若手社員が成長するために必要な2つの要素とは? マーケターのキャリアプランの描き方

業務範囲が広がっているマーケターはどうすべきか成長すべきか。ナイルの土居氏、JADEの伊東氏がディスカッションしたイベントのレポートをお届け。

デジタルマーケティングが普及するに連れて、マーケターに求められる役割やスキルも変わってきている。成長していくために必要な要素は何か。将来のキャリアを考えたときに、今何をすべきかなど、悩んでいる方も多いのではないだろうか。

そこで、マーケターとして身につけるべきスキル、キャリアの考え方、スペシャリストとジェネラリストどちらを目指すべきか、といったテーマで、ナイルの土居 健太郎 氏、JADEの伊東 周晃 氏がディスカッションした。モデレーターはWeb担当者Forum編集長の四谷が務めた。

テーマ① キャリアアップに必要な要素とは?

議論するテーマは、視聴者の投票数の多いものから順番に取り上げた。1つ目のトピックは、「キャリアアップに必要な要素って何?」だ。

伊東氏は事業会社での経験から、社内で役職を上げるための方法として「仕事ぶりを見てくれる人がいるので、その人に気づいてもらうこと、気づいてもらってチャンスを得ること」を紹介した。チャンスを得るには、まずは与えられた目の前の仕事でベストを尽くし、経験を積んでいくことが重要だと話した。

土居氏は組織の中で役職につくには、「この人に任せると会社にいいことがある」と上司に思わせることが必要で、そのためには伊東氏と同様に目先の仕事で成果を出していくしかないという。一方、実力をつけるという視点からのキャリアアップについては、2つの条件が重なると成長できないと述べた。

一つは予算、裁量がない環境、そして2つ目は有益なフィードバッグが得られない環境だ。この2つの条件が重なると実力をつけることはできない。勉強してもその成果を実務に活かせないという状況なら転職、異動を考えたほうが良いというほどだ。フィードバックについては、プロフェッショナルからフィードバックがもらえる環境なら力はつくが、それがなければ、成長ができない。

社内にわかる人がいないので、裁量、予算を任せます、という形であれば、勉強したことを実際に試して、結果というフィードバックが得られる。裁量がない場合でも、周囲からよいフィードバックがあれば成長できます。理想は、裁量があって、フィードバックが得られる環境です(土居氏)

ただし、入社してみないと環境が整っているかどうかはわからない。土居氏は面接時に「自分に期待していることは何か」を質問して、すでに責任者がいて具体的な話があるのか、わかる人がいなくて裁量をもたせて任せようとしているのかを聞き出して判断するとよいとアドバイスした。

株式会社JADE 代表取締役 伊東 周晃氏 
2000年に株式会社NKB入社。2004年より東京メトロと共同運営する地域情報サイトの立ち上げ、運営に参加。2007年より(株)ぐるなび。同社では、SEO、ソーシャルメディア施策、ウェブ解析、コンテンツマーケティング、広告、広報領域の執行役員をつとめた。(株)JADEでは、「Growth & Integrity」をコンセプトに検索を軸としたウェブコンサルティングサービスを提供している。

テーマ② スペシャリストとジェネラリストどちらになるべき?

次は、「スペシャリストとジェネラリストどちらになるべき?」というテーマが取り上げられた。

伊東氏は、「スペシャリストを目指すならその分野が好きでないと難しい。1−2年目であれば、やりたいことに絞り過ぎずに、チャンスがあればいろいろな分野の経験を積んで、好きの強度を探索することが大事」と話した。伊東氏自身、ぐるなび入社当初任された仕事について、何をやっているのかがわからなかったが、10年ほど過ぎて初めてその仕事の意義がわかるようになり、現在はその経験が糧になっているという。

同時に、JADEのようなスペシャリスト集団になると、その中で役割が相対的に変わることがあることも指摘した。専門性がありながら、メンバーによっては、プロジェクトの取りまとめや調整をやるなど、スキルの引き出しが多いほど、柔軟に対応ができる。

土居氏は、汎用的にどこでも食べていけるようになりたいならジェネラリストだが、スペシャリストは、本人にとっても会社にとっても強力な武器になり得ると話す。しかし、デジタルの世界はやり方や価値観が数年で変わることがあり、一本槍でやっていくと5年後、10年後がわからないことも指摘した。プランニング、プロジェクト管理、交渉力、チームマネジメントなどができる人材は企業から求められると話した。

スペシャリストを目指して自分のやりたい方向ばかりに進んでいくのは悪手で、会社に貢献できる方向に手を広げる必要があります。そのとき、自分が持っているスキルAを活かしながら、新しいスキルBが求められるところに行く必要があります。Aが求められず、Bだけが要求される部署では使えない人になってしまいます(土居氏)

参加している方の多くがマーケティング担当者ということなので、別のスキルを身につけるということであれば、広報を経験するといいかもしれないですね。広報を一度経験すると、ステークホルダーとのコミュニケーション方法の取り方やメディアリレーションも理解できるようになります。集客と広報が近いところで仕事をすると成果も出やすいと思います(伊東氏)

ナイル株式会社 取締役 人事本部 本部長 土居 健太郎氏
​​​​​​2008年に東京大学工学部中退後、フリーターとして活躍。2009年、成り行きでナイル株式会社に入社。2010年より事業部長としてデジタルマーケティング事業の立ち上げを牽引。2015年、同社取締役に就任。2016年からはメディア事業部に異動、自社サービス「Appliv」サービス責任者を経て、同事業における新規サービスの立ち上げを担当。2019年1月に人事本部 本部長に就任、人事責任者として主に採用と組織開発を担当。著書に「10年つかえるSEOの基本」がある。

テーマ③ 給料を上げるためには何をすべきか

続いて「給料を上げるためには何をすべきか」というテーマを取り上げた。土居氏は「独立するか、給与相場の高い会社に転職する。あるいは、地道にスキルを上げて評価されて社内で出世する」というシンプルな回答をした。伊東氏は「会社の評価体系を見て、何が評価されるかを把握する」と話す。

四谷氏より「成長するには、自分より二つ上の役職者の視点で考えろ、という言われ方をしますが、担当者はどうすれば役職者の目線を身につけられますか」という問いかけがあった。

土居氏は、自分の上に課長と部長がいる場合、なかなか部長と直接話す機会がないが、課長が部長に期待されていること、チームに期待されていることを把握して「課長の評価、チームの評価を上げるという視点から考えて、部下力を上げることが必要」と話した。

テーマ④ こんな人になりたい、ロールモデルがいない問題はどう解決するべき?

次に「こんな人になりたい!という憧れる存在がいないときはどうすべき?(キャリアパスがなく、そもそもロールモデルがいない)」というテーマを取り上げた。

伊東氏自身は「この人になりたい」というモデルはいないと断った上で「人でも本でも、自分が好きなものをかき集めていくと、なりたいものが見えてきて、それがロールモデルになるのではないか。憧れの人を探すというよりも、自分の好きなものを発見するという視点で考えるといいのでは」と話した。

伊東氏自身、学生時代に演劇をやっており、その経験が現在のコンテンツ制作の仕事につながっていたり、得意な人を集めて企画を実現する仕事につながっていたりすると話す。「人生を振り返ったときにこういう経験が良かったというものがあり、経験を通して好きなものがみつかることもある」と述べた。

土居氏も「ロールでモデルがいたわけではない」という。「ロールモデルが欲しい人は、自分の行き先がどうなるかイメージできない不安があるのかもしれない」と述べた。

セミナー時の様子
左から四谷、伊東氏、土居氏

テーマ⑤ スキル不足はどう解消するべき?

続いて「スキル不足はどう解消するべき?」というテーマについて、伊東氏は「足りてないことがわかっていれば勉強すればいいし、自分ですべて解決するのではなく、相談できる人、得意な人を仲間に増やすことが必要」と話した。

土居氏は、「質の高いインプットを得てアウトプットし、そのフィードバックを得ること」と述べた。しかし、インプットとアウトプットのバランスは、人によって異なって良いという。土居氏自身は、インプットよりもアウトプットを増やしてフィードバックを得たいタイプ。キャリアアップと同じで、挑戦できる環境とフィードバックがなければ成長はできないと述べた。

テーマ⑥ 自分のスキルの市場価値はどう判断するか?

モデレーターの四谷氏より「自分のスキルの市場価値はどう判断するか?」という質問があった。

伊東氏は「外で同じような仕事をしている人の知り合いを増やして、コミュニケーションしてはどうか。自分はイベントの運営をしていて、色んな人にゲストに来てもらっているので相対化できるし、他の人がどんな悩みを持っているのか、考えを持っているのかが知れるので、ものさしになる。ただマーケターの仕事は商材やサービスによって違うので比較しにくいし、経験の差もある。たまにマウンティングしてくる人がいるので、そこは注意」と話す。

視聴者の質問に対して二人が回答!

Q1. 絶対に外さない採用条件、汎用的なマーケターのスキルなどがあれば教えてください

以降は、視聴者からの質問に回答してもらった。1つ目は「絶対に外さない採用条件、汎用的なマーケターのスキルなどがあれば教えてください」という質問。

ある会社で活躍している人が別の会社でも活躍できるか、同じパフォーマンスが出せるかは別の話。採用する側もその人が活躍できる環境を整えるようにしますが、これくらいの実績があるからと思って採用しても、予算が少ない、裁量が限られているなどの条件が違うとミスマッチになることがあります。今の環境以外で自分のスキルが通用するのか試すなら、転職よりも手軽にできる副業がおすすめ。いろいろなプロジェクトに関わって自分のスキルを高めればよい(土居氏)

Q2. クライアントのマーケティング支援をやっていると、相手の組織の課題などでうまく進まないことがあるが、どこまでやるべきか?

次に「クライアントのマーケティング支援をやっていると、相手の組織の課題などでうまく進まないことがあるが、どこまでやるべきか?」という質問。

土居氏は、「最初からクライアントの期待以上の領域に突っ込んでも、求められていないなら聞いてもらえないので、まずは求められている仕事を真摯にやっていくしかない」と話す。信頼を積み重ねられれば、話を聞いてもらえるチャンスもできると続けた。これは、伊東氏も同意した。

Q3. ウェブマーケティングに関わっていると、視野が狭くなり事業や経営の数値に弱くなるがどう対応するべきか?

ウェブマーケティングに関わっていると、視野が狭くなり事業や経営の数値に弱くなるがどう対応するべきか」という質問。

伊東氏は、「事業全体の中で自分の部署がどういうインパクトを与えているかに自覚的であれば、狭くなっているわけではない」と話した。たとえば、直帰率が3%下がった、という言う話を経営に紐付けるには、翻訳が必要で事業にどう影響するのか説明できれば、全体が見えていると説明した。

土居氏は、ウェブマーケティングが事業全体の一部であるという自覚があることはいいことであり、むしろ、ウェブマーケティングがすべてと思っているほうが危ないと話した。「ウェブを任されているのであれば、まずはウェブマーケティングに集中して誰にも負けないくらい考えているといえるほうがよい。中途半端に視野が広くて目先の仕事がおろそかになっているよりかはずっとよい」と話した。

Q4. SEO専門のマーケターを目指すのか、ジェネラリストを目指すのか、迷っている

続いて「SEO専門のマーケターを目指すのか、ジェネラリストを目指すのか、迷っている」という質問。

土居氏は、SEOのスペシャリストは少ないのでレアリティの高い人材になり、目指してほしいとエールを送った。ただ、どこでも活躍できる人材になりたければ、ジェネラリストのほうが良いと話した。伊東氏は、「スペシャリストの話にもつながるが、まずは好きであることが大事」と述べ、その上でいろいろなスキルセットを持つ仲間づくりも重要だと回答した。

Q5. 転職を考えているが、スキルが広く浅く外部で通用するかわからない。採用のポイントは?

次は「転職を考えているが、スキルが広く浅く外部で通用するかわからない。採用のポイントは」という相談。

伊東氏は、質問の直接の答えではないと断りを入れつつ「前職の社長は、面接で質問したことに対してダイレクトに答えているかを見ていました。専門知識、論理的な思考力も大事ですが、一緒に仕事をするときに、会話をしているようでしていない人は心配だ」と話した。

土居氏は、採用で見るのは、その人が自社にあうのか、活躍できるポジションがあるかの2つだと話した。広く浅くのスキルは、言い換えればマルチに動けるということでもあり、突出しているタイプの人よりも汎用性が高いという意味で採用しやすい場合もあると話した。

Q6. 事業会社とコンサルティング会社のメリット、デメリットを教えてほしい

次は「事業会社とコンサルティング会社のメリット、デメリットを教えてほしい」という質問。

土居氏は、「支援側の人は、『事業会社の人は自由に動けるというが』それは信頼を積んでいる人だからできること。支援側は多様な業界、業種にかかわるので、必然的に多くのインプットを求められる。顧客から常にフィードバックも得られるので、スキルが専門的、総合的に身につきやすい。事業会社の場合はトライアルアンドエラーを積み重ねやすいというメリットがあるが、先ほども話したとおり、裁量もフィードバックも乏しい環境では成長のしようがないので、環境の要素が大きいというのがデメリットだ」と話した。

伊東氏は「事業会社なら、信用を得て裁量を増やしていくことでチャンスが増える。支援会社なら、提案が実現されやすい裁量を持っている担当者とつながりを持つと動きやすくなる」とアドバイスした。

さて、伊東氏のJADE、土居氏のナイルは、絶賛人材募集中だ。ウェブマーケティングに関心があり、今回の二人の話にピンとくるものがあれば、まずはカジュアルに相談してほしいと二人は口を揃えて、セミナーを締めくくった。

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