「コンテンツマーケティング」という手法が通販実施企業各社の間で注目され始めている。例えば、子供服であれば「子育て」、化粧品であれば「肌のお手入れ方法」、衣料品であれば「ファッション情報」など、販売する商品にまつわる周辺の“お役立ち情報”を掲載することなどで、質の高い潜在顧客の集客および獲得を図るものだ。同手法の導入ですでに実効を上げ始めている通販企業も増えてきている。先行してコンテンツマーケティングに取り組む通販各社の現状などについて見ていく。
ガシー・レンカー・ジャパン、肌の悩みにフォーカス、潜在客にアプローチ
ニキビケア化粧品「プロアクティブ」を展開するガシー・レンカー・ジャパンは昨年2月から情報サイト「ニキペディア」の運営を本格化している。目的は、ブランドと顧客の間に生じはじめていたギャップを埋めること。立ち上げから1年。「ニキペディア」を起点としたマーケティングが功を奏し、高いコンバージョン率を維持するサイトにまで成長している。
情報サイト「ニキペディア」
ブランドと顧客のかい離は2011年以降、顕著になり始めた。
これまで真鍋かをりさんをはじめ知名度のあるタレントや女優、歌手をイメージキャラクターに起用。「60品間返金保証」「日米売上実績№1」といったコピーで訴求するシンプルなコミュニケーションが成立していた。だが、他社ブランドや皮膚科クリニックのアプローチが強まり競争環境が変わる中、「ブランドの価値が大きく揺らいだ」(藤原尚也デジタルマーケティング部シニアマネージャー)という。
実際、顧客とのギャップはウェブ上に表れている。それまで「1対2~3」(グーグルトレンド)で推移していた「プロアクティブ」と「ニキビ」の検索ボリュームは11年を境に大きく開き始めている。ただ、マーケティングは、相変わらずテレビが主体。テレビ局全体の考査も年々厳しくなる中、新規獲得に向けた認知を得る場は徐々に少なくなっていた。マーケティングの構造自体を変える必要性を迫られ、潜在ユーザーが存在するウェブの攻略の足がかりとして立ち上げたのが「ニキペディア」だ。
「ニキペディア」は、ブランドマーケティング、カスタマーサポート、クリエイティブ(紙媒体専門)など部署横断的な組織で運営。デジタルスキルより文章スキルを重視して選んだ5人のメンバーが記事を作成し、月10~15本のペースでサイトを更新する。
運営方針は、ニキビで悩む人に向けて本当に必要とされる情報を提供すること。このため、自社商品に限らず、「ニキビケア商品」「生活習慣改善」「流行」を網羅した情報を掲載。記事はすべて実体験に基づき、検索するユーザー目線で作成する。自社商品に寄った記事の掲載は徹底して避けている。
例えば、「スグにできる!デコルテニキビの直し方。上手にできる隠し方」というタイトルの記事。「ニキビ」と「デコルテ」をキーワードにしたものだが、記事は「1キーワード、1ペルソナ」を設定、そこから「タイトル」や「問題提起」「解決策の提示」を深掘りし、メンバー内で回覧して記事を推敲していくことで作成している。ただ、制作過程では、信憑性が疑われるウェブの情報は参考にせず、社内のスキンケアアドバイザーや同アドバイザーの推薦図書、外部のクリニック医師への相談を通じて制作する。
昨年12月には、アウトブレインジャパンが提供するコンテンツレコメンデーションプラットフォームも導入。サイト回遊率や滞在時間も大きく改善したという。
運営本格化から1年、「ニキペディア」経由のコンバージョン率は1.2%前後で推移しているという。リターゲティング広告を除くディスプレイ広告からのコンバージョン率が0.1%前後であることを考えると驚異的な数字だ。ニキビに関心の高いユーザーが訪問していることもあり、購入単価もテレビCMを導線とした顧客より高い水準で推移する。
こうした状況を受けて、同社では、これまでディスプレイ広告に使っていた広告原資を顧客に還元するオファーのテストを始めている。同社では昨年12月に新商品「プロアクティブ+(プラス)」を発売。テレビCMでは「薬用3ステップセット30日サイズ」(税込4900円)を展開している。
一方、「ニキペディア」では、「薬用3ステップセット30品サイズ+電動洗顔ブラシセット」(税込7900円)に68%オフ(税込2450円)という高い割引率のオファーでテストを行うなどしている。「ニキビに悩む方で絶対に訪れる入口さえ作ることができれば、広告ではなく、顧客サービスの向上にコストを使うことができる」(藤原氏)としており、「ニキペディア」の成功を受けて広告出稿の見直しも検討していく考えだ。
ピーチ・ジョン、毎日、楽しめる場を提供
下着の通販を行うピーチ・ジョンは昨年12月に、自社コミュニティサイト「MyPEACHJOHN(マイピーチ・ジョン)」を立ち上げた。自社の持つ静止画や動画といったビジュアルや、ゲームや占いなどのコンテンツを介して、賛同を示す「LIKE」ボタンやコメント投稿で、顧客同士や企業と顧客のミュニケーションを促す。ビジュアルに対する「かわいい」や「楽しい」などの共感を得て、顧客との接触頻度を高めていく。ブランドとの親和性を通販サイトへの訪問回数を増やし、購入頻度を高めたい考え。
「MyPEACHJOHN(マイピーチ・ジョン)」
自社コミュニティサイト「MyPEACHJOHN」は、カタログや広告制作で撮影したモデルやタレントを起用した静止画像や動画を公開。新商品の投入やビジュアルの変更などの情報を伝達し、通販サイトや店舗への送客につなげることが狙いとなる。
アクセス頻度の向上の一環で、占いやスクラッチなどのゲーム性のあるコンテンツを用意したほか、企業への要望を投稿する「MyVOICE」を設置している。
ユーザーが訪問してアクションするとスタンプカードに「ハート」が貯まり、スタンプカードの枚数に応じてユーザーのランクが上がる仕組み。貯まった「ハート」を使ってキャンペーンやイベントに参加することが出来るようにし、継続的な訪問を促していく。
一方で、フェイスブックやインスタグラムをコンテンツの流出先として連携。コンテンツにはSNSに投稿できる「シェア」を用意し、SNS経由で情報を拡散し、見込み客の獲得につなげたい考え。「下着は購入してもくちコミが発生しにくい商材。シェアを強制しているわけではないが、『かわいい』や『楽しい』などのビジュアルの良さであれば、もっと気軽にシェアしてもらえる」(同社)としている。
「MyPEACHJOHN」への導線を強化するため、3月に既存のデジタルカタログアプリを刷新する。ブランドのプラットフォームアプリとして位置付けて、もともと実装していたデジタルカタログ機能を残しながら、「MyPEACHJOHN」や通販サイト、店舗への入り口を設けていく。
これに伴い、店舗の会員カードをアプリ化することにも着手し、顧客のオンライン、オフラインデータを統合する。ウェブや店舗での購買頻度と、「MyPEACHJOHN」の接触回数の分析も可能とする予定。顧客のログをもとに、通販顧客や店舗顧客、または通販と店舗を併用する顧客の購買行動の変化を探っていく。
これまで、同社は広告のビジュアルに人気モデルやタレントを起用していたものの、通販サイトは販売を目的としているため、ユーザーにその良さが伝わりにくかった。また、顧客にリーチするタイミングはカタログを発刊する3か月に1回を中心としていたが、ユーザーが通販サイトにアクセスする回数を増やすことが課題になっていた。
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オリジナル記事:情報サイト経由のCVRは約1.2%!事例で学ぶ通販サイトの「コンテンツマーケティング」 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム
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