通販・ECビジネスにとっても改元元年はビジネスチャンス、キーワードは「リセット」「リスタート」――。単品通販、総合通販などを手がける50代の通販業界関係者数人との会食の席で、ベテラン通販関係者はこう口をそろえました。そう、業界の先輩たちは約30年前にあった「昭和」から「平成」への改元時、通販ビジネスに関わっていました。そして、人生2度目となる改元需要についての期待を口にしたのです。
「昭和」から「平成」の改元時、通販ビジネスが活況
昭和から平成の改元は、昭和天皇崩御によるもので、経済全体の消費需要としては“自粛モード”だったとされています。
通販ビジネスは「士農工商・通信販売」と呼ばれるほど小売業での位置付けは低かったとされており、ファンケルやオルビス、ふくや、財宝など特定カテゴリーに特化した通販会社の台頭、総合通販や百貨店、テレビ通販といったプレーヤーの事業拡大が顕著になった1980年前後から“市民権”を得たビジネスとして社会的認知が広がったと言われます。
さて、こうした社会情勢も踏まえ、1989年当時、通販ビジネスに携わっていた先輩たちはこう振り返ります。
自粛モードでも美容や健康グッズの消費が激増したんですよね。改元によって、新しく何かを始めたい、昭和までの自分とおさらばしたいといった考える人が急増し、通販で美容・健康グッズがよく売れたんです。キーワードは「リセット」「リスタート」でしたね。
ちなみに、公益社団法人日本通信販売(JADMA)によると、1982年の市場規模は6400億円。1987年には1兆円を、1994年には2兆円を突破し、右肩上がりで成長を遂げています。

参考までに1986年度の「通販・通教」の売上高ランキング。なつかしい社名がちらほら
令和元年は「リセット」「リスタート」の施策を
前回の改元を経験した先輩方は、令和元年も「リセット」「リスタート」に関する消費需要が急増すると予想。先輩方がお勤めの会社でも準備を進めているそうです。
たとえば定期購入ビジネスを手がける事業者は新しい顧客をつかまえるチャンスですよね。平成までの自分をリセットして、令和から生まれ変わった自分になるための投資をする消費者は一定数存在するでしょう。美容、健康食品の定期購入に申し込む人は増えるのではないでしょうか。今回は天皇陛下が生前退位されるので、広告クリエイティブも前向きなモノが増えると思いますよ。
先輩が仰せの通り、改元に伴って消費マインドは変わるのでしょうか。クロス・マーケティングが全国47都道府県に在住する20~79歳の男女を対象に行った「改元に関する調査」(3000サンプル)によると、回答者の20.1%が改元を機に何かをスタートする意向を示しています。
企業側はどうでしょうか? 帝国データバンクが行った「改元に関する企業の意識調査」(有効回答数は9701社)によると、プラスの影響があると回答した企業の業種別では「旅館・ホテル」が30.4%でトップ。各種商品小売は19.5%、家具小売が12.5%でした。
プラスの影響があると回答した理由の上位は、消費マインドの改善など人々の気持ちの高揚が13.5%。休日の増加による個人消費の拡大が8.7%。改元に伴う設備改修業務や商品入れ替えの増加など改元特需の発生が7.9%。
ここでは一部調査をあげていますが、改元によって「新しいことを始めたい」などと考える消費者は一定数存在していそうです。
2度目の改元ビジネスを経験する先輩方によると、次のようなジャンルを扱う企業は、特集やキャンペーンなどの施策によって、新規顧客の獲得、売上アップなどにつなげることができるのではないかと説明します。
- 美容・健康ジャンル
- スキルアップや自己啓発に関するジャンル
- スポーツ系・アウトドアジャンル
- DIY系ジャンル
- 趣味用品グッズ
- ファッション・アパレル系 などなど
「自分を変えたい」「新しいことを始めたい」「気分を一新したい」などに関わるジャンルがあがっていますよね。
ちなみに、楽天が発表した「楽天市場」の「ヒット番付 改元イヤー番外編」では、「きっかけ消費」を東の横綱にあげています。

楽天市場 ヒット番付 改元イヤー番外編)
新年を迎える際に新しいことを始める人が多いように、改元をきっかけに新しい自分になりたい、新しいことにチャレンジしたいという気持ちを抱く人は多いようです。「楽天市場」では、身体を引き締めるダンベル・フィットネス器具などの筋トレグッズ、新たな習い事のためのギター・釣り用品・ゴルフ用品などの趣味用品の売上が好調です。また、改元を機に引っ越す人も増えることが予想され、家具の需要も高まっています。(楽天)
あと数日で平成が終わり、令和がスタートします。令和のスタート前に「リセット」「リスタート」を軸にした施策を検討してみてはいかが?
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オリジナル記事:【令和特需】EC・通販ビジネスは「リセット」「リスタート」がキーワード! | 編集部コラム(月1回掲載のペースが目標)
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