猫を飼う人にとって、猫は家族の一員であり、大切な存在だ。そんな家族と長く一緒にいられる世界をめざし、飼い主や猫自身も気付かないようなわずかな変化を検知して日々の健康を管理する「Catlogシリーズ」を開発したRABO。多くの飼い主や獣医師からの注目を集め、利用する猫の数は拡大し続けている。飼い主にとって、購入しやすく継続して使いやすいサービスにするために、自社ECでは買い物体験を重視する。伊豫愉芸子社長に、「Catlogシリーズ」や自社ECの取り組み、RABOの今後の目標について聞いた。
代表取締役社長の伊豫愉芸子氏
猫の体調のわずかな変化も早期検知する「Catlogシリーズ」
「世界中の猫と飼い主が、1秒でも長く一緒にいられるように 猫の生活をテクノロジーで見守る。」をミッションに、猫の体調や生活を見守る「Catlogシリーズ」を展開しているRABO。
RABOが登場したAmazonのテレビCM(詳細は
こちら)
猫専用の首輪型ウェアラブル端末「Catlog(キャトログ)」や、猫用トイレに敷くだけで排泄物の量や回数、体重などを記録する「Catlog Board (キャトログボード)」から得たデータを、飼い主がスマートフォンアプリで見られるサービスを提供している。
「Catlog」を付けていれば、飼い主が留守中でも猫の様子がリアルタイムで把握できるほか、運動量や食欲などのデータから、不調の兆候や給餌量の目安もわかるようになる。
「Catlog」は、首輪に内蔵した超小型の加速度センサーで猫の行動データを24時間計測。首元の微細な振動がどの行動に当てはまるのか機械学習で判定し、健康を管理する
また、泌尿器疾患にかかりやすい猫にとって、「Catlog Board」は異常につながるわずかな変化の早期検知に役立つほか、ダイエット中の猫の体重・体調を手間なく管理することが可能となる。
「Catlogシリーズ」は、猫の予防医療に貢献する画期的なサービスとして多くの飼い主や獣医師から関心が持たれており、現在およそ2万匹の猫が利用しているという。
「Catlog Board」は、トイレの下に置くだけで排泄情報や体重を計測できるボード型IoTデバイス
セキュリティと利便性を重視、自社ECの決済に「Amazon Pay」を採用
「Amazon Pay」はAmazonアカウントを持つユーザーであれば、住所やクレジットカード情報などを入力する必要なく決済を完了することが可能。「Amazon Pay」を選ぶユーザーは多いだろうと判断し、ECサイトに導入している。
RABOは従来からアマゾン ウェブ サービス(AWS)を利用したり、Amazon.co.jpに商品を出品しており、Amazonのサービスに対して厚い信頼を持っていたため、決済においても迷うことなく「Amazon Pay」の導入を決めたという。
自社ECを運用するうちに、クーポンの発行やサブスクリプションの導入など提供サービスの拡充を実現するため、利用していたASPサービスから2022年に自社開発で柔軟性の高いECサイトへと刷新。
ユーザーが選ぶ決済手段の割合は月ごとに変動はあるものの、およそ半数以上が「Amazon Pay」を選んでいることから、リニューアル後も決済手段はクレジットカード決済と「Amazon Pay」を用意した。
決済手段はクレジットカードと「Amazon Pay」の2種類
RABOは「Amazon Pay」を利用する有効性について、伊豫氏は次のように話す。
EC事業者が自社で決済手段を作り込むことは難しく、特に私たちのようなベンチャー/スタートアップ規模の企業だと、セキュリティ対策の負担も大きくなる。その点、「Amazon Pay」はAmazonの堅固で世界水準のセキュリティレベルをそのまま享受できることが魅力だ。また、Amazonアカウントを持っている人は全国にたくさんいらっしゃるので、「Amazon Pay」は決してアーリーアダプターだけの決済手段ではない。「Catlogシリーズ」がターゲットとする「猫様を家族だと思って大切にしている人」という幅広い層からも、使いやすい決済手段になっている。(伊豫氏)
伊豫氏のファミリーの一員である猫はCCO(Chief Cat Officer)として重要な広報の役割を担っている
サブスクリプションにも対応できる「Amazon Pay」のメリットは大きい
「Catlogシリーズ」は、デバイス本体の「Catlog」「Catlog Board」を購入し、猫1匹あたり月額580円のアプリをダウンロードして利用する仕組みとなっている。
このほかにも、まずはお試しをしたいユーザー向けに、「Catlog」本体が月額690円で、「Catlog Board」本体が月額750円で一定期間利用できるレンタルプラン(アプリの月額利用料は別途必要)も用意している。
こうしたサブスクリプションのビジネスモデルにも、「Amazon Pay」は「Auto Pay」機能で対応できる。「Auto Pay」は、利用者が初回購入時に以降の支払い方法や配送先が設定できる機能で、次回からはその設定情報を使って事業者側で請求ができるため、ユーザーの手間が省けるようになる。
クレジットカード決済でも継続課金や定期支払は可能だが、初回の購入ステップも簡単な「Amazon Pay」がサブスクリプションにも対応しているメリットは大きいようだ。
「Auto Pay」の内容
販路の中でも自社ECの利用者が最多。だからこそ、決済ニーズまでくみ取るべき
「Catlogシリーズ」はRABOが提供している複数の販路のなかでも、説明が特に充実している自社ECサイトで購入するユーザーが最も多いという。だからこそ、カスタマーエクスペリエンスに大きな影響を与える自社ECの決済手段を重要視している。
「Amazon Pay」の手数料は、一般的なクレジットカード決済と比べて手数料が少し高い印象があるが、それ以上に導入する意味合いは強いと伊豫氏は話す。
「Amazon Pay」で決済するお客さまは多いので、途中で離脱することなく最後のコンバージョンまで至っていると実感している。「Amazon Pay」はお客さまの商品購入を後押しする効果もある。RABOにとっては機会損失しないためのトリガーになっていると捉えている。(伊豫氏)
離脱を防ぎ、高いコンバージョンと顧客満足を実現するためには、RABOのように事業者側から率先してユーザーに選ばれる決済手段を導入していくことが必要なのだろう。
今後の目標は「獣医療との接続」と「データを生かした新規事業」。グローバル展開も視野に
RABOは今後の取り組みとして、「獣医療との接続」と「データを生かした新規事業」の、大きく2つを掲げている。
猫を軸とした「獣医療との接続」「データを生かした新規事業」の新事業展開を進めていくという
これまでの動物病院は、猫が来院したときの状態と、飼い主への問診しか診察材料がなく、また飼い主も猫を24時間見ているわけではないので、非常に限られた情報だけで診察するほかない。
こうした現状を打開するため、まずは「Catlogシリーズ」で定量的に猫のデータを取得し、普段の猫の様子や情報が細かく獣医師に接続できるようになる世界を広げていくことがRABOの第一の目標だ。
たとえば、猫の排尿状況から体調変化の兆候を把握するのも「Catlogシリーズ」で可能だ。猫のトイレの回数が増えた場合、何度もトイレに行っているだけのように見えても、「Catlog Board」のデータを見れば、実際は排尿をしていなかったということも把握できる。そうすると、「何か泌尿器系のトラブルがあるかもしれない」という裏付けがデータから得られるようになり、最善のタイミングで医療を受けられるようになる。
実際、RABOが行ったユーザーアンケートによると、「『Catlogシリーズ』がきっかけで泌尿器系のトラブルに気付いた」というユーザーが82%にも達したほどで、猫の細かな健康管理に役立っていることは明らかだ。
現時点では、診察時に飼い主がスマートフォンアプリで猫の情報を見せるといった使い方が多いようだが、なかには飼い主と獣医師がアカウントを共有して、一緒に猫の体調管理をしているケースもあるという。
次いで、人の世界でもバイタルデータが商品開発や新サービスに生かされているように、「Catlogシリーズ」で取得したデータを、次の事業に生かしていく目標も立てている。
「Catlog」シリーズに蓄積された行動ログデータや体重・排泄データなどを活用した研究機関「Catlog総合研究所」を2021年に設立した
「猫様の行動、食事、排泄、運動量などのデータを、これほどまでに蓄積している企業は珍しい」と話す伊豫氏。フードやトイレ、保険など、猫の健康に貢献できる商品開発に、「Catlogシリーズ」の膨大なデータが役立つ可能性は無限に広がる。すでに、大手企業とも連携した独自製品の開発に取り掛かっているそうだ。
そして、ゆくゆくは「Catlogシリーズ」をグローバル展開したいと意欲を見せている。
技術的には「Catlog」をほかの生き物にも転用できるが、やはり生き物ごとに特徴も違えば、飼い主のインサイトもまったく違ってくるもの。人間用のモノをほかの動物に転用しても中途半端になってしまうように、その生き物に対してしっかり特化しなければ、プロダクトとして芯を食ったものにならないと思う。製品・サービスとしては今後も「猫様のために」を追求しながら、販路はグローバルに広げていきたいと考えている。そのときは、世界でサービスを提供するAmazonの価値がまた享受できればと期待している。(伊豫氏)
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オリジナル記事:「猫様の飼い主にとって買いやすく続けやすいサービスにする」。IoTデバイス+EC+データで“猫と一緒の生活”を支えるビジネスとは
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