定期販売の多くは、顧客リストのうち2割程度の定期顧客(優良顧客)で売り上げを維持していると考えられます。売り上げを伸ばすには、残りの8割のリストのなかから実績データを解析し、「都度販売」で購入が見込める顧客を見つけ出すことがカギになります。この「都度販売」を定期販売と並行することで第二の収益基盤を構築、バランスよく利益を生み出せる可能性が出てきます(前回記事を参照)。では8割の顧客を「都度購入客:に転換するにはどうすればいいのか? その顧客を識別するために必要なCRMの考え方、バックエンドデータの分析を解説します。
顧客との継続的な関係作り+再購入に必要なこととは?
「誰に、何を、どのくらいの対価で、どのように提供していくか」といったマーケティング戦略を考える際、従前は「STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)」「4P(製品:Product、価格:Price、流通:Place、プロモーション:Promotion)」で説明されていました。
しかし、近年はCRM(消費者とのコミュニケーション)の観点から、「マーケティングファネル」を使って説明する機会が増えています。
「マーケティングファネル」とは、商品やサービスを提供された消費者がたどる購買過程と、その後の行動をフェーズ分けしたものです。
マーケティング戦略を考える際に活用される「マーケティングファネル」
「マーケティングファネル」は、顧客獲得までのフェーズ(上図、中央より左側)と購入後のフェーズ(上図、中央より右側)に分けられます。
CRMや顧客のリピート(リテンション)を目的に活用する場合は、購入後のフェーズがとても重要です。購入だけで終わらず、商品が届いた後の使用・体感、その商品の評価や発信・紹介、さらに再購入と循環させていくためです。
注目すべきは「バックエンド側」のデータ
この「マーケティングファネル」は、データ活用としての視点で見ることもできます。その場合、左側がフロント側のデータ、右側がバックエンド側のデータです。
昨今のテクノロジーの進化やEC化の加速に伴い、通販・EC事業者は流入経路などユーザー行動が可視化できるようになってきました。それにより、流入媒体の情報を収集するために購入までのデータを掘り下げる、つまり「フロント側のデータ活用」に注力しがちだと感じています。
その結果、初回購入以降は「顧客」として「誰が買ったのか」を見るよりも、「何人に、商品が何点購入され、売り上げはどのくらいだったのか」というマスマーケティング視点でのデータ分析に比重を置くケースが多いのではないでしょうか。
本来、獲得した顧客データの成果を最大化できるのは「バックエンド側のデータ」です。CRMのようにデータを「顧客」として見る場合、「誰が」「どの媒体で」「どんなタイミングで」「どんな商品を購入したか」「何回購入したのか」といった「購買実績関連データの活用」が不可欠となります。
そして、より重要なのは「その顧客が初回購入後、どんなタイミングで次の注文をしたのか」ということです。さらに、購入間隔、どんな企画に反応したのか、その企画や掲載商品(商品グループ)は何だったのか――。直近の購入データだけではなく数年分の購買実績関連データを活用することが、顧客との優良な関係を維持するためのCRMを用いた分析なのです。
「アクティブ客」の識別が重要だが、難しい点も
下の図は、顧客実績データを活用したEC・通販のマーケティングアプローチのイメージです。
最近の顧客実績データを活用したEC・通販のマーケティングアプローチのイメージ
まずは「新規顧客の獲得」、そして「F2転換」、他は「休眠掘り起し」――。極端な見方ですが、多くの企業が注力している顧客へのアプローチはこのようなイメージではないでしょうか。
「新規顧客」「一度しか購入していない顧客」「ある一定期間購入してない顧客」というように、わかりやすい状態の顧客だけをターゲットにしていませんか? 売り上げの大半を占める「アクティブ客」へのフォローが、ほかの顧客と同じ内容の一斉メール送信になっていませんか?
一言で「アクティブ客」と言っても、「過去2回以上購入している」「一定期間継続している購入している」と状態はさまざま。優良客といわれるファン化した顧客もいれば、ある一定の間隔で購入する顧客などが含まれるため、この顧客を分けてアプローチすることは難しいのです。
ある企業に以前、「『アクティブ客』も自然減することはあるが、どのような対策をしているか」と聞いたところ、「減少した分、新客を獲得する」という答えが返ってきて驚いたことがあります。
優良客と新規顧客の購買力には雲泥の差があることを、その担当者も頭ではわかっているのかもしれませんが、「アクティブ客」の識別が難しいため、この回答につながったのでしょう。しかし、これではバックエンド側のデータを活用しきれていないことになります。
「都度購入客」を特定するには、RFM分析に「継続率」を加えてセグメント化
実績データなどを活用する際に利用している分析手法として、「RFM分析」があります。CRMで「RFM分析」を用いる際の注意点をお伝えします。
「RFM分析」について
「RFM分析」は、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」の3つの指標を用いて顧客の優劣を分けたグループを作成する分析方法です。
また、「CRM(Customer Relationship Management)」は顧客との信頼関係を構築することで、小売りでは主に一度の購入にとどまらず、リテンション&ファン化をめざすマーケティング手法を意味します。
CRMでは、複数いる顧客との接点とその親密度を分析することで顧客との関係性を高めていき、売り上げを伸ばすための戦略を立てていきます。CRM戦略を進める上で、「RFM分析」を利用して顧客のセグメントやアプローチ対象の顧客を抽出しているケースが多いと考えられますが、実はCRMに「RFM分析」は少し物足りないのです。
「RFM分析」は一番動きのある顧客を見つけるのには最適ですが、「継続状況」を確認するには大変手間がかかり、難しいという点があります。大きな理由は「継続率」が「R」「F」「M」の3指標だけでしか見れないことなんです。
「定期販売」では最初の注文の段階からどれくらいのサイクルで商品を届けるかが決まっています。その為、定期の顧客をセグメントするときには「RFM分析」がよく使われます。しかし、「都度販売」では購入が見込める顧客は既に「定期販売」を離れているため、購入サイクルが決まっておらず、どんな買い方をしているのか、それがどれだけ継続してきたかの要素を加えることが重要です。そのため、「RFM分析」だけで行うには注意が必要になってきます。
以下の例を見ると、どう見ても違う買い方の顧客でも同じグループに所属することになります。
(例)「R6F8」のセグメントグループ
- 直近6か月以内に購入がある。かつ購入回数8回の顧客
- 登録直後に連続して7回購入、数年空いて最近購入した顧客
- ほぼ3か月に1回の割合で購入している顧客
「RFM分析」でこの継続率を確認する場合は、Rにあたる「Recency」を細かく分けて継続状況を把握しながら顧客を選別・抽出するため、煩雑な作業が発生します。また、「最終購入日(R)」「回数(F)」「金額(M)」、これらの加点範囲や配点比重によって分析結果も変動するため、「RFM分析」で顧客の購買力を識別することはとても難しいのです。
しかしこれができると、定期顧客でなくても継続しているかどうかがわかり、購入タイミングへのアプローチがヒットすれば都度顧客への転換も見えてきます。
CRMは、購入ポイントと継続状況が近い顧客をセグメントしてアプローチすることで、今より高い継続率をめざす必要があります。「RFM分析」を利用する場合は、手間がかかっても顧客を細分化し、できるだけ「買い方」が同じ顧客=継続率が同じ顧客をセグメント化して合理的にアプローチすることが必要と言えます。
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オリジナル記事:CRMで都度購入客の継続率を高める方法とは? 重要なのは「バックエンドデータ」の活用+RFM分析に継続率を加えたセグメント化 | 「都度販売」のススメ
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