編集部が気になる! 最新テクノロジー

1か月で約5000人が利用、1プッシュ100円から購入できる「香水スプレー自販機」が多方面で期待されるワケ

100円から試せる香水スプレー自販機が商業施設で稼働。集客・認知拡大・データ取得を同時に実現する新しいマーケ手法に迫る。

小林 香織

7:05

イオンモール津田沼 サウスに常設導入された「パフューマティック」とAmulette 代表取締役 長田 寛太 氏(筆者撮影)

1プッシュから香水を購入できる自動販売機「PERFUMATIC(パフューマティック)」が、日本に初上陸した。商業施設のルクア大阪とイオンモール津田沼 South(サウス)に常設導入され、ルクア大阪では、設置1か月でのべ5000人近くが利用するなど好評だ。そこで、パフューマティックの国内唯一の正規代理店であり、総フォロワー20万人以上の香水メディアを運営するAmulette(アミュレット)の長田寛太氏に取材。パフューマティックの反響と、香水に限らない集客・販促の活用可能性を聞いた。

高額の香水を100円から購入、1台で5種類をラインアップ

拡大傾向の香水市場で、新たな体験サービスが登場した。香水を1プッシュから購入できるパフューマティックは1台で5種類までの香水を販売可能で、料金を入れてボタンを押すと、約0.12ミリリットル(1プッシュ相当)が霧状に噴射される。料金は、1回あたり100〜500円で中央値は200〜300円。交通系ICやPayPay、クレジットカードでの電子決済となる。

香水を購入できる自動販売機「パフューマティック」

スペインのPerfumatic Group BCNが開発した同製品は、密閉型スプレー噴霧技術による外気遮断と精密制御により香水の劣化や揮発を最小限に抑え、常にフレッシュな香りを体験できる。国際特許を取得しており、すでに世界65カ国以上で累計3000台以上が稼働している。国内でも「日経トレンディ2026年のヒット予測」で3位にランクインするなど、常設導入前から注目度が高かった。

海外と比較すると日本の香水市場は、まだまだ伸びしろがあります。かつ、日本人は“香り”以外の要素、たとえば「ブランド」や「誰が使っているのか」「どこで紹介されているのか」といった要素で香水を選ぶ人が多いです。そのため、ブランド力がある香水が好まれやすい一方で、こだわりのあるニッチなブランドやメゾン系のブランドは認知が広がらず、機会損失が生まれています。香りの文化を形成するにあたり、幅広く良いブランドを広めたいとパフューマティックの展開を始めました(長田氏)

国内の香水市場は拡大傾向だが、欧米などと比較すると伸びしろがあるという(アミュレット提供)

導入にあたり、日本の厳しい法律をクリアしなければならない障壁があった。香水は「化粧品」に分類されるため、小分け販売も含め薬機法が適用される。一方で、パフューマティックは噴射による体験のため「小分け販売」が適用されない。そこで、行政や保健所と「現在の薬機法に則った導入方法」や「薬機法が適用されない“体験”の位置づけでの導入」について慎重に協議し、導入を進めたという。

パフューマティックから噴射された香水は手首にまとう人が多いが、体験販売であるため、ムエット(試香紙)も置かれている。実際に試してみたところ、瓶から1プッシュするよりも広範囲に霧状で噴射され、香りを試すには十分な量だった。手首に付けてみたところ、数時間が経過した後の香りの変化も楽しめた。

「ルクア大阪」や「イオンモール津田沼」に導入、反響は?

駅直結の商業施設「ルクア大阪」では、2025年2月10日、国内で初めてパフューマティックを常設導入した。20〜40代の女性をターゲットに、販促を主目的に導入したところ、約1か月でのべ5000人近くが利用するなど、想定以上の反響を得ているという。

ルクア大阪では、お手洗い前に3台を設置している(アミュレット提供)

JR線とメトロ線に直結する地下1階、お手洗いの手前のスペースに3台を設置したところ、1日に約100〜200人が利用しています。海外では、通行量に対しての利用率が1〜3%と言われますが、ルクア大阪では約5〜10%が利用しています。立地の良さに加え、ターゲットと製品ラインアップの相性の良さも影響していると思います(長田氏)

ルクア大阪の自動販売機では、ブルガリ、フェラガモ、ヴァン クリーフ&アーペルなどのラグジュアリーブランドのほか、大阪では販売されていないニッチブランドも扱っている。ラインアップは約1か月ごとに入れ替える。知っているブランドを選ぶ人が多いのかと予想したが、「案外そうでもない」そうだ。

実は、ニッチブランドも多く利用されています。施設のターゲットが20〜40代の女性なので、利用者は女性の方が多いのですが、カップルや男性1人での利用も見られます。肌感では4人に1人が男性です。認知度向上をねらうニッチブランドにとって、ポップアップを行うよりも低価格で認知を広げられるのは、大きな魅力になります(長田氏)

3月18日には、同日に開業した「イオンモール津田沼 サウス」にも2台が常設導入された。設置されたのは、世界中から選りすぐった化粧品が集まる2階の「コスメーム」内だ。MZ世代をターゲットに、ディオールなどのデパートコスメから手頃なプチプラ、韓国ブランドまで垣根を越えたブランドを展開する。

イオンモール津田沼 サウスでは、コスメフロアの一角に2台を導入(筆者撮影)
同店では、最新トレンドを反映したコスメや理美容家電の体験コーナーを設ける(出典:京成電鉄・イオンリテールのプレスリリース)

画面上で約800種類の化粧品が試せる「ARバーチャルメイク」やミニチュアの化粧品が景品になっているUFOキャッチャーなど、最新トレンドも積極導入。そうしたコンセプトに、パフューマティックもハマったようだ。

同店も、集客を狙った販促物としての目的が強いと考えます。他の最新トレンドとあわせて若年層や化粧品への関心が強い層を呼び込み、館内全体の売上増につなげていくことを期待されているようです。まずは津田沼で反響を見て、他エリアのイオンモールへの導入も検討されるのだと思います(長田氏)

取材日は開業当日で、周辺は大混雑していた。コスメフロアにも女性を中心に多くの来客があり、早速パフューマティックを試す人もいたという。現状扱っているのは、ブルガリやフェラガモ、ゲスなどのラインアップ。話題性の高い施設であり、今後の集客にも期待できそうだ。

2日で900人が体験、イベント時の「集客」にも貢献

パフューマティックは、常設設置以外でも活用でき、すでに成功事例が生まれている。ルクア大阪で2月28日~3月1日に開催したメンバーズ会員限定のコスメイベント「LUCUA COSME FES~この春の“かわいい”はここから始まる!~」でも、“集客コンテンツ”として成果を上げたという。

2日間のイベントで約900人がパフューマティックを体験(アミュレット提供)

土日の2日間で開催された同イベントでは、モデル・タレントのアンミカさんとのコラボ診断や予約制のパーソナルカラー診断などの特別企画があり、その一つにパフューマティックがあった。ここでは有料ではなく、アミュレットの公式LINEアカウントに友だち登録することで、1人1回まで無料で体験できるようにした。

結果として、パフューマティックを体験した利用者は約76%が女性で、イベント会場のにぎわい創出に寄与したという。体験後のアンケートでは96%以上がポジティブな印象を示し、74.6%が「実際に使ってみたい」と回答した。

体験後のアンケートでは、74.6%が「実際に使ってみたい」と回答(アミュレット提供)

香水やコスメ以外にも、アパレルなど幅広い領域で活用可能性があると思います。現状は商業施設での事例が多いのですが、相談が増えているのが「スポーツジム」です。シャワーを浴びた後に香りをまといたい人は多いと想定されます。また、海外での導入実績が多いナイトクラブやバーからも問い合わせがあります(長田氏)

パフューマティックの本体は幅70センチ、高さ44センチ、奥行き18.5センチと小型で、電源コンセントがあれば稼働する。そのため、単発でのイベント利用も容易なのだという。

契約はリースをベースとしつつ、その形態はさまざまあるという。たとえば、リース契約で売上を施設側に計上する、リース料をディスカウントする代わりに売上をアミュレットに計上するなど。契約期間も柔軟に対応しており、上述したように利用料を無料にする運用も可能だ。なお、これらは施設との契約を想定したものだが、香水ブランドに対しては同社が設置した自動販売機への出店というシンプルな形式をとっている。

「利用実態」や「デモグラフィック情報」の取得も可能

アミュレットでは、パフューマティックを通じて取得できるデータを自社の事業に活用していくという。

自販機はリアルタイムでクラウドと連携されていて、「いつ、何時に、どの香りが、どのくらい使われたのか」と「決済手段」の情報が蓄積されています。まだ実例はありませんが、決済時に施設の会員アプリの会員バーコードを併せてスキャンする運用にすれば、デモグラフィック情報の取得も可能です。その他、機械に人体センサーを取り付けて、おおよその年代と性別、カップルなのか、1名利用なのかといった使われ方のデータ取得も可能です(長田氏)

取得したデータは、希望があれば各ブランドへの共有も可能だという。施設側へは、ブランドの許可が得られれば共有可能となる。さまざまなエリア、施設での香りの体験データを蓄積すれば、これまで見えてこなかった需要が見える可能性がある。

自動販売機を通じて得られたデータとオンラインのデータをかけ合わせ、マーケティング支援に活かすという(筆者撮影)

アミュレットでは、創業以前の2022年から香水をテーマに、Instagramなど各種SNSを運営しており、総フォロワーは20万人を超える。運営メンバーは、香水の販売経験者や香水に関する資格保有者で、実際に試した香水のみを投稿する方針もある。「ここまでの解像度で香りを扱うメディアはほぼなく、情報の質が明確な差別化になっている」そうだ。

アミュレットでは、総フォロワー20万人以上の香水メディアを運営している(AmuletteのInstagramよりキャプチャ)

さらに、パフューマティックで得られるオフラインのデータをかけ合わせれば、「国内でも希少な存在になれる」と長田氏は話す。

当社では、香りにまつわる豊富な情報を強みとして、大手ブランドや商業施設などのマーケティング・PR支援を事業の軸としています。最新事例では、3月25日〜4月7日に開催した松屋銀座のイベント「銀座 香り 物語り」の全体的なPR支援を担当しました。今後、オフラインのデータが蓄積されてくれば、より高い解像度でのマーケティング支援を提供できるようになり、これは当社ならではの武器と言えます(長田氏)

アミュレットでは、引き続きパフューマティックの拡大を進めており、年内に30台ほどの導入を見込む。香り・香水に関する情報やつながりを幅広く保有し、シンクタンクのような機能も備える唯一無二の企業を目指すという。

この記事をシェアしてほしいパン!

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る