小林製薬は、紅麹問題の一連の責任をとり、会長と社長が辞任する。今年4月、社内に設置した「事実検証委員会」の報告で、小林章浩社長の指導力や、製造・品質管理など危機管理の問題点を指摘された。山根聡専務が代表取締役社長に昇格する。
代表取締役社長に昇格した山根聡氏(画像は小林製薬のコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)
「紅麹」事件のてん末。小林製薬の対応は
創業家以外から初の社長選出
社長交代は、7月23日開催の臨時取締役会で決議した。同日付で小林一雅代表取締役会長が、8月8日付で小林章浩代表取締役社長が辞任する。
※記事は通販新聞が運営するメディア「通販新聞ダイジェスト」が7月25日に配信した内容をそのまま掲載しています
7月23日付で代表取締役会長を辞任し特別顧問となった小林一雅氏
8月8日付で代表取締役社長を辞任し、補償担当の取締役に就いた小林章浩氏
前社長・会長は辞任も、影響力は継続か
いずれも代表権のない役職に就く。小林社長は、危機対応でリーダシップを発揮できていなかった。会長は、直接の関与はないものの、職責が重いと判断した。
創業家以外からの社長就任は初めて。
小林一雅氏は特別顧問に就く。同社再建に向けて、知見と経験を生かすことが有用と判断した。小林章浩氏は、8月8日付で補償担当の取締役に就く。小林氏から、責任を果たしたいとの強い意向を受けて決めた。
小林社長は、今年1~6月における月額報酬の50%、山根専務は同40%を自主返上する。
山根氏は、1960年4月16日生まれ。64歳。入社後、取締役会室長、成長戦略室長、グループ統括本社の本部長を務めた。今年1月、サステナビリティ経営本部本部長に就任。保有株式は8124株。
小林社長は、個人で自己株式の約12%(約926万株)を持つ大株主としての影響力は残る。
検証委員会は小林製薬個社の問題だと指摘
「事実検証委員会」は、今回の問題が小林製薬個社の対応の問題であることを指摘している。組織的な隠ぺいの意図、行為は確認されなかったものの、衛生管理では、従業員が健康被害を起こす成分の生成に関与する青カビが培養タンク内側に付着しているのを見つけたが、問題を軽視。
人手不足が常態化していたが、製造ラインの拡張を進めるなど現場任せの体制だった。
問題の発生以後も製造工程の条件や担当者の変更を確認するのみで、設備の故障は確認せず、コンタミネーションの可能性は低いと判断した(2月時点)。
あいまいな判断基準が自体の悪化に拍車
健康被害の発生では、行政報告、製品回収の判断基準があいまいだった。機能性表示食品の届出ガイドラインは、明確な基準がないため、トクホに準じて「因果関係が明確なものに限る」と解釈していた。
製品回収規定は、「因果関係不明を含む」としていたが、健康被害の報告フローチャートは、因果関係不明の場合に言及していなかった。
安全管理等を担当する社内の「信頼性保証本部」も、部内の担当グループが4件の症例報告で本部長に報告する体制だったが、「因果関係不明」を理由に行政報告を行わなかった。
判断要素としてレピュテーションリスク、業績への影響を意識しており、安全弁の役割を果たしていなかった。
報告書では対応の遅れを指摘
「紅麹」の売上高は、23年12月期に原料販売が前年比約7%増の約1億3500万円、製品販売は、約30%増の同6億3500万円。
報告書は、医師から3件の症例報告(計4件)を受けた「遅くとも2月上旬以降、全社で早急に対処すべき緊急事案」と、対応の遅れを指摘した。
小林製薬は、コーポレートガバナンスの抜本的改革、企業理念、企業風土の見直しに取り組む。
脱・創業家の人事異動
小林製薬に社長交代の理由を聞いた。
――機能性表示食品を含む健康食品の通販事業の継続方針に変更はあるか。
取締役会として、今度検討する必要があると認識している。
――新役職で小林一雅氏、小林章浩氏の担当分野は。
小林一雅代表取締役会長は、小林製薬の再建に同会長の知見、経験を生かすことが有用と判断し、特別顧問の職を委嘱する。小林章浩社長は、被害が生じてしまった方々への責任を最後まで果たしたい旨の強い意向が表明されたため、取締役補償担当の職に選定した。
――山根聡専務の選任理由は。
サステナビリティ経営本部本部長として小林社長とともに本件への危機対応を率先して行うべき地位にあった山根氏の経営責任は重いと考えている。
他方、一雅氏、章浩氏がいずれも代表取締役の地位の辞任を受け、山根氏が会社全体の統括に必要な経験知と資質を備えていることも考慮した。
――小林社長の保有株式について、売却などの方針は。
意向は把握していない。
――株主として今後どう経営に関与するか。
新社長のリーダーシップのもとで運営していく。小林章浩氏は、補償担当役員として新社長を全力で支える意向。
――辞任の理由は。
小林社長は、危機対応において、リーダーシップを発揮することができず、結果として行政報告や公表の遅れを招いた経営責任は重大と判断した。
――問題の原因究明が途上の段階で辞任する理由は。
紅麹問題でコーポレートガバナンスの観点で重要なのは、対外的な公表に至る経緯の適切性にあると考えており、事実検証委員会による調査が完了したので、処分や役員体制の変更を先行させることが適切と考えた。今後、さまざまな事情を考慮しながら判断していく。
――今回の問題の経営責任は、誰が負うと認識しているか。
取締役の経営責任を明確にするため、人事異動になった。
――公表されている「健康相談」と「総受付数」の違いなど、内容、分類の基準は。
受付数は、健康相談以外のお問い合わせも含んでいる。
――海外事業について、今回の事案の影響を踏まえ強化を検討しているか。
取締役会として、今後検討する必要があると認識している。
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オリジナル記事:小林製薬、「紅麹」事件で創業家以外が社長に初就任。検証委員会は危機管理の問題点を指摘 | 通販新聞ダイジェスト
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