EC通販における支払い方法では、クレジットカード、代引きに加えて、「後払い」があった方が良い。一般的にクレジットカード、代引きしか支払い方法がないところに「後払い」を加えると、20%ほど受注が増加する傾向がある。ここでは「後払い」について解説しておこう。
後払いのニーズは想像以上に多い
下のグラフは、後払い決済を導入したEC事業者の出荷件数の推移を示している。それまで低迷していた出荷件数が、後払いを導入した2019年2月以降伸び始め、6月には全体で140%の成長となった。後払いを選択する比率は約34%であり、成長分の多くが後払いの顧客であったことがわかる。

後払い決済を導入したあるEC事業者の出荷件数の推移(2018年4月〜2019年6月、スクロール360調べ)
このケースは後払い決済の導入後、キャンペーンとして後払いを選択するとお得になるプランを打ち出したためここまでの伸びとなったが、スクロール360の物流クライアントの平均では120%の成長が実現している。
支払い方法として後払いを追加するだけで、なぜここまで売上が増えるのか。理由として考えられるのは次のような点だ。
そもそも、高校生や専業主婦などクレジットカードを持っていない顧客が一定数いる。また、セキュリティへの不安からクレジットカードをネットで使いたくない。代引きは配達時に家にいなければならず使いにくい。「商品を実際に見て納得してから支払いたい」といった顧客もいる。
後払い決済のニーズは想像以上に多いことを理解しておくべきである。
「後払い」は審査スピードと貸倒率が重要
現在、EC通販向けに後払い決済サービスを提供する企業は9社ほどある。基本的なサービスはほぼ同じだが、EC事業者の視点で重要なのは、審査スピードと貸倒率(かしだおれりつ)である。
審査スピードが速ければ、顧客にとってはそれだけ審査結果が早くわかる。ネット利用者は時間(速い遅い)の感覚が鋭い傾向があり、「後払い」についても同じことが言える。審査スピードの速さは、顧客体験の向上につながるはずだ。
もう1つは、貸倒率である。後払いを選んだ顧客が支払い不能となった場合、「貸倒れ」サービスを提供する企業が代金を負担し、EC事業者には購入代金の全額が支払われる。しかし、貸倒率が高ければ、それは利用料に跳ね返る。貸倒率が低ければ利用料がその分低くなるのである。
こうした点から紹介したいのが、「後払い.com」である。2013年、スクロール360は「後払い.com」を運営する株式会社キャッチボール(以下、CB社)をM&Aした。物流代行を得意とするスクロール360と「後払い.com」が合体することで、EC事業者にシナジー効果を提供することが目的だ。CB社は当時、ベンチャーの独立系企業で、資金力、信用力、システム力がそれほど強くなく、スクロールグループに入ることは双方にとって良い組み合わせと言えた。
そもそもスクロールでは、60年以上前からカタログ販売の支払い方法として後払いを導入しており、後払い審査のノウハウとデータを豊富に持っている。例えば、一度貸し倒れになったユーザーは、次に注文するとき、住所と名前を変更して別人に成りすます傾向がある。そうしたノウハウをもとに、独自の審査システムを自社で開発している。
このシステムをCB社に導入することで、CB社の審査能力は大幅に強化され、他社より審査のスピードが速いと言われるようになった。また、貸倒率が低下することで、料金も業界最安値となっている。
後払い決済サービス主要3社の比較
後払い.com NP後払い GMO 決済手数料 月額固定費 決済手数料 月額固定費 決済手数料 月額固定費 料金 Aプラン 4.8% 0円 5.0% 0円 4.7% 0円 Bプラン 4.2% 4,500円 4.4% 5,000円 4.2% 4,500円 Cプラン 3.5% 18,000円 3.6% 20,000円 3.4% 18,000円 Dプラン 2.8% 45,000円 2.9% 48,000円 2.7% 45,000円 請求手数料 はがき 169円 ─ 150円 封書 ─ 190円 180円 同梱 85円 85円 89円 決済上限額(税別) なし 50,000円(※1) 50,000円(※1) サービス内容 支払い可能窓口 コンビニ ○ ○ ○ 銀行ATM ○ ○ ○ 郵便局 ○ ○ ○ サポート対応 時間 9:00〜18:00 10:00〜17:00 10:00〜17:00 定休日 年末年始 土日祝 土日祝 リアルタイム与信機能 ○ 実装予定 ○ 注文キャンセル手数料 無料 有料(※2) 有料(※2) 請求期限 14日間 14日間 実質13日間(※3)
(2021年2月時点、スクロール360調べ)
※1:他店でのお買い物も累計される ※2:請求手数料の実費 ※3:請求期限に請求書発行日が含まれるため
後払い用の振込用紙についても、スクロール360の物流センターで印字し、商品と同梱することで郵送コストを抑えている。振込用紙を郵便で別送すると、商品の到着時に「後払いで頼んだのに、なぜ振込用紙が入っていないのか?」というクレームが入る。商品に同梱する方がクレームは少ない。
この記事は『EC通販で勝つBPO活用術』(ダイヤモンド社刊)の一部を編集し、公開しているものです。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:決済手段はバリエーション豊富な方が良い。支払い方法に「後払い」の選択肢を【比較表あり】 | 『EC通販で勝つBPO活用術』ダイジェスト
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