BEENOS代表取締役 執行役員社長 兼 グループCEOの直井聖太です。BEENOSは1999年の設立以来、日本の通販サイト・オークションサイトの海外向け代理入札・代理購入サイト「Buyee」や、日本の通販サイトの商品を世界に発送代行する「転送コム」など、日本と世界をつなぐさまざまな事業を展開し、多くの企業の越境EC事業をサポートしてきました。
越境ECというと「難しそう」とか「かつて中国市場に進出したけど大失敗した」という人もいるでしょう。この連載はそんな人に対し、新たにまたは再び「海外市場にチャレンジしよう!」と思っていただけるような情報をお伝えします。第1回は最新の越境EC事情です。
第3次越境ECブーム到来
2020年、新型コロナウイルスの影響で海外から日本を訪れる観光客がほぼ消滅し、BEENOSもインバウンド事業は打撃を受けました。一方、代理購入サービス「Buyee」では、2020年度の流通総額が前年比48.7%増で過去最高を更新しています。

BEENOSが運営する「Buyee」における越境EC市場規模の推移(2015年度〜2020年度)
「Buyee」の流通額と新規会員登録者数をコロナ以前(2019年10月から12月)とコロナ発生後(2020年1月から3月)で比較してみると、流通額で131%増、会員数で164%増と、コロナ禍でも日本商品の需要は継続。海外からの購入チャネルが実店舗から越境ECにシフトしたことがわかります。

「Buyee」における流通額と新規会員登録者数の推移(2019年10月〜2020年3月)
ここで、日本における越境ECの歴史を振り返ってみましょう。
・第1次越境ECブーム(2008年頃)
日本企業が中国EC市場に進出。一部の企業が華々しい成功を収めた一方、多くの企業が惨敗。撤退を余儀なくされた。
海外発送代行サービス「転送コム」スタート。
・第2次越境ECブーム(2014年頃)
主に中国からのインバウンドによる爆買いが話題に。世界の越境EC市場規模が2,330億ドル突破
・第3次越境ECブーム(2020年〜)
新型コロナウイルスによりEC需要が急増。爆買いの舞台もリアルからオンラインへ
まさに今、第3次越境ECブームのさなかにあると感じています。BEENOSだけの印象ではなく、経済産業省による電子商取引に関する市場調査でも、「世界の越境EC市場は2017年に5,300億米ドルと推計されており、今後も20%超のペースで拡大を続け、2020年には9,940億米ドルに達する」という見通しが掲載されています。

世界の越境EC市場規模(2014年〜2020年)単位:米ドル
越境ECが盛り上がっているのは中国だけじゃない
日本でも毎年話題になる中国「独身の日」。2020年も取扱高の記録を更新。中国ECプラットフォームの最大手・アリババグループ(阿里巴巴集団)の取扱高(GMV)は4,982億人民元。1元15.6円で換算すると日本円でなんと7兆7,719億円です。伸び率は前年比85.6%増ですから、その勢いは計り知れません。
輸入商品部門で上位に食い込んでいる日本企業もあり、中国が世界最大の市場であることは間違いありませんが、注目すべき市場は他にもあります。「Buyee」の落札UU(ユニークユーザー)を前年と比較したところ、東南アジアが2.14倍、アメリカが2.82倍、ヨーロッパは2.85倍という結果になりました。

「Buyee」におけるエリア別購買ニーズの伸長率(2020年1月〜9月)
BEENOSでは2020年1月1日から9月30日の「Buyee」の売上データを元に、世界各エリアで売れている商品を調査しました。伸長率の高い東南アジア、アメリカ、ヨーロッパについて、消費の傾向や消費者のペルソナをご紹介します。
日本のアニメが大好き ─
東南アジア(伸長率2.14)

東南アジアの消費者のペルソナ
インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムなど、東南アジア地域の消費者の特徴は、日本ブランドへの信頼が厚いことです。日本のアニメの熱烈なファンが多く、おもちゃ、ゲーム、ファッションアイテムが人気です。

カシオのG-SHOCK、仮面ライダーやドラゴンボールのフィギュア、「A BATHING APE」の服など、東南アジアでのヒット商品の一部
東南アジアと一口に言っても、国によって文化や風習がかなり異なりますが、バイクや車のパーツは各国で売れました。セイコーやカシオの時計も人気があります。この他では包丁などの調理器具も急成長しました。
SNSで日本のゲーム情報を収集 ─
アメリカ(伸長率2.82)

アメリカの消費者のペルソナ
アメリカでもジャパンカルチャーの支持は厚く、コミックアニメ系商品、特撮系が人気です。YouTubeやSNSで情報収集し、買い物をする消費者が多いようです。

アメリカで人気だったポケモンカードゲーム
アニメグッズやゲーム機、トレーディングカードの他には、日本発のストリートファッション、特にスニーカーがヒットしました。日本ブランドである「A BATHING APE」や「UNDERCOVER」はアメリカでも人気です。珍しいところでは釣り用品のハードルアーが人気でした。
日本の伝統文化にも興味津々 ─
ヨーロッパ(伸長率2.85)

ヨーロッパの消費者のペルソナ
ヨーロッパでもポケモン、ドラゴンボール、遊戯王など、アニメのトレーディングカードやフィギュアが人気なのは変わりませんが、他の地域と違い、盆栽や浮世絵、武具といった商品を越境ECで仕入れて販売しているのではないか? という傾向が見られます。新品でなくて高額でも、良いものがあれば購入しているようです。昔のゲーム機も伸びました。

洋楽のLPレコードや遊戯王カード、ロリータファッションなど、ヨーロッパに売れた商品の一部
洋楽CD、レコードの他には、カセットプレイヤー、ターンテーブル、アンプといったオーディオ関連や楽器も売れました。
越境ECを牽引しているのは2次流通
最後に、新たな傾向をもう1つご紹介します。越境ECではもともと新品の商品が強かったのですが、ここ数年伸びているのがリユース品です。ネットオークションなど、新品とリユース品を同じマーケットプレイス内で購入できるようになり、海外の消費者による利用も増えています。

海外の消費者の日本商品の購入手段
越境ECを通じた購買(上のグラフで緑色の「ネットオークションなど個人間取引で日本から購入している」と、青色の「その他通販サイトで日本から購入している」)を見ると、中国が約36%、アメリカが29%、台湾で20%以上となります。
越境ECというと難しく感じる方も多いと思います。しかし、たとえ言葉や現地の商習慣を知らなくても、日本向けのECサイトを運営するだけで、海外向けに代理で配送・決済・配送まで行うサービスが複数ありますし、今は配送料のハードルも下がり、国際配送も200円から可能な時代となっています。最近では、タグを1行設置するだけで越境ECを導入できるサービスも登場しており、海外市場への挑戦ハードルが下がっています。
まずは、自社の商品を海外の消費者に買ってもらえる状態を作ることから始めてみてはいかがでしょうか?
意外な商品に注目が集まるかもしれませんよ。
◇◇◇
次回は、「越境ECで強いJapanコンテンツを活用して流通を伸ばす方法」をお話しできればと思います。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:「越境EC=中国」ではもったいない海外のネット通販ニーズ。世界各地で新たな巣ごもり需要が発生している越境ECの“今” | 越境EC 3.0
Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.