コロナ禍も収束し、一時は下火となっていたリアルイベントが再び盛り上がりを見せている。インターネット上を主戦場とするEC事業者や仮想モール各社もさまざまな思惑から積極的にリアルな場でのイベントを開催している。果たしてリアルイベントではどのような効果を狙って具体的にはどういった施策を行っているのだろうか。今回は7月にイーベイジャパン、アマゾンジャパンが開催したリアルイベントの目的や具体的な内容についてみていく。
イーベイジャパン、2万人集客の大規模イベント
仮想モールの「Qoo10」を運営しているイーベイジャパンは7月13~14日、都内の「東京ビックサイト」でコスメに特化したリアルイベントの「MEGA COSME LAND 2024」を開催した。若年女性を中心に、2日間で2万人を集客。同モールの会員と出店ブランドがリアルで交流できる機会として展開していった。
イーベイジャパンが運営する「Qoo10」の大規模イベント
これまでも同社ではリアルイベントを通じた顧客との交流を図ってきたが、日本で開催されている「K-POP(韓国のポピュラー音楽)」のライブイベントなどについてスポンサーとして参画し、ブース出展をするような内容だったという。
狙いはEC会員のエンゲージメントアップ
今回は同社が主催として行い、同モールに出店する30ブランドを集めて実施。主には韓国コスメなど、同社の大型セール企画でも人気となっているブランドが集まった。それぞれECを主戦場としているブランドが多いことから、リアルでも露出することで新しい出会いにつなげ、モール会員とのエンゲージメントを高めていくことを狙っている。
当日は事前のチケット制で、午前・午後の部に分けて各5000人ずつ、2日間合計で約2万人が来場。特に、30歳以下の若い女性が多くを占めたという。「オフラインでQoo10を体験してもらうことが狙い」(同社)と語るように、通常は毎日アプリ上で行っているルーレットによるクーポン付与企画も、会場内に実物の大型ルーレットを設営して行うなど、リアルな体験ができる演出を取り入れた。
「スキンケアエリア」と「メイクエリア」に分かれた会場内の各出展ブースでは、新商品のお試しや、ゲーム企画、プレゼントなどを展開。なかには美容関連で著名なインフルエンサーが登場し、来場者の肌悩みなどを直接聞いて、おすすめのケア商品を提案するといった体験企画も行われた。
初日の午前中から会場の外にも行列ができるなど、どの出展者からも予想以上の人出になったとの声があったとする。
ライブコマース企画では配信中の購入進む
また、目玉企画の一つとして、会場内に設けられた専用スタジオを使って、生配信するライブコマース企画「Live Shopping」も実施。
イベント中ではライブコマースを生配信
同社では今年2月に出店者が利用できるライブコマース専用のスタジオを都内・渋谷に開設しており、普段から週に2~3回のペースで配信しているが、今回はその仕組みをそのままイベント内に落とし込んで展開。
当日は若年女性からの人気が高いモデルやタレントが出演し、1時間の配信時間のなかでライブ限定商品や日本未上陸の商品など、それぞれの特性・使用感などを伝えていった。イベントに来場できなかった顧客などがリアルタイムで視聴するケースが見られており、配信中に購入されることも少なくなかったという。
ライブコマースには人気のモデルやタレントが出演
同社によるとコスメという商品の特性上、画像だけではその良さが伝わりにくいこともあり、動画を使った動きのある訴求は相性が高いと見ている。「たとえばシートマスクなど、化粧水がどれだけ含まれているか、実際に絞って見せることができる」(同)と説明。ライブコマース担当者と各ブランドが話し合って使いたいワードなども決めながら事前にシナリオを作成していったとする。
今後の開催は韓国以外の国や国内ブランドを強化
同社が今回のイベントを通じて改めて感じたのは「若年層の割合が思っていた以上に多く、また、チケットが完売するくらい美容への関心が高いことも分かった。日本国内のメーカーからの反響も良かったので、もっと面白く、お得に楽しめるイベントにつなげたい」(同)とした。
引き続き、ライブコマースも組み合わせた大型イベントの開催を今後も検討。今回は韓国コスメブランドの参加が多かったが、それ以外の海外や日本ブランドの出展も強化する考え。
出展できなくても、商品のサンプル提供をしたいというニーズもあるため、そこに応えた仕組みも設けていく。「どこのブランドも若年層と新規顧客の獲得は共通の悩みとして持っている。そこに対して貢献していきたい」と(同)した。
アマゾン、プライムデー向けのイベントでセール後押し
アマゾンジャパンは7月12~14日までの3日間、東京・六本木で有料会員「Amazonプライム会員」向けのセール「プライムデー」をPRするイベントを開催した。
「プライムデー夏祭り」と題して櫓(やぐら)や提灯(ちょうちん)、露店など縁日をモチーフにした空間で「プライムデー」で販売する一部の目玉商品やタレントの指原莉乃さん、バスケットボール選手の八村塁さんが「プライムデー」で購入したいという商品を約100点展示したほか、輪投げなどの2つのゲームをクリアすることで来場者に賞品を贈与する取り組みなどを行った。
「プライムデー夏祭り」の会場
「プライムデー夏祭り」は同社運営の通販サイトで毎年夏ごろに開催している同社が年間で行うさまざまなセールの中でも最も大規模な看板セール「プライムデー」のPRイベントで商業ビルの六本木ヒルズの敷地内の広場「六本木ヒルズアリーナ」の一角で実施した。なお、今年の「プライムデー」が7月16~17日の開催だったため、その直前の連休に開催したもの。
さまざまな参加無料イベントを開催
来場者は会場に用意した「輪投げ」と金魚すくいならぬ「カプセルすくい」に無料で参加でき、クリアすると配布された参加証にスタンプが押され、最終的に賞品を得る流れ。
まず、「プライム輪投げ」ではたとえばプライム会員であれば楽曲が利き放題となる「プライムミュージック」などの特典を模した的を7つ用意。係員がその中から1つ選んで特典を説明し、当該特典に合致する的へ参加者が輪を投げて成功すると提灯を模したスタンプを係員が押す。
参加無料イベントの一つ「プライム輪投げ」
次に「プライムカプセルすくい」では会場で展示されているセール販売商品の商品名が記載された紙が入ったカプセルが水槽に浮いており、金魚すくい用の和紙を貼ったすくい網ですくい上げて中に入った商品名に合致する商品を会場から探して撮影した写真や動画を係員が確認後、先に押された提灯のスタンプの中に「プライムデー」のロゴと開催日時を記載したスタンプが押されることでスタンプが完成。
完成スタンプとともに撮影した展示商品の画像や動画をハッシュタグ「♯プライムデー夏祭り」を付けて自身のインスタグラムやフェイスブック、Xに投稿した来場者に賞品を贈与する。
商品名を書いた紙をカプセルに入れ、水槽に浮かべている「プライムカプセルすくい」
賞品は「500円分のAmazonギフト券」のほか、オリジナルのクッションやタンブラー、アマゾンのプライベートブランドのボールペン、また、縁日にちなんで会場の露店で提供されるアマゾンが展開中の生鮮食品などのECサービス「アマゾンフレッシュ」で販売するバナナを使った「プライムデー」のロゴが入ったマショマロをあしらった青く着色されたチョコバナナやかき氷から1つを贈与する。
紐を引くことで反対側についた賞品のパネルが引っ張りあがる大型くじ引き「プライム千本引き」で賞品が決定する。
当選商品が決まる大型のくじ引き
「プライムデー」の売上アップ+有料会員増加を狙う
「プライムデー」の役割として売り上げはもちろんのこと、参加条件が「有料会員であること」としているため、同セールをきっかけとして新規の有料会員の獲得を図ることも重要な目標となっている模様。
有料会員は会費を支払う分、送料無料などさまざまな特典が付与されることから一般の顧客と比べ、購入回数や購入単価などが総じて高いとみられ、有料会員の獲得はイコール優良顧客の囲い込みにつながることから、アマゾンもプライム会員の獲得を強化しており、その好機の1つがこの「プライムデー」のタイミングとなっているよう。
そのため、毎回の「プライムデー」では実施前に大規模なPR施策を展開。他のセールでも各種インターネット広告のほか、テレビCMも放映してPRを行うが、「プライムデー」は最大のセールであるため、PR予算も多額とみられ、ネット広告やテレビCMはもちろん、交通広告やタレント、著名人らを起用したPR動画の配信に加えてリアルイベントを開催している。
オンラインだけでは伝わりにくい魅力をリアルで発信
リアルイベントはPR施策の中では直接的な貢献度は低いと思われるが、アマゾンは開催場所や形式を変えながらもここ数年は毎年必ずリアルイベント開催する。
その理由については「オンラインだけではどうしても伝わらないメッセージがあると我々は感じている。昨年は(東京・渋谷で)『プライムカフェ』(というカフェ形式のイベント)を実施したが、参加した方にアンケートを行ったところ、プライム会員の(さまざまな特典、その特徴や)魅力がより理解できたというお客さまがたくさんいた。多岐にわたるプライム会員の魅力をオフラインで直接説明させて頂くことで理解促進につながる」(鈴木浩司プライム・マーケティング事業統括本部バイスプレジデント)としており、ネット上では周知しにくい有料会員の特典の説明を丁寧に行うことで新規有料会員の獲得が念頭にあるようだ。
また、SNSの投稿で賞品を贈与するという取り組みも今回も含めて毎年実施しており、SNSでの拡散による販促効果も一定の成果が上がっている模様でイベントを実施し続ける理由となっているようだ。
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オリジナル記事:「Qoo10」のイーベイ、アマゾンのオフライン戦略とは? 大手モールが集客、販促アップを狙うリアルイベント施策を解説 | 通販新聞ダイジェスト
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