企業ニュースのユニークポイントをメディアはどう見つける?~「ITmedia ニュース」編集部に聞きました | ネットPR.JP

ネットPR.JP - 2016年6月30日(木) 13:34
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Interview_ITmedia

Interview_ITmedia

「Webメディアに記事にしてもらうには?」というPR担当者の疑問に応え、さまざまなWebメディアの中の人たちに取材するメディアインタビューの第3回。

今回は、IT分野のトレンドをいち早く伝える「ITmedia ニュース」編集長の本宮 学氏と、編集記者の片渕 陽平氏にお話を伺いました。

お話を伺った方

ITmedia ニュース
編集長 本宮 学氏
編集記者 片渕 陽平氏

一日に届くリリースは600通以上

──企業からのプレスリリースは、編集部にどのように届いていますか?

本宮(以下、敬称略):アイティメディア株式会社には、プレスリリース受付専用のメールアドレスが複数あります。IT総合情報ポータル「ITmedia」に属しているメディア宛てのほか、ネット上の旬な情報を幅広く扱う「ねとらぼ」宛てやITエキスパートのための技術情報メディア「@IT」など窓口は10ほどあります。(※)毎日プレスリリースが届く量は膨大で、600、700通ぐらい。多い日はもっと来ます。

片渕:多いときは1000通以上届くかな、というくらいですね。

本宮:その多くはニューズ・ツー・ユーさんのようなリリース配信サービス経由で届いたもので、企業から直接送られてくるものもあります。

我々の媒体は「ITmedia ニュース」という名前の通り速報媒体ですので、情報をいかに早くキャッチして記事を出せるかを媒体価値の1つに置いています。プレスリリースはそのための良い情報ソースの1つではありますね。

──1日数百通もの膨大なプレスリリースの中から、記事にする情報をどのように拾い上げているのでしょうか。

片渕:スピードが求められるので、選定に何十分もかけられるわけではありません。メールのタイトルをざっと見て媒体に合いそうなものをピックアップし、さらにメールの中身を見て記事の形に落としこめるかを検討するという2段階でセレクトしています。

──毎日リリースをチェックする時間は決めていますか?

片渕:入社して最初の頃は、意図的にプレスリリースをチェックする時間を作っていましたが、慣れてきてからは空き時間に目を通す感じです。

本宮:私も空き時間ですね。よく「いつ送ったら拾われやすいですか?」とか、「どういうタイトルにしたら目につきやすいですか?」という質問を受けますが、あまり関係ないと思っています。

重要なのは、単純に情報の中身と媒体に親和性があるかどうか。我々のような専門媒体にとって、毎日膨大に届くリリースの多くは自分たちの領域以外のもの、悪く言えばノイズです。ニュースソースはプレスリリースだけではありませんし、世の中のあらゆる事象に目を配っている中で、記事にするネタを探すのは砂の中から砂金を見つけるようなものです。

明確なメディアポリシーに照らし合わせて情報を取捨選択

──情報の中身と媒体の親和性については、具体的にどのように判断されるのでしょうか。

ITmedia ニュース 編集長 本宮 学氏

ITmedia ニュース 編集長 本宮 学氏

本宮:ITmedia ニュースは、「テクノロジーで世の中が変わっていく」という視点でITやインターネットのさまざまなニュースを伝え、ITへのさらなる関心や期待をもたらすことを目指してメディアを運営しています。

ITを取り巻く状況はものすごいスピードで変化していて、何をニュースとして取り上げるべきかは日単位や時間単位で刻々と変わります。その中で我々は、今このタイミングでどういう情報をどのような切り口で伝えたら世の中にインパクトを与えられるか、ということを第一に考えています。

片渕:ですからニュースリリースを拝見して記事にするかを判断するときに、いま本宮が申し上げたメディアポリシーと照らし合わせて合致するかどうかを考えることが多いです。

──記事にする情報を選ぶときに、他媒体で取り上げられているかは考慮しますか?

本宮:それは実際に記事を書く記者にもよると思いますが、これだけネットメディアが多様化した中、毎回確実に一番乗りの記事を出し続けるのは難しいとも思います。SmartNewsやGunosyをはじめとするニュースアグリゲーションサービスもいくつもありますし。

ただ、それらのキュレーションメディアに拾われたからといって、世の中すべてに伝播するわけではありません。仮に一番乗りでなくても、我々は自分たちならではの切り口で読者に向けて記事を出す価値はあると思っています。ニュースソースは同じでも、どのようにバリュー付けするかで媒体による記事の差は出てくるはずです。

新たにオリジナル特集企画の取り組みをスタート

──ITmedia ニュースらしい切り口で勝負ということですね。

本宮:はい。とはいえ、プレスリリースの情報に基づくニュース記事ばかりだと媒体の独自色が薄くなってしまうので、そういった速報ニュースもきちんと伝えつつ、最近ではITmedia ニュースならではの取材記事やオリジナリティのある特集企画を増やす取り組みも強化しています。

──オリジナルの特集に力を入れ始めたんですね。どのような取り組みか、ぜひ聞かせてください。

本宮:私は今年4月に編集長になったのですが、ITmedia ニュースはこれまで速報主体の新聞メディア的な文化で運営されていました。今、そこに雑誌的なコンテンツ作りを取り入れる試みを始めていて、6月に第一弾の「スタートアップ特集」を公開しました。

──特集用のネタはどういったところから探してくるのですか?

本宮:特集テーマがそのまま切り口になっているので、今回で言うと「“未来IT”で世界を変える すごい国産スタートアップ」というタイトルに沿った情報を編集者や記者が各々集めてきます。

例えば、最近よく目にする「IoT」(Internet of Things)や「VR」(Virtual Reality)といった新しいITで世の中を変えようとしている日本のスタートアップに関するホットな情報があれば、届けていただけると編集部としても嬉しいですね。

片渕:そうですね。僕の場合は、リリースを見て伺った発表会で名刺交換した方から、関係者や企業を紹介していただき、取材をしながら繋がっていくことが多いです。リリースや名刺交換がなくても、アタックしたい企業にはこちらから声を掛けることもあります。

──過去のリリースが、しばらくしてから特集の取材のきっかけにつながったりもしているんですね。

本宮:過去にプレスリリースで面白い情報を出していた企業に電話して、最新情報をヒアリングすることはしばしばあります。

「面白そうだけどわからない」リリースが気になる!?

──「面白い情報」というのは、どういうところがフックになるのでしょうか?

本宮:媒体の特性や特集テーマに合った情報というのは大前提ですが、私個人としての感じ方で言うと、プレスリリースは内容が乏しいほうがワクワクするんですよ。

──内容が乏しいほうが!? どういうことですか?

本宮:内容がきちんとしていて、これを元にすれば誰でもある程度の記事が書けそうなリリースって、どこの媒体でも似たような記事になるじゃないですか。でも、情報が全然足りてないのになんだか面白そうなリリースだと「片渕君、これ電話してちょっと詳しく聞いてみようよ」となりますね(笑)

片渕:そういうこと、よくありますね(笑)

本宮:面白そうなのによくわからないと、そのわからないところを確認したくなるんですよ。だから、あえてちょっと足りないくらいの情報量にしてみるのも1つの方法としてアリじゃないかと思いますけどね。

プレスリリース未満の情報に意外な面白さが

──なるほど。わからないと知りたくなるというのはジャーナリストらしいですね(笑)

本宮:プレスリリースって基本的に書き方がきっちりしていますよね。でも、おそらくプレスリリース未満の小ネタ情報のほうが我々としては面白いんですよ。

我々がある情報を記事にするかしないか判断するのと同じように、企業でもどのような情報をプレスリリースにするか判断していると思いますが、その判断から漏れたような情報も見えるようにしたらきっと面白いのではないかと。

例えば、うちの社長は毎日セグウェイで出社しています、みたいな情報ってわざわざプレスリリースにはしませんよね。でも、メディアがそれを知ったら「なんでなの?」と聞いてみたくなるかもしれない。

片渕:そういう話題は、取材で広報の方とお話ししているときに出てくるんですよね。取材では、そういった余白から顔を覗かせるちょっとした話題が大事です。

ソーシャルメディアの情報発信にも注目

本宮:今はソーシャルメディアで気軽に情報発信できますし、我々もTwitterで見つけたトピックを取材して記事にすることも少なくありません。メディアに取り上げられるかどうかを問わず、ぜひ何らかの形で発信したほうがいいと思います。

片渕:Twitterはよくチェックしますね。企業アカウントに限らず一般のアカウントも含めて。

今は一般ユーザーの一人一人がメディアになれる時代で、スマホがあれば誰でもニュースを全世界に発信できる。NHKの記者が全国にいるのと同じように、Twitterのユーザーも一人一人が記者だと考えると、ものすごいメディアソースになると思うんです。

それぞれの人がリアルタイムで見聞きした情報を発信して、大勢の人が共感しているなら、それは十分ニュースとして成立している。ですので、TwitterやYouTubeなどの情報は特に注目しています。

──TwitterやYouTubeでの情報発信なら、ベンチャー企業や中小企業でもできることがたくさんありそうですね。

本宮:そうですね。例えば片渕がTwitter経由で取材をしたものに、新しく決まった五輪エンブレムのデザインを幾何学的に分析したツイートを報じた記事があります。これを企業が参考にするとしたら、世の中でそのとき話題になっている事柄に対して、その企業ならではの知見や技術で絡んでみるというのも1つの方法ではないでしょうか。

取材対象が個人アカウントだと記事にするに当たって裏取りや信頼性の担保にかなり気を遣いますが、企業や大学のアカウントならばある程度信頼を置けて、記事も書きやすいと思います。

電話取材のしやすさもカギに

──これまでのお話を聞いていて、とても基本的だけど案外見落としがちな点として、メディアからの連絡のしやすさも重要だと感じました。

ITmedia ニュース 編集記者 片渕 陽平氏

ITmedia ニュース 編集記者 片渕 陽平氏

片渕:面白そうな情報を発見してこちらから企業に連絡を取りたいときに、電話番号がなかなか見つからないケースはありますね。プレスリリースを見て一歩踏み込んだ取材をしたいときに、電話で直接お話を聞くのは非常に大事なことですので。連絡先の電話番号が見つからないとけっこう困ります。

本宮:企業サイトに電話番号が載っていないこともありますし、ベンチャー企業などの場合は固定電話がないこともあります。そうすると手間がかかりますね。メールで連絡してもいいのですが、それだといつ返事をいただけるかわからないので。

片渕:速報性を考えると、やはり早く連絡が取れるに越したことはないですし、電話なら分からないことはその場で聞き返すこともできます。メールだと何往復もやり取りする必要が出てしまいますので。それに電話で直接お話をうかがえば、先ほど申し上げたようなリリースに書いていない面白い小ネタも聞き出せますから。

本宮:プレスリリースにない追加情報のほうが、記事タイトルにしたときに人を引きつけるフックになることも多いですからね。

ユニークさは外部との視点のギャップによって見つかる

──プレスリリース未満のネタにも、そのように目を配っているんですね。

本宮:わけがわからないことって面白いじゃないですか。

我々は新しいトレンドや、まだ世の中にないものを発信していく専門メディアとしての視点を持っているので、新しい何かを生み出しているところに注目するんです。

新しい物事って、最初はだいたい他人が見ても何なのかよくわからないですよね。ですから、全ての人に理解されなくてもいいから何か新しさのエッセンスを感じさせるような情報の種があるといいなと思いますね。

──そういうニュースはどのように作って、メディアの方々に知ってもらえばいいのでしょう。

本宮:「作る」と言うと難しいですね。ナチュラルにやってほしいんです。

やり手のPRマンが練った“記者が食いつきやすい企画”に対して「据え膳食わぬは…」みたいに食いつくばかりというのも、ねえ。そういうものもけっして悪くはないですし、中には面白いものもありますが、どちらかというと企業が日々ナチュラルに情報発信している中で、我々から見たらそれ面白いじゃん! というネタを追わせていただいたほうが、媒体のオリジナリティにもつながりますし、かつ読者にとって有益な情報になるのではないかという思いがありますね。

──作為的にならないのが一番難しいですね(笑)

本宮:そうですよね。だからこそ、御社のようなプレスリリース配信サービスやPR代理店に期待するのは、クライアント企業とコミュニケーションして第三者的な視点でその企業のユニークさを見つけてもらうことです。

社内の人たちは普通だと思ってやっていることでも、第三者から見るとヘンで面白いことっていろいろあるじゃないですか。そういった情報を見つけて、完全な情報でなくてもいいので見えるところに出してくれたら、我々はそれを見つけに行きます。

ITmedia3

──外部から見たギャップによってユニークポイントは見つかる。おっしゃる通りですね。楽しいお話をありがとうございました!

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