ヤマト運輸、日本郵便が4月から新サービスの提供を始めたことで、配送会社の見直しを検討しているEC企業も少なくない。ネットショップ担当者フォーラムではこれまで、日本郵便、ヤマト運輸の担当者のインタビューを掲載し、サービス詳細や最新状況を紹介。インタビューや他の取材を通して得た情報を含め、両社の新配送サービスをまとめてみた。(ヤマト運輸&日本郵便のサービスをまとめた一覧表のダウンロードサービスを用意)
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メルカリの公表した料金が目安に
ヤマト運輸では、3月31日に「クロネコメール便」を廃止し、代替の新サービス「クロネコDM便」「ネコポス」「宅急便コンパクト」の提供を4月1日に開始した。このうち、「クロネコDM便」に関しては、最も価格の安いサービスとなるが、通販荷物などの発送を基本的に禁止している。そのため、クロネコメール便の代替サービスとして、通販用荷物で利用することは難しい。
焦点となるのは、「ネコポス」「宅急便コンパクト」がどのくらいの価格で利用できるかという点。インタビュー取材でヤマト運輸の法人営業部 ECソリューション課・中西優マネージャーは次のように語っている。
出荷個数だけではなく、場所や条件などによっても大きく異なるため、具体的な数字を出すことは難しい
つまり、通販会社が利用できる現実的な料金は公表していない状況だ。
ただ、料金の目安となりそうなのが4月1日にメルカリが発表した、ヤマト運輸と提携して出品者が簡単に配送注文できる新サービスの料金だ(参考記事)。
「ネコポス」の料金は全国一律195円、「宅急便コンパクト」の料金は全国一律で380円となっている。このサービスでは、メルカリがコストの一部を負担することで低価格利用を実現したとしているが、通販会社がめざす料金はこのラインだと推測される。
物流代行企業に聞いてみると、この価格と同等、もしくはそれ以下の料金で提供しているケースが多いという。もし、ヤマト運輸からの見積もりで上記に記載した価格以上が提示されている場合、物流代行会社に外注するのも有効な手段だと考えられる。
クロネコメール便の廃止や楽天との提携で配送受託社数拡大も
日本郵便によると、14年6月からサービス提供を始めた「ゆうパケット」が人気だという。当初の目標は、15年3月までに1000社への提供をめざしていたが、開始1カ月で1000社を突破。3月までに7000社への提供を実現している。
「ゆうパケット」はもともと、「クロネコメール便」への対抗サービスとして設計されている。そのため、提供価格はクロネコメール便の164円に近い価格、もしくはそれ以下で提供されているとみられる。日本郵便の郵便・物流商品サービス企画部担当部長の外薗博文氏によると、「『クロネコメール便』が廃止されても特に値上げは考えていない」としている。
メール便での配送荷物が多かったEC企業のなかには、日本郵便の「ゆうパケット」に移るケースも多く出てきそうだ。
なお、ヤマト運輸ではクロネコメール便を利用していた企業に対し、6月もしくは9月まで(企業によって異なる)は移行期間としてメール便と同様のサービス価格で提供するとしており、この移行期間が切れる前後から、サービスの利用見直しを検討するEC事業者が増えてきそうだ。
日本郵便にはEC企業からの配送受託の件数を増やすためのさらなる追い風もある。4月9日から楽天市場と共同で開始するロッカー受け取りサービス「はこぽす」の提供の開始だ。
10月までの実験的なサービスとしているが、楽天は継続・拡大を望んでいる。そのため、楽天がサービス利用を促進するためのPRに力を入れる可能性は高い。たとえば、利用者の利便性を高めるため、「楽天市場」の検索結果などに翌日配達マークなどと同様に、「はこぽす」での受け取りを示すマークが表示されることも考えられる。
「楽天市場」での売り上げが大半を占めるEC企業は多い。日本郵便と楽天の「はこぽす」を利用することで配送サービスを拡充する目的で、日本郵便に配送サービスを変更するEC企業も出てきそうだ。
郵便受け投函型の新サービス開発も
ヤマト運輸、日本郵便ともに、通販企業向けの新サービスの提供は久しぶりのこと。ただ、両社とも今後は新サービスの開発・提供を活発化していきたいとしている。また、今後開発を検討しているサービスとして、両社とも、郵便受け投函型のサービスの拡充をあげる。
ライフスタイルの変化で日中受け取ることができなかったり、対面で受け取ることに不安を覚える消費者が多くなっているため、投函型のニーズが高まっている。現状では投函型のサービスは小さな商品に限られているが、今後、ある程度の大きさの商品まで対応するようになると考えられる。
配送面に加え、ヤマト運輸は中小EC企業向けにソリューションの提供を強化していく方針を掲げる。これまではグループ各社で別々にサービスを提供していたが、それをまとめて1つのサービスとして提供していく。
「中小企業が利用することを念頭に置いた価格で提供していく」(ヤマト運輸、法人営業部 ECソリューション課・中西優マネージャー)とし、ソリューションと配送をセットにすることで、コストを下げた価格提案をしていく。こうした、ソリューションと配送をセットにした提供方法は、他社も追随する可能性がありそうだ。
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