事業の拡大や変革に合わせて、ERP(総合基幹業務システム)の導入を検討するEC事業者が増えている。クラウド型ERPはオンプレミス型に比べ、導入コスト、運用・保守コスト、導入期間などの負担が軽く、特に中堅・中小企業にとって最適化されたソリューションといえる。グローバルで19,000社が導入するNetSuiteのサービス概要やEC事業者による活用事例を紹介する。
オールインワンで早い立ち上がり
プリセットされたダッシュボードが300以上
日本オラクルが提供するクラウド型ERP「NetSuite」は、20年以上の歴史を持つクラウドネイティブ製品。これまでに小売、製造業を始め、グローバルで19,000社以上が導入している。
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NetSuiteを導入する企業例。小売、製造業を始めあらゆる規模・業界で導入されている
EC事業者は、オーダーマネジメントシステム(OMS)として導入・活用する例が多いという。
「会社や事業規模が小さいときに導入し、その後規模が大きくなっても使い続けられる」。日本版NetSuiteの開発・提供を行う日本オラクルの北村守氏(NetSuite 事業統括 統括本部長)は、クラウド型ERPのメリットをこう説明する。
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日本オラクル NetSuite 事業統括本部長 北村守氏
企業がNetSuiteを導入する理由について、北村氏は以下3点をあげた。
①可視化
データを一元管理し、リアルタイムな経営状況を可視化
②統制
グローバル展開する場合の言語・通貨対応など
③俊敏性・柔軟性
オンプレミス型ERPの弱点は開発期間が長く自社でメンテナンスできないところにあるが、NetSuiteの場合は導入企業が自社でカスタマイズできる
それぞれ詳しく見ていく。
ダッシュボードでリアルタイムな経営状況を可視化
クラウドファーストかつクラウドオンリーのNetSuiteを導入することで、すべての業務プロセスやデータをクラウド上で統合し、リアルタイムな経営状況をダッシュボードで一元管理、可視化できる。
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使いやすいダッシュボードでリアルタイムな経営状況を可視化
OMSとして導入するEC事業者のなかには、販売管理や在庫管理に利用するケースもあるといい、「全ての機能のなかで一部だけを利用するクライアントも非常に多い」(北村氏)。
NetSuiteにはプリセットされたダッシュボードツールが300以上あり、導入後そのまま利用できる。また、ダッシュボードのレイアウトを変えたりデータの保存先を変えたりといったカスタマイズにも対応しており、自社にとって一番使い勝手の良い状態へ調整が可能だ。
複数子会社を一元管理。対応通貨は190以上
「NetSuite OneWorld」というソリューションを活用すれば、グローバル展開する複数子会社を一元管理できる。
グローバル展開する場合の課題として、言語や現地通貨への対応などがある。特に税金対策は毎年国ごとに変わっていくが、「SaaSベンダーなので追従し、常に最新の状態にアップデートできる」(北村氏)。
NetSuiteでは現在24の言語、190以上の通貨に対応するなど、「ほぼ全てを網羅しているのではないか」と北村氏が自信を見せるとおり、世界中のどこからでも取引できる体制を整える。
最近は少ない人数で海外に出て行くEC事業者も多く、10〜15人体制では大掛かりなERPを入れられないという声も聞く。会計パッケージで税金の計算、財務諸表を作ることはできても、言語対応、通貨対応まではなかなか難しく、そういう意味でNetSuiteを選んでいただくケースもある 。(北村氏)
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NetSuiteによる通貨や言語対応などグローバルでのサポート体制
柔軟なカスタマイズ対応。オラクル製品以外でも連携可能
NetSuiteには、プログラム開発なしで「セルフカスタマイズ」できる機能がある。新しいビジネスが始まったときでも、導入企業の担当者がトレーニングを受けていればビジネス内容に合わせて自社でNetSuiteをカスタマイズできるというものだ。
セルフカスタマイズ例としては、以下がある。
- データ項目の追加
- データ構造(テーブル)の追加
- レポートレイアウトの作成・変更
- 画面レイアウトの作成・変更
- ワークフロー(承認)の定義
- BI(保存・検索)の作成・変更
- 役割(ロール)の作成・変更
- ローカライズ・翻訳の作成・変更
ERPに限らず業務システムの中には、MA(マーケティング・オートメーション)などのツールを導入しようとしても、同じ会社の製品じゃないと連携できないといったケースもあるが、NetSuiteは「顧客が持っている資産を大事にし、コストをかけずにERPを構築することをコンセプトに作られている」(北村氏)ことから、オラクル社の製品じゃなくても連携可能だ。
SaaSならではの自動アップグレード(年に2回バージョンアップ)により、導入企業は常に最新バージョンを利用できる。
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メジャーバージョンアップに加え、マイナーバージョンアップは通年で行なっている
進化したクラウドERP「NetSuite SuiteSuccess(スイートサクセス)」
最短2か月で導入。ランニングコストの大幅な縮小を実現
オラクル社では、NetSuiteの進化版ともいえる「NetSuite SuiteSuccess」の提供も行っている。同サービスの特徴は、最短2ヶ月でのスピード導入と、ランニングコストを従来のERPに比べ大幅に抑えることだ。ケースによっては月額20万円(初期費用込み)で運用が可能となる。スタートアップ企業のキャッシュフローへの負担を最小限にすることができると言える。
企業へのスピード導入を可能にした理由は、要件定義を無くしたことにある。
20年NetSuiteを提供してきた経験から、お客様の共通項が見えてきた。それをプリセットし機能をアクティベーションしていくので、要件定義が不要になる。(北村氏)
また従来のNetSuite同様、カスタマイズにも対応するので、「プリセットされている部分の中で足りないところを、クライアント自ら作り変え、発展させられる」(北村氏)。
北村氏は、NetSuite SuiteSuccessの経済的効果を次のように説明する。
導入手法が最適化されているNetSuiteと比較しても、導入コストを18%圧縮できる。この数値はあくまでNetSuiteとの比較なので、他社ツールと比較するとさらに圧縮率は上がるだろう。(北村氏)
また、チェンジオーダーは導入企業630顧客中、わずか3%しかないなど顧客満足度の高さも伺える。理由は、柔軟なカスタマイズ体制にあると考えられる。
企業自ら自由に設定できるので、導入時、2年後、3年後と会社や事業規模に合わせて進化させて利用できる。なかには、OMSとして一部の業務に使うために導入したが、今は全社の業務基盤となるERPシステムとして利用している事例もある(北村氏)。
現在アメリカでは全オーダーの96%が、NetSuite SuiteSuccessだという。
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日本オラクルが示すNetSuite SuiteSuccess導入における経済的効果
複数チャネルのコマース事業をサポートする「オムニチャネルコマース」
メガネECのオーマイグラスが導入。データを分析し販売戦略を立案
NetSuiteには、複数チャネルのコマース事業をサポートする「オムニチャネルコマース機能」がある。同機能では、APIを通じて他のシステムやサービスと連携できるだけでなく、それらのデータを取り込むことも可能。また在庫管理データとの自動連携もでき、それらのデータをタイミングや場所を問わず参照できる。海外で事業展開する場合には、海外でNetSuiteのアカウントを作るなど事業体を1つ作ることで、データの自動連携に対応する。
オムニチャネルコマース機能を利用している事業者例として、日本オラクルの海老原善健氏(NetSuite 事業統括 マーケティング部 マネージャー)から、自社ブランドメガネの他、国内外ブランドの取り扱い、卸売も行う「オーマイグラス(Oh My Glasses)」が紹介された。
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日本オラクルNetSuite 事業統括 マーケティング部 マネージャー海老原善健氏
オーマイグラスは現在国内10店舗に加え、ECサイトの運営、卸売を行っている。
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オーマイグラスが運営する直営店舗の様子
ECサイトの場合は、①オンラインでフレームを選択し、最大5本を自宅に送り自宅で試着した後、検眼情報や決済情報を入力して購入するか、②オンラインで試着したい店舗を選び、店舗で試着、検眼などをし購入する2パターンがある。
同社は、オンライン、オフラインで取得できる膨大なビッグデータを分析して顧客動向を把握する「オーマイグラスのメガネデータポータル」を構築し、販売戦略に生かすため、2014年11月、すべてのチャネルデータを一元管理できるNetSuiteを導入。開発からわずか9ヶ月で、オンプレミス型ERPからクラウド型への移行を実現した。
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オーマイグラスのNetSuite導入に関する各種データ
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オーマイグラス代表取締役社長の清川忠康氏は、2014年の導入時にNetSuiteを選択した理由について、「メガネを中心としたB2Bビジネスのハブとなる仕組みを作るにあたり、将来拡大するであろうビジネスに対応できる業務基盤が必要だった」とする
オーマイグラスの事例を紹介した日本オラクルの海老原善健氏はNetSuiteについて、「企業の成長、変革に合わせて柔軟に変化できるシステム」とした上で、「事業規模や段階に合わせてワークフローを変更したり、蓄積したデータを経営やマーケティングフローに生かすなどして利用してほしい」と締めくくった。
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日本オラクルの海老原善健氏はNetSuiteを「企業の成長に合わせて成長することができるシステム」と説明した
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オリジナル記事:経営データをリアルタイムに可視化。EC事業者によるクラウド型ERP「NetSuite」活用例
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