クリック数13%アップ、購入者数40%増を実現したAI+メルマガ活用方法【米国EC企業の事例で解説】 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2023年3月16日(木) 08:00
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クリック数と購入者数のアップにつながった、AIを活用したメルマガ施策の詳細を、米国EC企業の事例で解説します

顧客データの収集・活用が、顧客のエンゲージメントを高めることは言うまでもありません。楽器・機器のオンラインショップを運営するSweetwater(スイートウォーター)は、データの収集、AI(人工知能)が生成するレコメンドメールを活用し、メルマガの開封率とオンライン売上を向上させています。Sweetwaterの成功事例を踏まえながら、AIを活用したレコメンデーションの方法を解説します。

記事のポイント
  • SweetwaterはAIを用いて“クリックしそうな”顧客グループを作成。2022年9月のメールのクリック数は、2022年8月と比較して25%増加しました。
  • Sweetwaterによると、商品の分類タグは、カテゴリータグだけを設置するよりも多くのインサイトが得られることがわかりました。
「クリックする可能性が高い」ターゲットを設定

Sweetwaterのジェフ・エクブラド氏(マーケティング担当副社長)は「顧客の誰かにメールを送るなら、クリックして購入する可能性の高い人に送りたいと考えるのは当然でしょう」と話します。

Sweetwaterは、人工知能を活用して顧客エンゲージメントの向上を図るサービスを提供するBlueshift(ブルーシフト、本社米国)の「create predictive model」を導入。エクブラド氏は商品周りのプロモーション戦略を立案しています。このツールは、消費者がマーケティングメールをクリックするかどうかを機械学習で予測・視覚化するシステムです。

コンサルティング会社Ernst & Young(アーンスト・アンド・ヤング、本社英国)のマイケル・レンツ氏(グローバル・リテール・テクノロジー・リーダー)は「マーケティング担当者は、個別のレコメンデーションや将来の購買行動予測に使えるようなデータを収集する必要がある」と言います。

それ(=購買行動の予測につながるデータの収集)が、パーソナライズされたショッピング体験の実現に貢献します。特定の作業を自動化しなければ、今すでに自動化に投資している競合他社に負けてしまうでしょう。 (レンツ氏)

Sweetwaterのエクブラド氏は、「Eメールでエンゲージする準備ができている顧客にメールを送り、その上で、Eメールを開かなかった人だけをターゲットにすることができます」と説明しています。

メルマガ内に記載したECサイト「Sweetwater.com」へのリンクをクリックする可能性が高い顧客をAIが特定し、「クリックする可能性が高い」ターゲットグループを設定するのです。

このターゲットグループを、通常のグループと並行して活用しました。(エクブラド氏)

ECサイト「Sweetwater.com」(画像は編集部がキャプチャして追加)ECサイト「Sweetwater.com」(画像は編集部がキャプチャして追加)

その作戦が功を奏しました。Sweetwaterのメルマガは2022年8月に比べ、2022年9月にはクリック数が前月比25%増加したそうです。

SweetwaterはAIが設定したクリックする可能性が高いターゲットにプロモーションを実行したSweetwaterはAIが設定したクリックする可能性が高いターゲットにプロモーションを実行した
「分類タグ」でクリック数、販売数が増加

エクラブ氏は、「ギター ヴィンテージ」のような商品の分類タグは、「ギター」だけのタグよりも多くのコンテキストを持っていると言います。

Sweetwaterでは、顧客を分類するためのタグを約150作成し、Sweetwaterが配信する週刊メルマガ「inSync(インシンク)」のブログ記事やビデオに埋め込んでいます。その分類タグは、カテゴリータグだけよりも顧客の興味に深く切り込むことができるそうです。

Sweetwaterが配信するメルマガ(画像はEmail Tunaから編集部がキャプチャ)Sweetwaterが配信するメルマガ(画像はEmail Tunaから編集部がキャプチャ)

同時に、Sweetwaterの顧客データプラットフォーム(CDP)とその分類タグをBlueshiftにも活用。これにより、コンテンツと消費者のマッチングがさらに進み、クリック数は13%、購入者数は前月比40%増加しました。CDPは、ファーストパーティーの顧客データ(属性データや行動データ)を収集し、各顧客のプロフィールを構築するマーケティングソフトウェアです。

Sweetwaterでは現在、社内のCDPから150の分類タグをBlueshiftに統合。今後、どの分類タグが最も人気があるかというランキングシステムも作成する予定です。

また、分類タグに基づいた自動メールキャンペーンも始めることができるようになりました。このようなメールキャンペーンを行うことで、購入した顧客のメーリングリストを作成し、購入商品カテゴリーの別の商品をメールすることが可能になったのです。

レコメンドのパーソナライズ化に磨き

2022年を通じて、Sweetwaterはパーソナライズされた商品のレコメンデーションを、メルマガで配信し続けました。

その結果、毎週配信されるお得なキャンペーンメールのクリック率は、前月比で10ポイント増加。エクブラド氏によると、Eメールに起因するオンライン購入は前月比で16%増加したとのことです。

週刊メールで成功を収めた後、Sweetwaterは商品のレコメンデーションを、プロモーションやカテゴリーに特化したメールマーケティングキャンペーンに拡大していきました。

Blueshiftのソフトウェアは、個人の視聴履歴や、関連する項目などに基づいてレコメンデーションを作成します。また、レコメンデーションでは次の項目のデータも考慮に入れています。

  • 閲覧された商品
  • 興味のあるカテゴリー
  • 顧客の分類タグ
  • プロモーション
  • 柔軟な支払い方法の有無
  • 在庫の有無
「カゴ落ち」の原因を突き詰めて改善

なぜ顧客はカゴ落ちするのでしょうか?

Sweetwaterは、カゴ落ちした顧客にアピールすることも考えていました。そこで、A/Bテストを、2種類のメールキャンペーンで一定数の顧客を対象に実施。どちらがより多くの開封やクリックを得られるかを確認すると同時に、画像や文言を変えてテストし、どちらにより多く反応したかを比較しました。

カゴ落ちした顧客にはA/Bテストで反応をうかがっているカゴ落ちした顧客にはA/Bテストで反応をうかがっている

Sweetwaterは2022年7月、メルマガの「inSync」でBlueshiftがお勧めする記事と動画を比較する初めてのA/Bテストを実施。その結果、他のメールと比較してCTRが31.5ポイント増加しました。そして、メッセージを開封した顧客数に対する注文数は39%増加したそうです。

エクブラド氏によると、Sweetwaterは数週間かけてA/Bテストを実施しました。以前は、メルマガに含めるコンテンツを手作業で選択していたそうですが、BlueshiftのAIが生成するレコメンデーションで、より効果的にメルマガを作成することができたそうです。

メルマガでは他にも、顧客のアクションがなかったプロモーションに関しては、同じプロモーションを宣伝するテキストを削除する――などを試みました。これについて、エクブラド氏は次のように話しています。

メールが煩雑になり、実際に利用できるプロモーションの視覚的なインパクトが低下していました。(エクブラド氏)

また、チェックアウト時のCTA(コール・トゥ・アクション)ボタンを「今すぐチェックアウトする」から「カートに移動する」に変更しました。

Sweetwaterは今後、顧客の嗜好に基づいたメッセージを展開する予定だと言います。ショッピングカートに入っている商品に関連する記事や、ビデオコンテンツを使ったメールでのキャンペーン施策などです。

プロモーションの見出し、色やデザインの要素、メッセージ内容、その他のメール要素が、顧客にどのようにアピールするかをテストする予定です。

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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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