アリババ、テンセント、バイトダンスなど中国インターネット大手企業は「メタバース」への投資を加速しています。アリババが毎年開くカンファレンス「Apsara Conference」において、達磨研究所(アリババのテクノロジー研究機関)のXRラボ責任者・譚平氏は「メタバースは次世代インターネットになる」と提言しました。
メタバースとは?
メタバースは、SF作家「ニール・スティーヴンスン」氏が手がけたサイバーパンク小説「スノウ・クラッシュ」が起源で、「メタ」と「バース」の2つの言葉を組み合わせた造語です。接頭語の「メタ」は「高位」「~を超えた」を意味し、「バース」は「宇宙(ユニバース)」の略語で、両者を組み合わせて「宇宙を超越する」、つまりメタバースを意味します。
現時点のメタバースはまだ発展の初期段階。今後、5G、クラウドコンピューティング、XR(クロスリアリティ)、AI(人工知能)、デジタルツインなどの最先テクノロジーの進化が、メタバース関連産業のさらなる拡大をけん引していくと見られています。
eコマース分野でのメタバース
メタバースは「ユーザーの数」「利用時間」「お金を使う」という観点から、ビジネスの価値があると言えます。
アリババは「Apsara Conference」で、ホログラフィック構造(仮想世界での地図・人・モノのモデル構築)、ホログラフィックエミュレーション(仮想世界の人・モノで現実世界の動きを再現すること)、バーチャリティとリアリティの融合(仮想世界の情報を現実世界に展示)、バーチャリティとリアリティの連動(仮想世界でのアクションが、現実世界でフィードバックされる)――この4つのアプローチでEC+メタバースを設計できる考えを示しました。
アリババはこの4つのアプローチによって、「人」「物」「場」を網羅する仮想空間でのeコマースモデルを構築。最終的には仮想世界と現実世界をつなぐ“場”を創り出そうと考えています。
Z世代がメタバースECのコアユーザーになると考えられるため、商品は物理的なモノからバーチャルなモノへのニーズ拡大、AR・VR・MRなどのテクノロジーによって、多感覚的なインタラクションと没入型ショッピング体験が実現されるでしょう。
ECサイトへののトラフィックが増加すると同時にコンバージョンが悪化し、消費者の要求がさらに高くなっていく将来において、「メタバース」は間違いなく大手インターネットプラットフォームなどが新たなトラフィックを獲得するための手段になるはずでしょう。
アリババに就職したバーチャルヒューマン「AYAYI」が2021年、ソーシャルECアプリ「小紅書(RED)」にアカウントを開設。その初回投稿の閲覧回数は約300万回に達しました。バーチャルヒューマンを活用した新たなプロモーションとして注目を集めています。
AYAYIの「小紅書」への初投稿(画像左)と個人ページ(出典:小紅書)
Z世代がメタバースの消費主力層
これから訪れるメタバース時代のeコマースの消費者は主にZ世代になるでしょう。
ここ10年の中国モバイル・インターネットの急速な普及時代に育ったZ世代は、メタバースの概念を受け入れる能力が自然に備わっています。
iiMedia Researchの調査によると、中国のモバイルソーシャルプラットフォームにおけるZ世代ユーザーの割合は32.9%に達しており、若年化の傾向を示しています(2021年上半期の時点)。2024年には、「95後」ユーザーがモバイルソーシャル市場規模の62.2%を占めると予想されます。
Fastdataの2022年1月のデータによると、全世界でZ世代の人口は24億7000万人に達し、世界人口の32.1%を占め、世界で最も人口の多い世代となりました。
現在のZ世代の大半は成人しており、その購買力の向上により、今後のメタバースにおけるeコマースの最も大きな成長ドライバーになると考えられます。
バーチャルの世界では低コストで24時間ライブショッピングも
バーチャル・アイデンティティはメタバース世界の特徴の1つです。さまざまなテクノロジーを組み合わせ、アイデンティティまたは機能を擬人化したバーチャルヒューマンは今後、AI、CG、モーションキャプチャーなどの基礎テクノロジーの進化に合わせて、メタバース形態を構成する重要な1つになるでしょう。つまり、さまざまな産業で活用されると考えられています。
eコマースにおけるメタバースの最も重要な役割の1つは、低コストで仮想IPを作成できることです。バーチャルヒューマンレポートでは、2030年までに中国におけるバーチャルヒューマンの市場規模は2700億人民元に達すると推定しています。
現在、バーチャルヒューマンに関するテクノロジーは、主にeコマース業界において、ライブコマースやブランドイメージキャラクターなどに利用されています。
Tmallでは、すでに一部の事業者がバーチャルライバーを使ってライブ配信を行い、業績を伸ばしています。バーチャルライバーは、人件費をかけない低コストによる24時間ライブ配信を実現する一方で、ユーザーとの高頻度な交流を実現、コミュニケーションを活性化しているのです。
日本のコスメブランド「meeth」のTmall海外旗艦店のバーチャルライバー
「meeth」で行ったバーチャルライバーの事例を説明しましょう。消費者が商品に興味を持つと、「ライブ解説」ボタンをクリックするとライブルームに入ることができます。そこでバーチャルライバーがライブで商品説明を実施。ライブルーム内の該当商品リンクにある「ショッピングカート」ボタンをクリックすると、商品を購入することができます。
接客面では、AIなどのテクノロジーを搭載したバーチャルヒューマンが対応、スタッフの作業を減らしています。同時に品質や効率の向上、バーチャルヒューマンのインプット情報も蓄積され、ブランドによるバーチャルライバーの長期運用を支える重要な役割を担っています。
メタバースは「人」「モノ」「場」のビジネスモデルを強化
メタバースがeコマース業界に与える影響大きいと言えるでしょう。AR・VR・MRなどのテクノロジーによって、将来のオンラインショッピングは物理世界の壁を破り、視覚、聴覚、触覚までを含めた多感覚のインタラクティブなショッピング体験へと変わります。消費者の購買シーンはデジタルショッピングモール、デジタルショールームなどになる可能性を秘めています。
つまり、メタバースは次世代インターネットの新しい形であり、デジタルの未来を具体的に示す、破壊的イノベーションなのです。メタバース分野に布石を打つことで、先行者利益を獲得することができます。
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オリジナル記事:中国で加速する「メタバース+eコマース」。バーチャルライバーが24時間ライブショッピングする企業も登場 | 中国の最新買い物事情~トランスコスモスチャイナからの現地レポート~
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