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ネットショップ担当者フォーラム 特選記事

「僕ら毎日謝ってるだけですよね……」。つらいカスタマー業務を変えた「atmos」の業務改革

vol.6 東京のスニーカーシーンを世界に発信する「atmos(アトモス)」

この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。

2002年、東京・原宿に誕生したスニーカー セレクトショップ「atmos(アトモス)」。最先端のスニーカーやウェアを発信し続け、現在の社員数は200人弱。都内に11店舗、タイや韓国にも出店している。オンラインショップは本店サイト以外に楽天市場、Yahoo!ショッピングなど数店舗運営している。

ナショナルブランドとのコラボレーションや限定モデルなど、オンラインとリアル店舗の両軸で、一般層からもマニア層からも高い支持を受けている「atmos」。コンセプトは「都市生活者のライフスタイルにスニーカーを取り入れる」こと。「通勤時にもスニーカーを」と提案している。東京のスニーカーカルチャーを世界に向けて発信しているショップだ。

外部スタッフとのパートナーシップで運営

atmosの商品

お話をうかがったのは、Web/ECビジネス事業部 カスタマーサービス課・課長の塩澤拓也さん。Web/EC事業部は15名ほどの体制。商品ページの制作、画像加工、マスター登録などが主な業務で、6名が顧客対応・受注を行っている。「atmos」のバックヤードの特徴は、外部パートナーとのチームワークにある。在庫管理から電話やメールの対応まで、外部スタッフのチームとタッグを組んでオペレーションを回している。

問い合わせを担当しているのは、カスタマーサポート業務専門のプロフェッショナル。だがatmosで扱う商品は専門知識が必要とされる。その点には苦労があった。

弊社で扱う商材や仕組みがちょっと特殊なので、単純に「電話が来たら受けてください」とは頼めません。そこで、効率的に問い合わせに対応できるように、お客さまからの問い合わせ内容をデータ化しています。納期に関するお問い合わせは全体の何パーセントくらいなのか、不良品のお問合わせは何パーセントくらいなのか、わかるようになりました。(塩澤さん)

atmos Web/ECビジネス事業部 カスタマーサービス課・課長 塩澤拓也さん
Web/ECビジネス事業部 カスタマーサービス課・課長 塩澤拓也さん。塩澤さん自身も大のスニーカー好き。フランスに住んでいた頃にヨーロッパのスニーカー事情を知り、地域によって異なるスニーカー文化を持っていることに驚いたという。好きなスニーカーは、Nikeのダンク

外部スタッフに「アウトソーシング」すると考えるのではなく、あくまでも「パートナー」として同じ方向を向いて仕事をするのがatmosのやり方だ。パートナー企業との協業が始まった理由は、「社員には“どうやったらお客様により良いサービスを提供できるのか”“売り上げを伸ばすにはどうしたらいいのか”ということを考えてもらいたい」という会社の方針があったからだ。現在はそうした体制になるべく、少しずつ改革を進めている段階だという。

こうした取り組みが始まったのは4年前。まずは自社で行っていた入荷、在庫管理、出荷を倉庫会社に委託した。そこから少しずつ「次は何を効率化できるだろうか」と試行錯誤している。

楽天市場やYahoo!ショッピング、LOHACO(ロハコ)や自社サイト等の受発注は僕らが管理しています。システムで全オーダーを確認して、集計した数字を倉庫さんに伝えて出荷してもらう。倉庫にないものはメーカーから取り寄せるといった処理になるんですが、Excelのツールを使って、ボタンを押すだけで発注できるようにしています。社内にプログラマーがいて、簡単なことだったらできるというので作ってもらいました。(塩澤さん)

atmosの商品
メジャーブランドの限定アイテムも数多く取り扱っている

現在は、店舗などの在庫も合わせて管理できるシステムを開発中。効率化が進むatmosだが、数年前まではすべて手作業で行っていたのだという。

7年前までは受発注作業をすべて自分たちで、しかも手作業でやっていました。朝の9時に出勤して、マス目が振ってあるコピー用紙にその日のオーダーを手書きして、商品名と品番、サイズ、点数などを各店舗にFAXしていたんです。やってもやっても終わらなくて、打ち合わせが夜の9時からになってしまったり、つらい状況が続いていました。

たくさんのスタッフが辞めていったし、入社したスタッフも「僕ら毎日謝ってるだけですよね」と言って次の日から来なくなったり……。そんなアナログなやり方が限界にきて、在庫が確保できないこともよくありました。そこから変革の機運が上がったんです。(塩澤さん)

現在は効率化によって残業や休日出勤もなくなり、社内の雰囲気もガラリと変わった。

atmos社内の風景
「日々メールや電話でやりとりはしていますが、月に1回、顔を合わせて状況を報告し合う定例会を開催しています。お互いに、電話だと伝わらないと思って言い出せないこともありますから。いろんな部門の方と話をしつつ、変えられることを変えていくという感じですね。少しずつ、信頼関係を築いています」(塩澤さん)

お客様のためのチャレンジングな在庫管理

atmosの強みはマニアをうならせる通なラインナップ。充実した品揃えを維持するために、メーカー、倉庫、店舗などをまたがって在庫を管理しなければならない。

倉庫にあるのは基本的にはシーズン前に展示会などでオーダーしたものです。商品がメーカーにある場合もあるので、その商品がメーカーにあるのか、倉庫にあるのか。宝探し感がありますね(笑)。流れとしては注文データを見て、まず倉庫を確認し、倉庫にないものはメーカーさんから取り寄せて出荷します。自社店舗の在庫は、営業終了後に有効な在庫を確定し、店舗の商品を回収して倉庫から出荷しています。(塩澤さん)

atmos社内の風景
倉庫があるのは埼玉県上尾市。ビル一棟がファッションに特化した倉庫だ

メーカーと店舗など、複数箇所での在庫管理はリスクが伴う。あえて大変な方法を選ぶ理由は何だろう?

やはりお客様のためというか、より多くの方に見てもらって、お客様が注文しやすいところで注文して欲しいからです。楽天市場の会員さんは楽天市場で注文されるでしょうし、Yahoo!ショッピングの会員さんだったらYahoo!ショッピングで注文されますよね。そこで、できるだけ商品をご用意できるようにしようというのが弊社の方針なんです。

営業終了後に店舗の在庫を追加することについては、店舗からもWebショップからも反対を受けました。「売れるものはお店に置きたい」という店舗側の思いと、「お店が閉店する22時まで対応しなくちゃいけないのか」というWebショップの不満があって……。そこで、自動で在庫数を吸い上げるプログラムを作り、今は手間がかからなくなりました。どの部署ともすごく協力的な体制ができました。(塩澤さん)

社内の工夫で売上が伸び、さらに顧客の満足度も上がった。塩澤さんのやりがいも大きくなった。

atmos社内の風景

スニーカー好きが集まるバックヤード

Web/ECビジネス事業部 カスタマーサービス課スタッフの木村将太さんにも話を聞いた。木村さんの担当は受注業務。やはりかなりのスニーカー好きだ 。オフィシャルサイトの「atmos-tokyo.com」をメインに担当している。

一日の流れは、9時半に出社して、受注データのチェック、ページビューなどデータのチェックと報告を行います。そういったデータをサイトにどう反映するかが課題ですね。

それが終わったら次は問い合わせ対応です。オフィシャルサイトなので、商品の発売時期や商品そのものについてのお問い合わせがモールの店舗より多いんです。対応のステータスや回答はスタッフで共有してノウハウをためています。スニーカーについて、お客様のほうが僕らより全然詳しいこともあります(笑)。(木村さん)

atmos Web/ECビジネス事業部 カスタマーサービス課スタッフの木村将太さん
Web/ECビジネス事業部 カスタマーサービス課スタッフの木村将太さん。入社は4年前。インターネットの仕事は初めて。店舗希望だったがWeb事業部に配属された

繁忙期はクリスマス。その時期には「クリスマスに間に合わない」「汚れがあって渡せない」といったクレームが増えるという。

スニーカーのギフトは男性と女性の比率は同じくらいです。「間に合わなくて恋人にフラれてしまった」というクレームをいただいたことがあり、心が痛みました。期日があるものなので、気を使いますね。(木村さん)

atmosの商品
「みんな靴が好きなので、発売される靴の情報をみんなワイワイ言い合うのがすごく楽しいんです。それがやりがいになりますね」(木村さん)

若い世代のスニーカー観が変わった

塩澤さんはいま、スニーカー文化にちょっとした危機感を持っている。80年代はエアジョーダン、90年代はハイテクスニーカーというように、これまでさまざまなスニーカーブームがあったが、今の世代のスニーカー観はちょっと違っているという。

いま感じているのは、若い世代で靴やスニーカーに強い思い入れを持つ人が、あまりいないんじゃないかということです。僕ら30代のスニーカー好きは、とにかくスニーカー命で「足首から上は気を使わない」というような感じでしたが、今の若い人にとって、スニーカーはあくまでファッションの一部。トータルコーディネートの中で機能するものと考えているようです。(塩澤さん)

atmosの情報発信はSNSが中心。実店舗とWebショップのあり方も、今後は変わってくるだろうと塩澤さんは語る。

ファッション情報の中心がSNSというのは間違いありません。セールの告知や人気商品の販売時期、抽選や先着順などの情報をSNSで発信すると、それを見た人が店舗やWebに来てくれます。最近、atmosの実店舗がすごく増えていて、そうするとWebショップの存在意義も変わってきます。今後は自社サイトの注文商品を最寄りの店舗で受け取れる、というようなこともできるんじゃないかなと思っています。(塩澤さん)

atmosの商品

オリジナル記事はこちら:「僕ら毎日謝ってるだけですよね……」。つらいカスタマー業務を変えた「atmos」の業務改革(2018/07/03)

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