公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)は3月29日、第三者機関である「広告適正化委員会」がまとめた通販広告の表現に関する「2023年度版 通販広告実態調査報告書」を公開した。
JADMAでは通信販売におけるトラブル防止と広告表現の改善を目的として「広告適正化委員会」を設置、通信販売広告に関する調査と広告表現の評価検証を行っている。
問題のある広告手法の類型として「不適正な比較広告・No.1表示」「虚偽が疑われる商品の体験談や使用者の写真」「誤認を与えるカウントダウンタイマーや在庫表示」の3パターンを列挙。JADMAは次のように注意を促している。
これらの広告手法がある種のフォーマットとして業界に伝播していることが懸念される。これらの広告手法を使用する場合には、通販事業者のみならず、広告代理店等、広告の制作等に関与する事業者も特に注意が必要である。
不適正な比較広告・No.1表示
「〇〇ランキングNo.1」といったように比較広告で商品・サービスの優良性・有利性を訴求する広告手法。
比較の根拠となる調査内容が恣意的であるにもかかわらず、あたかも公平な調査に基づく比較であるかのように表示するケースが散見された。
自社の商品・サービスがNo.1となるよう自社に有利に調査の条件などを設定する等の恣意的な調査(いわゆる「結果ありきの調査」)であるにもかかわらず、公平な調査に基づくかのように表示する場合には、調査の条件等を正確かつわかりやすく記載しない限り、不当表示に該当する恐れがあり、注意が必要である。
虚偽が疑われる商品の体験談や使用者の写真
感想や感想を併記した人物の画像を、商品・サービスの体験談や使用者の画像であるかのように表示し、商品・サービスの優良性を訴求する広告手法。
実際には体験談や使用者の画像が実在しないフィクションであるにもかかわらず、あたかも真正の体験談や使用者の画像であるかのように表示していることが疑われるケースが見られた。
「イメ ージです」などと注記を表示して、体験談や使用者の画像がフィクションである旨の説明を表示している広告も散見されるが、広告を目にする一般消費者にとって体験談や使用者の画像がフィクションであることは想定しないことであり、体験談ではないことや使用者の画像ではないことをわかりやすく記載しない限り、不当表示に該当する恐れがある。
誤認を与えるカウントダウンタイマーや在庫表示
「本日受付終了まで〇時間〇分〇秒」と記載したカウントダウンタイマーや、「残りわずか〇個!購入を急いで」と記載した在庫表示など、販売期間や販売数量を限定することにより、商品・サービスの優良性・有利性を訴求する広告手法。
実際には購入期限がないため無意味なカウントダウンであったり、販売状況に関係なく常に変わらない在庫数が表示されるなどのケースが散見された。
カウントダウンタイマーや在庫表示などの広告手法は、消費者に購入を焦らせることがあり、表示について一般消費者を誤認させる恐れがあると説明。商品・サーピスの優良性・有利性を過剰に強調することがないよう事業者に呼びかけている。
カウントダウンタイマーを表示することにより、あたかも表示された期限以降には商品・サービスを購入できなかったり特典が得られないかのように表示しながら、実際とは異なる場合には、不当表示に該当する恐れがある。
在庫表示についても、あたかも相当程度多数の注文を受けているかのように表示しながら、実際とは異なる場合には、不当表示に該当する恐れがある。
「2023年度版 通販広告実態調査報告書」の調査結果
報告書の調査結果では、問題がある恐れのある広告を媒体ごとに分類。「SNS上の広告」が全体の33.7%、「Webサイト上の広告」が31.4%、「新聞広告・雑誌広告」が19.4%、「チラシ」が7.0%だった。「チラシ」「新聞広告」など印刷媒体の割合の合計は26.4%。
問題がある恐れのある広告の媒体分類
問題がある恐れの広告を商品分類別に見ると、「食品・健康食品・医薬品」が全体の37.0%、「化粧品・美容器具」が28.7%を占めている。具体的には、ダイエット食品や化粧品に関する広告が目立つ。
問題がある恐れのある広告の商品分類別
特定商取引法に基づく必要な記載事項や返品特約などの取引上重要な事項の記載割合は、「付帯費用」「申込期限」の記載が少ない。341件中、「付帯費用」の記載は40.8%、「申込期限」は27.9%にとどまった。そもそも販売時に設定していないケースが多いため、記載していないことが理由として考えられるという。
特定商取引法に基づく必要な記載事項や返品特約などの取引上重要な事項の記載割
問題がある恐れのある広告について、問題があると考えた理由を分類別に見ると、「誇大な性能・効果効能表現」(53.4%)がトップに。「不明瞭な商品内容」(38.4%)、「あいまいな取引条件」(35.8%)、「せん情的な広告内容」(33.1%)が占めた。
問題があると考えた理由
調査概要
- 調査対象エリア:関東およびその周辺エリア7県(群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県)で、各県の人口構成等に応じて人数を設定
- 調査期間:2023年10月2日~15日。調査員が接触したすべての通信販売に関する広告を収集
- 調査方法:公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント相談員協会が協力。消費生活アドバイザーなどの資格を有する一般消費者のなかから調査員を選定し、調査員1人につき広告収集に協力する2人の調査員協力者(サポーター)を配し、3人1組体制で調査を実施した
- サンプル調査:①調査員本人およびサポーター2人の計3人1組が、調査期間の2週間で触れたすべての通信販売に関する広告を収集②調査員の判断により、法令順守や消費者保護の観点から問題があると考えた広告を10件程度選定し、その内容を調査した
- 調査結果:調査員らが2週間で触れた通信販売に関する広告として合計1044件の広告を収集。また、問題があると考えられる広告として、情報が不足している等の不適切なサンプルを除き、合計341件の広告を選定した
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:「比較広告・No.1表示」「体験談」「カウントダウンタイマーや在庫表示」は気を付けて! JADMAが指摘した問題のある広告手法の類型は?
Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.