グーグル時代の上司と部下
有園:本日は、ホテル・旅行の口コミサイトのトリップアドバイザーの杓谷さん、伊藤さんを迎え、お話を伺います。トリップアドバイザーでは、リスティング広告いわゆるSEM広告に特化した、データマネジメントプラットフォーム(DMP)のようなシステムを自社で開発しているそうですね。それを使ったリスティング広告の運用を、かなり高度なレベルで実施していらっしゃるとフェイスブックのフィードを見て知りました。その担当が昔、一緒に仕事をしたことのある杓谷さんだと分かり、今回の対談が実現しました。
杓谷:よろしくお願いいたします。私の経歴を簡単にご紹介しますと、新卒でグーグルに入社し、当時はDSOと呼ばれる大手の広告主を相手に営業をする部署に配属されました。
有園:DSOとは、ダイレクト・セールス・オーガニゼーションの略で、アドワーズ広告の法人営業部隊のことですね。グーグルは、社外に対してDSOという言葉は使っていなかったと思います。業界の関係者は知っているかもしれませんが。
杓谷:私が入社した2008年当時、グーグルジャパンは300名くらいで、同期はエンジニアを含めて40名くらいでした。右も左も分からない状態でグーグルに入社し、有園さんをはじめ、アタラの皆さまにはグーグル時代に大変お世話になりました。
有園:そうでしたね。
杓谷:2008年の入社当初は、リクルート、楽天といった日本でもトップクラスの大手広告主の営業を担当した後、組織変更に伴い金融業界、自動車業界を担当するチームに配属され、グーグルには2年半おりました。
有園:職種は、アカウントマネージャーでしたっけ?
杓谷:最初の1年はアカウントマネージャーで、2年目からデータを深掘りするアカウントストラテジストになりました。
有園:上司は小野さんですか。
杓谷:そうですね。25パーセントは小野さんにレポートして、75パーセントは金融業界担当の上司にレポートしていました。
有園:あぁ、当時、グーグルのセールスは業種業界別の組織がメインでしたね。
杓谷:はい。
有園:小野さんは、アドテック東京(ad:tech Tokyo)などに5年連続で登壇している方なので、業界でもご存じの方は多いでしょうね。
杓谷:その小野さんがレポートしていたのが、有園さんでした。
有園:そういえば、小野さんの上司が僕でしたね。小野さんはしっかりしているので、小野さんが上司かと思っていたぐらいでしたけど。
杓谷:今でも覚えているのは、入社当時にOJT(On-the-Job Training:実地研修)でネット広告専業代理店へ行って「キーワードツールで検索数が見られるようになりました」と報告したのが最初の仕事でした。それまでは、キーワードツールで検索数を調べると「とても多い」「多い」「少ない」「とても少ない」くらいしか分からなかったんですが、それが見られるようになりまして。まだ、モバイルは見られない状況でしたが。私が入社した2008年のSEM業界はまだまだそんな時代でした。
有園:ほんと?全然、覚えてないわ。
杓谷:2008年からアドワーズ広告に携わっているというと、30歳前後の年代では古い部類に入る気がします。
グーグルのリスティング広告「アカウントマネージャー」の仕事
有園:グーグルでリスティング広告のアカウントマネージャーというと、自分で入札したりはしないんですよね?アカウントの状況を見て、キーワード追加やタイトル説明文の変更、あるいはキーワードの出稿停止を提案するのが仕事ですね。
杓谷:そのような活動が中心です。キーワードのカバレッジを拡げたり、世の中の検索キーワードのトレンドを広告主に伝えることが仕事でした。印象に残っているのはモバイルです。当時は、モバイルといってもガラケーのことで「モバイルで物を買うの?」と疑問が抱かれるような時代だったので、モバイルの検索キーワードや検索数を調べて広告主に提案していました。キーワードツールはモバイルに対応していなかったので、グーグルのロンドンオフィスで誰か個人のデスクトップで動いているサーバーを利用して、モバイルの検索数を調べていました。
有園:グーグルのロンドンで?
杓谷:はい。グローバル全員で1つのデスクトップのサーバーを使っていたので、複数の人が集中するとダウンしてしまって使えないんです。だから、「この時間は使うので予約」とスプレッドシートで管理していました。しかも、クエリを1回たたくと、返ってくるのに2分くらい待ちました。時間がかかっていましたね。徹夜してキーワードを調べていました。
トリップアドバイザーでのお仕事
有園:いまや、グーグルは入社したい人気の会社だと思いますが、そこを辞めてトリップアドバイザーへ入社され、ビジネスインテリジェンスアナリストという肩書をお持ちですが、どのようなお仕事をされているのですか。
杓谷:2013年2月にトリップアドバイザーへ入社し、当時は、SEM専属で配属され、SEM経由の売り上げの最大化を目標にして、運用に従事しておりました。その後、2013年9月に新しくカントリーマネージャーが就任したことに伴い、売上の推移、トラフィック、マーケティング施策の効果測定、人気の観光施設、口コミの件数など、日本におけるユーザーの動きをモニタリングするビジネスインテリジェンスアナリストを兼務して現在に至ります。
有園:トリップアドバイザーに入社して1年ちょっとなんですね。
世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」
有園:トリップアドバイザーというと、アメリカでの認知度は高く、世界中でも有名ですが、日本では、まだ知らない方もいらっしゃると思うので、簡単にご紹介いただけますか。
杓谷:トリップアドバイザーは、世界最大の旅行口コミサイトを運営しています。旅行関連のサイトでは世界で一番のトラフィックを誇ります。
図1 ユニークユーザー数ランキング
有園:ワールドワイドで、アメリカでもトップですか。
杓谷:はい。コムスコアのデータ上でアクセス数1位を獲得しています。
有園:トリップアドバイザーのサービス開始は、いつですか。
杓谷:2000年2月に創業し、2005年からはエクスペディアの子会社でしたが2011年にスピンオフして独立企業となり、現在に至ります。日本にオフィスができたのは2008年です。
有園:エクスペディアは、旅行系の予約サイトですね。日本でいう「じゃらん」とかに近いですか。
杓谷:オンライン旅行予約サイトの「じゃらん」「楽天トラベル」とよく比べられますが、トリップアドバイザーのサイト上では直接ホテルの予約をすることができないので、旅行の口コミサイトというカテゴリーが正しいかと思います。「じゃらん」「楽天トラベル」が旅行代理店だとするならば、トリップアドバイザーは旅行の口コミサイトで、『地球の歩き方』などの旅行メディアの方が近いかもしれません。
有園:旅行の口コミサイトということですが、トリップアドバイザーのサイトを見ていると、旅行関連のツイッターかな、フェイスブックかなっていう印象を受けました。「このホテルに泊まったんだけど、良かった」といった口コミが目に留まります。
伊藤:日本にあるサイトで例えると「価格ドットコム」や「食べログ」の旅行版というイメージがわかりやすいと思います。
有園:インターフェースのデザインで勘違いしたのかもしれませんね。私がフェイスブックやツイッターにログインしていて。
杓谷:ログインしていると友達の口コミが見られます。旅行に関するSNSと考えていただいてもよいと思います。
トリップアドバイザー3つのビジネスモデル
有園:どのようなビジネスモデルになっているのですか。
杓谷:3つのビジネスモデルがあります。1つめは、CPC広告モデル。
有園:クリック課金型ですね。
杓谷:グーグルのアドワーズ広告と同じようなモデルです。トリップアドバイザーのサイトには、世界中のホテルが網羅されているページがあり、そちらのページに広告を出稿することができます。大手のトラベルエージェンシーが、ここにCPC広告を出稿しています。その広告をユーザーがクリックするたびに、広告費をいただくというビジネスモデルです。これが、トリップアドバイザーの収益の柱です。
図2 CPC広告
有園:クリック課金型の広告枠を売っているわけですね。
杓谷:広告主は各ホテルのページ単位で広告を出稿できるのですが、掲載順位は入札額が高い順に上位に表示される、シンプルなオークションモデルです。SEM のような品質スコア等はありません。また、上位3つの広告は大きなスロットで表示されます。
有園:お金をたくさん出せば上に表示されるわけですね。
杓谷:2つめは、ディスプレイ広告です。旅行に関係のある、航空会社やホテルなどの広告主に、バナー広告を出稿していただいております。こちらはCPM 課金モデルです。
図3 CPM広告
3つめが、各ホテルが自社ページに、電話番号や住所や特典、割引情報などが掲載できる仕組みです。
図4 ビジネスリスティング
有園:「ビジネスリスティング」ということですね。
杓谷:タウンページに広告を出すようなイメージに近いですね。
リスティング広告の由来
有園:もともと、リスティング広告は、電話帳に広告を出すことから始まっているんですよ。
杓谷:そうだったんですか。
有園:インターネットディレクトリというものがありますね。ディレクトリという言葉は、ビルの入口にあるインフォメーション、何階にどの会社が入っているというような案内は、欧米に行くと「ディレクトリ」って書いてあります。また、電話帳も「あいうえお順」や「ABCD順」に並べることをディレクトリといいます。電話帳で「あいうえお順」に並んでいると、例えば、和田さんは「わ」のページなので、いつも後ろの方のページに掲載されます。和田建設という会社があったら「うち、和田建設なんだけど、お金を払うから一番前のページに載せてよ」って言うかもしれない。商売をしていると、目立つところに載せてほしいわけです。前の方のページに載っているほうが、目に留まりやすいわけですし。「わ」のページまで見ないかもしれない。そこで、順番だと最後の方のページだけど、お金を払えば一番前のページに載せてあげるのが、インターネットディレクトリ、リスティング広告です。トリップアドバイザーだったら旅行系の情報が集まっている場所なので、旅行に関連するサービスを扱っている広告主を目立つところで紹介してあげる、広告を出してあげるわけですね。
杓谷:そうですね。
有園:検索連動型広告でなくても、リスティング広告って呼ぶってわけで、それで「ビジネスリスティング」すね。
杓谷:はい、その通りです。広告業界でリスティング広告と言うと、検索連動型広告をイメージしますが、トリップアドバイザーの「ビジネスリスティング」の名前の由来は有園さんのご説明のとおりです。
トリップアドバイザーの内部
有園:クリック課金型の広告モデルと、CPMといったディスプレイ広告を扱う広告モデル、そして最後のビジネスリスティングという広告モデル。これら3つの広告ビジネスを手がけているわけですね。
杓谷:はい。その3つだけです。
有園:ちなみに、御社は何人くらい、いらっしゃるのですか。ワールドワイドになると大きな会社になるのかなと。
杓谷:いまは、約2,000人ほどだったと思います。ほぼ、アメリカですね。日本に関しては言えませんが。ワールドワイドな数字だけ。
有園:でた!外資っぽい。日本に関しては言えない!
杓谷:アメリカのボストンが本社で、サンフランシスコ、ロンドン、シンガポール、中国にもオフィスがあります。中国では「daodao」という名前で運営しています。
有園:主要な都市にはあるわけですね。
杓谷:でも、本社のボストンはわりと郊外のほうにあるんです。高級住宅地にぽつんと。
有園:ビジネスを回す実動部隊、広告の枠を作って、その枠に広告を出稿してくれる企業を探す営業部隊など、さまざまな仕事があると思いますが、主に、どんな仕事をしている方が多いんですか。
杓谷:エンジニアですね。社員の半分くらいはエンジニアだと思います。主な広告主はオンライントラベルエージェンシーなどに限られてくるので、営業部隊もそこまで多くはないんです。他には、マーケティングチームや、投稿された口コミを審査するチームなどがあります。
有園:ウェブサイトをつくって、運用するためのデータベースや基幹的な仕組みをつくるのは、自社でやっていらっしゃるんですか。
エスタブリッシュなカルチャー
杓谷:サーバーから、なにからなにまで、自社でやってきました。エンジニアが多いということもあり、カルチャーとしては、旅行業界ではなく、ITのカルチャーが強いです。ただ、グーグルのような西海岸の自由なカルチャーとは違って、ボストンのある東海岸特有の、独特な雰囲気があります。
有園:エスタブリッシュなわけですね。
杓谷:はい。エスタブリッシュなカルチャーです。
MITやハーバード出身のエンジニアが多く、みんな頭が良すぎて数字やデータに強く、困ってしまいます。
有園:西海岸の人たちは、何でもオッケーって感じですからね。
杓谷:バランスボールに座って仕事をする世界とはまたちょっと違う印象ですね。ボストンの本社へ行くと、一人ひとりキューブの個室があるといった、少し昔のアメリカの会社の雰囲気です。
有園:Ally McBeal(アリー・マクビール)が出てくる感じですね。
杓谷:すみません。ちょっと存じ上げませんが。
有園:え?知らない?ボストンにある法律事務所で働く女性弁護士、アリーが主人公のアメリカドラマなんだけど。たしか、日本では「アリー my Love」ってタイトルだったと思うけど。
トリップアドバイザーのSEMアナリストのお仕事
有園:エンジニアが、それだけたくさんいらっしゃって、杓谷さんはビジネスインテリジェンスアナリストということですが、どのようなお仕事をされているんですか。エンジニアの方々と一緒に動くことも多いのですか。
杓谷:私は、ビジネスインテリジェンスアナリストとSEMアナリストを兼任しておりまして、どちらかというと、SEMアナリストとしての仕事が大半を占めています。
有園: SEMチームはどのような方がいて、何名くらいいらっしゃるのですか。
杓谷:キーワードを追加したり、クリエイティブを作る際にその言語が分かる者が必要なので、アナリストは各主要言語に一人はいます。また、エンジニアが主要な検索エンジンのAPIを駆使してSEM運用ツールを開発し、そのツールを使ってアナリストが運用しています。さらに、昨年から新たにデータサイエンティストがチームに加わり、データを分析して自動入札のアルゴリズムをアップデートしていくなどしています。
言語の分からない人が多言語を担当することも
伊藤:ユニークなのは、その言語を分からない人がSEMを担当していることもあることです。例えば、杓谷が中国語とポルトガル語のアカウントを運用することもあります。
杓谷:そうですね。実際には、私は日本のアカウントしか見ていませんが、一人が複数の国、マーケットを担当することもあります。
有園:基本、トリップアドバイザーさんの中では、インハウスでリスティング広告運用しているわけですね。ワールドワイドで、代理店を使っていないと。言語の分からない人が広告文を書くのって難しくないですか?
杓谷:社内にトランスレーションチームがいるので、英語のひな形を使って広告文を書き、多言語に翻訳してもらいます。
システムを自社開発
有園:ということは、トランスレーションチームがあって、SEMのアナリストがいて、エンジニアがいて、データサイエンティストがいるわけですね。そして、リスティング広告を運用するシステムを、御社内で持っているという理解でよろしいですか。
杓谷:はい。アマゾンやイーベイは、自社の在庫とつなげて自動でAPIで広告を出稿するシステムを持っていると思いますが、それと同じように弊社も主要な検索エンジンのAPIとつなげて管理できるシステムを作っています。
有園:具体的に、どのようなことができるのですか。
杓谷:基本的には、マリンソフトウェアのようなツールを自社で内製しているというイメージです。自動入札機能や弊社のデータベースと連携した高度なレポーティング機能だけでなく、新規で追加したキーワードが自動的に適切な広告グループに入稿されるシステムなどがあります。検索エンジンをまたいで使えるアドワーズエディターと言えばイメージが掴みやすいかもしれません。
図4 運用のイメージ
キーワードの選び方
有園:リスティング広告って入稿、入札、レポートって業務が発生しますが、キーワードを入れるのは入稿の段階です。キーワードを選ぶのは誰ですか。
杓谷:アナリストが選びます。ただ、キーワードツールを使ってキーワードを取得するのではなく、トリップアドバイザーのホテルのページに、どんな検索クエリで訪問したのかを保存しているので、そのデータを使ってキーワードの候補を取得します。
有園:例えば、トリップアドバイザーに、ホテルオークラが紹介されているページがあって、そのページに、どんなキーワードで検索流入してきているのか、リファラーのキーワード情報があるってことですね。
杓谷:ホテルのページに固有のIDがあるので、そのIDとリファラーのキーワードを紐づけて入稿しています。
毎月20パーセントは新しいキーワード、クエリが生まれていく
有園:昨今、リファラーのキーワードがとれなくなっていると思うのですが。
杓谷:はい。かなり大きな問題です。何年も前からSEMを運用してきたので、主要キーワードはカバーできていますが、理論的には一般論として、毎月20パーセントは新しい検索クエリが生まれていくわけなので、その20%がキャッチアップしづらくなるのは弊社にとっては大きなマイナスです。
有園:グーグルさん、なんとかしてほしいですね。
杓谷:サンフランシスコのオフィスに行ったときに、「なんで、こんなことになっているの」と聞いたら、スノーデンのせいだって言ってました。
有園:スノーデンって、ロシア亡命中だったかな?CIA元職員のスノーデンですか?
杓谷:冗談で言ってただけかもしれませんが(笑)
広告文の作り方
有園:入稿するキーワードは自動で取得して、データアナリストが分析して、検索ボリュームを考慮して入稿していくわけですね。広告文は、どうやって作られていくんですか。
杓谷:2行あるディクスリプションは定型があって、タイトルはキーワードインサーションを使っています。KPIが売上なので、広告文が多少おかしくてなっても、クリックされやすく、売上が発生しやすいということで、このような使い方をしています。日本ではキャンペーン構成を細かくグルーピングすることで、キーワードインサーションを使う広告主は少なくなってきている状況なので、少し対照的ですね。
有園:キーワードインサーション機能を自動的に。
杓谷:はい。そのホテルに対して何件レビューがあるか、とか、ある地域に何件ホテルがあるといった数字を社内データベースから引っ張ってきて、広告文に自動的に入れるようにしています。APIのアドパラメーターのような機能を使っています。新たに自分で広告文を作るときは、「ここはホテルの名前」、「ここはホテルのレビューの件数」とワイルドカードを指定しておいて、入稿しています。具体的なホテル名が文字数の関係で入れられないときは、別の広告のIDを指定しておくことで、自動的に文字数が制限内に収まるように調整して入稿されるようになっています。
有園:グーグルのアドワーズ広告にも同じような機能がありますよね。キーワードインサーションで、長すぎる名称はジェネラルな方を出すようにと。
APIの活用
杓谷:SEMの運用は自社開発したツール経由で行われるので、基本的にはAdWords APIを使用して運用しています。ヤフーも同様です。
有園:Yahoo! JAPANのAPIに対応しているわけですね。
杓谷:全世界の検索エンジンのAPIに対応しています。
有園:ヤフーって、Yahoo! JAPANとヤフー本体がありますね。
杓谷:検索エンジンが違いますね。アメリカの場合はBingを使って、日本の場合はグーグルを使って。でも、APIはグーグルのものではなく、Yahoo! JAPAN独自のものを使っていますね。グーグルの検索エンジンを使いはじめて二年弱くらいだと思いますが、日々どんどんAPIも変わっていきます。その対応が難しいです。また、サーバーがボストンと日本で地理的に離れているし、インフラの環境も違うので、Yahoo! JAPANのキーワードの入札価格大量にアップデートしようとすると、グーグルに比べてだいぶ時間がかかります。そういうところが、ボトルネックになっています。ただ、Yahoo! JAPANはAPIを公開しているので、良いほうです。ロシアの検索エンジンЯндекс(ヤンデックス)や韓国の検索エンジンNAVER(ネイバー)、中国の検索エンジンBaidu(バイドゥ)などは、なかなか難しい。NAVER(ネイバー)に関しては、韓国企業にしかAPIを公開しない規定があります。
伊藤:ユーザーインターフェースは韓国語でしか提供されていません。
杓谷:日本でも、韓国の広告代理店の日本支社に頼めば使えるかもしれませんが。また、NAVERは完全一致しかキーワードがないので、「ハワイ ホテル」と「ホテル ハワイ」を両方入れなければいけないんです。あとは、インプレッションしなくなったキーワードは、ある一定期間を過ぎると、自動的に削除されてしまいます。キーワードはSEMでは資産なので、それが消えてしまうのはやりにくいですね。
伊藤:しかも、韓国には、SEOがほぼないので、余計に辛いです。
杓谷:NAVERのコンテンツを検索結果に優先的に出しているので、SEOがやりにくいです。伊藤を中心としたMarket DevelopmentチームがAPACのSEOのトラッフィク等も見ているのですが、NAVERは難しく、韓国市場では他の国の成功事例が応用できないので苦労しています。
広告キーワードのグルーピング
有園:入稿したキーワードがあり、それに対するタイトル説明文はあらかじめ用意したものに当てて出稿していかれるわけですが、広告キーワードのグルーピングは、どのように行っていますか。
杓谷:キャンペーンは、ほぼ一つです。キャンペーンを細かくわけなくても社内データベース上にID がふられていてデータが取り出しやすいので、キャンペーン構成はざくっとしてます。これはAPIを使用して運用している広告主には共通のことだと思います。広告グループはホテル名または地域名で1つ作っています。トラフィックの多いホテルについては「ホテル 安い」「ホテル 五つ星」など、検索ワードの種類によって分けることもありますが、基本的には1つのホテル、地域に、1つの広告グループです。
有園:施設名で分けているのですね。レストランなどのコメントは、レストラン名で分けているのですか?
杓谷:今のところ、レストランのページに対してSEMは行っていません。弊社のビジネスモデルは、ホテルページのCPC広告をクリックしてもらうことで成り立っていますし、CPC広告のクリックをコンバージョンとしています。、レストランや観光施設など、広告枠のないページには広告を出稿していません。
有園:イタリア旅行などのキーワードにも、広告は出していないのですか?
杓谷:「旅行」というキーワードはホテルより広い意味のキーワードで、必ずしもユーザーはホテルを探しているわけではありません。したがってトラフィックはあるけれど、コンバージョンレートが低い傾向にあるため、積極的には出稿していません。
有園:ということは、「ホテル 格安」や「ホテル 五つ星」などホテル周りのキーワードと、ホテル名の広告グループを作っているわけですね。日本だと数百万キーワードになりますよね。
杓谷:ヤフーとグーグルを合わせると、そのくらいになります。
入札ロジック
有園:それらがすべて自動で入稿され、その後の入札もヤフーとグーグルのAPIを通じて自動で行われているわけですね。入札は、どのようなロジックで行われているのですか。
杓谷:APIを通じて自動入札をすること自体は、どこのツールでもできますが、入札ロジックが肝だと思います。変数が多いんです。旅行業界は季節によってトラフィックの変動の激しい業界ですし、旅行代理店の入札価格も変わります。
有園:それは、リスティング広告の入札で競合相手になる旅行代理店のことですか。
杓谷:リスティング広告の競合の入札もそうですし、コンバージョンに設定している弊社のCPC広告の入札価格も変動します。それによって、SEM経由での売上やコンバージョンレートも変わってくるので、日々最適な入札価格を計算し直す必要があります。
有園:3つあるビジネスモデルの中の、クリック課金型の入札額が季節によって変わるわけですね。御社の収入も上がったり下がったり激しいと。
独自の計算式で入札価格を決定
杓谷:季節やオンライン旅行代理店の在庫状況によって変動が激しいのでROASが変わってしまうんですよね。それに対応するために、独自の計算式を作って入札しています。過去のデータを2年分くらいためておいて、それをもとに適切な入札価格を計算して入札しています。
有園:たとえば、夏のこの時期に、「ホテルオークラ」というキーワードで、トリップアドバイザーでリスティング広告を出稿するには、どのくらいの価格で入札すれば良いかを計算式ではじき出し、その価格で入札しているということですか。
杓谷:はい。
有園:数百万のキーワードを運営して、それらすべてが瞬時に計算されているわけですね。なおかつ、入札するわけですから、「このくらいだったら損をしない」といった計算もされるわけですね。
杓谷:損益分岐ラインの、ぎりぎりのところで入札するようにしています。
有園:損益分岐ラインのぎりぎり? 損する場合もあるし、儲けすぎる場合もあると思うのですが、儲けすぎるのはよくないのでしょうか。
杓谷:トリップアドバイザーのSEM運用のゴールは「ROAS 100%をキープしながら売上を最大化させること」です。儲けすぎるということは、もっと入札価格を高くしてクリック数を増やして、売上を最大化する余地があるということなので良くないんです。
有園:粗利がたくさんになってはいけないと。
杓谷:まだ売上を伸ばすポテンシャルがある、ということですね。
有園:そのときは、自動的にキーワードが追加されるのですか。
杓谷:いえ。入札価格が変わります。たとえば、ゴールデンウィークに入って急に売り上げが上がり、プラスに転じて儲けすぎた場合は、儲けた金額に応じて計算し直して「もうちょっと高めに入札価格を変更しよう」とアルゴリズムが判断して入札していきます。
在庫連動
有園:入札のロジックの中には、よくECなどでは「在庫連動」があります。私は昔、ユニクロを担当していて、季節の変わり目、2月などは、冬物が売れていて、春物はまだ売れない時期なんです。でも、冬物で「コート〇○」って検索しても在庫切れの場合が多い。ユニクロが、そのキーワードでリスティング広告を出していて、クリックされて入ってきても儲からない。課金されるだけで、お客さんは「在庫ないじゃん」って思ってブランドイメージを壊してしまうこともあります。だから、在庫との連動は重要で、昔は手作業で行っていました。いまは、APIで対応していますが、ホテルの場合も同様ですか?
杓谷:ホテルの名前が変わったり、ホテルが無くなったりするので、そういうキーワードは自動的に停止するようにしています。
有園:自動的に停止するってことは、ホテルのデータベースがあって、フラグが立っているのでしょうか。「このホテルは名前が変わりました」とか「このホテルはトリップアドバイザーで扱わないことになりました」のように。
杓谷:はい。
データベースを参照して、自動的にキーワードを止める
有園:そのデータベースを参照して、自動的にキーワードを止めたりしているわけですね。
杓谷:この他にも、弊社のホテルページに掲載している広告の入稿状況によって自動的にキーワードを停止する場合もあります。例えば、ホテルオークラのページに、2月は広告主がたくさん広告を出稿していたけれど、3月はどこも出稿しなかったというケースもあります。それではSEM を出稿していても売上が上がらなくなる可能性が高いので、自動的に止めてしまいます。ホテルの施設単位で広告グループを作っているので、広告グループのステータスを自動的にオフにします。その結果、マネタイズできるページだけにSEMの広告が出稿されるという仕組みになります。
有園:完全に御社のクリック課金型の広告枠に出稿している、ホテルまたは広告代理店等の広告主がいなければ、リスティング広告を止めてしまうわけですね。
杓谷:はい。
トリップアドバイザーのリスティング広告の規模
有園:それでも数百万キーワードあるわけですから、御社のクリック課金型広告は売れているわけですね。売れていないとリスティング広告はできませんから。グーグルのワールドワイドの売り上げの、けっこうな売り上げをトリップアドバイザーさんが占めていることを、グーグルに勤務していた頃にも聞いていました。
杓谷:具体的な数字に関することはお答えできませんが、先日、グーグルがホテルサーチを始めるというニュースが話題になっていました。その記事の中で、Booking.com(ブッキングドットコム)やAgoda(アゴダ)などの親会社であるPriceline(プライスライン)と、Expedia(エクスペディア、hotels.com の親会社でもある。)で、グーグルの5パーセントの売り上げを上げているというニュースが出ていました。弊社は、そこまでの売上を占めていませんが、旅行業界がグーグルの売り上げの大きな割合を占めていて、トリップアドバイザーはその中でも比較的上位にいます。
有園:グーグルの売り上げが、仮に3兆円くらいとして、そのうちの5パーセントが1,500億円くらい。
ワールドワイドで、数十億から数百億くらいリスティング広告で使っている可能性があるわけですね。
杓谷:さすが有園さん、するどいですね。すぐに計算されてしまう(笑)
SQLでレポート作成
杓谷:あと弊社のSEMツールで特徴的なのはレポーティングですね。弊社のSEM のキャンペーンは、さまざまな検索エンジンをまたいているんで、それぞれの管理画面からレポートを出しているといくら時間があっても足りません。SQLのデータベースの中にSEMの表示回数、クリック数、コスト等のパフォーマンスデータをすべて保存して、それをSQL のクエリを書いて引っ張り出す形になっています。SQLを書けないとアドワーズ広告の運用ができない状態です。
有園:独自に管理画面を用意しているわけではなく、SQLでデータを引っ張ってきてレポートに出すわけですね。御社内で使うレポートで、外部に出すわけではないですからね。
杓谷:僕は基本はSEMのデータを見ていますが、リターゲティングやアフィリエイト等の広告の配信結果等もデータベースとつながっているので、その他の広告のキャンペーンも分析することもできます。DMPという言葉が日本で流行る前から取り組んできました。
売上が昨年比60パーセントアップ
有園:リスティング広告に特化したDMPを作って、どのくらい売り上げに貢献していますか。
杓谷:いままで、入札金額は各アナリストが自由に決めていましたが、いまは、データサイエンティストチームがデータを分析し、微分積分の式がPDFで送られてきて「今度はこういう入札アルゴリズムでいこう」と新たな入札方法を試したりしています。その結果、2013年に比べて60パーセントから70パーセント成長している状況です。8月までに2倍の成長を目指しています。
有園:すごいですね。システムを入れてからですか?
杓谷:データサイエンティスト達がアルゴリズムの改善に着手し始めてからですね。データサイエンティストが入ったのは半年前です。ランディングページをCPC広告がクリックされやすいレイアウトに変えたり、地道に行っています。
伊藤:グローバル全体で見ても、SEMは笑ってしまうくらい伸びています。
有園:笑ってしまうくらい伸びているんですね。リスティング広告をやっている広告主であれば、自社でシステムを作ったほうがよいですか?
サーチは広告主主導で伸びる
杓谷:そう思います。日本の広告主は、自社でシステムを作るケースは少ないようですが。グーグルの方と話していても、日本の広告主や代理店から「サーチはやりきった」という声を聞くそうですが、僕は違うと思います。サーチは新たなステージにいくというか。これからはDMPをうまく利用していくことでまだまだ飛躍的に伸びていくのではないかと予測しています。
有園:リスティング広告の出稿データがあり。過去のキーワードごとに、いくらで課金されて、いくらのCPAで、コンバージョン数がいくつで、クリック数なども残っていて。それと、御社の広告枠の商品データがあって。いまの話だとウェブページなども加味して分析しているそうですが。それらが同じデータベースなのか分かりませんが、そこにデータサイエンティストを投入することで、笑っちゃうくらいリスティング広告経由で売上が伸びているわけですね。
杓谷:はい。
リスティング広告運用の課題
有園:これまでやってきての課題は、どのように感じていますか。
杓谷:アドワ―ズ広告の運用を自動車の運転に例えると、手作業での運用は通常の自動車の運転みたいなものです。素人でも免許を取れば一人で運転できます。一方、APIをつないでガリガリやるのはF1のようなもので、素人は運転できません。APIをつないでの運用は、アルゴリズムを理解しないと、正しく運用できませんし、数学や統計の知識がないと、深いところまでできません。僕もアカウントを触るのに、一か月くらいはかかりました。初期のラーニングコストがかかりますね。
有園:社員を教育しなければならないわけですね。
杓谷:研修が大変です。SQLであったり、社内のデータベースの構造や社内だけの専門用語のなど、細かいこともいろいろ覚えることがあります。
伊藤:数学が分からないと厳しい世界になっています。
杓谷:データサイエンティストたちは、ベイジアンネットワークや、Rでグラフを出したり。
有園:最近みなさん、Rやベイジアンって言いますね。御社もベイジアンを使って分析しているのですね。他に課題はありますか。
杓谷:キーワードインサーションを使って広告を出してるので、ときどき広告の文章がおかしいときがあります。クリック率が良いので結果的に売上もキーワードインサーションを使わない広告よりも高かったので、そのまま使っているのですが、ユーザー・エクスペリエンス的にどうかなと思うときがあります。売上至上主義になると、その点がおろそかになりがちなのが問題かなと。あとは、これだけ売上を最大化するためにデータを分析しているにもかかわらず、まだまだアトリビューション的な発想が全くありません。そういうところも本当は見ていかなければいけないと思います。オーディエンスデータなどを使ったターゲティングも必要です。いまちょうど検索広告向けのリマーケティング「RLSA(Remarketing Lists for Search Ads)」をトライアルではじめましたが、それを使って今度、ホテル以外のキーワードとかにも、もしかしたら出稿していけるのではないかなと思うのですが、売上がどのくらい増えるとか予測が成り立ちづらいので、そういうところにはなかなか手を出という課題があります。
多くの広告主はラストクリックアトリビューションすらできていない
有園:アトリビューションとオーディエンスデータの話ですが、杓谷さんはアトリビューションというと、ラストクリック以外の経路データを見ると言う意味でお話しされたかと思います。そういう風に広めてしまったので、それはそれで良いのですが、ラストクリックだけで見ると言うアトリビューションもあります。「ラストクリックアトリビューション」という言葉がありますね。経路データを見るのだけがアトリビューションではありません。実は、ラストクリックを見ることすら、きっちりやっていない広告主は結構多いです。媒体社のコンバージョンタグでデータがあがってきて、グーグルやヤフーの管理画面に出てくるCPAを見て入札するのが一般的です。
杓谷:そうかもしれませんね。
有園:それって、たとえば、同一ユーザーが、ヤフーで検索してトリップアドバイザーのページに入ってきて、その後に、その人がグーグルで検索してトリップアドバイザーのページに入ってきて、グーグルでコンバージョンした場合、ヤフー側でもヤフーのリスティング広告をクリックしていて、グーグルでもグーグルのリスティング広告をクリックしているので、なおかつ30日以内にコンバージョンが発生していると、両方にコンバージョンのフラグが立ち、ヤフー側のレポートでも1コンバージョン、グーグル側のレポートでも1コンバージョンとなります。でも、御社は媒体社のレポートを使っていないので、この現象は起こっていないと思います。そういう重複カウントが発生していないので、正しくラストクリックアトリビューションをやっているということになりますよ。
杓谷:そうですね。
有園:多くの広告主は、ラストクリックアトリビューションすらできていない。サイトカタリストを入れて、サイトカタリスト上で取得したデータを使って毎日、入札管理をしているかというと、していないんです。連動していない。結局、入札管理は、サイトカタリスト上で取得したデータではなく、媒体社の管理画面を使って、そのデータを使っていて、サイトカタリストのデータは月単位のレポートで使うだけ。運用に全然反映されていないんです。データを厳密に考えていますかって話なんです。そこに、10パーセント、20パーセントのずれがあって、その10パーセント、20パーセントのずれを制御していくと、御社みたいにシステマティックにCPCを計算して入札していくと、その分だけ無駄が省けて成長します。20パーセントって大きいですよ。
杓谷:大きいですね。
有園:そういうことを御社はちゃんとやった結果、60パーセントくらい伸びているわけですよね。いまのは単なるラストクリックの話ですが、そこの20パーセントをきっちりとっていくこと、また広告文はキーワードインサーションさせることで、クリック率も上がるわけですし、そのような細かいことをひとつひとつ積み重ねて60パーセントの伸び率を達成されたのかなと思います。御社はアトリビューションをやっていないとおっしゃいましたが、経路を見ていないだけで、ラストクリックアトリビューションをしっかりやっていると思います。
杓谷:「カスタマージャーニーを追っていない」という表現の方が適切だったかもしれませんね。
オーディエンスデータ
有園:そうかもしれませんね。アトリビューションをやっていないと言ってもいいんですよ。ただ、他社に比べるとやっている方になりますね。御社の場合、オーディエンスデータって、私もフェイスブックログインを使ったり、会員ログインを使ったりしますが、そのCookieの履歴は追えるのでしょうか。
杓谷:データベース上にはあると思います。
有園:そうすると、たとえば、私がリスティング広告経由でトリップアドバイザーのページに入ってきたら、フェイスブックにログイン状態でなくても、有園がきたって分かる状態になっていますよね。
杓谷:そうです。
有園:であれば、有園が一回ログインしていれば、40代の人だって分かるので、40代の人に向いたランディングページに切り替えるとか、広告枠も、40代はホテルオークラに泊まるけれど、20代は他のビジネスホテルに泊まるとかが分かっていたら、そこも切り替えることができたりするわけですね。
杓谷:今後はそういうことも、できるようになると思います。
有園:それを使ってRLSAを使うときに、顧客の会員情報と紐づけて表示を切り替えたりできるようになるわけですね。実際に、マリンソフトウェアはブルーカイ(BlueKai)と提携して、BlueKaiのデータを使って30代の女性って分かっていれば、その30代の女性が検索したときは、30代の女性に適した広告文に変えることを、RLSAとマリンソフトウェアとBlueKaiが連携して出来るようになっています。御社の中には、ブルーカイに該当するようなユーザー属性情報も会員であれば持っていると思うので、それと御社の入札の仕組みとRLSAとAPIを使えば出来るのかなと思いました。
杓谷:今後の課題というか、そこまでできたらすごいですよね。
やっぱりサーチでしょ
有園:おもしろいですね。結論から言うと、それなりに年間億単位でリスティング広告をやっているところなら、自社でシステムを作ったほうがよさそうですね。その方がリスティング広告経由の売上が圧倒的にあがる。データサイエンティストを育てなければなりませんが。
杓谷:そうですね。いままで、SEMアナリストと言われる人たちは文系が多かったのですが、そこに理系の人たちも加わって、車に例えるとドライバーとメカニックが二人三脚でいけると、良いのではないかなと思います。
有園:まだまだ成長の余地ありと。サーチこそ面白いのではないかと。
杓谷:最近は、サーチブランディングという話も出てきて、一見、コンバージョンと関連がなさそうなキーワードにも広告を出稿してリードをとってくるという考え方があります。僕らは昔から知っていますが、一部ではそのような話も最近出てきているようです。そういうことも、データを見ながらやっていけるのではないかと思っています。やっぱりこれからもサーチだと思います。
有園:ありがとうございました。
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■対談者プロフィール
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トリップアドバイザー株式会社
ビジネスインテリジェンスアナリスト
杓谷 匠 (Shakuya Takumi)
早稲田大学第一文学部卒業後、08年にグーグル日本法人に入社。
自動車、金融業界のアカウントストラテジストとして、業界に特化したデータ分析業務に従事。
2013年2月にトリップアドバイザーにシニアSEM アナリストとして入社し、SEM の運用に携わる。
9月よりビジネスインテリジェンスアナリストとしてトラフィック、売上などの広範なデータ分析に携わる。
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トリップアドバイザー株式会社
マーケットディベロップメント(APAC)マネジャー
伊藤彰彦 (Ito Akihiko)
東京大学経済学部卒業後、09年に東京大学大学院経済学研究科を修了し、ソニーに入社。
オーディオ・ビデオビジネスの商品企画として、主に新興国を対象とした新商品の企画に従事。
2013年1月にトリップアドバイザーへ入社し、アジアパシフィック地域の商品を担当。
サービス改善案の企画、実装、テスト、分析を繰り返してビジネスを成長させる役割を担う。
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【アトリくんの視点】旅行業界のような変数もキーワードも多い業界でリスティング広告を運用していくのは非常に大変だと思いますが、データベースとの連携や損益分岐点に合わせて自動入札する仕組みを開発していたのですね。すごい! アトリくん的にも、アトリビューションマネジメントの成功のポイントが実は検索連動型広告の改善だったりすることが多いので、「サーチはやりきったと聞くことが多いが、違うと思う。」という杓谷さんの言葉は、納得感がありました!杓谷さん、伊藤さん、大変勉強になりました。ありがとうございました!