トクホ審査で安全性が確認できない。「機能性表示食品」制度に新たな問題が浮上 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2015年5月13日(水) 11:15
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届出を受理された商品の成分について、トクホ審査で安全性に疑義が呈され“相克”が問題に

「機能性表示食品」制度に新たな問題が浮上している機能性や安全性の評価を巡り、トクホとの相克が新制度に影響を及ぼす可能性があるためだ。届出を受理された商品の成分について、トクホ審査で安全性に疑義が呈されていたことが明らかになったことで問題が顕在化。また、制度の運用面でも「実質的に審査に近い形で運用されている」との声が聞かれる。だが、新制度は“企業の自己責任”を前提とするもの。根本的に異なる制度だ。

問題となったのは、17日に受理されたリコムの「蹴脂粒」。同じ成分を含む飲料をトクホ申請しており、現在、食品安全委員会が評価。近く「作用機序が医薬品と同じで臓器に影響を及ぼすことが否定できない」との評価書案をまとめる予定だ。

これにリコムは、「医薬品で副作用を起こす投与量を、届出商品の成分量に換算すると、1日に28~80キログラム食べる量に相当」と、問題ないとの認識を示す。一方の消費者庁は届出商品に疑問が生じた場合、「個別案件は答えられないが(一般論として)制度は事後チェックが可能なよう情報開示しており、企業に確認することもあるし、届出撤回を求める指示を行う場合もある」としている。

新制度はトクホと全く異なる制度になる。トクホは、製品の臨床試験で安全性を確認し、これを国が審査する許可制。一方の新制度は、食経験やトクホに準じた製品等の臨床試験で安全性を評価すれば、企業の自己責任で表示してよいものだ。また、そのためにトクホ以上の注意表示も義務付けられている。リコムは、製品で臨床試験を行っており、制度上、必要な要件をクリアしている。

別の問題も浮上している。実質的に許可制に近い運用が一部でみられるとの指摘だ。届出件数は現在、130件。1カ月が経過しようとしているが、受理は11件に留まり、現状のペースではすでに届出した商品の受理が数カ月後になる可能性がある。滞っている要因の大半は単純な書類不備。だが、「機能性に関する追加データの有無の確認や適切なシステマティックレビューを行うための指針である『PRISMA(プリズマ)声明』の再確認を求められた」(届出を行った企業)との声も聞かれる。表現そのものの変更は求めないが、表現に値する根拠が十分か確認するものだ。

前出の企業は「“法律上問題ないが、外部から指摘があるかもしれない”と確認されたが、消費者庁と見解は異なり、根拠と表現にかい離がなく十分であると考え、そのまま再度届出した」(同)とする。プリズマ声明への準拠も「日本健康・栄養食品協会への事前相談で確認した」(同)という。こうした押し問答が、受理までの期間を長引かせているようだ。

指摘されるケースは、例えば「目の調子を整える」といった表現に「『目の調子』全般に関するデータがない」といったもの。新制度は、限られた免疫指標の評価で身体全体の免疫に関する機能があると誤解を招く表現などが禁止されており、こうした表現が対象とみられる。

この状況に、企業からは、「『ガンが治る』など明らかにNGな届出がノーチェックで流通するのは好ましくない」といった声がある。一方、「表示事項やプリズマ声明が問題ないのに再確認を求めるのは止めてもらいたい」「届出時に販売日は確定しており、資料差し替えは販売計画に大きな影響を与える。事前相談の体制を整備してほしい」といった声が聞かれた。

これまで経験のない制度のため慎重な運用も必要。ただ、仮に過度な介入が行われていれば企業はこれに一喜一憂することになり、許可制と変わらない。トクホと異なる設計の意味はなく、企業の自己責任による事前届出制という制度の根底が覆ることになる

【板東長官との一問一答】 「実質審査していない」

4月22日、28日に行われた板東久美子消費者庁長官の記者会見での一問一答。

板東久美子消費者庁長官
板東久美子消費者庁長官

――2週間で8件(17日時点)のペースに対する受け止めは。

「初めての制度で、書類の記載に問題があったりする。制度が軌道に乗れば時間も短縮し、ただちに認められるものも増える。ミスが起こりやすい点を整理して発表し、円滑な運用を工夫する。受理件数は少ないが今後、加速していく」

――表現ぶりを審査に近い形でチェックしていないか。

「例えば『病気に効きます』はいけない」

――治療効果など明らかにNGなものを除き、表現をチェックしているわけではない。

「一定のガイドラインとして示しているものがあるので実質上の審査をしているわけではない」

――安全性の問題が指摘されたものは受理できない。

「制度は事後チェックの制度。安全性に根拠がないとなった場合、販売してはならない。食品安全委員会の審議が途中なので、安全性に根拠がないのか注目している」

――受理後に安全性に根拠がないと分かった場合の対応は。

「個別の話はできない。疑義があった場合、表示自体の問題ではなく、前提となる根拠の問題。届出自体の適否を判断する。撤回を求めることもあるし、機能性表示食品として販売・表示しない形も考えられ、ケースによって異なる」

――受理の適否は消費者庁が判断するのか、事業者が回収など行い撤回するのか。

「届出は一定の要件を満たしているかが成立要件。(安全性の根拠がないなど)前提となる要件が満たされていない場合に届出の撤回を求めていくのが通常のケース」

 

「通販新聞」掲載のオリジナル版はこちら:
機能性表示食品  "トクホとの相克"が問題に(2015/05/01)

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