近年、急成長を続けるDtoC市場。「DtoCでどのように売り上げを伸ばせるのか」「どんな施策を打ったら良いのか」といった疑問や悩みについて、「b→dash」を提供するデータXの江波戸水紀氏が解説した。
DtoCは事業者と顧客双方にとって魅力的なビジネスモデル
DtoCの市場規模は右肩上がりに成長している。売れるネット広告社が実施した調査によると、2025年に国内DtoCの市場規模は3兆円を超えると予測する。拡大の理由は、事業者と顧客の双方にとって非常に魅力的なビジネスモデルだからだという。
従来型の小売業とDtoCモデルの違い
メーカー系小売企業にとって、DtoCのメリットは、売り上げの最大化、中間マージンの削減などがあげられる。一般的なメーカー系企業であれば、卸売業者や小売業者へ商品を卸すため、卸売価格での販売となる。DtoCであれば、直接消費者に販売できるため、いわゆる中間マージンを削減し、売り上げを最大化できる。
また、ECモールや実店舗で販売する場合、出店費用やアローワンスなどのコストがかかるが、DtoCモデルは自社でECを立ち上げれば、消費者に直接販売するため中間マージンなどは発生しない。コストを削減できる分、販売価格を下げることも可能だ。その結果、顧客は最適な価格で商品を購入できるようになる。
データ活用によって顧客のニーズに沿ったアプローチが可能
さらに、データを活用したマーケティングができることが、DtoCモデルの大きな魅力の1つだ。卸売やモール出店では細かな顧客データは取得できないが、DtoCの場合、消費者が直接DtoCサイトに登録するので、自社で顧客データベースを持つことができる。従来であれば間接的な広告施策しかできなかったが、DtoCモデルではデータを生かしたダイレクトなマーケティング施策を行える。
つまり、事業者側は手数料を削減しコストを最小限に抑えながら、データを活用したマーケティング施策ができるようになる。消費者側は、適切な購買価格でニーズに適したアプローチを受けることができるのだ。
データ活用によって購買頻度を上げ、売上増が期待できるDtoCモデルは、事業者、顧客双方にとって非常に魅力的。だからこそ、多くの企業が取り組み始め、市場規模が拡大している。(江波戸氏)
データX Marketing Unit Manager 江波戸水紀氏
菓子販売企業の事例から見るデータ活用
DtoC事業を成長させるためにはどのような施策が必要なのだろうか。江波戸氏が所属するデータXでは、データの取得から活用までをノーコードで行えるSaaS型データマーケティングソリューション「b→dash」を10年以上展開している。
顧客情報や購買データに基づいたメールマーケティングやLINEマーケティングのほか、サイト上でポップを出し分けるといったWeb接客の管理もでき、累計1000社以上が導入している。そのうち3割~4割がアパレルや化粧品、食品系などのDtoCをはじめとした小売企業だという。
ここからは、「b→dash」を活用して売り上げアップ、顧客満足度向上を達成した実際の成功事例を紹介する。
「b→dash」を導入したA社の事業概要
自社製造の菓子などをDtoCモデルで販売しているA社では、EC売上アップをめざしてデータを最大限に生かしたマーケティングを行った。その結果、LTVを120%向上させることに成功した。A社が実施した手順を、以下のステップ1からステップ5で解説する。
ステップ1:カスタマージャーニーの設計
A社がまず行ったのがカスタマージャーニーの設計だ。まず顧客の行動パターンを整理した。
A社のカスタマージャーニー
上図の訪問、会員登録、商品閲覧、カート投入、購買というステップにおいて、次第に小さくなる三角形は顧客の数を表している。購買に近づくほど少なくなるが、購買してから他の人に商品を推奨したり、リピート購入やクロスセルしたりすることによって、三角形が再度広がっていく。このように、売り上げが伸びていく理想的な全体像をまず可視化した。
ステップ2:施策を考える
顧客の一連の動きを可視化し、最初の施策を打った。たとえば、サイトに訪問したものの会員登録のみでまだ一度も買っていない消費者に対しては、ランキングメールを送付。これからサービスについて理解を深めてもらう顧客層に、まずは一番人気のある商品を案内した。
ほかにはバースデー施策。誕生日を迎える顧客に対して自動的にアプローチしていく。当月誕生日を迎える消費者に対して、まずバースデークーポンをメールで配信し、その後メールを開封したかどうか、クーポンが使われたかどうかを見ていった。
単純に誕生日だからクーポンをプレゼントするのではなく、配布したクーポンを使ってもらい、しっかり成果を出すところまで並走することがポイント。(江波戸氏)
メールの開封状況やクーポンの使用状況も確認する
メール未開封の消費者にはもう一度同じクーポンを送付。開封したが購買に至ってない顧客には、クーポンの期限を伝えることで購買意欲を高めていった。バースデー施策は年に1回しかないチャンスなので、この機会に発行したクーポンを使ってもらい、成果につなげることが重要という。
ここまでしっかりシナリオを組めている企業は意外と多くない。カスタマージャーニーで1つひとつのステップを描くことが非常に重要だ。(江波戸氏)
ステップ3:レコメンド
次に、閲覧商品からのおすすめを訴求する閲覧レコメンドを実施した。
おすすめ情報で初回購入を促す
実際にWebのアクセスログデータを活用しながら、顧客がサイトで見た商品や関連した商品をメールに差し込んだ。
ステップ4:カゴ落ちリマインド
商品を閲覧してからまだ購入してない顧客に対しては、翌営業日以降にリマインドメールを配信。さらに、カートに入れたが購入していない顧客には、カゴ落ちのリマインドメールでアプローチしていく。
ステップ5:レビュー投稿・F2転換の促進
カゴ落ちの後、購入にまで至った消費者には、レビュー投稿や他の人に紹介してもらえるような施策や、2回目、3回目の購入を促進するような施策を実施した。
2回目購入のない顧客へのアプローチ例
たとえば、1回目の購入から3か月経っても2回目の購入がない消費者には、上の図のような形でアプローチ。この定義は企業によって異なるが、もう一度買ってもらうことでLTVを引き上げていく。
また、メールを見ていないがLINE連携はしている消費者に対しては、LINEのメッセージだけを送ることで配信コストを下げつつ、顧客が最も見ているチャネルでしっかりアプローチしていく。
メールが未開封にもかかわらずメールでアプローチしても意味がない。また、メールとLINEの両方から同じ内容でアプローチすると、しつこい印象を抱かれてしまう。データを使い分けて、アプローチしていくことが必須と言える。
カスタマージャーニーをしっかり描きながら、データを活用してお客さまに沿ったコミュニケーションを取る。それによりLTVを上げていくことができるのが、DtoCモデルの最大のメリット。(江波戸氏)
早期に成果を上げられる「オンボーディングプログラム」
DtoCモデルでは、各社の商材や単価に合わせたさまざまな施策を打つ必要があるが、そういった施策を実行しようとしても「なかなか良い施策を社内で思いつかない」「自分たちだけで準備できるのか」と悩むケースも多い。
そこで「b→dash」では、早期に成果創出を実現させる独自の「オンボーディングプログラム」を提供している。具体的には、顧客企業を業界、業態ごとに分け、データXの1000社以上の導入実績から、ベストプラクティス施策と分析を提供する。
オンボーディングプログラムで対応できる業種の一覧
たとえばECであれば、シナリオが40個、Web接客が22個、分析が22個のベストプラクティスがある。「この業界ではこの施策をやった方がいい」というノウハウを提示するとともに、施策に必要なデータも一緒に定義できる。
オンボーディングプログラムの施策の例
また、プログラミング言語のリテラシーが求められるケースも多いため、データの加工・統合やセグメントの作成といった作業はデータXで代行可能だ。
最初の施策を打つまではとにかくスピーディーにやる。代行作業の追加費用は不要で、月額の料金内で構築から分析まで一気通貫で請け負い、ただツールを導入するだけにならないようにサポートしている。(江波戸氏)
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:データ活用でLTV120%向上した事例も。事例で学ぶデータ活用によるDtoC売上向上戦略
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