もうすぐ夏本番! なのに、オカンが閲覧していたサイトには、冬に見ていた毛皮のコートのバナー広告が表示されたらしい。汗がすごいが、大丈夫か……!? イラスト◎浮蓮 要
登場人物
僕 大学院を卒業後、地元大阪の大手メーカーに就職したが、なぜか配属された広告宣伝部でアドテクに興味を持ってしまい、あっさり東京のインターネット広告会社に転職してしまった。現在入社3年目の27歳。オカンには「虎の子は虎やな」とわけのわからないコメントをもらったが、たぶん応援してくれていると信じて毎日楽しく忙しく働いている。
オカン 純然たる大阪のオカン。自慢(?)のファッションセンスをビジネスにいかそうとネットショップを始めた。数々のネット広告の知識を息子から仕入れ、持ち前のビジネスセンスで事業を拡大している。
え……。でも買ったの?
まあ、せっかくやからな。それにしても、いつまでたっても冬に見た商品の広告が追っかけてくるんやで!? さすがに迷惑やと思わへんのかいな!
確かに、夏になっても冬物のコートが出てくるのは良くないね。
あれ……? 待って……! もしかしてアタシのサイトのリターゲティング広告も、こういう風に思われてるんちゃうの!?
オカンのサイトの冬物の広告は見たことないから大丈夫なんじゃない?
なんや、あんたもアタシのサイト見てくれてるんかいな(にやにや)。
……でも、もしかしたら「いつまでも広告に追いかけられてイヤだ」って思ってる人はいるかもしれないね。
なんやて!! どないすればいいんや!?
それはね……。
リタゲ広告で嫌われないためにはどうしたらいい?
リターゲティング広告は、広告主にとってはCVR(コンバージョン率)が高くなりやすい広告だから、費用対効果の観点からも使いやすいし、ユーザーは買いたいものを思い出せるから、それ自体はとても有用なんだ。
でも、それほど興味を持っていないユーザーをずっと追いかけたり、すでに買った商品を表示したりしていたら、それはやっぱり迷惑だと思われてしまうよね。
広告主は買ってもらいたいから配信したいけど、配信し過ぎもユーザーにとっては良くないってことだね。
配信するんか!! しないんか!! どうすればいいんや!!
う~ん、これについては完全に解決する方法はないんだ。でも軽減することはできるよ。そのために、「リーセンシー」と「フリークエンシー」と「サイト階層」、それから「バナークリエイティブ」を考えるんだ。
……ほら、もう言わんで。説明しぃや!
「リーセンシー」がサイトを離脱してからの経過日数、「フリークエンシー」がユーザー1人あたり見せる広告の表示回数、「サイト階層」はECだったらTOPページとか商品詳細ページとかカートページが該当するよ。
いつ、どのページでサイトを離脱した人に、何回広告を表示させるか、これを決めるんだ。
ほうほう、なんとなく分かるで。ユーザーをいろいろと分けて、カテゴリーごとに配信して、バナーの絵柄も変えるっちゅーことやな!
その通り(成長したなぁ)。例えば「商品詳細ページに来た人に対して、リーセンシーを1日、フリークエンシーを1日あたり3回」と設定して広告を配信したとするよ。
そうすると、その人には商品を見た翌日のみ、広告を3回だけ見せることができるんだ。これならそんなにしつこいと思われることはなさそうだよね。
確かにな。でも3回って、それも次の日までて、あんたそれ、広告の意味あるん?
まあ、これだけだとあまり効果は期待できなさそうだよね。
じゃあ「TOPページに来た人に対して、リーセンシーを90日、フリークエンシーを1日あたり1,000回」と設定して配信したらどうかな?
TOP見て離脱してるんやろ? アタシのサイトに惹かれなかったのに、1日に1,000回も同じバナー見せられて、それが90日続くなんて、あんたそれ、むしろマイナスや。
そう。たとえ同じバナーじゃなかったとしても、同じ会社の広告ばかり出ていて、それが長期間にもなるとストーカーされてるんじゃないかって気分になるよね。
結局どうすればいいんや!
これが難しいところで、正解っていうのがないんだ。ちょっと図を使って説明するね。
リーセンシーとサイト階層から、最適なフリークエンシーを導き出す!
誰や、何やこの右上。ハシビロコウか。
これはユーザーの離脱ページと離脱してからの日数を表にしたものだよ。一般的にはより深い階層にいて、かつ離脱してからの日数が短い方が購入意欲は高く、リターゲティング広告を配信しても効果がいいとされているんだ。
上の例だと、「カートページ離脱 × 離脱してから1日以内」のユーザーをターゲットとして配信すると、効果が良くなりやすいってことになる(注:図でいうと左下のオカン)。
逆に、浅い階層にしか訪れていなくて、離脱してからの日数が長いと、効果はあまり良くないとされているよ。ここで言うと「TOPページ離脱 × 離脱してから14日」のユーザーだね(注:図でいうと右上のオカン)。
なるほどなぁ。確かにTOPページ見ただけのサイトは何日かしたら忘れてしまうわ。あ、だったら「深い階層 × 離脱してから1日以内」のユーザーだけにガンガン配信したら売上もめっちゃ伸びるってことやないの!?
そうそう。だけど、やり過ぎるとしつこいと思われてしまうよね。深い階層に来たからといって、リーセンシーを90日とかにして、いつまでも配信するのも良くない。
きぃいいいいいいい! どうすればいいんや!
これは適切なものを見つけていくしかないんだ。さっきも言ったけど、リーセンシーとフリークエンシーと階層、バナーのクリエイティブを上手く組み合わせて、効果の良いものを見つけていくのが最善の方法なんだよ。
深い階層 × 離脱日数の短いユーザーには、フリークエンシーをまずはゆるめに設定してみて配信。効果が悪ければ見せすぎて嫌がられてる可能性と、見せな過ぎて気付かれていない可能性を考えて、増減をさせながら再度効果を確認……みたいな感じでね。
TOPページで離脱して何日も経ってしまった人でも、SALE文言を全面に押し出したバナーにすれば、もしかしたら興味を持ってくれるかもしれないよ。
……ぶつぶつ。
もちろん大変だっていう場合には、そういった調整を自動でやってくれるサービスもあるみたいだよ。
……ぶつぶつ。
ユーザーにしつこいと思われないようにしつつ、ちゃんと商品の良さを伝える。すごく難しいと思うけど、ユーザーのことを考えて地道にやっていくのが大事なんじゃないかな。
そうやそうや。自分が消費者で、イヤだと思わないような設定にすればいいんやー!!!
いや〜、難しいとおも…… 行っちゃった……。
後日……
アンタのおかげで、水着が飛ぶように売れとるわ!
……(才能がすごい)。
見てみぃ! アタシもサイトの売れ筋水着、着てみたでぇ。
ほな、今から水着の売上使てバカンスへGOやー!
……。
今回のまとめ
リターゲティング広告をストーカー広告にしないためには、
いつ(リーセンシー)、どのページでサイトを離脱した人に(ページ階層)、
何回(フリークエンシー) 、どんな広告(クリエイティブ)を表示させるか
を、適切に設定することが大切。
今回覚えたいアドテク用語
リーセンシーユーザーがサイトを離脱してからの経過時間のこと。ずいぶん前にたまたま一度見ただけなのに、いつまでも追いかけ続けていれば、それはしつこいと感じられても無理ありませんよね。ECの場合、離脱後3日以内くらいの効果が良い傾向にありますが、探りながら最も効率的な配信日数を見極めるのがいいでしょう。
フリークエンシーユーザーに広告を見せる回数のこと。これに制限をかけることを「フリークエンシーキャップ」と言います。
こちらも何回がベストかは商材によって異なってきますので、色々試して最も適切な回数を決定していく必要があります。
クリエイティブアドテクの世界で「クリエイティブ」と言うときは、バナー広告のデザインや訴求内容のことを指します。
訴求内容や雰囲気を少しだけ変化させ、A/Bテストも兼ねて複数のバナーを並行して配信してみても良いでしょう。
ユーザーが見るバナーに変化を付けることで、「同じ会社の同じ商品がまた訴求されている」「同じ広告に追われ続けている」と思われることを軽減できます。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:アタシの広告を見てほしいんやけど、嫌われたくないんや!【オカンでもわかるリターゲティング広告のジレンマ】 | オカンでもわかるアドテク教室
Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.