2023年の春も終盤に差し掛かりますが、皆さん花粉症は大丈夫ですか? そんな季節の変わり目にEC業界でも大きな節目を迎えました。
その節目とは......“楽天SKUプロジェクト”の始動です! 「ラクテンエスケーユー?」なんて思った方はいませんよね。2022年8月の「楽天EXPO2022」にて発表され、2023年4月から順次実施されている「楽天SKUプロジェクト」です。
今、「楽天市場」は大幅な仕様変更と内部の店舗管理の見直しの時期。今回の記事は「楽天市場」でショップを運営している事業者に向けて、「『楽天SKUプロジェクト』について知りたい」「プロジェクト開始にあたって何をしなくてはいけないのかを知りたい」という要望に応えます!
そもそも「楽天SKUプロジェクト」とは?
“SKU”とはユーザーが商品を購入し、その通りに業者が在庫からその商品を引っ張り出してくるときの単位のことです。
目的としては、出品されている商品の管理を一元化し、効率的な在庫管理を行うことで、在庫の過剰や不足を防止し、顧客に迅速かつ正確なサービスを提供するなどがあげられます。
さらにかみ砕いてユーザー視点から説明します。
一度、EC/通信販売を離れて、リアルの世界の帽子屋に場所を移します。たとえば、スーパーマーケットを訪れたあなた(お客さん)は、帽子を買うことにしています。
この時、従来のシステムの場合、「帽子」という商品が色やサイズ別(あるいは数量別)に違う棚に陳列されています。ものによってはすごく離れた棚にあります。これではあなたに最適な帽子を探しづらくなってしまいます。一つ当たりの価格も比較しづらいですよね。
では、新しいシステムではどうでしょうか。「帽子」という商品が一つの大きな棚にまとめて陳列してあります。そして、すべての値段のタグには一つ当たりの価格が記載されています。さまざまなサイズ、色が一目でわかります。従来のシステムよりも在庫の管理もしやすく、お客さんにとってもわかりやすくありませんか?
アイテムごとに、一つの商品ページにSKUがまとめられるようになった
これを「楽天市場」に置き換えると、従来のシステムでは商品のサイズ別、数量別、色別に商品ページ(棚)がありました。ユーザーからすれば、同じ商品なのに複数の商品ページがあって煩雑な印象を受けます。
しかし、「楽天SKUプロジェクト」における新しいシステムでは、一つの商品ページにさまざまなサイズ、数量、色のSKUがまとめられています。
※過度にかみ砕いた説明ですので、厳密には誤っている箇所がある可能性もございますが、どうか寛容な目で見ていただけますと幸いです。
SKU単位の商品登録・保持でUI向上を後押し
目的の商品を見つけやすく、購入しやすくなったと先ほど述べたとおり、SKUプロジェクトによってUI(User Interface)は向上すると思われます。今まで分かれていた商品ページが統合・集約され、よりまとまりのある構成となりました。
商品の登録・保持をSKU単位で行うことによって商品の探しやすさや選びやすさを改善する目的があると言えます。
店舗運営者は移行作業が必須
では、EC店舗運営者にとって同プロジェクトの影響はプラスに働くのでしょうか?
公式の発表では、今回の仕様変更に対して各店舗が対応を強いられることはないようです。一方で、ユーザーの利便性を考慮して対応を推奨しているという状況です。
各店舗に新システムへの移行日時が通知されているはずですので、その日までに外部連携システムの移行作業、商品登録の移行作業などを進めることが必要です。店舗によっては一時的に業務が増える可能性はありますが、新仕様の商品ページを充実させることでユーザーのUIや回遊率の向上が期待されます。
まとめると、圧倒的にピンチではなく、正しく対応することでこれまで以上の店舗運営を実現できると思います。
しかし、一つ注意しなければならないのは、楽天SEOアルゴリズムが変更された場合です。
この点も含めて、具体的な変更点や対応策を以降の章で解説します!
「楽天SKU」で何が変わった? ポイントまとめ
ここからは「商品を購入して在庫を管理するときの単位が変わったよー」という点のほかに何が変更したのかを解説します!
商品ページのUI、レビュー表示、商品登録の仕方など「楽天SKU」にひもづく変化は多岐にわたる
主な変更点には以下のようなものがあります。
①商品ページが変わる
これまで「楽天市場」では、同じ商品でも数量、サイズ、色などが異なっていれば、別々の商品ページで表示されていました。ですが、同じ商品ならタイプによらず一つの商品ページで表示され、入れ子となる形で各SKUがまとめて表示されるようになりました。
入れ子の形で各SKUがまとめて表示される(参考:楽天店舗運営Navi)
ここで一つ注視しなければならないことがあります。それは「一つの商品ページにまとめられた商品の元々の商品ページはどうなるのか?」という点です。
もし、旧式のページがそのまま残っていた場合、新式の商品ページに加え、旧式のページからも購入操作ができてしまうかもしれません。これではユーザー側に混乱を招き店舗運営者への問い合わせが増えてしまうというリスクがあります。
再度、新仕様への移行時に旧式のページは自動的に無効となるのか、手動での購入停止設定を行う必要があるのか確認しておく必要があります!
②レビューが変わる
商品への感想や評価をユーザーが書き込むレビューも変更があります。
これまでは同じ商品でも商品ページが違えば、別々のレビュー欄が用意されていました。たとえば、あるジュースの商品の場合、500ミリリットル入りと2リットル入りはそれぞれ別々の商品ページで、別々のレビュー欄が存在します。
しかし、「楽天SKUプロジェクト」以降は、一つにまとめられた商品ページにレビューが集約されるようになります。つまり、500ミリリットルも2リットルも関係なく一つのレビュー欄を共有することになるということです。
ここで、知っておくべきことは「元の商品ページのレビューは引き継がれるのか?」ということです。
ずばり、引き継がれます。過去のレビューはまとめて一つのレビュー欄に記録されるようです。
③商品登録の設定が変わる
これまで「楽天市場」に出品する商品を登録する際には、必須項目のディレクトリIDと任意項目のタグIDを設定する仕様となっていました。
ディレクトリIDとは、1つの商品に1つだけ設定されているものであり、その商品のジャンルを指定しています。これによって、ジャンルを絞り込んで検索することができていました。
タグIDとはジャンルに加えて、ブランド、サイズ、色などの商品の属性を付加するために設定するIDです。
どちらのIDも数字を割り当てて設定するため、店舗運営者にとってわかりづらいものでした。
しかし、新仕様ではタグIDが実際の商品属性(ブランド、サイズ、色など)を使って設定することができるようになり、わかりやすくなります。
④価格表示が変わる
従来の価格表示では、タイプ別の価格しか表示されていませんでした。たとえば、ジュース5本セットで550円、7本セットで760円という全体の価格だけで(しかも別々の商品ページで)表示されていました。
しかし、今後は全体価格だけでなく、セット料金における単体価格も表示されるようになります(しかも同じ商品ページで)。これによって、ユーザーが一目でお得なタイプのSKUを選択することができるようになります。
⑤SEOが変わる?!
末尾に「?!」を付けたのは、SEOの大幅な変更が確定ではないためです。楽天のSEOアルゴリズムは変更され続けているため、その詳細については公開されていません。ですが、SKU単位での管理への移行に合わせて変更されるのではないかと言われています。
SKU単位での商品管理に伴うSEOの変更が懸念される
もしSEOが変わった場合、以下のような影響が考えられます。
ランキングの変動
一つ目の影響は、ランキングの変動です。複数の商品ページが一つに集約されたことで、その商品の売上ランキングは、旧式のどのタイプの商品のランキングを反映しているのでしょうか?
旧式でX、Yで分かれていた商品がZという商品として統合された場合、そのランキングはX、Yのうち旧仕様においてより順位の高かった方の順位を採用するようです。
また、いままで検索結果が上位であった商品がアルゴリズムの変更によって下位に転落または、表示されづらくなるという事態も想定されます。
広告の空振り
二つ目の影響は、広告の空振りです。ユーザー画面に最適な広告を表示するためのアルゴリズムが変更された場合、今までのSEO対策によって作られた広告が通用しなくなる可能性があります。そのような広告費の無駄は費用対効果の低下につながってしまいます。
楽天SKUへの移行前後で広告からの流入数の詳しい変化に注目していくことが大切です。そして、大幅に流入数が減ったときはSEO対策に強い人材に意見と今後の施策を相談することをおすすめします。
EC運営側の対策・準備
では、次に上述のような仕様変更に伴って、「楽天市場」の店舗運営側が準備すること、対処法について解説します。
①商品属性を見直す
商品の登録設定の方法が、タグIDから商品属性に変更になるため、SKUごとに商品属性を割り当てる必要があります。商品属性の割り当てによって自社の商品がより検索結果の上位に表示されるようになります。
また、商品属性の設定は任意ではなく必須項目になりますので、避けられない作業になると思います。
しかし、ECでは出品できる商品数に制限がなく、一つの商品に複数の属性情報がありますので、その作業を完了するには膨大な工数が必要になります。
考えられる対応策としては、自動でタグIDから商品属性への変換を行ってくれるAIツールを導入するか、SEO対策として適切な商品属性を割り振ることができる専門人材を利用するなどが考えられます。
②問い合わせへの対応
商品ページの仕様変更やSKUという基本単位の変更によって、ユーザー側の混乱が生じる可能性があります。それに伴って店舗運営側に多数の問い合わせが発生するかもしれません。
対応策としては、ユーザー画面での大きな変更があった場合にメルマガなどで告知する、問い合わせに対応する人員を多めに確保する、予想される問い合わせを明確にするなどが考えられます。
③SKU用の画像への対応
商品ページごとにサムネイルが設定されていましたが、それに加え、SKUごとに画像を設定しなければならない可能性があります。
商品画像ガイドラインは従来のままですが、店舗によっては、新たに画像の撮影をする必要があるかもしれません。
商品ページの各SKUの画像を表示する箇所が、仕様上、従来の画像では見づらいなどの問題がありましたら対応に迫られるでしょう。
いち早い対応で他社と差別化するチャンス
「楽天市場」という国内最大級のECモールの大規模プロジェクトだけに、皆さんのなかにも不安要素を抱える方もいらっしゃるかもしれません。ですが、ピンチはチャンスの裏返しです(たぶん)!! 対応次第で大きなチャンスにもなり得るのです!
変化の時期だからこその強み
「楽天市場」での店舗運営者は軒並み、今回の仕様変更の影響を受けると思われます。自社も競合他社もフェアな境遇に立たされているのです。
だからこそ、いち早く対応することで他社と差別化をはかり、既存顧客を失うことなく、新規顧客の獲得の機会を得ることができると思います。
変化の時期だからこそ、再度全員がスタートラインに立たされる。その状況がそのまま自社の強みになり得ると思います。
情報収集と人材の確保がミソ
そして、変化の時期に大事なのが、情報収集と適切な人材配置です!
特に、UIの変更、SEOアルゴリズムの変化、広告やランキング表示の変化についての情報収集は欠かせません。
また、タグIDから商品属性への移行作業や増加が見込まれる問い合わせに対応するために臨時的な人員の増強や専門人材の再配置などが必要になってくるかもしれません。
いずれにせよ、強制ではなく、仕様変更への影響が大きい場合にしっかりとした対応をおすすめします。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:【楽天店舗必見】「楽天SKUプロジェクト」に対応できていますか? 新たな店舗管理のポイントまとめ | 「ECタイムズ」ダイジェスト
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