結婚指輪は「カップルの結びつき」の象徴であり、たった1つのリングの存在がカップル間の結び付きを強める役割を持っているだろう。
そんな結婚指輪だが、「洗面所で流してしまった」とか「運動中になくしてしまった」といった話を聞くことがある。これは結婚指輪をしている世界中の人々に共通の出来事で、問題の種であり続けた。
この結婚指輪問題を解決するために米国で始められたサービスが人気を集めている。それが今回紹介するシリコンゴム製の結婚指輪を販売する「Qalo」だ。
「Qalo」は2013年、米国ロサンゼルスで設立された。シリコンゴムでできた指輪という商品そのものもこユニークだが、「Qalo」の指輪を必要とするであろう顧客層の見極めや、ブランドのミッションを語ることで支持者を得ることに成功した点も大きな成功要因となっている。
Facebookのフォロワーは27万人以上。1150以上ものレビューを得た指輪もあり、注目のほどがうかがえる。
「Qalo」のECサイト
結婚指輪は大事だが、時として置き場に困る
シリコンゴム製の結婚指輪を販売する「Qalo」が人気を集めているポイント
- マーケットとターゲットを明確にして販促活動を行う
- 意外に多い指輪の悩みを抱える人の課題を解決するビジネスをECで開拓
- 「伝え方」だけで付加価値を生み出し、認知度アップと需要を開拓
ジョージ・メイソン大学で経済学を専攻したTed Baker(写真左、以下ベーカー)氏と、すでにテキサスクリスチャン大学を卒業しライターとして働いていたKC Holiday(写真右、以下ホリデー)氏は、ともに結婚してから、あることにフラストレーションを募らせていた。
それは結婚指輪。もちろん2人はともに奥さんのことを愛していたし、奥さんへの愛情、結び付きを結婚指輪という形で示すことは良いことだと考えていた。
しかし、ジムへ行ってバーベルを持つとき、登山をするとき、海に行ったときなど、結婚指輪を付けているとその度外さなければならないし、外した後にも指輪をどこに置いたらいいのか迷ってしまう。さらに指輪を無くしそうになったことも多々あった。
結婚指輪は大事なものだが、時として置き場に困る。2人はこの問題について知人や友達と話すうちに、自分たちだけが感じていたのではなく、世の中の多くの人たちに共通している問題なのだと知った。
そこで2人は何か良いソリューションはないかと考え、シリコンゴムで作った頑丈でかつ柔らかい結婚指輪を考案した。この指輪であればはめていても、どのような環境であっても邪魔にはならない。たとえばジムでバーベルを持ち上げる際にも、シリコンゴムであれば柔らかいのでなんら支障がないのだ。
シリコンゴムでできた結婚指輪を販売するターゲットは消防士、軍隊、旅人など、アクティブな活動をする人たちを想定した。これらの顧客層にアプローチするための手段としてアフリエイトプログラムを採用し、アクティブな活動をする顧客層の間で「Qalo」への認知度を高めることに成功したのだった。
いつでもはめていられるシリコンゴム製の指輪
「Qalo」で販売されているシリコンゴム製の指輪
これまでアクティブな活動をする人は結婚指輪を外す必要があった。しかしこの「Qalo」の指輪であればどんな時でも指輪をはめ続けることができ、結婚指輪を外している間に指輪を無くしてしまうということもなくなる。
指輪は女性用と男性用があり、値段は15.99ドル(約1800円)から25.99ドル(約3100円)の価格帯。一番売れ筋のグレーの指輪は19.99ドル(約2400円)で、1150ものレビューが付いている。大きな人気と注目を得ていることが分かる。
一番売れ筋のグレーの指輪の価格は19.99ドル(約2400円)
シリコン製の指輪は良い着眼点だ。だが、安全とは言えども、既存の金属製のリングにそうそう取って代わるのは難しいように思える。「Qalo」はどのようにして自分たちの製品価値をアピールし、販売に成功しているのだろうか。
マーケットを明確にし、ウェブマガジンと連携
その背景には、関係性の深いウェブマガジンと提携し、ターゲットとなる人たちに自分たちのミッションを伝える、という試みがあったようだ。
創業者のベーカー氏は「Qalo」のシリコンゴムについて、「Qaloは単なるシリコンゴムの指輪を販売しているわけじゃない。カップルの結び付きを売っているんだ」と語っており、そのミッションに沿ってカップルを顧客層として想定したマーケティングを展開している。
たとえば結婚をテーマとした複数のウェブマガジンとアフィリエイト提携をし、結婚のウェブマガジンサイト「Off Beat Bride」で「Qalo」が紹介された。
その中では、自分の結婚相手が「硬くて冷たい感触」「ギターを弾くのに邪魔だっt」などことから指輪を身に付けなくなったという紹介文に始まり、「Qalo」の指輪がアスリートやアーティスト、何か趣味を持っている人、あるいは電気技師や消防士といった職業の人たちに適した製品であることを紹介。「紛失しても失うものは15.99ドルで済む」といったユニークなアピールも行われ、1200以上のシェアと40以上のコメントが寄せられている。
記事に付いたコメントには、「すごく良いアイデアね。私たち夫婦は軍人だしウエイトトレーニングもよくするんだけど、そのたびに指輪を外すさなければならないのがおっくうだったのよね」というものや、夫や彼氏へのプレゼントに買おうと思っている、といったものが見受けられた。
また、ジムやフィットネスをテーマにしたサイトともアフィリエイト提携している。フィットネス、健康的な生活情報を掲載するウェブマガジン「POPSUGAR」に紹介されたときには8000以上のシェアがなされた。
ジムやフィットネスを好きな人は活動で指輪を外さなければならない機会も多いだろうし、その人たちに対してこの「Qalo」の指輪というのはうってつけなのだろう。
いずれの記事も、各ウェブマガジンの読者によく適合したストーリーで紹介されている。おそらく「Qalo」はただ先方に丸投げしているのではなく、各ウェブマガジンとコミュニケーションを取り、かなり丁寧に記事を作り上げている。「Qalo」の成功の背景にはこういったメディアとの関係性構築もあるだろう。
従来の結婚指輪に比べればはるかに素っ気ないシリコン製のリング。そんな商品に付加価値を付けたのは、ストーリーとビジュアルだけだ。
いわば「伝え方」だけで付加価値を生み出したといえる。すごく難しいことではあるが、高付加価値な商品を販売する場合には無くてはならない技術でもある。
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オリジナル記事:シリコンゴムの指輪になぜ人が集まるのか? 買いたくなる付加価値を作る「伝え方」 | 海外ECサイトの事例に学ぶ 売上UPのコツ | ネットショップ担当者フォーラム
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