O2Oはネットからリアルへの集客だけではない。ECサイトと実店舗の相乗効果で売上を高める2つのポイント
O2Oは事業全体の売上を高める施策。購入は実店舗でもネットでもいい。
小売りの現場とECを融合する
O2O最新事例を紹介
「ネットショップ担当者フォーラム2012」開催【参加費無料】
12月6~7日の東京有明TFTホールにおいて、ネットショップ運営成功の「本質」的手法を知るショップ担当者のためのイベント「ネットショップ担当者フォーラム2012」が開催される。
特別講演A1-1セッションには、株式会社ecbeing代表取締役社長の林雅也氏が登壇。O2Oを利用した最新ECサイト最新事例を紹介する。
講演O2Oを利用した最新ECサイト構築事例のご紹介(12月6日 10:50~11:30)
- 日時:2012年12月6日(木)・7日(金)
2日間、10:00~18:30 - 会場:TFTホール(東京有明)
- 参加費:無料
- 主催:Web担当者Forum
(株式会社インプレスビジネスメディア)
日本ではBtoCの小売・サービス全体に占めるECの割合は、わずか3%にも満たない。この「リアル」と「ネット」の商売のギャップを埋めるソリューションとして、大きな期待を集めているのが「O2O(Online to Offline、オーツーオー)」だ。
市場規模は20兆円以上と言われるO2O関連ビジネス。スマートフォンを店頭の読み取り機にかざすとクーポンがもらえるといった、「ネットからリアル」への集客ソリューションが話題になりがちだ。
しかしECサイトと実店舗の両方を運営している場合、重要なのは両者をどう連携して、顧客満足度を向上させ、成果を出していくかといったことだろう。実店舗も運営しているECサイトがO2Oを行う際にはどのような点がポイントになるのか。 ECサイト構築最大手・ecbeingの林雅也社長にお話を伺った。
ちなみにecbeingの持株会社は東証一部上場のソフトクリエイトホールディングス。同社はもともとパソコンのリアルショップからスタートしており、老舗ECサイトの「特価コム」も運営している。O2Oが「クリック&モルタル」と呼ばれていた時代よりも前から、実店舗とECサイトの連携に関わってきた企業だ。
ではまず基本的なことだが、O2Oとは何を目的にするソリューションなのか。林社長は次のように説明する。
「O2Oは実店舗とECサイトをうまく連携して、お客さまを購買行動に結びつけていくことです。実は購買ポイントは、オンライン・オフラインのどちらでもかまいません。リアル・ネットで協調して顧客のロイヤリティーを醸成し、オンラインであろうがオフラインであろうが、自社で購入していただく。このことが大きな狙いになります
」
冒頭に述べたように、O2Oと言うと「ネットで接触したユーザーを実店舗に誘導する」という一方通行のソリューションが想定されがちだ。しかし重要なのは事業全体の売上がアップすることであり、ネットであってもリアルであっても、コンバージョンに結びつけばいいというのが、林社長の考えだ。
「たとえば一昔前であれば、顧客をネットから実店舗に集客し、ポイントカードを作ったら終わりでした。作ったポイントカードは実店舗でしか使えない。しかし最近ではポイントカードをオンラインとオフラインで統合してどちらでも使えるようにし、実店舗・ECサイトの双方で買ってもらえるようにすることが、O2Oソリューションの基盤になっています。実店舗とECサイトの垣根が、なくなりつつあるのです
」
もちろん実店舗とECサイトを連携しようという試みは、O2Oが脚光を浴びる前から行われていた。しかし林社長によれば、実店舗とECサイトの考え方に溝があることが原因で、連携がスムーズに行かないケースも多かったのだという。
「同じ会社の中とはいえ、実店舗とECサイトは一種の競合関係にあります。特に慎重だったのは実店舗側です。連携を深めた結果、ECサイトに自店の売上を奪われるのではないか。店舗運営者がそのような懸念を抱いて、慎重になっていることも多かったのです
」
ところが実際には、丁寧に実店舗とECサイトの連携に取り組めば、売上を奪い合う状態にはならないのだと林社長は説明する。むしろネットとの連携を深めていけば、相乗効果で実店舗の売上も増加していく。そんな先行事例が、この2年ほどで目立って増えてきたのだ。背景にあるのは、スマートフォンの普及だ。
「たとえばユーザーにECサイトの販促メールを送ったとします。フィーチャーフォンのユーザーはそこで紹介された商品が気に入れば買いますが、気に入らなければそれで終わりで、サイトのほかのページを見たりしません。実店舗に来てくれるということもない。ところがスマホのユーザーは、解析データからも明らかですが、サイト全体をくまなく閲覧する傾向があります。スマホだけでさまざまな商品を見てもらえるし、実店舗に誘導する施策も展開できる。実店舗誘導後のポイント付与や会員登録も、スマホに搭載されているFeliCaやバーコードなどを使って、簡単にできてしまいます
」
実店舗でのネット連携も高価な専用端末は不要で、極端に言えばタブレット端末を置くだけで実現できる。サイズ切れの商品の在庫を、顧客自身がネットで調べるということが簡単にできるようになるのだ。このように、スマートフォンやタブレットを活用すれば、アイデア次第でいくらでも連携を深める方策はあると、林社長は強調する。
余談だがO2Oが注目を集めている要因には、スマートフォンだけでなく、ソーシャルメディアの普及もあると言われている。しかし林社長は、ソーシャルメディア上での単純な施策が、ダイレクトに実店舗やECサイトの売上に反映するケースは少ないと話す。
「たとえばFacebookページに、『いいね!』を押してもらうのは、ガラケーから空メールを送ってもらってクーポンを配布する手法の延長線上にあります。ローソンの『あきこちゃん』のように大成功している事例もありますから効果がまったくないとは言いませんし、長期的なブランド醸成にはソーシャルメディアは有用なツールです。しかし『いいね!』を獲得しただけで終わりにして、会員化するための施策を講じなければ、売上アップには直接的にはつながらないでしょう
」
ネットと実店舗でポイントカードの統合をしないことには
O2Oは始まらない
ではこれからO2Oのソリューションに取り組もうとする企業が、押さえておくべき点とはどのようなものか。林社長に最重要ポイントを2点、挙げてもらった。
まず1点目は、実店舗とECサイトのポイントを統合し、両者で相互にポイントを付与・使用できるようすることだ。これによって、ネットで得たポイントが実店舗では使えない(あるいはその逆)という状況を解消できる。
店側から見れば、ポイントの統合とは会員情報の統合であり、オンライン・オフラインでの顧客属性や行動パターンを把握するための生命線となる。「ポイント統合はO2Oの基本中の基本で、まずそれをしないことには始まらない
」と林社長は強調する。
「通販系の企業では当たり前に行われている、顧客属性に応じた集客施策が、実店舗では行われていないケースが多く見られます。立地と品揃えさえ良ければ顧客が来てくれるという、放置的なビジネスをしているお店も多いのです。
しかし会員情報を統合化し、実店舗でも細部にわたって顧客の属性や行動パターンを把握できるようになれば、通販系企業と同じようなきめ細やかな集客施策が展開できるようになる。その結果がリピーターの増加、売上の増加につながっていくのです
」
そして2点目の要点として林社長が挙げたのが、実店舗側のスタッフの意識改革だ。
「地味ではありますが、実店舗のスタッフがネット上の自社のサービスを熟知することが大事です。顧客に自社のネット上のキャンペーンや品揃えについて質問されたとき、『わかりません』では話になりません
」
実店舗側のスタッフが自社のネット上の品揃えや在庫を熟知していれば、それこそオンラインとオフラインが有機的に結びついた、付加価値のあるサービスを提供できるようになる。
たとえば実店舗で顧客の希望する色の靴が在庫切れしていた場合、別の色の靴でサイズを合わせ、オンラインでの在庫を確認し、その場で購入してもらうことも可能だ。アパレル系の商品は、色やサイズは実店舗で確認したいが、商品の入手自体は後日でもいいと考えている顧客も少なくない。このため、在庫面での実店舗とネットの連携は、顧客にとっても魅力あるサービスになりえる。
実店舗とECサイトの連携策には「これが正解」というものはなく、企業や店舗、商品によってストーリーが異なってくる。
たとえば基礎化粧品は、同じブランドの商品が長期間にわたって愛用されることが多い。このような特性を持つ商品は、オンラインでも販売すれば、顧客にわざわざ来店してもらう必要はなくなる。また週末だけセールをやっている店舗であれば、ロイヤリティーの高い顧客に対してはその日を逃してもセール価格を適用するための電子クーポンなどを発行し、来店を促すという施策も考えられる。
いずれにせよスマートフォンの普及などによりO2Oの敷居は格段に低くなっている。大企業はもちろん、それこそ個人経営のECサイト・実店舗でも実践することが可能なのだ。
「本格的にO2Oをやろうとすると、POSシステムの刷新という話になりますから、多額の資金が必要です。しかしネットから実店舗に集客し、会員化するところまでは、それこそ街の小さなレストランでもできる。大事なのはその先で、自社の特徴や商品特性に合わせながら、『顧客にとってメリットのある施策』をいかに展開できるか。現状では王道はありません。トライ・アンド・エラー繰り返しながら、会員化したあとのストーリーを探っていってほしいと思います
」
最後に林社長はこのようにアドバイスしてくれた。
小売りの現場とECを融合するO2O最新事例を紹介
「ネットショップ担当者フォーラム2012」開催【参加費無料】
12月6~7日の東京有明TFTホールにおいて、ネットショップ運営成功の「本質」的手法を知るショップ担当者のためのイベント「ネットショップ担当者フォーラム2012」が開催される。
特別講演A1-1セッションには、株式会社ecbeing代表取締役社長の林雅也氏が登壇。O2Oを利用した最新ECサイト最新事例を紹介する。
- 主催:Web担当者Forum(株式会社インプレスビジネスメディア)
- 日時:2012年12月6日(木)・7日(金)/2日間、10:00~18:30
- 会場:TFTホール(東京有明) 【会場アクセス】
- 参加費:無料
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