えられる配送メニューで、注文から通常5日~7日に荷物が届きます
- 陸上配送:配送費用と荷物が届くスピードのバランスが取れている配送メニュー。注文から通常3日~5日以内に荷物が届きます
- スピード配送:注文から1日~2日以内、場合によっては3日以内の配送を保証します
- エクスプレス配送:注文から1日~2日以内のスピーディーな配送を保証するメニュー。「スピード配送」よりもさらに迅速な配送を求めるニーズに応えます
ただし、これらのサービスの定義は、運送会社、地域、小売事業者によって異なり、統一された基準はありません。物流事業者は、市場のさまざまなニーズに柔軟に対応するため、複数の配送オプションを提供しているのです。
小売事業者は、自社のリソースと顧客の需要のバランスを見て、自社の物流戦略にスピーディーな配送スキームを組み込みます。
多くの場合、費用感を抑えられる「エコノミー配送」から、最も速く届く「エクスプレス配送」までの幅広いサービスを提供することで、業務を合理化し、配送にかかるコストを効果的に管理しています。
EC事業者が配送のスピードアップにこだわる理由
EC事業者は、速く届く配送が顧客にとって魅力的なことを理解していますが、それを実現するためのコストは大きな負担となる可能性があります。EC事業者はこのコストを追加で工面することと、スピーディーな配送による顧客満足度やロイヤルティアップといった潜在的なメリットとを天秤にかけ、ちょうど良いバランスを取ることに努めています。
EC事業者がスピード配送を自社のロジスティクスに組み込む主な理由は次の通りです。
顧客からの期待値に応える
スピーディーな配送の提供は、顧客に商品が届くタイミングや、ブランディングが極めて重要となる特定の分野にとって不可欠です。
具体的には、ヘルスケアやパーソナルケア、生鮮品、イベント関連商品、ギフト、詰め合わせの定期購入品などのカテゴリーが該当します。これらのカテゴリーの商品を提供する事業者は、顧客のニーズに応えるために迅速な配送が求められます。
一例をあげると、高価格帯の商品を扱う業界では迅速な配送が大きなメリットをもたらします。宝飾品、デザイナーズファッションのアパレル商品、高級電子機器などの高額商品は、顧客満足度を維持し、ブランドの威信を維持するために、迅速に配送する必要があります。高価格帯の商品を購入する顧客は、「高い買い物をした」という購入体験の一環として、注文した商品が迅速に手元に届くことを期待しているからです。
スピードの速い配送は、顧客のこのような潜在ニーズに応え、ブランドへの信頼感に貢献するため、ひいては小売事業者の評価を高めることになります。
市場での優位性アップ
スピーディーな配送は、消費者からのニーズに応えるだけでなく、競争の激しい市場において、ビジネスの差別化にも役立ちます。迅速に商品が届く配送メニューを提供することは、標準的なスピードの配送を上回る、優れたサービスを提供できることに直結し、他社との差別化を図ることができるからです。
配送のプレミアムサービスを設けることもその1つ。顧客ニーズを満たす企業の姿勢を示すことでブランドロイヤルティを育むことができます。さらに、顧客にリピート購入を促すことで、顧客体験が全体的に向上します。競争の激しい市況において、速く、確実に届く配送は大きな強みとなり、顧客体験向上によって企業が他社との優位性を図るのに役立ちます。
企業規模ごとに異なる配送スピードアップのアプローチ
大企業と中小企業では通常、顧客のニーズやマーケティングの戦略は異なるものですが、商品のスピーディーな配送は企業規模を問わず、どの事業者にとっても重要です。
大手は配送サービスへの依存度下がるも、不可欠
大企業は通常、各地に複数の倉庫や店舗を構えているため、顧客に最も近い配送拠点から場所から商品を発送することができます。配送時間が短縮できるので、中小と比べると迅速な配送サービスへの依存度を減らすことが可能です。
とはいえ、保証したリードタイムに間に合うよう注文を処理し、配達遅延のリスクを軽減するには、迅速な配送サービスがやはり不可欠です。特に、注文量が急増する繁忙期には、サービスの品質を維持し、膨大な注文処理に対応するために、迅速な出荷が必要不可欠です。
中小企業では配送サービスが重要な役割
中小企業は、大企業のような広範な物流インフラを持たないため、市場競争で勝ち残るために、迅速な配送サービスに大きく依存しています。倉庫や店舗の幅広いネットワークを持たない中小企業は、その分、配送スピードを物流パートナーに依存しているのです。迅速な配送は物流戦略の重要な要素となっています。
配送パートナーを選ぶための評価ポイント
スピードを重視した配送サービスを提供する、物流のパートナー企業を小売事業者が選ぶ際には、パートナー企業が自社のビジネスニーズを満たすかどうか徹底的に評価することが必要です。主な評価事項は、配送のスピード、信頼性、梱包サイズ、コスト、主要市場のカバー率、カスタマーサポート、顧客ニーズに応えるかどうか――という観点です。
小売事業者に選ばれたパートナー企業は、クライアント企業の物流フローをシームレスに自社サービスに移行し、統合する必要があります。物流大手のFedEx、UPS、USPSのような大企業が自社で確立したサービスを提供する一方で、市場には、クライアント企業の要望に合わせて最適な物流サービスを提供するCIRRO E-Commerceのような競合相手も存在します。
CIRRO E-Commerceは物流サービスやそのオプションの料金をすべて明示しており、FedEx、UPS、USPSで構成される大手3社よりも25~35%ほど物流のコスト効率が高いことで知られています。CIRRO E-Commerceを物流のパートナー企業とする小売事業者は、より手頃な価格設定を実現し、1~3日の迅速な配達時間を維持しながら、98.5%の定時配達順守率を達成しています。
CIRRO E-Commerceの物流拠点の一例
配送はさらなるスピードアップが求められる時代へ
スピードを求められる配送サービス業界は将来的に、物流技術の進歩と、配送サービスを利用する小売事業者の戦略のアップデートによって形作られます。物流業界は、サービスの設計や配送の効率化・スピードアップのために、ますますテクノロジーを活用するようになるでしょう。
リアルタイムの荷物追跡や、ドライバーとコミュニケーションを取れるといったイノベーションによって、透明性や信頼性が高い配送の最新情報が顧客に提供されます。さらに、配送ルートのカスタマイズ機能により、よりパーソナライズされた顧客経験が提供され、配送サービスを提供するプロバイダーは競合他社と差別化されていきます。
昨今の小売事業者は、工場で生産されたら即出荷して消費場所に近い倉庫に置く「前方在庫」と、引き合いの多い商品の在庫を戦略的に消費者の近くに配置する「ハイパーローカルフルフィルメントモデル」に移行しており、配送の迅速化を図っています。
今後はますます効率的な在庫管理が不可欠となり、小売事業者は消費者の需要の変化に迅速に対応し、さまざまな拠点での在庫状況を最適化するようになるでしょう。こうした進歩に伴い、スピーディーな配送は、配送の速さを含めてブランドを信頼する顧客の期待に応えるために不可欠なものとなります。
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