CRMのプロを自社で育成すべき理由とは? 消費行動や市場の変化、ロイヤルカスタマーの育成とCRM施策の基礎を解説 | みんなのCRMアカデミー byライフェックス | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2023年5月22日(月) 08:00
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EC通販事業で必要なことはCRMのプロ育成とロイヤルカスタマーの獲得。その重要性や成功のポイントについて解説します【連載1回目】

原料高騰や送料値上げなどのコスト増、広告規制、定期通販離れなど、通販・EC事業者を取り巻く環境は大きく変化しています。そんな環境下、競合他社と業績で差をつけるには、CRMに精通したスタッフの育成、ロイヤルカスタマーの獲得が鍵になってきます。通販・EC事業の現状、ロイヤルカスタマー獲得のための基礎知識、CRMに注力する前に押さえておきたいポイントについて解説します。

値上げや規制の逆風。“今”の消費者を理解しよう 新規顧客獲得が頭打ちになっている理由

ビジネス環境に目を向けると、以前と比べて新規顧客の獲得が難しくなっています。主な理由としては、景品表示法など広告規制が厳しくなっていること、定期通販モデルが飽和状態になっていること、競争激化に起因した広告単価の上昇があげられます。

さらに原料の高騰、仕入れ単価の増加、商品原価アップ、送料の値上げなどネットショップに関連するコストも上昇しています。

人気ブランドや大手企業であれば、知名度や資本力でその影響を小さくすることはできるかもしれませんが、中小企業は自社独自の工夫や施策を打たないと勝ち残れない状況になってきていると言えます。

そこで、業績維持もしくは向上のために目を向けたいのがCRMの見直しです。コストを抑えて業績を伸ばしたい――となると、CRMに重きを置くことは必然と言えるでしょう。

定期購入の条件の複雑化、解約手続きのわかりにくさ

通販業界では「単品リピート通販」「定期購入」といった用語がありますが、最近ではそれらも含有した「サブスクリプション」「サブスクモデル」がバズワードになっています。この現象は、「定期」というワードへの抵抗感を持つ人が増えているため、事業者側からの発信でバズワード化した印象があります。

では、なぜ抵抗感を持つ人が増えているのか?その要因として、定期購入の条件の複雑さ、解約手続きがわかりにくいといったことがあげられます。

「低価格で購入したつもりが、4回の購入が条件の定期購入契約だった」「初回のみで解約しようとしたが、うまく解約手続きができない」などといった消費者からの相談が増えているのがその証左でしょう(参考:国民生活センター「「定期購入」トラブル急増!!-低価格を強調する販売サイトには警戒が必要!-」)。

法規制の強化という逆風、消費の多様化や顧客ニーズの変化に対応するため、事業者は従来の定期通販の形態から、いつでも解約できる形式の採用定期的な購入を強制しないサービスの登場など、従来の定期購入にはなかったさまざまな選択肢を選べる「サブスク」が広がっています。

また、消費の多様化などから、商品に飽きたり、使いきれず余ってしまったり、違う商品に乗り換えたりするユーザーも増えています。そのため、定期的に買い続けることに魅力を感じなくなってきている消費者も少なくありません。定期購入は少し安く買える、送料が無料になるなどのメリットはもちろんあります。昨今は、店舗回帰の動きもあり、直接手に取ったり目にしたりして他の商品に興味を持ち、商品を切り替えたい顧客も増えてきています。

EC事業者がすべきことは「ロイヤルカスタマーの育成」 ①ロイヤルカスタマーを定義しよう

こうした環境下、通販・EC事業者はどのように売り上げを伸ばすべきなのでしょうか。通販・EC事業者がまず取り組むべきことは、ロイヤルカスタマーの育成でしょう。

ロイヤルカスタマーとは、企業やブランドを信頼し、継続購入してくれる顧客のことを指します。ロイヤルカスタマーの定義は企業によって異なりますが、定期回数、購入総額の両面から考えてロイヤルカスタマーを定義することが一般的です。

CRM プロ育成 ロイヤルカスタマーの獲得 EC事業者がやるべきこと

気を付けたいのが、「思い描くロイヤルカスタマーは、理想ではなく現実を踏まえて設計する」ということ。「送ったメールを全部読み、他の顧客に感想を伝えたりアドバイスしたりする、なおかつ商品をしっかり購入する――これがロイヤルカスタマーだ」と定義することは簡単ですが、このような設計は避けたいところです。

ヒヤリングをするとしっかりとサービスや商品などに意見をしてくれ、事業者はそれをコンテンツや施策に落とし込むなど、一緒に会社を成長させてくれる関係性を持った消費者――。私たちは、これがロイヤルカスタマーであると考えています。

②辞めてしまった理由を確認、それを改善する仕組みを作ろう

新規で入ってきた顧客全員をロイヤルカスタマーにする」という気持ちは重要です。ただ、すべての消費者がロイヤルカスタマーになることは難しい。ですので、その前提の上で、継続率が悪くなって辞めてしまった顧客に対し、何が原因で辞めてしまったのかをヒヤリングを実施。続けていく理由を聞くより、辞めてしまった理由を確認し、定期購入を辞めない仕組みを作ることが重要です。

辞めた理由を改善しないということは、同じ場所からどんどん水漏れするバケツの穴と一緒です。穴を補修し、気持ちよく継続してもらうにはどうしたらよいのか考え、ロイヤルカスタマーを増やしていくことが重要なのです。

新規顧客を獲得し続け、商品を売るのには限界があります。新規顧客が継続していく仕組みを作りましょう。そのためには、新規獲得のマーケティングメンバー、CRMメンバーがしっかりタッグを組んで事業を進める環境の構築が重要になります。

CRMでは「なぜ継続してくれたのか」「どんな広告を見て入ったのか」といった顧客の声を聞き、データを取得できます。そのデータを新規獲得の施策で活用し、顧客に強く響いたワードを広告に採用するなど、マーケティングチームとCRMチームの連携が必要不可欠。このサイクルを回し続けることで、効果の高い言葉で新規顧客を獲得する取り組みができるようになります。

CRM プロ育成 ロイヤルカスタマーの獲得 EC事業者がやるべきこと 顧客の声を聞き、データ活用・分析を行って試作につなげるユーザーの声を聞き、収集したデータを活用・分析して試作につなげる
③解約したくなる理由を排除していこう

継続率を上げるためには「解約したくなる理由を排除する」ことが重要です。

まず解約させたくない人たちをセグメント。解約する前にしっかり解約理由を聞くフォームを用意して、解約理由を集計しましょう。解約する理由をそこで聞くことは難しいかもしれませんが、ある程度の解約理由を集めることで、理由に合わせた改善施策を打つことができます。

解約を電話で受け付ける体制を整えてもよいでしょう。そこからヒヤリングできる不満はサービスを改善する“宝”です。改善を前提とした電話では、消費者は不満などを言いやすい環境と言えます。直接売り上げにはつながりませんが、サービスや商品の改善につながるヒントを拾い上げるチャンスと言えます。

CRM プロ育成 ロイヤルカスタマーの獲得 解約の理由を集計する

たとえば化粧品の定期通販の場合、「商品が余っている」という解約理由であれば、毎日使う方法を提示し、最終的に使い切ることができるようになるコンテンツの拡充、配送サイクルの変更など、改善を行うことができるようになります。

1つひとつ解約したくなる理由を排除していくことで、少しずつ継続率が上がってきます。

CRMツール活用の注意点と求められるCRM思考

CRMの実施に必要不可欠なのがCRMツール。多く散見されるのが、機能を使いきれずメール配信だけのツールになっているケースです。CRMツールは本来、顧客情報の分析に重きを置くべきツールです。

「いつ」「何を」した時に一番反応がよかったか、何をした時に数字が悪くなったのかを分析できます。常に最新の情報に更新され、改善施策をどんどん展開できるのがCRMツール導入後の成果と言えます。

さらにCRMを活用するには、継続率や数字を見るだけでなく、顧客ごとに分析し、課題を洗い出すことも必須です。ツールはあくまで弱点を探し出すものであり、そこからの施策や提案は担当者の頭のなかから生まれるものです。

今求められるCRM思考とは?

CRM担当者に求められるCRM思考は、商品に対する徹底的な理解です。CRMを担当しているということは、既存顧客の代表者のようなもの。顧客に対して商品の特性・弱点などを熟知し、なおかつ顧客のなかで誰が一番購入しているか、名前も把握しておくべきです。

店舗を経営している人たちと同じような気持ちになり、商品そのものと顧客の理解を図っていくことで、CRMの施策のやりがいが生まれます

CRMでは、顧客の継続率を上げるためにも分析や施策への落とし込みが必要になります。つまりツールの導入だけでなく、自社のサービス・商品を熟知し、CRM思考を持った人材に必要なスキルを与えることがベストなのです。

今こそ必要な顧客の信頼獲得戦略、社内CRMプロ育成の重要性とは

CRMは外注に委託することも可能ですが、それはお勧めしません。商品をゼロから設計して作った思い、事業者しか知りえない熱量があるはずですので、内部のCRM担当者を中心に商品への愛などを消費者に伝えるべきだと考えます。

単に「継続率を上げたい」「LTVを上げたい」ということだけを考えていくと、「セットで売りたい」「定期購入で縛りたい」という思考になってしまいます。アウトソースを受託すると、よりその結果を求められるようになるので、外注先はそのような施策に傾注していくケースがあります。

極論ですが、社内スタッフの方が「1回でも商品を楽しんで続けてもらいたい」「効果を実感してほしい」という気持ちを強く持てるので、CRMの外注よりも社内でのスタッフ育成をお勧めしたいです。

綺麗ごとのように聞こえるかもしれませんが、その方が結果的に継続率は高くなることが多いです。だからこそCRMの理想は、社内で自社サービスを熟知した人材をCRMのプロに育成していくことがベストなのです。

EC事業では新規獲得が事業成長のカギになるため、マーケティングに予算をつぎ込み。CRMはオプションのような位置付けで動いているケースが少なくありません。新規を獲得し、それをロイヤルカスタマーに育てていく――CRMチームも会社の中心的な部署、チームになることが重要です。必要な顧客の信頼獲得の戦略であり、他社との業績で差がでてくるのはCRMなのです。

CRMの理解や結果が出るには時間がかかりますが、決して難しいことではありません。

◇◇◇

次回は、顧客のニーズを掴むためのCRMマネジメント手法について解説します。

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