初代編集長ブログ―安田英久

動画広告の23%がボットによる不正インプレッション:全米広告主協会が大規模調査

動画広告の23%、ディスプレイ広告の11%ほどが、不正なボットによるインプレッションだった
Web担のなかの人

動画広告の23%、ディスプレイ広告の11%ほどが、不正なボットによるインプレッションだったという調査結果が発表されました。全米広告主協会(ANA)とセキュリティ調査会社のWhite Opsによる36社181キャンペーンを対象にした調査です。

全米広告主協会(ANA)が、衝撃的な内容を12月9日に発表しました。

オンライン広告で不正がどの程度行われているのかに関して、全米広告主協会とセキュリティ調査会社のWhite Opsが共同で行った調査によると、次のようなことが明らかになったというのです。

  • 少なく見積もっても63億ドル(7560億円)のデジタル広告費が、ボットなどの不正によって無駄になっている

  • ボットネット(通常のコンピュータを不正プログラムなどで外部から操作できる状態にしたものの集まり)が、広告の不正閲覧ねつ造に利用されている

  • 動画広告インプレッションの約23%が、ボットによる不正閲覧だと判断された

  • ディスプレイ広告インプレッションの約11%が、ボットによる不正閲覧だと判断された

  • サードパーティによるトラフィック誘導では、52%もがボットによる不正なものだった

  • プログラマティック取引によるディスプレイ広告トラフィックの17%がボットによる不正なものだった

  • リターゲティング広告の19%がボットによる不正なものだった

こうしたボットによる活動は、人間が眠っている(しかしコンピュータは起動したままになっている)深夜から午前7時の間に最も多く、土曜日になると活発になっていたとのこと。

また、ボット化しているのは古いブラウザが多く、IE 6では58%が、IE 7では46%が、ボットによる不正だったとのことです(サポートの切れたPCを利用している人がマルウェアの被害にあっているということですね)。

この調査は、ネスレ・ホンダ・フォード・ファイザー・ハイネケン・インテル・ジョンソン&ジョンソン・ウォルマートなど36の広告主による181の広告キャンペーンを対象に行われたもので、2014年8月~9月の60日間における、300億ドメイン名での55億インプレッションを調べたとのこと。

デジタル広告費を盗もうとしている者たちは、ウイルスなどを使って一般消費者のコンピュータを外部から操作できるようにし(ゾンビPCと呼ばれる)、コントロールセンターを通じたそうしたゾンビPCを制御しています(これがボットネット)。

そして、そのボットネットを通じてゾンビPCを操作し、自分たちに広告掲載料が入るように、デジタル広告を閲覧させたりクリックさせたりしているのです。

全米広告主協会(ANA)代表兼CEOのボブ・リオディス氏は、「我々は、こうした不正がどの程度行われているのか、これまで把握できていなかった」としたうえで、デジタル広告のエコシステム全体のために、広告主も、代理店も、メディアも、こうしたボット不正を減らすための行動をとらなければいけないと、ボットによる被害撲滅のためのアクションプランを提示し、行動を呼びかけています。

対応方法としては、たとえば次のようなものがあるとしています。

  • 日中など人が起きている時間帯にだけ広告を出す
  • トラフィック誘導に対しては透明性を要求する
  • 取引条件に、人間以外のトラフィックに関する記載を含める
  • 不正対策ポリシーを設定し、すべての外部パートナーに対して周知させる
  • 広告トラフィックに対する独立した(代理店などとは異なる組織による)モニタリングを行い、不正分析を継続的に行う

アクションプランはPDFとしてまとめた形で提供されています。

デジタル広告に関する不正は以前から懸念されていて、Web担でもGoogleの不透明な闇 vs 広告主の権利章典のような記事や、アドベリフィケーションに関する記事などを提供してきています。

しかし、ここまで大規模な広告主を巻き込んだ網羅的な調査は、世界でも初めてでしょう。

Web担では、全米広告主協会の許諾を得て、この資料の日本語訳を公開しました:

→ 日本語訳はこちらから「ネット広告関係者必見「デジタル広告詐欺の実態:ボットの現状」(全57ページ)を日本語で全公開

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