「独自の広告最適化システム」「永続的な顧客との関係構築」――利益率29%を達成する北の達人コーポレーションの経営の秘訣に迫る | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2021年11月8日(月) 09:00
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5期連続で売上高営業利益率20%台を維持し、2020年2月期には売上高100億円超、利益率29%を記録した北の達人コーポレーション。高利益率を維持する企業経営の秘訣について、フラクタの河野貴伸代表取締役が木下勝寿代表取締役社長に聞いた

北の達人コーポレーションは「売り上げ最小化、利益最大化」を原則に掲げ、LTV(顧客生涯価値)をもとに広告投資判断を行う利益重視型マーケティングを実践している。売り上げを拡大しながら、常に高い利益率を維持する企業を築くための経営、およびマーケティングの秘訣とは? フラクタの代表取締役である河野貴伸氏が事業者の立場から、北の達人コーポレーション代表取締役社長の木下勝寿氏に話を聞いた。

「10億~20億円規模の商品を10個そろえて100億円を売り上げる」というこれまでの戦略

北の達人コーポレーションは創業から約20年で売上高が100億円に到達。特に目を見張るのが圧倒的な利益率の高さで、2021年6月には木下社長の著書『売上最小化、利益最大化の法則─利益率29%経営の秘密』(ダイヤモンド社)を出版している。

北の達人コーポレーション フラクタ 売上最小化、利益最大化の法則――利益率29%経営の秘密『売上最小化、利益最大化の法則――利益率29%経営の秘密』
著者:木下勝寿氏 発行:ダイヤモンド社 出版日:2021年6月15日

売上高100億円規模に達するまでの北の達人コーポレーションは、「競合の少ないニッチなマーケットで、1商品あたり10億~20億円規模の商品を10商品程度取りそろえ、利益率の高いビジネスを行いながら100億円の売り上げを作る」という戦略のもと、事業を展開してきた。

20億円以下の規模のマーケットだと、大手企業にとっては小さすぎて参入するには効率が悪い。しかし、品質面で優位性の高い商品を展開できれば、顧客の支持は得られる。北の達人コーポレーションは、こうして競争の起こらないマーケットを自ら作り上げ、売上高100億円をめざしてきた

結果的に、高い利益率を維持したまま売上高100億円を達成したが、内訳を見ると商品によっては2億~3億円規模のものもあれば、40億~50億円を売り上げるものもあったという。こうした状況から、2つの利点と1つの課題が浮き彫りとなった。

1つ目の利点は、ニッチなマーケットでトップシェアでなくても、高い利益率を維持できる方法があると実感したこと。10億~20億円の規模を超えても、やり方や可能性は十分にあることに気付いたという。2つ目の利点は1商品で40億~50億円規模の事業を作るノウハウが身についたことをあげている。

一方の課題には、1つひとつの商品マーケットが小さいと成長の余地に限界が生じることをあげた。これまでの戦略で明確になった利点を生かし、今後は1商品あたり50億~100億円規模のより大きなマーケットの商品を複数展開して、売上高1000億円、営業利益300億円をめざしていきたいと考えている。

北の達人コーポレーション フラクタ これまでの戦略と現状、今後の計画北の達人コーポレーションのこれまでの戦略と現状、そして今後の計画(画像は北の達人コーポレーションのIR資料からキャプチャ)

計画を立てる際、必ず「最低限、理論上はうまくいく」という設計を最初にするようにしている。なぜなら、理論上でうまくいくはずのないものが、実践でうまくいくとは考えられないからだ。ただし、「10億円規模の商品を10個作って100億円の売り上げを作る」という理論を立てても、現実では理論通りにいかないこともあり、そこを乗り越える要因となるのが人間の感情の部分だと思う。設計の段階ではしっかりと理論立てることが重要だ。(木下氏)

北の達人コーポレーション フラクタ 北の達人コーポレーション代表取締役社長の木下勝寿氏北の達人コーポレーション 代表取締役社長の木下勝寿氏
広告最適化システムを独自開発し、高利益率を実現

北の達人コーポレーションが高利益率を実現している秘訣は、日々の広告運用にある。出稿している広告を詳細に管理し、デイリーでデータを算出、採算の合わない広告は停止させてチューニングしてから再出稿するという作業を日々実施している。木下氏が創業時から確立してきた広告を最適化させる手法を独自システムとして開発し、広告運用はすべて内製化している。

北の達人コーポレーション フラクタ 独自の報告最適化システムを開発、利益の最大化を図っている独自の広告最適化システムを開発し、利益の最大化を図っている(画像は北の達人コーポレーションのIR資料からキャプチャ)

私1人で資本金1万円からスタートした会社なので、売り上げが拡大することに喜ぶよりも、利益を見ていくしかなかった。ウェブ広告はすべて数字が分かる上、その数字の良し悪しもある程度はシステムで自動判断できる。システムが判断できるところはシステムを使い、人間はよりクリエイティブな業務に力を注げるようにしてきた。(木下氏)

広告運用は未経験者採用がほとんど。未経験だからこそ、独自のやり方にも早く馴染める

広告運用には未経験者を採用するケースがほとんどだという。未経験者であれば「CPOがこのラインを超えると赤字になる。赤字であれば出稿を止めた方がいい」という考えが先入観なく受け入れられ、北の達人コーポレーション独自のやり方にも早く馴染みやすくメリットは大きいと木下氏は感じている。

広告運用自体はすべてシステム化しているが、たとえばGoogle広告の入札額の調整など、より複雑な業務は、経験値や教育よりも個人個人の向き不向きが大きく影響すると捉えている。各人材が向いているポジションに適切なアサインをし、役割分担をしていることも全体の成果につながっているようだ。

人材採用に関して、河野氏も共感の声をあげた。

「優秀な人材が採用できない」という悩みをよく耳にするが、では、優秀な人材とはどういう人かと聞くと「デジタルリテラシーがあって…」などという話になってしまいがちだと思う。しかし、商売としてそもそも大事なことは、黒字で運営できるように調整しなければならないということ。個人の向いているポジションに配置する整理が大事になってくるので、「採用できないから勝てない」という考えを持っているととてももったいない。(河野氏)

北の達人コーポレーション フラクタ フラクタ代表取締役の河野貴伸氏フラクタ 代表取締役の河野貴伸氏
最適上限CPOを把握し、利益率の高い広告運用を

当然ながら、広告費以上の売り上げがなければ利益は出ない。ただ、リピート性の高い商品を取り扱う北の達人コーポレーションは、単発(1回の購入)で見るのではなく、1年間のLTVをもとに広告投資判断を行って利益重視型マーケティングを実現している。判断方法を表にすると次のようになる。

北の達人コーポレーション フラクタ 最適上限CPOの算出方法「新規の獲得件数×顧客1人あたりの利益」でCPOの額ごとに利益額を算出すれば、「最適上限CPO」がわかる(画像は北の達人コーポレーションのIR資料からキャプチャ)

CPOを下げれば顧客1人あたりの利益は増えるが新規獲得件数は減り、逆にCPOを上げれば顧客1人あたりの利益は減るが新規獲得件数は増える。利益を最大化させるには、このなかで最もバランスが良く利益が出るポイントの「最適上限CPO」を探らなければならない

まず、リピート性の高い商品の場合、「顧客1人あたりの利益=LTV-CPO」で算出する(リピート性のない商品は「顧客1人あたりの利益=客単価-CPO」で算出)。そして、CPOの額ごとの利益を「利益=新規の獲得件数×顧客1人あたりの利益」で算出する。

上の表の通り、LTVが1万円の場合、CPOが3000円であれば1人あたりの利益は7000円と最も高いが、新規獲得件数は100件にとどまるため、利益額は7000円×100件=70万円となる。このように、CPOが4000円、5000円、6000円の場合でそれぞれ計算していくと、CPOが6000円のときに利益額が最大化し、CPOが7000円を超えると利益が徐々に減少していくことがわかる。つまり、この場合の最適上限CPOは6000円ということになる。

こうして見れば、売り上げが最大化すれば利益も最大化するわけではなく、新規獲得件数が増えれば利益も最大化するわけでもないことは明らかだ。数字をしっかりと把握した上で、経営判断をしなければならない。

CPOが低いときは、購買意欲の高いお客さまにしかアプローチできないが、購買意欲が高いからこそLTVも高くなりやすい。一方で、CPOが高くなればなるほど、買う気が薄かったお客さまも買っているということなので、LTVは下がっていく傾向にある。全体を数値化して見ていくと、一番バランスの良いところが見つかる。利益を最大化しようという考えで動いていれば、新規獲得件数や売り上げが必ずしも最大でなくてもいいことがわかる。

これはシェアにおいても同様で、「シェアNo.1」が必ずしも「利益No.1」になっていないことも多々ある。資金に余裕があると大雑把になりがちだと思うが、計算をアバウトにしてはいけない。(木下氏)

北の達人コーポレーション フラクタ CPOと新規獲得件数の相関性CPOと新規獲得件数の相関性(画像は北の達人コーポレーションのIR資料からキャプチャ)
通販・EC業界以外のカスタマーサービスも参考に、顧客満足度を高める

利益を最大化する上でも、商売の根底として大事なのは、顧客から支持を得られる高品質の商品・サービスを展開することだ。北の達人コーポレーションは、自分たちが自信を持って勧められる商品・サービス作りを最優先に心掛け、カスタマーセンターもすべて内製化し、顧客からの良い声も指摘もすべてを受け止めて品質向上に努めている。

このほか、通販・EC業界に限らず、さまざまな業界のカスタマーサービスを勉強して、自社のサービス向上に生かしていることも特徴だ。

たとえば、ザ・リッツ・カールトンホテルが実施している「エンパワーメント(裁量委譲)」を参考にした制度を、北の達人コーポレーションでも導入している。ザ・リッツ・カールトンホテルの「エンパワーメント」とは、顧客に最高のサービスを提供するためであれば、各スタッフが都度上司の判断を仰ぐことなく自身の判断で1日2000ドルまで支出できるという権限だ。北の達人コーポレーションでも顧客サービスのために行使できる一定の裁量権を各従業員に与えている。

こうしたさまざまな取り組みによって顧客満足度を高め、熱烈な支持を寄せてくれる顧客を増やしながらスケールを拡大している。

ずっと新規顧客を獲得し続けなければならない状況は、企業としてとても骨の折れること。永続的な事業にしていくためには、顧客満足に向けた取り組みが必要不可欠だ。創業した2000年当時は、「ネットで物を買うのは初めて」というお客さまが半数ほどいて、「パソコンがフリーズした」というような問い合わせにも対応しながら、お客さまと一緒にネットでの買い物体験を作り上げてきたという経緯がある。

よく「通販・ECはお客さまと直接やり取りをしない」と言われるが、通販・ECは住所や購入履歴などがすべてわかった上でやり取りできるため、お客さまとの直接的なつながりはとても強いと実感していた。一過性で事業規模を拡大する方法もあるだろうが、永続的に拡大するためには、一度購入していただいたお客さまとつながり続ける方が効率も良いと思っている。(木下氏)

2022年以降、マーケティングは“商品と顧客をつなぐ”本来の姿に立ち戻ると予測

2020年から続くコロナ禍に代表されるように、リアルもオンラインも含めた商売自体が大変革期にあると、河野氏は捉えている。「2022年以降、日本企業のマーケティングにはどのようなものが求められるか?」という質問に対し、木下氏は「原点回帰すると思う」と答えた。

マーケティングの本質は、どのような顧客や競合がいるかを理解し、自社が顧客から選ばれる理由を見出し、顧客に選んでもらうための施策を実行すること。つまり、“顧客”と“商品(サービス)”が大前提であるはずだが、特にここ数年はウェブマーケティングの分野で、テクニカルな部分だけに視野が絞られている傾向にあると木下氏は感じている。極端な例を言うと、商品を知らなくとも成果を上げているケースすら散見されるという。

しかし、世界的にもプライバシー保護の観点から個人情報の取り扱いに関する規制強化が進んでおり、従来通りのリターゲティング広告は難しくなるなど、状況は刻々と変わり続けている。

こうした流れの中で、「テクニカルな部分を残しつつも、クリエイティブをしっかりと作ってメッセージを伝えることで“商品とお客さまをつなげる”という本来のマーケティングに戻っていくのでないか」と木下氏は考えているようだ。

本来、テクノロジーは活用することで効率化されたり、可視化できなかったことが可視化できたりするものであり、人が人にしかできない業務にしっかりと時間を費やせるためという意義が大きいはず。しかし、この10~20年間は「裏技」の面に走りがちだったと感じている。当初は「裏技」で勝てることもあったと思うが、「個人情報の取り扱いはこのままで良いのか?」といった議論が出てきた上、リアルとオンラインの境目もなくなりつつある。そのなかでは、マーケティングも本来の姿に立ち戻っていくだろうし、そうなればより面白い世界になっていくのではないかと想像している。(河野氏)

今のビジネスを核にしながら、新規事業にもチャレンジしていく

現在、北の達人コーポレーションは国内を中心に事業展開しているが、最近では米国の「Amazon.com」で新商品を販売するなど、新たな事業にも積極的に取り組んでいる。ウェブを使ったビジネスでは国境がほぼなくなっていると捉えていることから、「Amazon.com」での販売展開は、「米国進出」ではなく「Amazon進出の対象が米国」という考えのもと始めているという。

「Amazon.com」での販売展開は、「米国に進出するぞ!」ではなく「Amazon向けの商品を別途作ってみよう」という発想から始まっている。いろいろと調査する中で、同じAmazonでも日本の市場規模に比べて米国は3倍も大きいことがわかった。そう考えると、Amazonで売れそうなものを作ろうとしたときに、日本ではなく米国のAmazonを対象に考えた方が良いという自然な流れで決まったに過ぎない。世の中が変わり続ける中で、今のビジネスを核にしながらも、今後も新しい事業にチャレンジしていきたい。(木下氏)

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朝比美帆
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