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2012年広告業界予測」 からご覧ください。
DSP/RTBやオーディエンスデータを使って、広告配信を『枠』から『人』へシフトさせる影響は、ネット広告の最適化に留まりません。広告を打ちながら、調査しているようなものであるこうした手法によって得られるデータは、マスメディアを含めたマーケティング活動全体の最適化に資するものになるということです。従来自社サイトでの観測をもってすることはクルマなどの一部の業種やブランドでは可能でしたが、そうでない広告主企業がほとんどでした。しかし多くの業種でも外部データを用いることや広告反応を手繰り寄せることで、可能になってきています。そうなってくると、ネットに閉じた知見だけではあまり役に立ちません。また『広告』に閉じた知見だけでもあまり役に立ちません。『マーケティング』、『組織人事』、『戦略的ビジネスプロセス』にも通じていないといけない。(今企業が一番必要なのはデジタルマーケティングシフトによる再編のための構想力です。)この事態は広告会社が想定していない。つまりそうした知見や職能が開発されるような組織がないし、そもそもそういう仕事をしていないので、出来る人がほとんどいない。本人の資質でこういう能力が偶然開発されるのも待つしかないのです。当然、何の戦略的意図もなく偶然対応力のある人材がいても会社のなかに引きとどめることは難しいでしょう。
いずれにしても、『「枠」から「人」へ』のパラダイムシフトは、広告を生業にしてきたものには劇的な変化です。「手売り」だから何とかなっていた「中抜き」も当然加速しますし、そもそも広告代理店のメディア部門やメディアプランナーは今後何をするのでしょうか。知見はトレーディングデスクのオペレータに貯まり、広告主は彼らと直接運用方針をやりとりするでしょう。そうでないと競合に負けるからです。
またそれ以上にデジタルが分からない営業フロントラインは今後も存在し得るのでしょうか。マスメディアを含めた施策について、ネットでの全数調査を兼ねた広告出稿分析がその方向性を決めるとすれば、デジタルマーケティングがマーケティング全体の設計にとってコアになるとすれば、従来のデジタル対応できない人材はそもそも広告業界には不適格ということになります。欧米では広告会社の看板をそのままに従業員をリストラしてデジタル対応可能な人員に入れ替えてしまいます。広告主企業も経営トップが若いせいもあるでしょうが、デジタル対応、ソーシャルメディア対応が早く、またマーケターサイドとエージェンシーサイドの人材流動性も高いので、知見の共有が進むということがあります。ペイドメディアを買うことがマーケティング活動のほとんどだった時代は、ペイドメディアの情報を握っている広告会社は、広告主に対して優位なポジションを得ることができましたが、オウンドメディアでは自ら構築運用する広告主には逆立ちしても勝てず、ソーシャルメディアでも運用で顧客との会話スキルが進む広告主には全く敵いません。
日本の広告業界でいえば、もうとっくの昔に変換していなければいけないことや人がいまだに「しがらみ」の状況にあるということがあります。経営が現場で対応していること、もうそこが本丸になっていることについてほとんど分かっていない、理解できないという極めてクリティカルな状況にあります。自動車メーカーのトップが「ハイブリッドカーがどうやって駆動しているか理解していない」なんてことは絶対ありえないのですが、広告業界ではそれがまかり通っているわけです。信じがたいほどに・・・です。
そうした認識は今年から急激に広がるでしょう。広告主は『広告』が買いたい訳ではありません。マーケティング目標を達成し、ビジネスを成功に導きたいのです。それにこたえるための知見をもった「人」にサポートを依頼したいのです。広告主は広告会社の経営者を面接すべきでしょう。広告会社の経営者は一件この状況を認識しているようなことは言うでしょう。しかし自分でしっかり理解できていない者はすぐ分かります。
だから面談して、変革の時代に経営者に認識や理解のない会社との取引を見直すべきでしょう。経営者に本当の理解のない会社では、たとえ良くできる人材がいても、その人材が実力を発揮できる環境をつくり得ないのです。その意味でも広告会社には経営者の『経営力』が大きく問われる年となるでしょう。そうした広告主の期待に応えることができない広告会社の本格的な解体が急速に始まる年、それが今年2012年といえるでしょう。
景況感でいえば、マーケティング活動への投資は決して少なくないでしょう。それだけにむしろ優勝劣敗が明確になる年になると思われます。