女性用靴下・下着を販売するチュチュアンナでは、ネット販売売上高が順調に伸びている。顧客理解を徹底してLTVの向上を図り、また、「チュチュアンナ」公式アプリの利用促進や日々の改修・改善に注力することでアプリ経由のEC売り上げを伸ばしているという。
同社では顧客の育成を第一に据え、データを軸にした仮説検証を繰り返している。「実店舗とECにたまった各種データを活用して顧客インサイトをつかみ、最終的にLTVを最大化していきたい」(西岡和也デジタルマーケティング部シニアマネジャー)とする。
売り上げへ貢献度別に顧客を分類
伸びしろを可視化
同社は顧客育成戦略を進めるのにあたり、顧客解像度を上げる取り組みに着手した。
まず、会員を年間購入金額によって「ダイヤ」「ゴールド」「シルバー」の3つの顧客ランクに分類。続いて「通販会員」「アプリ会員」、両方を統合した「統合会員」の3つの種別に分けた。さらに、3つの顧客ランクと3つの会員種別を掛け合わせて、顧客を9つのセグメントに細分化。各セグメントの人数構成比や売上高構成比を算出し、売り上げに対する貢献度の濃淡を可視化した。
これにより伸びしろやボトルネックをかかえるセグメントを把握し、打ち手に優先順位を付けることができるようになったという。
会員にさまざまなメリットを提供する(画像はApp Storeの「チュチュアンナ」アプリダウンロードページから編集部がキャプチャ)
通販とアプリの「統合会員」が2倍増
年間購入金額の高い「ダイヤ」×「統合会員」を増やすために、かつては新規ユーザーにインセンティブ付きメッセージを配信し、アプリIDと通販IDの統合を促したが成果が出なかった。新規顧客はブランドに対する理解が低く、ID統合後のメリットを感じにくいためだ。
そこで、構成比の高い、通販のみ・アプリのみのダイヤ会員に着目。ブランドへの理解度が高い当該層に適切なタイミングやインセンティブでID統合を促した。結果、統合会員が前年比2倍以上に伸長したという。
まずは単一チャネルで顧客育成
次に着手したのは購入チャネルの分析だ。実店舗とEC両方を利用するクロスユース顧客はLTVが高い傾向があるため、店舗ユーザーにEC用のクーポンを配布するなどして、クロスユースを促したが、両チャネルを併用する会員の比率は思ったように上がらなかった。
そこで、同社ではダイヤ会員になるまでのチャネル推移に改めて着目した。初回購入が店舗の人は店舗、ECの人はECと、単一チャネルでダイヤ会員までたどり着く顧客が多いことがわかったため、店舗またはECの単一チャネル内で優良会員を育成することに注力。一定水準まで育成した後にクロスユースを案内することで、転換率は向上したという。
アプリ経由のLTVが35%増
店舗施策で新規売上10%増
同社は「チュチュアンナ」公式アプリの利用者を増やすため、店舗での取り組みを強化している。従来は「今入会すると○%オフ」というような獲得キャンペーンで訴求していたが、新規獲得数は多いものの、一時的な関係性で終わってしまうことが多かった。そこで、キャンペーンに依存しない平常時の新規開拓を強化した。
具体的には、少数の店舗で、アプリ登録を促す声掛けを確実に行う「100%声掛けテスト」を実施。対象店舗では獲得数が増加し、声掛けが有効なアプローチであることが明らかになった。
獲得の実績を踏まえ、新規客のF2転換率とその後のLTVを調査。新規アプリユーザーが店舗にどの程度貢献するかを可視化し、データを全店で共有した。
また、店舗スタッフのモチベーションを高めるため、好調店舗にはインセンティブを付与。社内評価との紐づけも行った。
その結果、新規売上が前年比10%増となった。新規獲得を強化するタイミングを平準化したことで、キャンペーン時の新規売上は28%減となったものの、平常時の新規売上が37%増に跳ね上がった。
アプリ経由の売上アップに貢献
経費面でも大きな成果が見られ、新規獲得コストは前年比63%減と圧縮。経費率は5.2%から3.5%まで抑制することに成功した。
アプリの総ダウンロード数は330万を超え、2020年時点で27%だったアプリ経由のEC売上は足もとでは50%に上昇。LTV伸長率は35%伸長した。
今後はパーソナライズを強化
アプリ施策においてはスピードを優先し、短期間でPDCAを回すことを心がけている。営業日平均で1日2~3回、社内でアプリを改修し、UI等を変更。「小さい変化を積み上げることで、大きな変化に耐えられる体制が作れる」(西岡和也デジタルマーケティング部シニアマネジャー)という。
営業費は1日に2~3回改修する「チュチュアンナ」公式アプリ
今後のアプリ施策に関しては、1to1のコミュニケーションを強化していく。BIツールを使って統合分析を行い、MAに落とし込んで個別最適なコミュニケーションを図っていく。
取り扱いアイテムが多いなかで、「アイテムごとの購入履歴や購入頻度などを分析し、パーソナライズ提案できる環境を作っていきたい」(同)とする。
初回購入メディアの転換率を重視
LTVに関する施策では、メディアごとのLTV貢献度を可視化。初回購入メディアから、その後どのメディアのF2転換率、1年後のLTVが高いかを測っている。いずれも、同社のユーザー層は、アプリ、メール、LINEの数値が比較的高い傾向にあったという。
これをもとに、初回購入メディアに対する獲得への費用配分を決定。また、どのアイテムがどのランクの人に支持されているかを把握することで、初回に案内するアイテムやアプリ通知・メルマガ配信の選定に生かしているという。
また、同社では、試着できないECのデメリットを解消するため、下着のEC購入における返品送料を無料にしている。こうした顧客サービス利用者のLTVは高いが、サービスの認知自体が低いため、サービスを求めている顧客への周知を図っていく。
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オリジナル記事:「新規売上10%増」「アプリ経由のLTVが35%アップ」。店舗と両軸でのEC施策で成果をあげるチュチュアンナの成功事例 | 通販新聞ダイジェスト
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