AI活用でWebサイトを優秀な営業担当者へ。BtoBサイト制作「5つの新基準」とは?
成果を生まないBtoBサイトに共通する「失敗パターン」を解説し、AIの具体的な活用例や、成果を最大化するためのリニューアルの新基準を紹介
6月24日 7:05
BtoB企業のWebサイトは、長らく軽視されてきた。「どうせWebサイトだけでは売上を立てられない」と思われていたからだ。しかし、コロナ禍を経て、BtoBサイトの果たす役割は大きく変わった。
もはや購買行動の約7割は営業との接触前に完了していると言われる今、Webサイトに対する顧客の期待に、しっかりと応えられているだろうか。
「Web担当者Forum ミーティング2026 春」に登壇したタービン・インタラクティブの田伏毅浩氏は、「これからのAI時代に成果を生むBtoBサイトを作るには、“5つの新基準”を押さえるべきだ」と主張する。

成果を生まないBtoBサイトに共通する「失敗パターン」
「ものづくり王国」と呼ばれるほど製造業が盛んな名古屋の地で、1999年に創業したタービン・インタラクティブは、古参のWebサイト制作会社として、数々のBtoBサイト制作に携わってきた。田伏氏は、そのなかでよく目にしてきたBtoBサイトの失敗パターンとして次の5つを挙げた。
① サイト制作が目的化してしまう
Webサイトは「企業の顔」といわれるが、デザインばかりに気を取られると、「Webサイトリニューアル=見た目を整えるだけ」のプロジェクトになってしまう。サイトを訪れた見込み顧客の求める情報が不足しているため、当然、成果にはつながらない。
② 営業プロセスと接続していない
マーケティングと営業のプロセスが分断していて、統合的に最適化する仕組みがなければ、いくらWebサイトでPVやセッション数などのKPIを達成しても意味がない。マーケティングから渡したリードを営業がフォローして商談化してくれなければ、最終的なビジネス目標を達成することはできない。
③ コンテンツが作れない・続かない
Webサイトは鮮度が命である。リニューアルによって、どんなに“今っぽい”Webサイトに生まれ変わったとしても、コンテンツの更新が滞るとサイトの価値は落ちてしまう。
④ データが意思決定につながらない
Webサイトで収集したデータを部門横断で活用する仕組みがないと、部分最適で終わってしまい、大きな成果を上げられない。
⑤ ベンダー依存で業務を内製化できない
Webサイトをリニューアルする際に、リニューアル後の運用体制を考慮せず、ベンダーに丸投げしてしまうと、コンテンツの追加や修正などが必要になるたびにコストがかさむことになる。
これらの問題に加え、昨今では、「AIの使い所がわからない」という悩み相談も増えています。戦略の立案もコンテンツ制作も、なんでもAIに丸投げしようと考えるのは危険です。何かあってもAIは責任を取ってくれません。あくまでも「優秀なアシスタント」として活用するべきです(田伏氏)
成果を最大化するために、AIはどこで使うべき?
では、「情報収集→比較検討→意思決定」と進む顧客の購買プロセスのなかで、どのようにAIが使えるのか具体的な活用例を見てみよう。
① 情報収集(情報発信・集客)プロセス
- マクロ分析とターゲット選定:市場トレンドと自社のCRMデータをクロス分析し、注力すべきターゲットの優先順位づけや市場の特性分析などを行う
- 検索意図の調査やコンテンツ制作の補助:ターゲットが検索しそうなキーワードや検索意図(検索の背景にある課題)を調査し、記事の構成案やタイトルの候補を作成する
- サイト内回遊の支援:AIチャットボットを使って、Webサイトの訪問者が目的の情報に素早く辿り着けるよう支援する
② 比較検討(検討促進/リードナーチャリング)プロセス
- 顧客情報の拡充:CRM内のデータに加え、オンライン上で公開されている最新のIR情報やニュースリリースなどをAIが自動で収集して、見込み顧客のプロファイルを強化する
- 行動予測と1to1アプローチ:見込み顧客のサイト内行動を分析し、今アプローチすべき顧客をAIが予測。さらに、その行動に応じてメールの文面も随時AIが個別最適化する
- 営業資産のアップデート:顧客からのよくある質問をAIに学習させ、FAQの拡充案や競合比較資料の改善案を生成する
③ 意思決定(営業・商談)プロセス
- 高度な企業リサーチ:初回訪問前に、訪問先企業の決算資料や世界情勢などをAIにまとめてもらい、その企業が直面している課題を下調べしておく
- 提案資料やトークスクリプトの作成:競合を意識した自社の強みの打ち出し方や、商談時のトークスクリプト、提案資料のたたき台などをAIで生成する
- 議事録作成と次の提案への活用:商談時の議事録をAIで作成するとともに、次回の提案に向けてアプローチ方法をAIとともにブラッシュアップする
これらの活用法は、あくまでも一般的なユースケースだ。実際には、各社の商材や商流、販路や顧客との接点の持ち方などにあわせて、自社流にカスタマイズしていくことが不可欠である。
BtoBサイトのリニューアルで押さえるべき「5つの新基準」
ここからは、AI時代のBtoBサイトリニューアルの新基準を5つ紹介していこう。
新基準① AIができることと、人間がやるべきことの役割分担を適切に
AIが得意なのは「高速なデータ処理」だ。ペルソナの一次生成、競合比較の要点化、課題仮説の初期アウトライン生成、カスタマージャーニーの仮説生成などを高速化してくれる。
だが、それだけではいけない。そこからさらに深掘りしたり、意思決定したりするのは人間の役割だ。AIの出力を鵜呑みにせず、営業や製造の現場のメンバーが持つ「顧客の本音」や「決定打となったトーク」などの一次情報を組み合わせることで、実効性のある施策を打っていく。最終的な顧客理解は“AI×現場”のハイブリッドで行うことが肝心だ。
新基準② Webを“営業プロセスの一部”として設計する
昨今のBtoB企業における購買プロセスは、営業担当者との接触前に約7割まで終わっていると言われている。オンラインであらかたの情報収集を終えて初めて問い合わせるため、最初の商談時点でほぼ勝負は決まっているのだ。
そのため、BtoB企業のWebサイトは、これまでのような広報目的のお飾りのままではいけない。顧客の購買フェーズに合わせたコンテンツを適切に提供できるよう、Webサイトを1人の営業担当者として設計し直す必要がある。
新基準③ リニューアルは“改善サイクル前提”で設計する
Webサイトの公開はゴールではなくスタートだ。サイトリニューアルで燃え尽きて、その後、更新が止まってしまうと、Webサイトのビジネス価値はどんどん減衰していく。むしろ、最初は最低限のコンテンツだけで公開し、効果検証をしながらコンテンツを拡充していくほうが良い。
新基準④ “成果につながるサイト構造”をAIで最適化する
BtoBサイトでありがちなのが、自社が伝えたい情報に偏ることだ。営業担当者が顧客と対面でWebサイトを見せ、口頭で補足しながら商談を進めるケースを想定しているのかもしれないが、見込み顧客が自らオンラインで情報収集する際には、それだけでは足りない。見込み顧客が何を知りたくて自社サイトに来ているのかをしっかりと見極め、「自社が伝えたいこと」と「顧客が知りたいこと」をバランスよく配置するよう、情報設計を見直したい。
新基準⑤ AI時代の制作パートナーの条件は「作る力」から「伴走する力」へ
最近は、ツールの進化により、CMSやMAに大きな機能差がなくなってきている。そのため、機能の数やアウトプットの美しさ(見た目)だけでツールを選ぶと失敗する。特定のツールに固執せず、他システムとの連携も含めた大きなエコシステムのなかで最適なツールを選定・運用できる制作パートナーを選ぶといい。
制作パートナーの選定時には、以下の3つのポイントを重視するべきだ。
- AIを前提としたワークフローの設計力があるか
- Web/マーケ/営業/データを統合する力があるか
- リニューアル後の運用改善の「伴走力」があるか
田伏氏は最後に、「コンテンツ制作の内製化やAI活用を見据え、業務フローやサイトの運用フローまでを一緒に設計できるパートナーを見つけてもらいたい」と語り、AI時代のWebマーケティング戦略とコンテンツ制作をテーマにした自社セミナー「AI時代のBtoB Webリニューアルとコンテンツ戦略:実践の新しい基準」をアピールして、セッションを締めくくった。