中国ネット通販の祭典「独身の日」(ダブルイレブン、W11)で、アリババグループは過去最高となる1207億元の流通総額を記録しました。2016年のW11から見えてきた中国ECの現状とこれからを解説します。
「良いものを適正価格で売る」へのシフト
前々回の記事で紹介した「ネット生放送+EC」。2016年はこれまでと違った販売方法が注目されましたが、いまタオバオでは「ネット達人」と言われる人々が注目されています。
その中の1店舗「ANNA IT IS AMAZING」。タオバオのアパレル店舗で、女性アパレルカテゴリーで3位。W11の売り上げは1億元(15億円以上)とも言われています。
「ANNA IT IS AMAZING」の概要は次の通りです。
- ターゲット:OL
- 商品数:新商品30商品
- 客単価:1000元(約1万5千円)
- W11の売上件数:新商品5商品が1万件以上
- 集客:微博(ウェイボ)
- 商品選定:ユーザーとコミュニケーションしながら自社ブランド、デザインで決定
- その他:大きな資本を入れず、商品は少ない量を自社生産。値下げはなし
「ANNA IT IS AMAZING」で取り扱うアパレル
「ANNA IT IS AMAZING」での販売動向を見て感じたのは、「とにかく安く売る」から「良いものを適正価格で売る」へのシフトです。
全店舗ではないものの、企業側が安売りに頼らないしっかりとした商売を行う体制ができるのは大変よいこと。また、ネット達人と言われる店舗では人材育成を積極的に行うといった動きがあり、今後への期待が広がります。
アリババはECの先のビックデータビジネスを狙っている?
ここ数年のアリババグループが記録したW11流通額の推移を見てみましょう。2009年の流通額は5000万元だったので、7年で約2400倍に成長した計算になります。
ただ、成長率は安定期に入っています。ある程度ですが“市場規模の山”が見えてきている――そんな気がします。
「天猫」(Tmall)におけるW11流通額の前年度比推移(画像は『ebrun』からキャプチャ)
「アリババグループの一人勝ちは続く? 抱える課題と成長戦略とは」の回で解説しましたが、アリババはECの分野で、「越境ECの強化」「地方のモバイルファーストユーザーの売上拡大」を掲げています。一方で気になるのが、ビジネスとして次の大きな展開をどのように考えているかということ。
先日のW11を受けて張勇CEOはこう語っています。
私たちのKPI、それはデイリーの集客人数や滞在時間の長さ、ゲームやキャンペーンへの参加人数。現在のKPIに流通総額は入っていない。私たちはデータ会社であり、このデータを生かしてマーケティング、金融、物流、ECを仕掛けていくのが中核の戦略だ。
おそらく購入履歴なども含まれてくると思いますが、いずれにしてもビックデータを基軸にECの次の展開を図ろうとしていることが読み取れます。
実はここ数年、中国国内ではビックデータを活用したコミュニティーが多く立ち上がっています。ECについてはアリババがまさにその中心。今後の動向がとても楽しみです。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:中国EC市場はこれからどう変わる? 「独身の日」から見える販売の変化とアリババの戦略 | 上海で働く駐在員の中国EC市場リポート
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