アリババグループが運営する「Tmallグローバル」や京東商城の「JDworldwide」など、越境ECの形で中国EC市場に参入するルートが確立されてきている。とはいえ、販売の方法に一定の制限があるモールよりも、自社ドメインでECを行いたいというニーズを持つ日本企業は少なくない。ただ、そうしたニーズに対応するのは現状では難しいと言わざるを得ない。
サーバーを置く場所それぞれで困難が待ち受ける
最近よく相談を受けることがモールへの出店ではなく、中国向けに自社ドメインでECを展開したいという話である。結論から言うと自社ドメインではなく、モールでの展開をお勧めしている。
自社ドメインの場合、方向は大きく2つある。
- サーバーを日本国内に置く
- サーバーを中国国内に置く
1. の場合、キーとなるのは、
の3点。特にプロモーションに関しては中国国内のユーザーへのアプローチはそう簡単にはいかない。微博(ウェイボ)のような中国版ツイッターや微信(ウェイシン)などの中国版LINEなどを使い、これまで日本企業がチャレンジをしているが、大きく成功しているサイトはまだ存在しない。
2. の場合であれば、
- 中国法人を設立
- 中国に銀行口座を持つ
- 商品在庫も中国へBtoBで輸出する
といった必要がある。その場合、最低でも3000万円(会社設立の資本金、オフィス家賃、倉庫費用、人件費など)ほどの初期投資が必要になる。
営利ICPライセンスは取得がほぼ不可能
さらにそれ以上に2のパターンで大変なことが「営利ICPライセンス」の存在だ。
中国国内でサイトを構築した場合、ICPライセンスを取得する必要がある。ICPライセンスには2種類あり、「営利ICPライセンス」と「非営利ICPライセンス」がある。
たとえば、コーポレートサイトの開設には「非営利ICPライセンス」が必要となる。非営利の場合は、簡単に取得でき、特に問題はない。
大変なのは、「営利ICPライセンス」の取得だ。そもそも日系企業を含め、外資企業は取得ができない。内資企業であっても、取得は相当困難だと言われている。
実際、日本で有名なアパレルブランドが展開している中国のECサイトもトップページは自社ドメインだが、商品カート以降は、Tmall(天猫)のドメインに移動するような構成になっている。
上記のような背景もあり、中国ではネット通販の流通総額のうち、Tmall(天猫)を始めとするモールサイトがマーケットシェア全体の90%を占めている。
中国ECのモールと自社サイトの売り上げ比率
商品検索はモール内検索が大半
また日本の場合、商品検索は検索エンジンやモール内検索などいくつかに分散しているが、中国はそうではない。ユーザーの多くはモバイルではモールアプリなど、まずはモール内の検索サービスで自分の欲しい商品を検索し、その後、購入する文化になっている。
タオバオのモバイルアプリ
自社ドメインでの出店成功の難しさはそこにもあり、そもそも検索エンジンでの商品検索が少ない中で、自社ドメインに誘導することは至難の業ともいえる。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:中国ECはなぜモールに出店するのが定石なのか。自社ドメイン展開が困難な3つの理由 | 上海で働く駐在員の中国EC市場リポート | ネットショップ担当者フォーラム
Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.