仮説・検証・分析なんて無駄。PDCAは質じゃない、数だ!/【漫画】デジマはつらいよ・第2話
前回のあらすじ
伝説のマーケター・京極虎がアクセサリー販売会社にやってきた。さっそくデジタルシフト推進室のルリから「コンバージョン率を上げるには?」と聞かれた虎は、「サイコロで必ず1の目を出す方法」を考えるよう課題を出した。その真意とは?
PDCAは質より量
こんにちは、「デジマはつらいよ」原案・監修を担当している中澤伸也です。
第1話、第2話では、PDCAはその「質」よりも「量」が重要であるとのメッセージをお伝えしました。
漫画ということもあり、刺激的なタイトルや描き方に、やや誤解を招く表現もあったかと思うのですが、「仮説・検証は無駄」という描き方をしたのは、もちろんそれ自体が無駄ということではありません。「仮説や検証に時間をかけすぎることが無駄」という意味です。より正確に言うなら、PDCAを回していくためには、いかに「仮説」を短時間に大量に産み出すかが重要であり、検証をいかに効率よく行うかが重要という意味合いになります。
A/Bテストは仮説そのもの
そもそも、PDCAで多用される「A/Bテスト」とは、「ユーザーがどちらを望むのかわからないので、直接ユーザーに問うてみる」ということであり、それ自体がもっとも正確な「ユーザーアンケート」であるとも言えます。ユーザーアンケートにおいて、いちばん難しく、時間がかかるのが「設問」の設計です。すなわち、「A/Bテストを実施するために、AとBを何にするかを設計する」ということ自体が「仮説」そのものなのです。
お恥ずかしい話、私自体デジタルマーケティングに10年以上携わっているものの、いまだに「顧客が本当は何を求めているのか、どうしたいのか」を正確に導出することはできておりません。自分としては渾身のプランを立てたつもりでA/Bテストを行っても「え? ユーザーはこっちを選ぶの? なんで?」といったことが、それこそ毎日のように発生しています。私自身の能力の低さがあるのかもしれませんが、日々、ユーザーに新しいことを気づかされ続けているというのが実情です。
PDCAの目的は顧客の理解
ときどき、PDCAの目的を「自身の仮説が正しいかどうか検証する」というふうに置いているケースを見かけます。私自身は「仮説の検証を通して、顧客の理解を深める機会をいただく」というふうに、目的を「仮説の検証」でなく、「顧客の理解」に軸足を置くべきだと考えています。我々は思っている以上に顧客のことを理解できていません。この事実を謙虚に受け止め、「自分たちが常識と考えていること、当たり前の前提として考えていること」を、つねに一度取り払って考えるよう努力し続けることが、マーケターにとって重要なスタンスではないでしょうか?
PDCAの量に集中することで得られるもの
今回の漫画でも強調したように、PDCAにおいて、あえて仮説の「量」をたくさん出すことに集中すると、思い込みによって切り捨てられていたかもしれない仮説を検証する機会が生まれます。それにより普段は気づかなかった前提条件や思い込みを捨てることが可能になり、思ってもいないような結果や気づきが得られていく。意外な結果が出れば、なぜそうなったのかを、分析ではなく顧客の視点に立って「考察」する。その上で、新たな仮説を生み出し、また検証していく。この繰り返しで、少しずつ、しかし着実に顧客の理解を深めていく。そのためには、「質」ではなく、あえて「量」を意識して、PDCAに取り組んで行くことが大事ではないかと考えています。
PDCAを大量に高速に回していくためには、それを行いやすくする「環境投資」が極めて重要です。環境を整備してあげなければ、現場は急速に疲弊していきます。これを整備するのは課長・部長といった予算権限を持つ上長の責任です。OptimizelyといったA/Bテストツール、Kaizen Platform、KARTEのようなWeb接客ツール、いずれもPDCAの高速化に非常に有効な環境を提供します。ぜひ、上長の方々には、現場でPDCAを回すための負担が軽くなるような環境を、ご自身の事業や組織状況に合わせて構築されることをおすすめいたします。
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