中国EC市場では、ECモールが市場をけん引しており、なかでも最も大きなモールがTmall(天猫)である。とはいえ、他のモールも流通額を伸ばしているため、モール間で競争の激化が進んでいる。そんななか、2014年12月にそれぞれのモールのトップページを使って行われた“舌戦”。多くのメディアからこの“舌戦”の模様が取り上げられ、中国全体のEC市場の盛り上がりに寄与した。今回はそんなユニークな取り組みを紹介。
さらにシェアを伸ばすTmall
中国のEC市場を盛り上げるために(?)、モールサイト(BtoC)が行った“舌戦”。「Tmall(天猫)」「京東(JD.com)」などモールのトッププレーヤー同士が行った“舌戦”は、話題を呼び消費者を集めることにつながった。まずは、中国のモールサイトを運営するプレーヤーを説明、そして、モールサイト同士が行った“舌戦”の模様を紹介する。
中国ではネット通販の流通総額のうち、Tmall(天猫)をはじめとするモールサイトがマーケットシェア全体の90%を占めている。このモールサイトだが、2014年はTmall(天猫)のシェアが63%でナンバー1。次いで京東(JD.com)が19%となっている。
京東(JD.com)は中国最大級の電化製品などを販売しているECサイト&モール。アマゾンのようにプラットフォームを運営しながら自身も売り主というビジネスモデルだ。
2014年の中国EC市場(BtoC)における流通総額に占めるシェア
ちなみに数年前のデータだとTmall(天猫)のシェアが50%だったので、近年大きくシェアを伸ばしていることがわかる。
中国ECはモール同士で戦い、EC市場を盛り上げている
2014年12月12日に、taobao(タオバオ、Tmallと同じアリババ・グループで中国最大のCtoCサイト)のイベントで、日本ではあまり考えられないことが起きた。
11月11日は前回記事(1日で1兆円以上を売り上げる「独身の日」から学ぶ中国EC市場の可能性)で紹介した「独身の日」の約1か月後。タオバオで「双12淘宝万能盛典」というイベントが12月12日に行われた。
その日に起きたのが各モール同士による“舌戦”。トップページでモール同士の戦いが勃発したのだ。最初に仕掛けたのはタオバオ。
“真心便宜,不然是狗”,
(意訳)「私達は本当に安いんです。もし安くないならそれは犬になってしまいます」
意訳してもよくわからないと思うので、補足を。ここで指摘された犬は、「京東」のことを指している(京東のキャラクターが犬のため)。中国のことわざで「嘘つきは犬の始まり」という言葉があり、そこから引用して上記のようなキャッチコピーのアイコンを掲載したのだ。
「タオバオ」のアプリトップ画像
「タオバオ」が掲載したキャッチコピーに、京東(JD.com)が反応した。
“拒绝假货,不玩猫腻”暗指
(意訳)「偽物は販売しません。猫のようにずるいことはやりませんから」
ここで指摘された猫はTmall(天猫)のキャラクターのことで、同じグループのタオバオを指している。
「京東」のアプリトップ画像
さらに驚くことは、トップ2サイトにとどまらず、その他モールも次々に参戦したのだ。
家電製品を中心としたモールの「易迅」は、wechatなどを展開するテンセントグループだったが、2014年3月に京東(JD.com)グループ入りしたモール運営会社。トップページに次のように記載した。
“不猫腻,真心低”
(意訳)「猫のようにずるいことはしないです。本当に安いです」
「易迅」のアプリトップ画像
1999年に創業し、2010年にニューヨーク市場へ上場、本を中心に現在は総合通販サイトの「当当」もトップページに次のように記載した。
“敢不玩猫腻,敢不低是狗”
(意訳)「猫のようにずるいことはしないです。安くなければ犬になってしまいます。」
「当当」アプリトップ画像
このように、ライバルの弱点を攻撃する様子は、まるでどこかの国の選挙戦を見ているようだった。
モール中心のマーケットだからこそモール同士で戦い、凌ぎを削る姿は中国ECの独自性を感じる。モールも本気で指摘しているのではない。冗談交じりに(まぁ冗談の割には直球な気もするが)、他社についてユーモアを交えてユーザーに伝え、多くのメディアから取り上げられるようにしている。それが、中国全体のEC市場が盛り上がることに寄与しているのだ。
本当に面白いマーケットだと今回もつくづく感じた出来事だった。
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オリジナル記事:タオバオ、京東、易迅ら大手モール同士が繰り広げた“舌戦”が中国EC市場を盛り上げた1日 | 上海で働く駐在員の中国EC市場リポート | ネットショップ担当者フォーラム
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