前回、minneでネット販売デビューを果たしたんですが、さて、この先はどうしたものか……? 大金を投資してどーんと拡大というわけにもいきません。小さなネットショップを大きく広げようとしている方のお話しを聞きたくて、東京・西荻窪に向かいました。 写真◎吉田 浩章
今回のお店のメイン商材がこちら。これ、何なのかわかりますか?
着用するとこんな感じになります。
そう、猫用の首輪なのです。今回お話しをうかがったのはこの方、「ネコソダテ」の満間摂子さん。
「ネコソダテ」オーナーの満間摂子さん
「妹愛」と「猫愛」がはじまり
満間さんと暮らす猫は保護団体で保護されていた猫。譲渡の時に「首輪と迷子札を付けてください」と言われて首輪を探したものの、気に入った首輪がなかったそうです。そこで、京都に住んでいる妹さんに「こんな感じの首輪を作ってくれない?」と頼んだのが始まり。
妹さんは当時、内職をやっていました。内職を通して縫製のテクニックは身に付けたけど、報酬はとても安い。
「私は妹が大好きなので、猫の首輪を仕事にして、妹に内職より実入りのいい仕事をさせてあげられたら、楽しいし良いじゃんって思ったんです(笑)。実際に製作に入ってからは、安全性や着け心地にこだわるあまり、何回もダメ出しをしたので妹には嫌がられましたが……」(満間さん)
猫の首輪は可愛ければ良いというものではありません。
猫の負担を最小限にした軽くて柔らかい設計、日常使いの中での安全性も重要です。また、猫が迷子になったときに、遠くからでもひと目で「飼い猫ですよ」とわかる視認性も大切。そこで、カラフルな布を使用したバンダナ型に決めました。
面ファスナーのタイプ、4kg程度の負荷がかかると外れるセーフティバックルタイプ、ゴム留めの襟型タイプの3タイプの首輪がある。
試行錯誤を繰り返し、販売にもたえると思える首輪ができ、満間さんはネット販売を始めます。まずBASEでお店を立ち上げ、その後、Yahoo!ショッピング、minne、Creemaなどに次々と出店。同時に、ブログやソーシャルメディアの運用も始めました。
ネコソダテ本店
「初めのうちは全然売れないし、ソーシャルメディアも反応がなくてくじけそうになりましたが、地道な努力を重ねているうちに、だんだんとお客さまが増え、投稿を見た方から新たにお問い合わせやご注文をいただいたりと手ごたえを感じるようになりました。
今も妹と2人で運営をしていますが、お互いに無理のない範囲で、そしてなるべくお客さまをお待たせしないように声をかけあってやっています」(満間さん)
常時100種類くらいの柄を揃えている。最近のヒットは右の「大漁旗」シリーズ。
リアルイベントで顧客の声を集める
ハンドメイドのリアルイベントにも出展を始めました。最初に妹さんと一緒に大阪で開催されたイベントに出展した感想は「そんなに売れたわけじゃないけど、いける気がした」。
「イベントは単体としての売上も大きいのですが、本来の目的はネコソダテを知ってもらうこととネットショップへの誘導なんです。イベント出展をすればするほど、たくさんの方に知っていただけるし、ネット販売も伸びる。
それにリアルイベントでの体験が、ネットショップの改善にもつながるんですよ。 お客さまからも、『うちの子は首輪が嫌いだったんだけど、ネコソダテの首輪だけは大丈夫なんだよね』なんてうれしい感想をいただくことも多くて。
うちの首輪は一見おしゃれ首輪なのですが、本当は『ガチの実用品』なんです。そういうことは実際に手に取って見ていただいた方が伝わりやすいんですよね」(満間さん)
2016年はおよそ30件のイベントに出展した。写真は12月に名古屋で開催されたイベントの様子。
実は最近まで、IT企業でのネットマーケティングの仕事をしていた満間さん。現在は退社してネコソダテに専念しています。
「前職のネット集客も大好きで楽しかったんですけど、他人が考えた仕組みの中だけで活動するのが若干物足りなかった。組織の規模が大きいと『こうしたらいいのにな』っていうことがなかなか実現されないこともあって。でも今は全部自分でやれる。それに、改善を重ねれば重ねただけ商品は売れていく」(満間さん)
リアル店舗をオープン
そんな満間さんが今年、西荻窪に店舗をオープンしました。駅からも近く、近所にギャラリーや飲食店もあり、雑貨店としては申し分ない場所です。
ネットショップを「本店」と考えているので、リアル店舗は「西荻店」。猫の試着もOK。店舗情報は
Facebookページをご覧ください。
「イベント出展を重ねるにつれ、『お店はないんですか?』『どこに行ったら買えますか?』と聞かれることが増えてきました。卸販売やイベントではお見せできる商品もそう多くない。このままでは限界があると感じていました。それに、“首輪専門店”というと少しは珍しがって来てもらえるかもしれないという期待も(笑)。
固定費が増えたので毎月ドキドキしています。でも、実店舗でいつでも商品を手にとって見ていただけるようになり、より手厚いアフターケアが可能になったことで、信頼していただけるようになったと感じています。ネット販売もさらに伸び、企業からも声がかかるようになりました」(満間さん)
西荻窪店の壁にはお客さま(猫)の写真がたくさん。
そして海外へ
今後は海外への販売にも注力したいという満間さん。
「国内での販売もまだまだ拡大していきたいのですが、規模が小さいうちに海外向けにも対応できる柔軟な仕組みを作っておきたいと思い、Amazon.comでの販売を始めました。まずは北米でテストマーケティングをしながら改善を重ねて、こちらも徐々に広げていきたいと思っています。
あとは台湾ですね。すでに台湾発のハンドメイドマーケットプレイス「Pinkoi」に出店している関係で、台北で開催されたイベント「好藝市」に出展しました。
イベントに持っていく商品のセレクトを失敗して結果はイマイチでしたが、台湾の友人たちの助力もあり、台湾の方の好みもなんとなくわかってきました。今後の販路開拓の足掛かりになる体験でした」(満間さん)
◇◇◇
猫愛と妹愛を原動力に、自分が一番ゴキゲンになれる道をとことん追求して前進して行く満間さん。
目標を定めて夢中になっている人の姿は、本当にキラッキラしていてかっこいいー!
今までは大きな企業の裏側を見させていただくことが多かったので、こうして小さなお店の実務に近いお話を伺うことができたのはとても貴重な体験でした。
自分たちのできることからチャレンジを始めて、数年で海外進出を果たしてしまった満間さんの歩む道は「モノを作って、売る」を目指す人たちにとって、憧れのサクセスストーリーですね。たくましい先輩を見習って、 私たちも試行錯誤の旅を続けていきたいと思います!
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オリジナル記事:minne、Creema、それからどうする? IT企業からの転身「ネコソダテ」の場合 | はぴさやがゆく! ネットショップの裏側探検記
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