通販各社が展開を始めた店舗が注目されている。通常の店にはない、“通販発の店”ならではのユニークなコンセプトや通販連動を前提とした斬新な試みなどを行っており、顧客からの評判も上々のよう。また、有店舗小売業者の店舗とも一線を画すことができ、差別化を図れているようだ。通販各社が運営する注目すべき店舗を見ていく。
顧客の悩みを解消
「お客様に安心して商品を購入頂きたい」。ディノス・セシールは3月27日から、東京・有楽町の商業ビル内に、ディノス事業で展開する50代女性向けファッションカタログ「ダーマ・コレクション」などで紹介する衣料品などを展示する拠点「DAMAお客様サロン」を開設した。
「ダーマ」で扱う商品は比較的、高額なこともあり、「手に取って、素材感やサイズ感を確かめて買いたい」との要望が多いことを受けたもの。期間限定店なども設けたことはあったが常設拠点は初めて。
広さ約179.8平方メートルの広々としたサロン内では最新カタログ掲載の商品をカタログのページ構成に合わせて、右回りに商品を展示するなど工夫しており、馴染み深いカタログをめくりながら、違和感なくサロン内の商品を確認できるようだ。
カタログ掲載の商品は一部を除き、ほぼすべて展示。試着してサイズ感を把握できるよう色柄違いではあるものの、同一型の商品につき、基本的に全サイズを用意している。また、専門知識を持った6人のスタッフが常時4人体制でタブレット端末などを使いつつ、顧客から商品に関する質問や相談に対応する。「このサロン設置の目的は既存顧客へのサービス。例えば9号と11号でサイズを迷われている方に試着して頂き、安心して購入頂きたい」(天利美智代執行役員)とする。
「ダーマ・コレクション」などで紹介する衣料品などを展示する拠点「DAMAお客様サロン」
「DAMAお客様サロン」は“試着”や“相談”を重視しているため、商品の直接販売はしないが、商品注文はスタッフが店内端末から通販サイトで注文代行する形で対応する。「わざわざ商品を持って帰って頂かなくとも、通販ですぐご自宅にお届けできる。こうした利便性も店舗でなくサロンにした理由の1つ」(同)とする。なお、サロン内での注文分は送料無料とする特典を付けている。
スタート時点では「ダーマ・コレクション」の夏号の商品を展示したが、今後は発刊する「ダーマ」シリーズ4誌のカタログ発刊に合わせて商品の入れ替えを行いつつ、毎号カタログでの告知や連動する通販サイトで展示商品に「サロン展示」のマークをつけ、通販とサロンとを連動させながら、拡販を図っていく考え。
レディースファッションのネット販売事業を手がけるズーティーは2月20日、ファッションの“お悩み”を解決する「ズーティースタイリングラボ」を東京・渋谷のショールームで本格的に始めた。同社は本社のある神戸と京都、横浜に実店舗を7店舗構えているが、店では当たり前の“売る”ことを意識せず、着こなしに自信がない顧客にファッションのコツやセオリーなどのテクニックをアドバイスする場として、昨年12月から同サービスのテストを繰り返してきた。
ラボでは事前に利用者の顔写真や全身の写真、体のデータや好きな服のテイスト、普段の服装などをヒアリング。顧客のし好に合った服や小物を取り寄せて、「その人のための店」を作るイメージで利用者を迎える。
現在、横浜店の販売員など3人のスタッフが対応。カウンセリングには1人当たり平均1時間半をかける。通常の店舗では人目が気になったり、ショップ以外の商品の持ち込みは気がひけるという利用者でも、好きなだけ試着やアドバイスが受けられるのも特徴だ。
同社では、サービス利用料として、運営する通販サイト「イーザッカマニアストアーズ」本店の会員からは税込1620円、非会員からは2160円の利用料をもらうことで実店舗との線引きをしている。
利用者は気にいった商品があればその場で購入できるほか、スタイリングに使用したアイテムは商品詳細ページのURLを付けたメールが届くため、通販サイトで確認して購入することも可能だ。また、カウンセリング後に着こなしのポイントなどをまとめたレポートがもらえるため、今後の買い物にもアドバイスを生かせられるという。
もちろん、提案された商品は買わなくてもいいが、今のところ、ほとんどの利用者が購入しているようだ。ただ、同社では「ラボのゴールは実売ではなく、利用者が自分に自信を持てたり、ウキウキしながら帰ってもらうことに執着したい」(浅野かおり取締役)としている。
なお、同社はカスタマーサポートに着こなしの相談が届くことがあるが、当該部署はスタイリングのプロがいるわけではないため、今後は、こうしたスタイリングの相談はカスタマーサポートと切り離し、ラボが受ける体制も作りたい考え。
「ズーティースタイリングラボ」ではカウンセリングを行う
「猫部」店舗が大盛況
フェリシモは3月17日から4月2日までの期間限定で、ネコ好きをターゲットとしたサイト「猫部(ねこぶ)」の実店舗を、東京都武蔵野市の「吉祥寺パルコ」にある同社店舗「ポップアップショップ」内に開設した。ネコによるひっかき傷を隠すばんそうこう「にゃんそうこう」やネコ耳の付いたヘアターバン「猫耳もふもふヘアターバン」、ネコを模した財布「22(にゃんにゃん)がま口ポーチ」など、通販のみで扱ってきた猫部のグッズ60~80アイテムを販売している。
同社では今年2月19日から3月4日まで、東京都渋谷区の「渋谷ヒカリエShinQs(シンクス)」に猫部の店舗を期間限定でオープン。「当初予定していた売り上げを約50%上回った」(広報部)というほど人気に。ヒカリエは通常、仕事終わりのOLなどが来店する18時以降の売り上げが大きいが、猫部の店舗は午前中から満員で、普段はあまりヒカリエには来ない主婦も目立ったという。ただ、約2週間の開設だったため「予定が合わず行けなかった」という顧客からの声があったことから、再度期間限定ショップをオープンすることになった。
ヒカリエの店舗と違い、今回はフェリシモが運営する店舗内での展開となるが、来客数は普段の3~4倍という盛況ぶり。来店者の多くはOLや主婦、ファミリー層。同社サイトなどで「猫部」の活動や商品を知っている人が目立つ。「目立った宣伝をしていないのに客入りが非常に良い」(広報)と同社でも驚く。目当ての商品だけではなく、複数のアイテムをまとめて買う顧客も多いようで、店内では商品を長い時間かけて吟味する女性客でにぎわっていた。
一番の売れ筋商品は「にゃんそうこう」。1日50点の限定入荷で、1人2点までという制限を設けているものの、平日にも関わらず午前中には売り切れてしまうほどの人気。にゃんそうこうとポストカードやトートバッグなどをセットにした商品を代わりに買っていく顧客も。その他、「猫耳もふもふヘアターバン」や「もふもふ肉球ルームソックス」なども売れている。「ポップアップショップ」では、猫部以外にも同社現行商品を販売しているが、あわせて購入する人も多い。
一番の売れ筋商品「にゃんそうこう」
4歳の娘と来店した30代の女性は「『にゃんそうこう』目当てで来たのに売り切れで残念。アンテナショップがあると、気になる商品を手に取って確かめることができるのでとてもいいですね」などと話していた。
同社では29日には京都市内に1日限定で猫部店舗を出店。今後、他の大都市圏でもこうした期間限定ショップの展開を考えているようだ。
店舗購入、手ぶらで帰宅
夢展望は3月7日、東京・渋谷の商業施設「渋谷パルコ」内に、通販連動の実店舗「夢展望ショールームストア」を開設した。店内に設置したタブレット端末を使って、商品検索からコーディネート、購買まで完結する。店頭で決済すれば商品を自宅に配送することが可能で、来店客は“手ぶら”で帰ることができる仕組みだ。靴など試着のニーズに対応し購買の利便性を高めている。
開設した実店舗は商業施設「渋谷パルコパート3」の1階に構える。店内には商品購入を行うカウンターを設け、タブレット端末を使って商品購入手続きを行う。顧客は店頭レジと通販サイト上での決済を選択することができる。タブレット端末を経由した売り上げは店舗売り上げとして計上する。
商品の引き渡しは、在庫があれば店頭での受け渡しと、後日に自宅へ発送を選択できる。店頭在庫切れの購入機会ロスを防ぎ、在庫スペースの圧縮化で販売効率を高める狙い。商品発送は会員登録時に取得したメールアドレスで通知する仕組み。
ショールームストアは通販と店頭をシームレスにつなぎ、購入の利便性向上が狙い。このため、通販のIDを連携し、店頭購入時に自社サイトで付与するポイントなども利用できる。なお、新規顧客が購入する場合、会員登録が必要となる。
店頭の品ぞろえは300アイテム。通販サイトで取り扱う2000~3000アイテムの中から試着の要望が多い靴を中心に、衣料品や雑貨などをラインアップした。主力の靴は1点ずつ全サイズを陳列した。品ぞろえは通販サイトと連動させていく方針で、新商品の中から店舗に合致するアイテムを順次、投入していくようだ。
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オリジナル記事:“通販発のお店”で新たなニーズを生み出す実店舗戦略を4社の事例から学ぶ | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム
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