GA4レポートをGeminiで効率化! 自社の軸を持ったプロンプト術
アナログだけれど最強に実践的な「データポータル×Gemini」の手作業連携術と、分析の精度を劇的に上げるプロンプトの考え方を解説。
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【この連載について】
この連載では、「1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本」を執筆されているウェブ解析士のみなさん(GA4アベンジャーズ)を中心に、初心者が引っかかりがちな疑問・トラブル解決の基礎知識から、知っておきたい役立ちノウハウ、解析の設定事例、個々の機能解説、最新のホットな話題までをお届けします。
今回は、サンカクカンパニー取締役、ウェブ解析士マスター、国家資格キャリアコンサルタントとして活躍する伊村ミチルさんによる解説です。
【今回のポイント】
GA4での分析にAIを利用する2つの方法「標準機能インサイトの利用」「生成AIに出力データを読み込ませる」
Geminiの「無料版」と「有料版」の違い
データのセキュリティ設定と「オプトアウト」が重要
精度を上げるポイント
実践プロンプト例
具体的なレポート作成とコメント生成プロンプト

いろいろな作業がAIでできるようになってきている昨今。最近では「MCP(Model Context Protocol)サーバを使えば、AIとGA4などの外部ツールが直接連携できる!」と解析士やマーケターの間で大きな話題になりました。
しかし、実際に試そうとするとAPIの設定や環境構築などエンジニアリングの知識が求められ、「ひと手間どころか、ハードルが高すぎて自分には無理だ……」とそっと画面を閉じてしまった現場のご担当者も多いのではないでしょうか。
本コラムは、まさにそんな方々のための記事です。「小難しい設定やプログラミングはいっさいなし」で、もっと気楽にAIを使ったワンランク上のレポートを作りたい方に向けて、今回はアナログだけれど最強に実践的な「データポータル×Gemini」の手作業連携術と、分析の精度を劇的に上げるプロンプトの考え方をお伝えします。
GA4での分析にAIを利用する2つの方法(2026年5月現在)
GA4での分析にAIを利用する方法は、現在大きく2つあります。
1. GA4の標準機能「インサイト」の利用
- 自動インサイト:
GA4のAIが自動で「コンバージョン率が急落しました」といった情報を発見して提示してくれます。しかし、何を基準でどうして出るかという定義をしないまま通知されるため、自社のビジネス状況に合致するかどうか、人間の目での確認が必要です。

- カスタムインサイト:
「特定のキーイベントの数字が〇を超えたら通知する」等の設定ができますが、現状は自動通知機能レベルであり、本格的な「AI分析」と呼ぶにはもう一歩という感触です。
カスタムインサイトの作成方法
(1)GA4のホームページで、[インサイト]セクションまでスクロールします。
「すべての統計情報を表示する」をクリックしてInsights画面を表示し、「新規」をクリックします。
(2)「カスタムインサイトを作成」画面で条件を設定し、「インサイト」を作成します。
※現状では「何かあったときの通報」レベルなので、深い分析として活用するには難しいレベル感です。今後の発展を期待しましょう。
2. 生成AIにデータを読み込ませる(おすすめ!)
GA4のデータをCSV等で出力し、外部の生成AI(ChatGPTやGeminiなど)にアップロードして成形・レポート出力まで指示する方法です。
筆者もこれに近い使い方を行っています。実際には、GA4のデータを毎回CSV出力するのではなく、もともと作ってあったデータポータルのレポートを利用して、そのレポートのコメントをGeminiに作ってもらうということが多いです。
下記は、実際にデータポータルで作成したレポートの一部と、それをGemini(有料版)に読み込ませたときのイメージです。
Geminiの「無料版」と「有料版」の違い
実際にAIにデータを読み込ませる前に、現在(2026年5月時点)のGeminiのバージョンとプランについて少し触れておきます。読者の皆様がどのプランを使っているかによって、AIから返ってくる分析コメントの「深さ」が少し変わってきます。
無料版Gemini
日常的な利用には十分すぎる性能を持っています。基本的なグラフの傾向(アクセスが上がった・下がった)の読み取りや、シンプルな要約であれば無料版でも十分にこなせます。「まずは気楽にAIに触れてみたい」という方のスタートラインとして最適です。
有料版Gemini Advanced(Google One AIプレミアムプラン等)
より高度な推論能力を持つ上位モデルが搭載されています。本コラムで紹介するような「中期経営計画を踏まえて」「IRの視点から課題を出して」といった、複雑な文脈やロジックツリーを深く理解し、プロのコンサルタントのような鋭い示唆を出す能力に長けています。また、一度に読み込めるデータ量(数十ページのPDFや大容量のCSVなど)も有料版の方が圧倒的に優れています。
本コラムの実践編では、より高度な示唆を得るために有料版を使用した結果のキャプチャをご紹介していますが、プロンプト(指示文)の考え方自体は無料版でもまったく同じように使えます。まずはご自身のアカウントで、できる範囲から気楽に試してみてください。
とても重要:データのセキュリティ設定と「オプトアウト」
GA4のデータを生成AIに読み込ませる際、もっとも気をつけなければならないのが「データがAIの学習に利用され、外部に漏洩するリスク(情報漏洩リスク)」です。特にGoogleの「Gemini」を利用する場合、使用するGoogleアカウントの環境によってデータの扱いが大きく異なるため、必ず事前に設定を確認してください。
ケース1:GA4とGeminiを「同じGoogleアカウント」で使う場合(基本)
多くの場合、GA4にログインしているアカウントと同じアカウントでGeminiを立ち上げて作業することになります。この場合の注意点はアカウントの種類によって異なります。
企業のGoogle Workspaceアカウント(有料ライセンス)の場合
「Gemini Business」や「Gemini Enterprise」などの環境であれば、入力したデータは標準で保護され、AIの学習データとして使用されることはありません。社内データも安心して読み込ませることができます。
個人のGoogleアカウント(無料版、またはGoogle One AIプレミアムなど)の場合
標準設定のままだと、入力したデータがAIの学習や、Google側の人間によるレビューに利用される可能性があります。そのため、必ずGeminiの設定画面から「Geminiアプリのアクティビティ」を「オフ(無効)」に設定(オプトアウト)してください。オフにすることで、データが学習に利用されるのを防げます。
ケース2:GA4とGeminiで「別のGoogleアカウント」を使う場合(要注意!)
「社内のGA4にはアクセスできるが、社内環境でGeminiの利用が制限されているため、個人のGoogleアカウントでGeminiを立ち上げて分析させる」といったケースがこれに該当します。この場合は、さらに厳重な注意が必要です。
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- 個人アカウント側のオプトアウトを絶対に忘れない
データを読み込ませる先は「個人のGemini」になります。上記と同様に、個人アカウント側で「Geminiアプリのアクティビティ」が確実に「オフ」になっていることを確認してください。 生データ(CSV)の扱いに注意し、マスキングを行う
万が一の設定ミスに備え、個人アカウントに会社のデータを渡す際は、顧客の個人情報(PII)はもちろん、社外秘のプロジェクト名や具体的な取引先名などがCSVデータに含まれている場合は、必ず該当の列を削除するか、別名に置き換える(マスキングする)などの前処理を行ってからAIに読み込ませてください。社内のセキュリティポリシー(シャドーIT)の確認
そもそも、会社のデータを個人所有のアカウントに転送して処理すること自体が、企業のセキュリティガイドラインに抵触する恐れがあります。まずは社内の規定を確認し、必要であれば会社にビジネス用のAI環境を用意してもらうよう申請することをおすすめします。
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※「AIは便利だし、自分のデータはすごいものではないからAIに読み込まれないだろう」と考えるのではなく、こうしたセキュリティの壁を正しく理解して対策することこそが、企業のWeb担当者としてワンランク上のツール活用への第一歩となります。
精度を上げるポイント:AIに「何のための分析か」を理解させる
無料版でも有料版でもそれなりのコメントは出てきますが、そもそも「何のための分析か」が定まっていないと、「キーイベントの増減」「セッションやPVの増減」にとどまった表面的なコメントになることが多い印象です。
AIに指示をする前に以下のポイントを明確にすることで、ワンランク上のレポートが作成できます。
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- この企業にとって、ウェブサイトはどういう役割をするかを明確にする(社内で統一見解を持つ)
- それに沿って、ロジックツリーを作る(AIに作らせることも可能ですが精度の確認が必要です)
- 中期経営計画等、会社が大事にしていることを確認する(上場企業等であれば、経営陣の意向をロジックツリーに反映し、AIのソースとしても利用します)
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実践プロンプト例:ロジックツリーの作成
あなたはプロのWebコンサルタントです。
当社のウェブサイトの主な役割は「〇〇」です。この目標を達成するためのロジックツリー(KGIを頂点とし、それを構成するKPIに分解したもの)を作成してください。
実践プロンプト例:経営計画の反映
あなたはプロのWebコンサルタントです。
親会社の中期経営計画の抜粋(以下のテキスト)を踏まえ、当社のウェブサイトが果たすべき役割と重要指標(KPI)を再定義し、分析の軸となるロジックツリーを提案してください。
企業で必須のレポートの要素を定義
ここでは、月間レポートのもっとも一般的な要素をお伝えします。これらをデータポータル等で可視化し、Geminiに読み込ませていきます。
具体的なレポート作成とコメント生成プロンプト
データポータルで上記の要素を出力し、画面キャプチャやPDF化したものをGeminiに読み込ませてコメントを作成させます。筆者が実際に作成した年間アクセス解析レポート(IRや採用要素を含む)でも、以下のようなプロンプトを使用しました。
各ページのコメント生成プロンプト例
あなたはプロのWebコンサルタントです。
以下の前提条件(対象企業のウェブサイトの役割、IR・採用などの重要ターゲット層、中期経営計画の抜粋)を踏まえ、添付したレポート画像(またはCSVデータ)を分析してください。ロジックツリーに沿った分析にすることが必須です。
各ページ(指標)について、以下の観点で数行のコメントを記載してください。1. 数値から読み取れる客観的な事実(良かった点・悪かった点)
2. IRや採用といったビジネス目的に照らし合わせた具体的な課題感
3. 来月以降のアドバイスや改善施策
まとめページ用のコメント生成プロンプト例
全体のデータを踏まえ、経営陣に向けて以下の観点でサマリーコメントを記載してください。
1. 全体的なアクセス傾向とAI検索時代に向けた専門的コンテンツの必要性
2. IR視点での中長期的な対話型コンテンツへの転換について
3. 採用視点でのスマホシフトや採用力底上げについて
Gemini(有料版)でアウトプットされた例
このように、事前に「企業の軸(ウェブサイトの役割)」をしっかり伝えておくことで、単なる数字の増減だけでなく、次にとるべきアクション(専門コンテンツの拡充や採用ページの導線改善など)にまで踏み込んだ示唆を得られます。このテキストをそのままデータポータルのテキストボックスに貼り付ければ、説得力のある定点レポートが完成します。
さらにNano Banana 2にこの文章を入れて、まとめの画像を作ってくださいと伝えたところ、下記のようなアウトプットが出てきました(日付はどこから生成されたか不明)。
一見よさそうですが、特段の意味があるか(次の具体的行動、施策に移行できるか)というと少し難しいという感触です。これを最終的なアウトプットにするためにはプロンプトで何度もやり取りが必要な状況なので、もう少し進化を待つか、プロンプト力を高めることが必要そうです。
まとめ:「AIは使えない」と諦める前に。AIとの“対話”で自分の思考を深めよう
「プロンプトを入力したのに、グラフが入った綺麗なレポートが一発で出てこない」「トンチンカンな回答が返ってきた」。そんな経験から、「なんだ、今のAIはまだ使えないな」と画面を閉じてしまった方もいるかもしれません。
確かに現状のAIは、データを投げるだけで完璧なビジュアルレポートを全自動で吐き出してくれるような存在ではありません。しかし、だからといって使わないのは非常にもったいないことです。
今、もっともおすすめしたいAIのベストな使い方は、「AIを優秀なアシスタント(壁打ち相手)として捉え、いっしょにレポートを最終化していく」というアプローチです。 自社のビジネスの軸を定め、セキュリティに配慮してデータをアップし、「自分はこう思うけれど、別視点からの課題はある?」とこちらの考えを伝えながら対話を重ねてみてください。
よく「AIに頼ると人間が考えなくなる」という声も聞きますが、筆者の実感はまったく逆です。AIと会話し、出力された結果に対して「もっとこういう切り口はないか」「自社の状況ならどう解釈すべきか」と試行錯誤を繰り返すことで、むしろ自分自身の分析スキルや思考がより深く、研ぎ澄まされていくのを感じています。
一発で完璧な答えを求めるのではなく、AIといっしょに考えを深めていく。今はまさに、そんな壁打ちを通して「自分自身のスキルアップ」ができる絶好のタイミングです。ぜひ、今日から気楽な気持ちで、AIといっしょにアクセス解析の新しい扉を開いてみてください。きっと、思いがけない発見があるはずです。
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