コロナ禍を契機に、中国の消費者は合理的にオンラインとオフラインで買い物をするようになりました。ポストコロナ時代の新しい消費行動を理解し、中国での新たなビジネスチャンスをつかむために、2022年の「618商戦」(中国EC大手JD.comが毎年6月に行うセールで、他の企業も同時期に大規模セールを実施している)分析から、2023年の対策、最新の消費トレンドを考察します。
「618商戦」から見えてきた個人消費の変化
ビッグデータ分析などを手がけるSyntunの調査によると、2022年「618商戦」期間中のオンライン流通総額は6959億元(約14兆4063億円)で前年実績比8.2%増。
その内訳は、JD.comやアリババといった「統合Eコーマス」の流通総額は5826億元(約12兆608億円)で同0.7%増、ライブコマースの流通総額は同124.1%増の1445億元(約2兆9914億円)でした。
中国の主要Eコマースプラットフォーム(画像:トランスコスモスチャイナが制作)
「618商戦」流通総額(出典:Syntun、画像:トランスコスモスチャイナ制作)
プラットフォームの流通総額ランキングに変化はなく、トップ3はアリババ系、JD、Pinduoduoです。ただ、アリババ系の流通総額は2021年比で減少し、JDとPinduoduoはプラス成長を維持しています。
2022年の「618商戦」全体では過去最高の流通総額を更新しましたが、成長率は鈍化。特に「統合Eコーマス」は0.7%増の成長にとどまっています。その背景には、個人消費が弱い動きになってきていることに加え、消費者がニーズに適したブランド・商品を長期的に利用するための買い物行動が浸透してきていることがあげられます。
2023年はこの「618商戦」の消費動向を踏まえ、全体のサービス向上、顧客基盤の拡大、定期的な顧客データのメンテナンスに取り組み、大型プロモーションへの備えをする必要があるでしょう。
プラットフォーム別消費動向
「618商戦」における統合ECプラットフォームのカテゴリ別売上高と前年比、市場シェア(出典:Syntun Data、画像:トランスコスモスチャイナが制作)
Tmallは「自宅時間を快適に過ごす商品」「ペット関連」が人気
「Tmall」の「618商戦」には、26万を超えるブランドがキャンペーンに参加し、300のブランドが1億元以上の売り上げを記録。「618商戦」に出品された1200万点以上の商品のうち、25%が新商品。出店者が新商品を「618商戦」に合わせて投入し、集客に活用していました。
顕著だったのが、コロナ禍によって「何でも自宅」「高品質で利便性の高い住まい」という消費動向。自宅で過ごす時間が増えたことで、自宅時間を快適に過ごすための家電に人気が集まり、2022年のTmallにおける「618商戦」の大きな大きな消費トレンドとなりました。
Tmallの「618商戦」トレンド商品(出典:Tmall新生活研究所「2022年Tmall 618の新たな消費動向」、画像:トランスコスモスチャイナが制作)
また、ペットカテゴリーの成長も大きな消費トレンドの1つ。先行販売では、ドッグフード、キャットフードのほか、ペット向けの掃除用品、玩具、医薬品、健康食品などの流通総額が前年比2倍以上で伸長。高品質な食品、インタラクティビティを重視したペット用スナック、こだわりのある清掃用具に人気が集まりました。
JDは着実に成長し、即時配送に注力
JDプラットフォームでの流通総額は、前年比10.33%増の3793億元(約7兆8521億円)に達しました。1100以上のブランドが前年比50%以上、780以上のブランドが前年比2倍以上の売上成長を記録しました。
JDの発表によると、デジタル部門は爆発的な成長を記録しました。Xiaomi、Honor、Vivo、OPPOなど主要メーカーの携帯電話の売り上げはセール開始10分で前年比3倍以上を達成し、各携帯電話ブランドの売り上げは過去最高記録を更新しました。
また、在宅時間の増加や快適な自宅時間を過ごしたいというニーズの増加により、エアフライヤーの流通総額は前年同期比300%増、自動掃除ロボットは同500%増、食器洗い乾燥機(食洗機)は同115%増を記録。キッチン家電や清掃家電の売り上げは拡大しました。
また、健康志向関連の消費も伸びました。JDの健康飲料カテゴリーは流通総額が同12倍成長で、プロバイオティクスとルテインカテゴリーはいずれも同4倍以上の伸びを記録しました。
2022年の「618商戦」では、物流の安定性を確保するために、全国15万以上の実店舗から商品を即時配送するサービスを開始、便利でスピーディな配送体験を提供しました。
Pinduoduoは全カテゴリーが高成長
Pinduoduoプラットフォームでは全カテゴリーが大きく成長しましたが、特に家電、家庭用化学製品、美容の流通総額が前年比2倍になりました。
一級都市(上海市、北京市、広州市などの都市)での受注量は例年に比べて急増しました。これまでは下沈市場(中国の3級都市以下の都市および農村)を主なターゲットにしてきたPinduoduoプラットフォームでしたが、2022年の「618商戦」は一級都市の流通総額が同110%以上増加しました。
ブランドの公式旗艦店の売り上げも大幅に増加。2021年の「618商戦」と比較すると124%増加し、売上高1億元以上のショップは3倍に増えました。
Douyinのライブコマースが台頭
「618商戦」でDouyinのECプラットフォームで販売された商品数は約2000万点、総売上高は9億9000万元(約124億円)を超えました。
Douyinライブが好調で、合計4045万時間のライブ配信を行い、183のライブ配信から1000万元(約2億701万円)を超える売り上げを記録しました。
なかでも、koolearn\(新東方オンライン)傘下の「東方甄選」ライブ配信は注目を集めました。英語の知識や文化の提供と物販を融合した生放送が、人々の共感を集めました。この取り組みは、ライブコマースの新たな道と言えそうです。
まとめ
2022年の「618商戦」は過去最高を更新し、コロナ禍でもプラス成長を維持しましたが、成長率は鈍化しています。その背景には、消費環境の弱さのほか、消費者のニーズの変化があげられます。
「ニーズに合わせて適切な商品を購入する」「長期的に利用できる商品を購入する」――こういった消費行動が中国では台頭しています。
2022年の「618商戦」の購買動向を踏まると、販売事業者はこうした消費の変化に対応していくことが重要です。
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オリジナル記事:【中国EC】ポストコロナ時代の新たな消費動向と2023年「618商戦」対策 | 中国の最新買い物事情~トランスコスモスチャイナからの現地レポート~
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