基本編

カンタンな「割り算」で見えてくるサイトの数値目標

石井 研二(MILS)

2006年11月13日 8:00

—何を解析すればいいのかわからないあなたに—

Webサイトの“見える化”&“カイゼン”講座

カンタンな「割り算」で見えてくるサイトの数値目標

アクセス解析ソフトやサービスは解析の素材を提供するもの。それを使って、サイトの状態や課題を浮かび上がらせるのは、単純な「割り算」である。

集計結果からサイトの改善点を導き出すには

アクセス解析の目的は、あくまでもサイトの効果向上であり、数字を見ることではない。アクセス解析のソフトやサービスは、何らかの「解析結果」を出してくれるものだと思われているが、実はそうではない。単に、「解析する素材」を提供してくれるだけである。解析は、あくまで人の目と手で行うものである。

今回は、集計結果を使って、サイトの課題や目標を見つけ出す方法を習得しよう。

集計表の「行間を読む」

アクセス解析ソフトは、パソコンの画面に「多い順」で表を描く。訪問者数の多い順、ページビューの多い順、検索されたキーワードの多い順など、いわばランキングだ。人気投票のように、順位が高いほど偉い、なんて思っていたらサイトを適切に改善することはできないと思ったほうがいい。

表1を例に見てみよう。製品情報は、製品1よりも製品2がよく見られている。集計結果が「解析結果」だと思っていると、製品2よりも製品1のほうが訪問者に支持されていると読むだろう。しかし、実はそうとは限らない。続き(表2)を見てみよう。

表1 製品別の訪問数とページビュー数
  訪問数 ページビュー数
製品情報のトップページ 12,000 18,000
製品1のトップページ 10,000 11,000
製品2のトップページ 8,000 10,000
表2 製品詳細ページの訪問数とページビュー数
  訪問数 ページビュー数
製品情報のトップページ 12,000 18,000
製品1のトップページ 10,000 11,000
製品2のトップページ 8,000 10,000
製品2の詳細1 7,000 8,000
製品2の詳細2 6,500 7,000
製品1の詳細1 6,000 6,500

製品2では、製品トップページと製品詳細ページの見られ具合に差が少ないため、表の中で関連するページが連続して現れている。一方、製品1では、製品トップページはよく見られているが、製品詳細ページはあまり見られていないため、表の中で離れた場所に出ている。これは現実に多く見られる現象だ。この表を「解析」すると、訪問者に支持されて詳細情報まで読まれているのは製品2であり、製品1は一見人気があるように見えるが、詳細情報があまり読まれていないということは実際にはあまり支持されていないと考えられるのではないだろうか。これが、解析ソフトが出した集計結果から「行間」を読み取るということだ。

「製品1と製品2のどちらが支持されているか」というのは人気投票の発想である。今週は製品1が1位に返り咲き!なんて言っていると楽しいが、それでは「サイトをどう良くするか」には結びつかない。

製品1と製品2では対策ポイントが違うというのが建設的な結論だ(図1)。

どれが多いかではなく、どこにどんな対策を行えば良くなるかが課題なのだ。

製品1
製品情報の総合トップページで目立っているが、製品1の製品トップページが訪問者を詳細へ誘導していない。製品1の製品トップページを直して、もっと詳細ページを見せれば売れる!
 
製品2
詳細情報への関心は高いが、製品情報の総合トップページではあまり選ばれていない。製品情報の総合トップページを直して、もっと訪問者を呼び込めば今よりも売れる!
図1 集計表からページ別の対策ポイントが見えてくる

解析の基本はエクセルからまずはエクセルに貼り付けよう

解析ソフトの表を本当の解析素材として扱うには、エクセルに貼り付けるのが一番だ。ブラウザに表示された表をコピーして、エクセルのワークシートに貼り付けよう。そうすれば、表3のように並べ替えて、上の行との差を見ることができる。

表3 トップページと詳細ページの訪問者数の差
  訪問数 上の行との差
製品情報のトップページ 12,000  
製品1のトップページ 10,000  
製品1の詳細1 6,000 4,000
製品2のトップページ 8,000  
製品2の詳細1 7,000 1,000

これで落差が見えてくる。まさにウェブサイトの“見える化”である。

そして、エクセルで最初にやってほしいのは、ページビュー数を訪問者数で割ることだ。

視点を変えると見えてくるサイトの問題点と数値目標

たとえば、1か月のページビューが100万PV、総訪問数は50万訪問あったとしよう。すばらしい数字に見えるが、1つ単純な割り算をしてみよう。

1,000,000PV÷500,000訪問=2.0PV/訪問

1訪問あたり2ページしか見られていないことになる。多くのサイトでは、

製品情報

資料請求フォーム

確認画面

ありがとうございました

と、サイトが効果を上げるにはこうしたコンバージョンのために3クリック・4ページビューが必要とされる。平均2ページビューしか見られていないのでは、このサイトは効果的とは言えない。どこかにうまくいっていない点、改善すべきポイントがあるのだ。

訪問数やPV数を増やすことが目的ではないし、数字が大きいから偉いのではないのだ。同じ100万PVで20万訪問なら平均5ページだから、このほうがよほどコンバージョンは高くなると考えていいだろう。

ここで初めて、「数値目標」が見えてくる。「資料請求を増やしたい」という課題に照らすと、図2のように、ほかとの比較ではなく、自前の基準に照らして目標を持つことができる。しかも、プロモーション費用を掛けずに、今の訪問者数のままで効果を高められることになる。逆に言えば、今のサイトの問題点を放置していては、同じ15000PVを得るのに7500訪問と、1.5倍に訪問数を増やさなければならない。平均2ページのサイトのままではコンバージョンは増えないのだから、費用対効果は絶対に合わない。アクセス解析から正しい目標設定をすれば、無駄な対策やそのための費用は必要なくなるのである。

 

資料請求を増やしたいのだから、最低平均3ページは見られるべき。

現在
「5000訪問・10000PV=平均2ページ」
だから、これをまず、
「5000訪問・15000PV=平均3ページ」
にしよう。
図2 サイトの課題から目標を決めよう

 

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.2』 掲載の記事です。

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