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「ビバホーム」などのアークランズ、Salesforce B2C Commerceなど採用しSCSKと協働でシステム基盤を再構築

6ヶ月 2 週間 ago

ホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」などを運営するアークランズは5月27日、SCSKと協働し、ECサイト「ビバホーム公式オンラインショップ」のシステム基盤を再構築したと発表した。

アークランズによると、近年のホームセンター業界は商業施設の供給過多となり市場規模が横ばいで推移。新規出店による売上拡大戦略が見直され、OMOやオムニチャネル施策の推進を通じた顧客接点の強化、M&Aによる業界再編が進んでいるという。

アークランドサカモトがビバホームを吸収合併し、商号変更したアークランズ。合併前に各社で運営していたWebサイトやECサイトなどのIT資産や会員情報が統合できていなかったため、合併によるシナジー効果を十分に発揮できていなかったという。

そこで、アークランズは顧客1人ひとりの顧客体験を最適化するため、SCSKの展開するCXサービス「altcircle」を導入、協働をスタートした。

SCSKとの協働による具体的な取り組みは、①OMO・オムニチャネル施策とデジタルマーケティング推進に向けた基盤整備②サイト統合による業務効率化と買い物導線の改善③管理機能の刷新による業務効率化と商品ラインナップ強化④在庫情報の一元管理により売り逃しを防止するECを実現――に着手した。

OMO・オムニチャネル施策とデジタルマーケティング推進に向けた基盤整備

今回のEC基盤再構築で、「ECサイトでの取扱い状況の表示」「ECサイトで注文した商品の店舗受け取りサービス」など、店舗とECを連動させたOMO・オムニチャネル施策を推進していくための基盤が整ったという。

SCSKのデジタルマーケティング伴走サービスを活用し、顧客データを基点としたデジタルマーケティングを推進する体制作りも進めている。今後、店舗とECを連動させたさまざまなサービスを順次リリースしていくとしている。

サイト統合による業務効率化と買い物導線の改善

これまでは商品検索サイトとECサイトが独立して存在。商品マスタの機能も分散しており、メンテナンス工数の増加や精度の低下が課題となっていたという。EC基盤再構築により、この2つのサイトを新ECサイト「ビバホーム公式オンラインショップ」に統合。集客効率とメンテナンス性の双方の向上を実現した。

管理機能の刷新による業務効率化と商品ラインナップ強化

従来のシステムは商品登録や受注処理、在庫情報の更新時などに複数のシステムを操作する必要があり、オペレーションが複雑になっていた。

EC基盤の再構築では、各種管理機能を刷新し、一部の機能をサプライヤーに提供することで商品情報登録や在庫情報登録などのバックオフィス業務の効率化を実現した。これにより、これまで以上に豊富なラインナップの商品をECで購入できるようにした。

在庫情報の一元管理により、売り逃しを防止するECを実現

これまではそれぞれで管理していた自社EC・外部モール(楽天、Yahoo、Amazon)の在庫情報を一元管理することで、過受注および売り逃しを防止できるようになった。ECでの欠品リスクが低下し、顧客は常に最新の在庫状況のもとで安心して買い物ができるようにした。

基盤再構築に「Salesforce B2C Commerce」などを採用

今回のECシステム基盤再構築では、SCSKが提供するソリューションを導入した。採用したのはECフロントシステムが「Salesforce B2C Commerce」、ECバックオフィスシステムに「F.ACE」、モール連携システムに「PCS」「SCS」「StoreOMS」。

「ビバホーム」などのアークランズ、Salesforce B2C Commerceなど採用しSCSKと協働でシステム基盤を再構築
新ECサイト「ビバホーム公式オンラインショップ」システム構成図

【ECフロントシステム】Salesforce B2C Commerce

ヘッドレスAPIを活用し、今後の拡張性やAIを活用したパーソナライズレコメンドなど、最新トレンド・テクノロジーによる顧客体験向上を実現できる「Salesforce B2C Commerce」を採用しました。

【ECバックオフィスシステム】F.ACE

OMO・オムニチャネル施策推進に欠かせないさまざまな機能が標準搭載されている点、SCSKグループの自社開発ソリューションのため柔軟なカスタマイズに対応可能なことから「F.ACE」を採用したという。

【モール連携システム】PCS、SCS、StoreOMS

店舗、自社EC、楽天、Yahoo、Amazonの各チャネルの商品情報、在庫情報を一元管理し、リアルタイムで引当て可能な仕組みが作れる点、SCSKグループの自社開発ソリューションのため柔軟なカスタマイズに対応可能なことから採用を決定した。

アークランズの中計は「EC販売強化」「1to1販促・新会員制度」に言及

アークランズでは、今回のECシステム基盤再構築は、顧客を基点としたビジネスへの変革に向けたプロジェクトの第一ステップとしている。今後、会員基盤やスマホアプリの刷新などを進め、顧客にとっての「分かりやすくて便利」を実現できるよう、引き続きOMO/オムニチャネル施策の推進に協働で取り組むとしている。

アークランズでは2025年〜2027年にかかる中期経営計画を進めており、その中で事業戦略として「EC販売の強化」や「1to1販促・新会員制度」に取り組むとしていた。

「ビバホーム」などのアークランズ、Salesforce B2C Commerceなど採用しSCSKと協働でシステム基盤を再構築
EC販売の強化としては、商品ラインナップの改善と販路・販促の強化を図る(画像はIR資料を編集部がキャプチャ)

EC販売の強化としては、商品ラインナップの改善と販路・販促の強化をあげている。1to1販促・新会員制度については顧客ごとに最適化された販促の強化をあげ、パーソナライズされたサービス提供を行っていくとした。会員制度については2026年4月に刷新を予定しており、新たなポイントプログラムの導入やスマホアプリから全ての会員サービスを利用できるようにするなどに取り組んでいく。

「ビバホーム」などのアークランズ、Salesforce B2C Commerceなど採用しSCSKと協働でシステム基盤を再構築
2026年4月には新会員制度を開始する(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
鳥栖 剛

MFAは減少しても、オープンウェブ広告に最適化の余地

6ヶ月 2 週間 ago

アメリカの広告主協会は、プログラマティック広告透明性ベンチマーク調査の2025年第1四半期の結果を発表した。広告主が支出するプログラマティック広告費のうち品質基準を満たして消費者に届く正味の広告費の割合(TrueAdSpend Index)は41.0%で、2023年の初期調査より5ポイント上昇。広告費を品質基準を満たすインプレッション数(TrueImpressions)で割って算出したCPMと、すべてのインプレッション数で割って算出したCPMの差分(TrueCPM Index)は37.8%で、広告費の3分の1以上に最適化の余地があるといえる。

The ANA Releases Q1 2025 Programmatic Transparency Benchmark Study
https://www.ana.net/content/show/id/pr-2025-05-programmatic

noreply@blogger.com (Kenji)

Amazon Adsが始めたTwitchのコミュニティとブランドをつなぐ「Twitch Creator Sponsorships」とは

6ヶ月 2 週間 ago

Amazon Adsは5月30日、ライブストリーミングサービス「Twitch」のクリエイターとのコラボレーションを容易にするスポンサーシップソリューション「Twitch Creator Sponserships」を開始すると発表した。

Amazon Adsによると「Twitch」で配信される広告の視聴率は90%にのぼるという。新たなソリューション「Twitch Creator Sponserships」は、広告主と「Twitch」のストリーマー(配信者)が協業し、ストリーマーごとのコミュニティに対してアプローチができる内容をそろえた。最短2週間で展開可能。ソリューションは全てテンプレート化されており、広告主は手軽に複数のストリーマーにまたがるキャンペーンを迅速に展開できるようになる。

新しいスポンサーシップソリューションは次の通り。

チャネルスキン

スポンサーコンテンツの配信時にWebとモバイルの両方でビデオプレイヤーを囲むクリック可能な広告主のグラフィックを表示できる。ストリーマーが承認したオーバーレイは、配信を通じて表示される。「詳細はこちら」といったクリック可能なCTAを組み込んでおり、リアルタイムでのエンゲージメントを促進するという。スキンが表示されている間は、「Twitch」のナビゲーションパネルを通じてストリーマーのフォロワー全員にプロモーションされキャンペーンのリーチがさらに向上する。

ストリーマーのメッセージ読み上げ配信

ストリーマーがライブ配信中に自身の言葉で広告主のメッセージを読み上げる。ストリーマーの読み上げ配信は「Twitch」コミュニティがチャット欄に読み上げられたメッセージに関する感想などをリアルタイムに投稿するため、広告主はフィードバックを得る機会にもなるという。

スポンサーサブスクリプション

ブランドはストリーマーのチャネルにおいて期間限定で50%割引のサブスクリプションを提供することが可能。

フォロワープロモーション

広告主とパートナーシップを組んだ配信は、視聴者のフォローリストの最上部に自動的に表示され、需要なタイミングでの露出を最大限高める。プロモーション用タイルには、広告主のロゴとストリーマーの画像が表示でき、マウスオーバー時には割引コードなどのキャンペーン特典やインセンティブが表示されるという。

ストリーマーとのマッチングも支援

Amazon Adsでは、「Twitch」で活用するストリーマーと広告主のマッチングを促進する新ツール「Twitch Creator Machmaking」の提供も開始した。カテゴリー、視聴者層、地域、予算、過去のキャンペーン成果などの要素から広告主とストリーマーのマッチングを無料でサポートする。

「Twitch Creator Sponsorships」は他の全てのTwitch広告のフォーマットと同様にAmazon DSPを通じて販売される。Amazon DSPでは認知からコンバージョンまでマーケティングファネル全体を一元的に管理できる。

鳥栖 剛

「本業は洋服屋、お客さまが求める買い物体験を作り出す必要がある」。TSIがデジタル体験アナリティクスを導入した理由

6ヶ月 2 週間 ago

TSIはこのほど、TSIグループ公式オンラインストア「mix.tokyo」にデジタル顧客体験アナリティクスを導入した。ユーザーのデジタル体験を詳細に分析し、UI・UXの改善などにつなげていく。

導入したのはフランスの企業Contentsquareが提供する分析プラットフォーム「Contentsquare」(コンテンツスクエア)で、世界中の130万を超えるWebサイトが活用している。ユーザーが各ページにどのように接触しているかを確認できるなどユーザー行動を可視化、コンバージョンとエンゲージメントのためにコンテンツを最適化できるという。AIでこれまで見過ごしていた顧客体験の改善機会を発見。成果につながる施策をより迅速に実行できるようになるという。

TSIは2025年2月、34ブランドの公式オンラインストアをブランドモール型ECサイト「mix.tokyo」に集約したものの、これまでのブランドごとに閉じていた買い物体験と、今後「mix.tokyo」で提供していくブランド横断の購買体験の両立が課題になっているという。

また、前身のオンラインストア「MIX.Tokyo」から大きくリニューアルになったため、ユーザーインタフェース(UI)の最適化が行き届いていない部分が残り、改善の優先順位やインパクトがどうしても仮説の域を出ないという課題にも直面している。こうした状況を打破するため「Contentsquare」を導入した。

UI改善の現場では、感覚的にさまざまな視点で改善案が集まってくる。どれもその視点においては正しいと思えるものの、「最終的にどうするか?」の議論は感覚ではなく、アクティブユーザーが実際にどのように利用しているかに基づいて判断したいと考えている。「Contentsquare」によって、それを容易かつスピーディーに可視化できると期待している。(TSI)

TSIは「Contentsquare」を活用し、将来はモバイルアプリへの導入も検討する考え。導入プロジェクトは「Contentsquare」のパートナーであるソフトバンクが、TSIに対してマーケティング領域における支援を目的にソリューションを提供している。

ECサイトの利用ユーザーがどのような体験をして・どのような行動をとっているのかを高い解像度で可視化し、お客さまに対する理解度を深めたい。デジタル専門チームは、リニューアル直後の「mix.tokyo」を売り場としてより多くのお客さまに利用いただけるように常にアップデートをしていくのはもちろん、改めて「本業は洋服屋」であることを自覚して、お客さまが求める買い物体験を作り出す必要がある。「Contentsquare」の分析管理画面を見ることで、店舗のフロントに立つように、ECサイトというデジタル上の売り場でお客さまに何が起きているのか注視する。そうしたマインドをデジタル専門チームに醸成することを、今回のプロジェクトを通じて実現したい。(TSI EC事業統括部 副統括部長 岸武洋氏)

鳥栖 剛

店舗探しは「Googleマップ」「Google検索」が6割以上

6ヶ月 2 週間 ago

SEO対策やMEO対策サービスを展開するニュートラルワークスは5月30日、店舗探しの際の検索行動についての調査結果を公表した。それによると、店舗探しは口コミサイトを抑え、「Googleマップ」「Google検索」が活用されている。

店舗を探すときに最もよく使う手段

店舗(飲食店・美容室・病院など)を探す際に最もよく使う手段を聞いたところ、「口コミサイト」(58.0%)を抑え、「Googleマップ」と「Google検索」が同数(60.2%)でトップになった。「SNS」(26.7%)や「インフルエンサー」(10.2%)は比較的割合が低く、話題性や発見のきっかけとしては活用されるものの、意思決定の段階では地図検索やレビューの方が重視されている。

SEO対策やMEO対策サービスを展開するニュートラルワークスの調査 店舗探しは「Googleマップ」「Google検索」が6割以上
口コミサイトを抑えて「Googleマップ」「Google検索」がトップに

最近1年以内に「Googleマップで見つけた店舗に行った」か

「最近1年以内に『Googleマップで見つけた店舗に行った』ことはあるか」についても調査。過去1年以内に「Googleマップで見つけた店舗に実際に訪れたことがある」と回答した割合は3人に2人以上(64.5%)にのぼり、2人に1人(54.0%)は「複数回訪問している」と回答した。「探したことはあるが来店には至っていない」は21.6%、「一切ない」は13.6%だった。多くのユーザーがGoogleマップを経由して来店を経験していることがわかった。

SEO対策やMEO対策サービスを展開するニュートラルワークスの調査 店舗探しは「Googleマップ」「Google検索」が6割以上
64.5%が直近1年でGoogleで見つけた店舗に来訪

Googleマップを見る際、どの情報を重視するか

「店舗を探すときにGoogleマップを見ることがある場合、どの情報を重視するか」について、生活者が最も重視しているのは「星の数(評価)」がトップで59.3%。「口コミの内容や件数」(55.6%)、「写真(外観・内観・料理など)」(50.0%)が続いた。評価・口コミ・写真という三大要素が、店舗選びにおける信頼性を与えるために重要であることがわかった。なお、「Googleマップは見ない」の割合は全体の9.1%にとどまった。

Googleマップで情報が少ないときの行動

「Googleマップで、情報が少ない・口コミがない店舗を見たときの行動」についても聞いた。生活者の約2人に1人(43.3%)が「他サイトで追加情報を探す」と回答、約5人に1人(18.9%)は「行くのをやめる/他の店を探す」と回答した。十分な情報がないことで生活者が意思決定に時間を要しているなど、店舗側としては機会損失につながっている可能性があることがわかった。

SEO対策やMEO対策サービスを展開するニュートラルワークスの調査 店舗探しは「Googleマップ」「Google検索」が6割以上
情報不足の場合、約半数弱が他サイトで追加情報を探す

情報が充実している店舗の印象

情報が充実している店舗の印象は「安心感があり、第一候補にしやすい」(40.9%)が最も多くの回答を集めた。情報の充実は生活者にポジティブな印象を与え、来店意欲を高める効果があるとしている。特に評価が高く口コミ返信があり、写真が豊富な店舗は信頼性が高まり、競合店との差別化要因となっていると考えられる。

SEO対策やMEO対策サービスを展開するニュートラルワークスの調査 店舗探しは「Googleマップ」「Google検索」が6割以上
Googleマップ上の情報が豊富だと選ばれやすい傾向にある

調査概要

  • 調査日:2025年5月15日
  • 調査手法:インターネット調査
  • 調査対象:1年以内にインターネットを使って店舗検索(ジャンル問わず)を行った20~50歳代の男女(首都圏)
  • サンプル数:550人
鳥栖 剛

売上1330億円めざすファンケルのブランド改革。三橋新社長が語る「グループシナジー」「脱トップダウン」「新たな企業風土」 | 通販新聞ダイジェスト

6ヶ月 2 週間 ago
キリンの完全子会社となったファンケル。組織をどのようにかじ取りし、事業成長に導くのか。新社長に構想を聞く

ファンケルは昨年12月、キリンホールディングスの完全子会社になった。キリングループのノウハウを投入し、ブランドマーケティングの改革を進める。昨年12月、社長に就任した三橋英記氏に、改革の要諦を聞いた。

ファンケル 代表取締役 社長執行役員 三橋英記氏
ファンケル 代表取締役 社長執行役員 三橋英記氏

めざすは伸び伸びと意見を言える企業風土

――ファンケルの企業風土をどのように理解しているか。

就任後に従業員とのスモールミーティングを始め、これまで延べ200人ほどと対話した。「不の解消」という創業理念への共感度が高いことを実感できた。従業員の結束も強い。一方で、誰かが意見するとこれに同調するなど、ややもすると同質性バイアスが生じ、異なる視点から見る力は強くない。

組織マネジメントでは、経営層がその組織の特性を理解する必要がある。同質性バイアスに陥らず、組織をリードすることも私の役割だ。新卒・転職入社など異なる背景・経験を持つ従業員が多く、その多様性を力に変えることができれば、面白く変わる。

――従業員に求める意識の変革は。

若手も指示を素直に受け止め、意見を遠慮するなど上意下達の文化はある。一例として、対話のなかでも伝達型の会議スタイルが多いという声が聞かれた。

自らの疑問点や意見を述べる機会が少なく、時間の制約もある。今まで以上に、伸び伸びと意見を言える風土作りに向け、会議のグランドルール策定など、仕組みから変えている。

取締役会の廃止で企業ガバナンスも変わった。経営会議も起案書の事前配信で多くの時間をディスカッションに割くようにした。時間の効率をいかに高めるか、経営層から示していかないといけない。

強みはCRMのノウハウ

――ファンケルの完全子会社化の必要性は。

対等の精神による合併が成立するのは日本だけだ。海外の企業は、マイノリティ出資に全面的に協力できないなどシビアだ。海外でシナジー創出を図る上で必要だった。

――キリングループのヘルスサイエンス事業におけるファンケルの役割は。

一番の強みは、お客さまとの直接のつながりとCRMのノウハウだ。とくに健康食品領域では深い知見、ノウハウがあり、数字の面でもファンケルの成長が全体の成長をけん引する

――化粧品のブランドイメージとキリンの企業ブランドの親和性をどう捉えているか。

顧客から見たブランドイメージは、当面、ファンケルを中心に展開していく。内外ケアの訴求は健康と美容の両領域に親和性がある。

キリングループの協和キリンでは、アトピー性皮膚炎の医薬品が臨床試験の最終段階にあり、スキンケアとの親和性が高い。コスメ領域も強くしていきたい。

――海外展開における役割分担は。

中国は、グループのブラックモアズも展開するなど、進出国により状況は異なる。無理な融合を進めることなく、バックオフィスの経営効率化によりブランド投資の面でシナジーを創出できる。

――中期計画の見直しは行うか。

中長期の構想は、テーマを設けて議論しているが、中計について現時点で変更の考えはない。ただ、これだけ変化が早い中、3年前に建てた計画はあまり意味を持たない。キリングループも1年単位で見直すほうがより誠実という考えだ。

トップダウン経営から脱し、権限移譲へ

――ブランドマーケティングカンパニーへの変革を今期の重点課題にあげる。事業戦略とブランド戦略、チャネル戦略を統括するマーケティング部署を新設した目的は。

これまでは事業、会社への理解が深い経営者によるトップダウン経営だった。変化の早い時代、日常的にブランド戦略・チャネル戦略を見ている者の判断で効果検証、予算配分を迅速かつ機動的に進めるためにも、一定程度、権限移譲を進める必要がある

――ブランド戦略を担う「マーケティング戦略統括オフィス」の役割は。

事業間の連携を深め、PDCAサイクルを早く回す化粧品は、無添加というコンセプト、直販で顧客に寄り添い成長してきたが、ブランド育成の視点は強くはなかった。これまではブランドに対する信頼感をコーポレートと製品のどちらに貯めるかという整理もあまりできていなかった。

キリンは、ブランド戦略やKPI設定で一定のスキームを持つ。ブランドマーケティングの戦略と実行、資源・予算配分、能力開発など全体像を見直し、ファンケル自身も知見を高めていく

――通販など3つの販売チャネルを統括する「マーケティング推進統括オフィス」の役割は。

顧客視点のチャネルのすみ分けに課題があった。結果的に売り上げや顧客ロイヤリティの向上につながればよいが、各々が自部門の売上・利益を優先して自社内競合が生じ、とくに直営店がその影響を顕著に受けていた。顧客の購買行動、インバウンド動向の変化を見極め、期中でも機動的に予算配分等をリードする組織が必要だった。

製品だけでなく「byファンケル」の認知拡大へ

――ファンケルのブランド価値をどのように理解し、価値を高めていくか。

化粧品はビール、サプリメントは清涼飲料に近いように感じる。ビールの販売は大手数社の寡占。企業ブランドと製品ブランドの連関性が高い。ファンケルの化粧品も無添加に象徴される企業ブランドが効いている。一方の清涼飲料は、「午後の紅茶」の販売メーカーがどこかということはあまり意識されていない。

サプリメントも「えんきん」や「カロリミット」など製品ブランドが効いている。まず機能から入っている点で清涼飲料に近い印象だ。製品ブランドの認知は高く、当面はこれを磨くが、「byファンケル」という認知も大切にしたい

課題は「情緒的価値」の訴求

――ファンケルブランドの存在感は十分ある。何が不足しているのか。

よい製品を作っているが、ブランド価値、イメージを十分伝えきれておらず、コミュニケーションに課題があると感じている。無添加でイメージを確立してから2020年以上経つ。顧客調査でもブランド・製品の評価は安定しているが、突き抜けたものはない。「肌に優しい」という強みが同質化し、競合に対する優位性もなくなっている

長らく「無添加」を訴求ポイントにしてきたファンケルの化粧品(画像は「ファンケルオンライン」から追加)
長らく「無添加」を訴求ポイントにしてきたファンケルの化粧品(画像は「ファンケルオンライン」から追加)

加えて、化粧品業界は選択肢が多く、最近は韓国・中国コスメの台頭もあり、群雄割拠の市場だ。当社の主要顧客も高齢化が進み、新しい顧客層を開拓しきれていない。しっかりターゲットを定め、認知を際立たせる軸を決めなければいけない

酒類の営業をしていた頃、飲食店からよく「どうしたら繁盛するか」と相談された。一つは、コアターゲットの解像度を高くすることだ。“女性中心に”というところはまず流行らない。“半径2キロ以内に勤める20代の働く女性”に絞り、その満足度を追求すると突き抜けた店になる。

さまざまな項目で平均点をとってもそれでは手に取る動機にはならない。アンラーニングな問いを続け、強みを磨き、下期に変えられる準備を進めている

“無添加”ポジション獲得も、「次の挑戦が必要な時期」

――マーケティングにおいて、ファンケルは機能的価値の訴求は強いが、「情緒的価値」の訴求が弱いとの見解を示している。

家電製品は、機能差があり、同じ機能ならデザインを含めたブランド力で差別化を図る。一方、酒類・飲料で難しいのは、機能差があまりないことだ。機能差がないものを売る時に必要なのが商品・サービス、企業への信頼や愛着度(NPS)など情緒的価値であり、キリングループにノウハウがある。言い換えればブランド力だ。

ファンケルは無添加という機能差があり、それがブランド力になっていた。結果的に機能的価値で成長してきたといえる。言われるようにブランド力は十分だが、今のうちにテコ入れすれば、10年後も輝くブランドになる。無添加でポジションを築いたファンケルも当時の顧客は50代、そろそろ次のチャレンジが必要だろう。

ブランド価値の構築、全体戦略の再設計へ

――ブランドの見せ方も大きく変わるのか。

結論からいえば、現時点ではわからない。企業ブランドと製品ブランドは支援と貢献の関係にある。製品の販売にひもづき企業ブランドが向上するのが「貢献」、ファンケルだからこのサプリを買うというのが「支援」になる。

ブランド価値を企業・製品のどちらに貯めるのがよいか、相関の解析と仮説の検討を進めている。これまでも議論はあったが、どのタイミングで企業ブランドの向上を仕掛けるか、事業と広告が分断され、戦略的に動けていなかった。整理を含め全体戦略をデザインし直す

――販売チャネルの役割分担は。

本来はブランドをどういう状態にするかを念頭に置くが、インリスト中心に顧客を想定する組織風土がある。通販は今も重要な屋台骨で、日本でいち早く置き配を始めた会社でもある

だが、顧客はインリストだけではない。外部ECの比率向上など購買行動の変化、ターゲットを見極めた上でマルチチャネルの強みをどう生かすか、マインドセットを変える議論を今年2月から先行して始めている。5年後、10年後に通販が重要なチャネルか、過去の成功事例に対するアンラーニングの問いを続けている

オーダーメイドサプリを訴求強化

――オーダーメイドサプリ「パーソナルワン」を象徴的商品として打ち出す。発売から5年経つが、製品の存在感は弱い。

確かにインパクトのある事業規模には成長していない。ファンケルの技術力や先進性、サプリメントに対する知見や造詣の深さを象徴する製品になり得るが知られていない。今後、マーケティングは、パーソナル化が進むのは間違いない。その中で、尿検査や問診、生活習慣の傾向から10億通りのパターンを提案してくれる製品は非常に先進的だ。マス展開には向かないが、健康意識の高い層にアプローチしていきたい

ファンケルの「パーソナルワン」(画像は「ファンケルオンライン」から追加)
ファンケルの「パーソナルワン」(画像は「ファンケルオンライン」から追加)

――抗老化に働きかける新製品への期待は。

研究・商品発表後の報道の反響からも期待値は高い。独自の製法に強みがあり、将来的により強固な機能性表示もめざす。ただ、機能的価値をうまく伝えきれていない点は、キリングループのノウハウを活用したい

ファンケル中計、売上高1330億円めざす

ファンケルは、中期計画の最終年度(2026年度)に、売上高1330億円を計画する。国内は年平均約6%、海外は同約12%の成長率をめざす。昨年末にキリンホールディングスが完全子会社化した。中計の見直しは行わないが、1年単位で、細部の方針・戦略の見直しを行う

2026年度を最終年度としたファンケルの中期経営計画(画像はファンケルグループの2024年3月期(通期)IR資料から追加)
2026年度を最終年度としたファンケルの中期経営計画(画像はファンケルグループの2024年3月期(通期)IR資料から追加)
2026年度を最終年度としたファンケルの中期経営計画における重点テーマ
2026年度を最終年度としたファンケルの中期経営計画における重点テーマ

まずは、国内の基盤を固める。国内売上高は2023年度比約180億円増の1182億円を計画。化粧品は、年平均約6%の成長(海外を含む)を計画する。

スキンケアは顧客の世代・販売チャネル拡大

強みを持つスキンケアは、年代別のブランド展開を変え、「肌不調」というブランドの提供価値を明確化して、各世代にアプローチする。スペシャルケア品やメイク品のクロスセルも強化。キッズや男性など新領域も開拓する。アテニアは、30代、50代へのアプローチを強化するほか、販売チャネルを拡大する。

健食は単品に依存しない設計

健康食品は、国内で年平均約6%の成長をめざす。「個別の悩みケア」で40~50代女性を中心に顧客基盤を築いてきた。今後は、「日常の健康対策」など習慣化しやすい製品を中心に、単品に依存しない商品ポートフォリオを構築。年間購入額・継続率が高いプレシニア層(55~64歳)の開拓を進める。一環で、今年4月に、抗老化ケアの大型製品を発売した。

2025年4月に発売した、「抗老化」に着目している機能性表示食品「ウェルエイジ プレミアム」(画像は「ファンケルオンライン」から追加)
2025年4月に発売した、「抗老化」に着目している機能性表示食品「ウェルエイジ プレミアム」(画像は「ファンケルオンライン」から追加)

キリンのノウハウを投入

今期(2025年12月期)の重点課題に「ブランドマーケティングカンパニーへの変革」を掲げる。化粧品・健食の各事業部門等を統括する「マーケティング戦略統括オフィス」、通販・店舗・流通の各販売チャネルを統括する「マーケティング推進統括オフィス」を新設。

昨年、キリンビバレッジで「生茶」のブランド価値向上を目的にリニューアルを手がけた人物をマーケティング統括部門の責任者に据え、キリングループが持つブランド戦略のノウハウを投入する。

三橋社長は、ファンケルはマーケティングにおいて、「機能的価値」の訴求に強みがあるが、顧客に動機づけする「情緒的価値」の発信が弱いとみている。

海外はアジア圏を中心に拡大

国内事業で稼ぎ出したキャッシュは、海外投資に回す。海外売上高は同約40億円増の147億円を計画する。中国・ASEANを中心に展開。ファンケル化粧品は、戦略の再構築を進める。健食は、年平均16%の成長を計画する。中国向け一般貿易をはじめ、今期に高級スーパー、薬局に販路を広げる

キリンホールディングスのヘルスサイエンス事業は、2030年に3000億円の売り上げ収益、300億円超の事業利益を計画している。ファンケルは中心的役割を果たし、事業を酒類に続く収益の柱に育てる。

※記事内容は紙面掲載時の情報です。
※画像、サイトURLなどをネットショップ担当者フォーラム編集部が追加している場合もあります。
※見出しはネットショップ担当者フォーラム編集部が編集している場合もあります。

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通販新聞

マーケットエンタープライズ、生成AIの業務利用率9割、年換算7.5万時間の業務時間削減効果

6ヶ月 2 週間 ago

リユースECなどを手がけるマーケットエンタープライズは、業務効率化や生産性向上・社員のAIスキル向上を目的に、生成AIの積極的な活用をグループ全体で推進している。2025年4月に実施した社内のアンケートでは、生成AIの業務利用率が9割を超え、年間で7万5000時間以上の削減が見込まれるという結果となった。

マーケットエンタープライズは、生成AIの積極的な活用による業務効率化と生産性向上を目的とし、全社的な取り組みを段階的に推進してきた。具体的な取り組みは次の通り。

  1. 社内プロジェクトの発足とナレッジ共有で浸透を加速
  2. 生成AIを用いた有料版ツールを導入
  3. RAGを活用した業務マニュアル検索システムの試験運用を開始
  4. インサイドセールス研修に対話型のAIロープレを導入
  5. AIエージェント活用の営業アシスタント開発を開始
  6. Gemini活用事例を社外イベントで共有

①社内プロジェクトの発足とナレッジ共有で浸透を加速

社内公募で若手からベテランまで業務役割が異なる46人が挙手し、社内プロジェクト「生成AIプロジェクト」を発足。動画を用いながら、生成AIの活用事例や有効的なプロンプトなどのナレッジを共有し、生成AIの業務利用浸透につなげた。

②生成AIを用いた有料版ツールを導入

全社員を対象に「Google Gemini」有料版ツールを導入し、日常的業務での積極的なAI活用を推奨。

③RAGを活用した業務マニュアル検索システムの試験運用開始

ネット型リユース事業のスタンダートを確立するための4冊、1000ページ以上に及ぶオリジナルガイドブックの内容や商材・コンプライアンスに関する情報をRAGにアップロードし、情報へアクセスするまでの時間短縮に成功。加えて、社内規定や証明書発行手続き、転居の申請に関する情報を統合することで問い合わせを削減し、バックオフィス業務の効率化を図った。

④インサイドセールス研修に対話型のAIロープレを導入

Sapeet社のAIロープレシステムを導入し、インサイドセールス職の営業力強化を図るとともに、研修運営に関わる管理者負担を約30%削減した。

⑤AIエージェント活用の営業アシスタント開発を開始

東大松尾研発スタートアップのWanderlust社とAIエージェントを活用した営業アシスタントの共同開発を開始。優秀なインサイドセールスのノウハウを解析し、質問の仕方やトークスキルを学べる教育・フィードバック機能を整備することで、営業スキル向上によるサービス品質や買取率の向上をめざす。

⑥Gemini活用事例を社外イベントで共有

全社的に積極的なAI活用を推進したことで、2025年4月には、Geminiの利用率が高いユーザーとして、「生成AIで業務を加速!Google Workspace with Gemini 活用事例共有 ユーザー会」から招聘された。イベントにスピーカーとして登壇し、Gemini活用事例のプレゼンを実施した。

マーケットエンタープライズではそのほか、オフショア開発の拠点であるMEベトナムでもGitHub Copilotなどをシステム開発に積極的に活用するなど、日常的なAI利用の促進を進めている。

業務効率化効果としてひと月で6268時間を捻出

このような取り組みの結果、2025年4月にマーケットエンタープライズグループ社員に実施した社内アンケートでは、業務時に生成AIを月に数回以上利用すると回答した社員の割合は95.18%と、高い頻度での活用が確認できた。

マーケットエンタープライズ、生成AIの業務利用率9割、年換算7.5万時間の業務時間削減効果
生成AI活用率は95%超

生成AI活用推進による業務効率化の成果としては、2025年4月には、ひと月で6268時間もの時間を捻出することに成功。年間の効果として試算すると7万5216時間もの時間を効率化したことになる。調査を開始した2024年10月と比較すると、削減想定時間はおよそ2.4倍、新たに捻出できた時間は4万4364時間となったという。

マーケットエンタープライズ、生成AIの業務利用率9割、年換算7.5万時間の業務時間削減効果
時間削減効果は年間で7.5万時間を超える試算に
鳥栖 剛

マーケターの6割「AI Overviewsによる自然検索流入減」を実感、9割がSEO戦略見直し【Google検索のAI要約の影響調査】

6ヶ月 2 週間 ago

キーワードマーケティングが実施した「AI Overviewsが従来の自然検索流入や検索広告に及ぼしていると思われる影響に関する調査」によると、約6割のマーケターが2025年3月以降「AI Overviews(AIによる概要)」の影響で、自社サイトの自然検索流入が減少したと回答していることがわかった。調査対象は、日本在住で自社のWeb広告の運用およびSEOに携わっているマーケティング担当者325人。調査期間は2025年5月13~14日。

約9割が「AIOverviews」を理解。55.7%が「非常に高い関心があり」

Google検索で表示されるようになった「AI Overviews」機能について、どの程度知っているかを聞いたところ、最も多かったのは「機能の概要を理解している」が45.2%、次いで「機能の仕組みや影響まで詳しく理解している」が44.9%だった。

「AI Overviews(AIによる概要)」機能をどの程度知っているか
「AI Overviews(AIによる概要)」機能をどの程度知っているか

自社の集客やマーケティング活動全体への影響という観点から、「AI Overviews」に対する関心度を聞いたところ、最多は「非常に高い関心がある」で55.7%、次いで「やや関心がある」が41.2%だった。

「AI Overviews」に対する関心度
「AI Overviews」に対する関心度

重視するSEO指標は「自然検索経由のCV数」

現在、自社で最も重視しているSEOの成果指標を聞いたところ、最多は「自然検索経由のコンバージョン数(問い合わせ、購入など)」(32.9%)、次いで「特定キーワードの検索順位」(26.2%)だった。

現在最も重視しているSEO成果指標
現在最も重視しているSEO成果指標

約6割が自社サイトへの流入数の減少を実感

2025年3月以降、「AI Overviews」の影響で、自社Webサイトへの自然検索からの流入に変化を感じているかを聞いたところ、「明確に減少したと感じている」(19.4%)「減少したと感じている」(42.5%)が合計61.9%、「増加したと感じている」(12.9%)「明確に増加したと感じている」(2.2%)が合計15.1%だった。「特に変化は感じない」は21.5%。

「AI Overviews」の影響で自社ウェブサイトへの自然検索からの流入に変化を感じているか
「AI Overviews」の影響で自社ウェブサイトへの自然検索からの流入に変化を感じているか

約6割がSEO施策のリソース見直しを既に開始。対策の最多は「FAQや構造化データの追加・最適化」

「AI Overviews」の登場以降、自社でSEO施策に割いていたリソースを見直す動きがあるかを聞いたところ、最も多かったのは「見直しを始めている」(57.8%)で、次いで「既にリソース配分を変更した」(33.2%)だった。

自社でSEO施策に割いていたリソースを見直す動きがあるか
自社でSEO施策に割いていたリソースを見直す動きがあるか

「AI Overviews」の登場以降、「既に(SEO施策に割いていた)リソース配分を変更した」と回答した担当者に、具体的に実施・検討している変更や新たな取り組みについて聞いたところ、最多は「FAQや構造化データ(FAQページ、HowToなど)の追加・最適化」(57.4%)、次いで「自社独自のデータ・一次情報を活用したコンテンツ作成」(46.3%)「見出しやページ構成などの情報設計の見直し」(42.6%)だった。

具体的に実施・検討している変更や新たな取り組み
具体的に実施・検討している変更や新たな取り組み(複数回答可)

約9割が「AI Overviews」への広告挿入に関心あり

「AI Overviews」への広告挿入に対する関心度は、「やや関心がある」が最多で52.3%。次いで「非常に高い関心がある」が40.9%だった。

「AI Overviews」への広告挿入に対する関心度
「AI Overviews」への広告挿入に対する関心度

約7割が検索広告で「AI Overviews」の影響あり。特定語句の表示回数・クリック数の減少が顕著

自社で現在配信している検索広告について、2025年3月以降、「AI Overviews」の影響を受けていると感じるかを聞いたところ、「やや影響を受けている」が52.3%、続いて「強く影響を受けている」が19.7%で、合計すると約7割が「影響を受けている」と回答している。

2025年3月以降、自社で配信している検索広告が「AI Overviews」の影響を受けているか
2025年3月以降、自社で配信している検索広告が「AI Overviews」の影響を受けているか

検索広告にて「AI Overviews」の影響を「強く影響を受けている」「やや影響を受けている」と回答した担当者に、具体的にどのような影響を感じているかを聞いたところ、最多は「特定語句における広告の表示回数、クリック数の減少」で66.7%、次いで「特定語句における広告の表示回数の減少」が47.0%、「リスティング広告全体の表示回数の減少」が32.5%だった。

検索広告に関する「AI Overviews」の具体的な影響
検索広告における「AI Overviews」の具体的な影響(複数回答可)

「AI Overviews」による影響を受けているという確信はあるかを聞いたところ、最多は「ある程度の確信がある」が53.0%、続いて「強い確信がある」が43.2%で、合計すると約9割が「確信がある」と回答した。

「AI Overviews」による影響を受けているという確信はあるか
「AI Overviews」による影響を受けているという確信はあるか

キーワードマーケティングは「技術の進化によりマーケティング環境が急速に変化している。そうしたなかで明確な手法が定まっていない現在、市場動向を注視しながら実験を重ねる企業が新たな機会を掴むのではないか。当面は既存施策を維持しつつ、R&D的な取り組みを並行して進めるバランスが求められる時代だ」と考察している。

調査概要

  • 調査期間:2025年5月13日~14日
  • 調査対象:日本在住で自社のWeb広告の運用およびSEOに携わっているマーケティング担当者325名
  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査機関:IDEATECH
大嶋 喜子

NTTドコモとマガシークが展開の「d fashion」、下落傾向からのV字回復。その要因は?

6ヶ月 2 週間 ago

靴やアパレルのECサイト「LOCONDO.jp」やファッションモール「MAGASEEK」「d fashion」を運営するジェイドグループは5月29日、「d fashionの改革進捗に関して(速報値)」を発表。改革策が功を奏し「d fashion」は下落傾向からのV字回復基調にあると公表した。

ジェイドグループは2024年3月にマガシークを子会社化。マガシークが運営するECモール「MAGASEEK」は株式を取得した段階で「d fashion」の取扱高の半分程度となり、「d fashion」の売り上げも下落傾向にあった。2022年3月以降、「d fashion」は前年同月比割れが常態化。2023年1月以降は一度も前年同月比を上回ることがなかったという。 ジェイドグループでは経営改革を進めるために2024年6月から物流統合と商品連携の準備に着手。ただ、組織統合に伴う混乱なども生じ、前年同月比をさらに割ってしまう月も続いた。

紆余曲折を経ながらも2024年11月から物流統合と商品連携が順調にスタート。2025年3月から「d fashionデー」を主とするマーケティング改革やデザイン見直しにも着手した。これらの改革策が奏功し2024年11月以降は前年同月比は回復基調に転じ、2025年4月は前年同月比96%、5月は5月28日段階で同109%(同日比、出荷額ベース)で推移していると明らかにした。

やアパレルのECサイト「LOCONDO.jp」やファッションモール「MAGASEEK」「d fashion」を運営するジェイドグループは5月29日、「d fashionの改革進捗に関して(速報値)」を発表。改革策が功を奏し「d fashion」は下落傾向からのV字回復基調にあると公表した。
「d fashion」の前年同月で比べた売上伸張率

「d fashion」改革の最終ゴールである「システム完全統合(100%内製化)」に関しては、早くて2025年6月を予定していたが、一部の仕様変更に伴い、完全統合は2025年9月を予定している。完全統合後は大幅なUI/UXの見直し、出店ショップも色・SKU単位での細かな販売促進が可能になり、さらなる取扱高増が見込めるとしている。

鳥栖 剛

失敗”や“炎上”からの大逆転! ECの「しくじり事例」から学ぶ成長のヒント【しくじりECカンファレンス6/23開催】

6ヶ月 2 週間 ago

しくじりECカンファレンス実行委員会は、企業の「失敗」をテーマにしたオフラインECセミナー「しくじりECカンファレンス 失敗から逃げなかった企業が変えた未来」を2025年6月23日(月)に開催する。

「しくじりECカンファレンス 失敗から逃げなかった企業が変えた未来」の詳細と申し込みはこちら

「しくじりECカンファレンス」では、「失敗は成功の母」をテーマにしたセミナー。失敗学の第一人者であるバブソン大学の山川恭弘准教授、日経テレ東大学から再起を果たした「ReHacQ」の高橋弘樹氏を迎え、実際のビジネスでの「失敗事例」を徹底分析する。

また、「Shopify」パートナー企業が経験したEC事業の「しくじり」と、それを乗り越えたV字回復の具体的な事例を共有。「失敗から逃げなかった企業抱えた未来」を学び、成功のヒントにつなげる。

しくじりECカンファレンス

講演プログラム(タイムテーブル)

  • 13:00~13:30:開場
  • 13:30~13:40:オープニングトーク
  • 13:40~13:45:神田明神 祈祷

【13:45~14:30:Keynote Speech】
しくじりをチャンスに変える組織文化とは──長期的成長を導くリーダーの条件
目先の失敗より、その後の成長を重視する経営視点とは 「失敗の許容」が競争優位になる時代──企業文化としてのレジリエンス

登壇者

バブソン大学 アントレプレナーシップ准教授 山川恭弘氏
バブソン大学 アントレプレナーシップ准教授 山川恭弘氏

【14:30~14:50:Session1】
EC導入検討からしくじりは始まっている!?Shopifyで実現できる従来型開発からの脱却~推定数億円のコスト抑制と導入スピード大幅アップ!~

大手生活用品メーカーが新規ビジネスのEC開発を検討した際、最初にぶつかったのは「社内ルールや複雑な要件により、見積もりが数億円、導入期間も長期に及ぶ」という各社提案の現実だった。最初の一歩を踏み出すための検討段階であるにも関わらず、既にプロジェクトは“しくじりの入り口”に立っていたのだ。従来の要件整理・ウォーターフォール型開発を前提とした提案が行われたが、最終的に選ばれたのはShopifyによるスモールスタート型の提案だった。

必要最低限の機能からスピーディに始め、段階的に拡張していくスタイルは、まさに“しくじり”を未然に防ぐ選択肢だったと言える。

セッションでは「なぜその選択が勝ったのか?」「大久保氏たちは何をしくじったのか?」を、実際の提案過程を交えて、従来型開発の限界と今後の提案に求められる“全体最適”の視点について、赤裸々に話す。

登壇者

NSW サービスソリューション事業本部 クラウドプラットフォーム事業部 アドバンスドディベロップメント部 大久保勝氏
NSW サービスソリューション事業本部 クラウドプラットフォーム事業部 アドバンスドディベロップメント部 大久保勝氏

【14:50~15:10:Session2】
成功への逆転劇 Shopify × BiNDecで描く“壁を突破する”リカバリーモデル

「売上低迷」「仕組みの限界」「不可避な環境」―― 変化の著しい時代のなかで、事業転換やブランド再構築を迫られたEC事業者は、いかにしてその“壁”を乗り越えたのか。ShopifyPremierパートナーであるBiNDecが導いた実例とともに、“全体最適型のコマース設計”だからこそ柔軟に対応できる事業成長モデルの実践プロセスに迫る。

登壇者

ウェブライフ 代表取締役 山岡義正氏
ウェブライフ 代表取締役 山岡義正氏

【15:20~15:40:Session3】
「事業の失敗の半分はKPI設計が原因」~10年間前年割れ事業を3年で+25%のV字回復へ~

事業の成長が頭打ち、もしくは下降トレンドに入ってしまった際、皆さんはどのような対策を講じるだろうか? 商品を刷新する、サイトのUIを変更する、新しい広告を試す…そのどれもが正解かもしれないしまったく効果がないかもしれなし。つまり、足元でできることの積み上げをするのでは事業成長はコントロールできないということ。

成長を阻害する要因は何なのか、どのKPIをどれくらい伸ばしたら事業にはどんなインパクトが出るのか。そういったことをKPIとして可視化することで初めて、事業成長につながる施策の輪郭が浮かび上がる。

講演ではさまざまな事業のターンアラウンドに成功したKPI設計の要諦について説明しながら、shopifyの優位性について解説する。

登壇者

RESORT 代表取締役CEO 石川森生氏
RESORT 代表取締役CEO 石川森生氏

【15:40~16:00:Session4】
不確実な未来に向けて正しくチャレンジし、正しく失敗するためのマネジメントアプローチ(仮)

これまでとは異質なスピード感で変化する事業環境や消費行動のなかでは、“これまでの成功体験が通用しない”世界が現実のものとなってきた。このような時代のマネジメントにおいては、チャレンジをさせながら一定の失敗を許容することが大事になるものの、正しくチャレンジをするためには、視座や考え方を改めて見つめ直して行く必要があると渡辺氏は考えている。

渡辺氏が事業会社の役員とSI企業のマネージャー経験で実践しているリアルなマネジメントアプローチについて解説する。

登壇者

TIS エンタープライズサービス事業部 副事業部長 渡辺啓之氏
TIS エンタープライズサービス事業部 副事業部長 渡辺啓之氏

【16:05~16:40:パネルディスカッション】
なぜ、あの会社は立ち直れたのか?──V字回復できた企業とできなかった企業の分岐点

登壇者

  • NSW 大久保勝氏
  • ウェブライフ 山岡義正氏
  • RESORT 石川森生氏
  • TIS 渡辺啓之氏
  • バブソン大学 山川恭弘氏(モデレーター)

【17:00~18:00:特別セッション】
「転んでも立ち上がるリーダーたちへ──挑戦の流儀」(仮)

登壇者

ReHacQ 高橋弘樹氏
ReHacQ 高橋弘樹氏と「イモトのWiFi」「にしたんクリニック」の西村誠司氏が登壇
  • 18:15~19:00:ネットワーキング

「しくじりECカンファレンス」について

  • イベント名:しくじりECカンファレンス 失敗から逃げなかった企業が変えた未来
  • 日時:2025年6月23日(月)13:00~19:00
  • 会場:神田明神ホール(東京都千代田区外神田2-16-2 神田明神文化交流館2F)
  • 参加人数:400人
  • 開催形式:現地開催(完全オフライン)
  • 参加費:無料
  • 詳細と申し込みhttps://shikujiri-ec-conference.jp/
藤田遥

EC化の進展などで物流工程における流通加工市場規模は2024年度1兆1100億円の見込み

6ヶ月 2 週間 ago

矢野経済研究所は5月28日、国内の物流工程における流通加工市場を調査し、結果を発表した。それによると、2024年度の物流工程における流通加工市場の規模は1兆1100億円の見込みとした。

物流工程において、製品・商品の価値を高めるために主に倉庫内で行われる作業(製品・本体に対して行われる作業や、数量・容量・単位を変更する作業、外装などに対して行われる作業など)を対象に市場規模を算出した。

2023年度の物流工程における流通加工国内市場規模(事業者売上高ベース)は1兆800億円と推計。矢野経済調べの物流総市場規模である23兆4015億円(2023年度見込み)のうち、4.6%を占める規模となった。2030年度には1兆3100億円規模まで到達すると予測している。

矢野経済研究所は5月28日、国内の物流工程における流通加工市場を調査し、結果を発表した。それによると、2024年度の物流工程における流通加工市場の規模は1兆1100億円の見込みとした。
物流工程における流通加工国内市場規模予測

市場動向として、近年サプライチェーンの上流から下流まで、ワンストップサービスを提供する物流事業者が増えていると指摘。単なる輸送や保管といった従来型の物流機能(入出庫作業や保管業務など)だけではなく、流通加工などの付加価値サービスも組み合わせた一気通貫の物流サービスの提供で、効率的で最適な物流体制を構築しているとした。

輸送や保管が主要業務となる物流業において、流通加工は物流機能拡大の一翼を担い、サプライチェーンの最適化を促進し、付加価値の創出に資する要素として注目されているとした。注目される背景として次の4つをあげている。
  1. 国内貨物輸送量の減少
  2. 輸送効率化ニーズの拡大
  3. 倉庫自動化の進展
  4. EC化の進展
物流事業者にとって流通加工の重要性が高まっている背景
物流事業者にとって流通加工の重要性が高まっている背景

物流工程における流通加工ニーズは、メーカーや小売業などの荷主企業が担っていた作業にも業務領域を拡大することで、従来型の物流業務以上の伸びが期待される。調査では規模拡大に向けたポイントは、「サプライチェーンにおける流通加工の最適化」と指摘。荷主企業は、輸送効率、保管効率、作業効率、貨物量の適正化、製品・商品の価値向上(差別化)、リードタイム、作業人員の確保など、複数の要素を考慮して、全体最適の観点から業務の最適化を判断することが求められるとした。

矢野経済では、これからの物流事業者の流通加工は、単なる請負作業にとどまらず荷主企業の課題やニーズを把握し、サプライチェーン全体の効率化を推進する提案型ビジネスへと進化し、より一層拡大していくものと考えると総括した。

調査概要

  • 調査期間:2025年2月~4月
  • 調査対象:国内有力物流事業者など
  • 調査方法:矢野経済研究所の専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査、文献調査併用
鳥栖 剛

バスクリンがEC売上115%成長を達成できたワケとは? Web強化戦略、通販事業の歩みなどを聞いた

6ヶ月 2 週間 ago
バスクリンでは通販事業における広告費の約7割をWebに投下し、ECの成長を加速させている。成長の背景について、ECシステムのリニューアルを支えた「EBISUMART」提供企業とのディスカッションと併せて解説する
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入浴剤メーカー・バスクリンの通販事業が近年、堅調な成長を見せている。通販限定で展開する育毛剤などの商品が売り上げをけん引し、Web戦略の強化を背景にEC売上も順調に推移しているという。バスクリンの通販事業の歩み、Web戦略強化の経緯などについて取材した。

インターファクトリー 取締役 クラウドコマースプラットフォーム事業責任者 兼井 聡氏(左)、バスクリン マーケティング本部 グロースマーケティング部 部長 相浦多美子氏(右)

通販事業を第二の柱に

バスクリンの前身である津村順天堂(現・株式会社ツムラ)の創業は、1893(明治26)年。創業当初から現在に至るまで、100年以上にわたり生薬の研究開発に取り組んできた。その知見を生かし、通販・ECにおいては、バスクリンならではの生薬を配合した通販専用商品を展開している。主力の女性向け育毛剤「髪姫(はつひめ)」と男性向け育毛剤「髪殿(はつとの)」を中心に、通販専売の化粧品や薬用入浴剤を展開する。

通販事業は2008年にスタート。流通チャネルでは扱わない自社通販専用商品を展開し、バスクリンの第二の柱となる事業へと成長している。

商品の差別化ポイントは、「研究開発へのこだわり」「生薬の組み合わせによる相乗効果」だ。価格訴求はとらず、生薬研究の実績や製品開発への想いを丁寧に伝えることで、顧客の信頼と支持を獲得している。

獲得チャネルは新聞の15段広告をメインに、テレビでのインフォマーシャルやラジオなど、オフライン施策を中心に展開してきた。最近では、通販事業の広告費の約7割をWebに投下し、Web上での顧客接点の強化を進めている。注力している商材の売り上げも伸長しており、ECでの売上比率は、全体の約10%を占めているという。

バスクリンの通販事業のビジネスモデルは、いわゆる「単品リピート型通販」。定期購入では、2か月に1回の商品発送時に会報誌を同封し、自社研究所の紹介や研究内容、商品の特長など、きめ細かな情報の発信を心がけている。顧客の年齢層は50〜70代が中心で、10年以上にわたって定期購入を続けている顧客も少なくない。男女比は、およそ男性4:女性6で、近年はWebでの集客を開始したことで、男性顧客の割合も増加傾向だという。

定期購入のアップセル、主力は「電話」

バスクリンの定期購入の社内処理は少々特殊だ。F2購入以降のすべての購入分を定期購入の成果として扱い、ECサイトからの初回購入分のみをEC売上として計上している。

バスクリンの定期購入は電話でのアップセルを基本としており、初回購入後に電話による定期購入のアップセルを実施し、引き上げにつなげるためだ。

電話での接続率は非常に高く、電話口では商品説明や弊社の生薬研究へのこだわりを丁寧に伝えることで、お客さまに納得いただいたうえで継続購入につなげている。Webからの流入顧客においても電話の接続率は高い。(相浦氏)

バスクリン マーケティング本部 グロースマーケティング部 部長 相浦多美子氏
バスクリン マーケティング本部 グロースマーケティング部 部長 相浦多美子氏

Web集客では、生薬研究の強みなど商品開発に関する訴求を重視しており、価格訴求は行っていない。この戦略が奏功していると考えられる。相浦氏は「価格訴求ではなく、商品への理解や継続の重要性をご理解いただいているお客さまが多いため、電話接続率も高いのではないか」と分析する。

そのほか、紙のDMを活用したステップメールも実施し、顧客の引き上げにつなげている。F2転換率も高く、電話による丁寧なコミュニケーションでの商品説明や、それによる安心感の提供が顧客の支持を集めているようだ。さらに休眠顧客からの復活購入も多く、「バスクリン以外の商品を試された後でも、再び弊社の商品をご利用いただくケースも多い」(相浦氏)。休眠からのリピート率はさらに高い数値となっている。

運営体制は少数精鋭。そのチーム体制とは?

バスクリンの通販事業は運営体制も特徴的だ。数名の社内メンバーと外部パートナーの力を融合させたチーム体制を構築し、バスクリンの通販チームとして運営している。

社内のメンバーは少人数の少数精鋭体制だが、通販データの分析や集計をしながら、外部のメンバーと連携して運営している。(相浦氏)

バスクリンがWeb強化に本格的に乗り出したのは2021年頃。以前よりECサイトは構えていたものの、「メイン顧客の年齢層が高いこともあり、オフラインを主戦場としていた。そのためECには十分に注力できていなかった」(相浦氏)。そこで2018年に「EBISUMART」を導入し、従来のECサイトを刷新。その後、Webを活用した施策強化を進め、現在ではEC売上が毎年前年比約115%のペースで成長をするなど、好調に推移している。

バスクリンが「EBISUMART」を選んだ理由と今後の展望

バスクリンがセキュリティ強化など、EC周りの整備を進めていくなかで選んだプラットフォームが、インターファクトリーの提供するクラウドコマースプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」だった。

EBISUMART
インターファクトリーが提供する「EBISUMART

バスクリンが掲げる、さらなるEC強化に向けた方針とは? システムリニューアルの経緯と今後の展開を、バスクリンと、「EBISUMART」を通じてバスクリンをサポートするインターファクトリーが対談する。

2018年にECサイトを一新

――通販事業を開始したタイミングで構築し、Webで流入するお客さまの“受け皿”として機能していたECサイトを、「EBISUMART」導入で刷新したのは2018年。その後、ECの強化をスタートしたのが2021年です。その経緯を教えてください。

インターファクトリー 取締役 クラウドコマースプラットフォーム事業責任者 兼井 聡氏(以下、兼井氏):バスクリンさまはECサイトの役割について、「リピート施策を重視して運用する」というよりも、Webから流入する顧客をキャッチアップする「最初の入り口の部分の機能を果たす」ことを主眼に置いて、ECプラットフォームの選定を進めていたと記憶しています。

兼井氏:F2転換などリピート施策は基幹システム側で管理するため、ECサイトのフロント部分は新規顧客の獲得施策をスピーディに動かせるようにすることが重要視されていました。バスクリンさまは従来、自社にサーバーやネットワーク機器を設置して運用するオンプレミス型のシステムを採用し、随時メンテナンスを行う体制でした。

しかし、そのような従来の体制から、インターファクトリーが提供するSaaS型のECプラットフォームの方が、よりスピーディにWeb施策を展開することができ、セキュリティ面でも強化できると判断し、「EBISUMART」を導入していただいたと認識しています。

現在は大きなカスタマイズは行っていませんが、事業拡大に伴って、将来的にはカスタマイズによる機能強化も視野に入れていただけるのではと思います。「EBISUMART」はカスタマイズ可能なSaaS型ECプラットフォームですので、バスクリンさまのEC運用のニーズに合致したのだと思います。

インターファクトリー 取締役 クラウドコマースプラットフォーム事業責任者 兼井 聡氏
インターファクトリー 取締役 クラウドコマースプラットフォーム事業責任者 兼井 聡氏

バスクリン マーケティング本部 グロースマーケティング部 部長 相浦多美子氏(以下、相浦氏):インターファクトリーさまとはサイトの構築だけでなく、現在はバスクリンの通販チームの一員として、密に連携を取っている関係性です。

セキュリティ面の盤石さを重視

――導入後、EC売上高も好調です。要因として考えられることは何ですか。

相浦氏:Web集客に注力し始めたこともありますが、インターファクトリーさまとの連携が大きな力となっています。現在のEC利用比率は、スマートフォンが75%、PCが20%です。以前はご高齢のお客さまが多かったこともあり、PCからの利用が多く、お客さまのなかには「心配だから決済はPCサイトで」という方も少なくありませんでした。

しかし、こうした状況は大きく変わり、現在はスマートフォンで決済いただくお客さまが増えています。特に「EBISUMART」との連携により、セキュリティ面が強化されたことで、お客さまがスマートフォンでも安心してスムーズに決済できているのだと思います。

これからはコンテンツマーケティングやOne to Oneマーケティング、「LINE」アカウントを活用した販促にも取り組んでいきたいと考えています。現在は、電話でのコミュニケーションがメインですが、もっと手軽にお客さまとつながっていけるチャネル構築にもチャレンジしていきたいと考えています。こうした施策を進めるうえでもセキュリティの問題は重要ですので、今後もインターファクトリーさまにしっかり支えていただきたいと考えています。

「EBISUMART」の主な機能
「EBISUMART」では、ユーザーに向けた「セキュリテイ対策機能」のWebページも用意。たとえば、アタック種別として「大量アクセス」「不正カード登録・利用」「不正注文」「不正会員登録」「不正ログイン」「不正なパスワードの変更」「不正なお問い合わせ」「不正なメルマガ会員登録」「不正な入荷お知らせ登録」ごとの、ケース別対応方法および機能を紹介している

兼井氏:インターファクトリーでは、セキュリティ面を重要視しています。「EBISUMART」の場合、導入企業さま側で特別な準備をしていただくことはなく、インターファクトリー側で常にバージョンアップを実施、セキュリティを強化しています

導入企業さまがセキュリティ部分のアップデートを考えなくても済む、インターファクトリーにお任せいただける――というのは、ECの運用上、かなり楽になる部分でしょう。

こうした部分はインターファクトリーが全面的にバックアップ。導入企業さまは「EBISUMART」の機能などを活用し、プロモーションといった“販促施策”に注力していただきたい

バスクリン マーケティング本部 グロースマーケティング部 部長 相浦多美子氏、インターファクトリー 取締役 クラウドコマースプラットフォーム事業責任者 兼井 聡氏

さらなる深い顧客コミュニケーションを実現へ

――ほかに今後強化していきたい部分などはありますか。

相浦氏:お客さま向けの会報誌では、自社研究所や研究開発に関する情報を積極的に取り上げていますが、こうしたコンテンツのWeb化が進んでいないという課題があります。通販専用商品の根幹となる開発背景や研究のこだわりといった情報を、Web上でも発信できる体制を整えていきたいです。また、基幹システムの連携といった技術面も、今後取り組むべき重要な課題だと認識しています。

また、私たちの最大の目的は、お客さまとのコミュニケーションをより深めることです。ご購入はその接点の1つに過ぎません。重要なのは、その接点をいかに安心してご利用いただき、長くお付き合いいただくかということです。チャットボットなど、新たな取り組みも進めていますが、お客さまとの接点となるWebの領域で「今以上に何ができるのか」を模索しています。

「EBISUMART」を導入することで、私たちがやりたいと考えていたことが少しずつ実現できるようになりました。インターファクトリーさまとは、ECプラットフォームの提供という枠を超えて、私たちと同じチームの一員として、一緒にお客さまにとってより良い仕組みを構築していきたいと考えています。

バスクリン マーケティング本部 グロースマーケティング部 部長 相浦多美子氏
相浦氏は「インターファクトリーさまとは近い距離感でさまざまな話をし、共に考えていくなかで取り組みが実現につながる可能性が膨らんでいくことが楽しい」と話す

兼井氏:インターファクトリーは今後、「EBISUMART」を活用した定期施策の促進もサポートしていきたいと考えています。また、基幹システムとの連携によるデータ統合などが進めば、Web施策もさらに強化できるため、基幹連携についてもバスクリンさまと相談していきたいと考えています。

また、これまでに多くの企業さまと取り組みをするなかで培った知見を生かし、良いアイデアを積極的にバスクリンさまにご提供しながら、ECビジネスの発展に貢献していきたいですね。

インターファクトリー 取締役 クラウドコマースプラットフォーム事業責任者 兼井 聡氏
「近い距離感でさまざまなお話ができれば一番良い。ECにとどまらずサポートしていく」と兼井氏は話す

相浦氏:Webやネットの世界はシステマティックに物事を進めなくてはいけない場面が多くあります。ただ、「EBISUMART」を活用させていただくなかで、新しい取り組みや知見のない施策を行う際、インターファクトリーさまは、必ず対話する機会を設けてくださるため、とても安心しています。そして、レスポンスが早い点も非常に助かっています。

私たちと同じ目線に立ち、一緒に悩み、どうすれば良いかを共に考えてくださいます。バスクリンの通販事業においては、そういった視点を非常に大切にしています。同じ視点で物事を考え、伴走してくださる――そんなインターファクトリーさまがチームの一員として活動してくださり、とてもありがたい存在となっています。

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朝比美帆
吉田 浩章

熱中症対策として企業に義務づけられたこととは/Amazonが東北地方初の生鮮食品オンライン販売をスタート【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

6ヶ月 2 週間 ago
2025年5月23日~2025年5月29日にアクセス数の多かった記事のランキングを発表! 見逃している人気記事はありませんか?
  1. 職場で熱中症対策をしないと罰則が課せられるの知ってた? 改正労働安全衛生規則の施行で知っておくべきこと

    熱中症対策として①早期発見のための体制整備②重篤化を防止するための措置の実施手順の作成③関係作業者への周知――が義務付けられる。

    2025/5/26
  2. Amazonが東北地域で初のネットスーパー、アークス傘下の食品スーパー・伊藤チェーンと組み宮城県で展開

    アマゾンジャパンは宮城県を拠点に構える伊藤チェーンと組み、東北地方初の生鮮食品オンライン販売をスタート。最短2時間配送、最低注文金額なしで地域密着スーパーの商品を届ける。

    2025/5/28
  3. 日本郵便が「ゆうパックスマホ割アプリ」終了→「郵便局アプリ」に統合、デジタルアドレスも追加

    日本郵便によると、「ゆうパックスマホ割アプリ」は8月下旬に提供を終了。「郵便局アプリ」に統合する。5月26日からは「ゆうパックスマホ割アプリ」で提供していた全てのサービスや割引などを、「郵便局アプリ」で利用できるようにした。

    2025/5/28
  4. 2025年の夏は例年よりも早い? 梅雨期間は短い傾向も総雨量は平年並か多い予想

    梅雨の期間は短い傾向で、中国・四国・近畿・東海・関東甲信で平年より1~3日、九州南部・九州北部・北陸・東北南部・東北北部では4日以上短くなり、特に沖縄・奄美では10日以上短くなる予想としている。

    2025/5/23
     
  5. アンジャッシュ渡部さんなども使うスキルEC作成サービス「PARK」、4月度のGMV(流通取引総額)が420%成長

    「PARK」は誰でも簡単にスキルを販売できる、スキルEC作成サービス。デジタルコンテンツ、時間制のコンサル、イベントチケット、サブスクなど、あらゆる種類の商品を販売できる。

    2025/5/27
     
  6. ZOZOが千葉大学・つくば市・宮崎市に総額1300万円を寄付、その理由は? 子どもたちや若者の育成を支援

    ZOZOは、つくば市および宮崎市には企業版ふるさと納税の形で寄付する。両市では、2025年度​​か​​ら​​小中学校における探究学習の授業に活用される予定。

    2025/5/23
     
  7. 「Z-CRAFT」のロイヤル、民事再生法の適用を申請。法的手続きのもと会社再建へ

    帝国データバンク、東京商工リサーチが5月27日に報じた。「Z-CRAFT」は「楽天市場」の「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」(楽天SOY)常連店として知られ、「楽天SOY2023」では総合4位を受賞。「楽天SOY2005」から10年連続で「楽天SOY」を受賞したこともある。

    2025/5/28
     
  8. ペット向けの医薬品・サプリメント販売のECサイトを開設、無料LINE相談にも対応する「ねこあざらし薬店」とは?

    ねこあざらし薬店は動物用医薬品の全国販売を開始した。遠隔地の人の獣医療へのアクセス向上をめざす

    2025/5/27
     
  9. 「PayPay」とGoogle Pay のアカウントが連携

    アカウント連携すると、Chrome上での支払い時、Google Payに保存された「PayPayカード」と「PayPay残高カード」のカード番号やセキュリティ コードなどを含む支払い情報が自動で入力される。Google PlayとYouTubeでもPayPayを支払手段に使えるようになる。

    2025/5/27
     
  10. 「今後伸びるビジネス」2025年上半期の1位は「EC(ネット通販)」。「AIエージェント」が将来性スコアの伸長でトップ

    日経BPの『日経クロストレンド』による2025年上半期のトレンド調査で、マーケティング分野における「EC(ネット通販)」が「将来性」「経済インパクト」でそれぞれトップとなった。

    2025/5/26
     

※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

藤田遥

パルグループホールディングスが「3COINS」を香港に初出店。現地ECサイトもオープン

6ヶ月 2 週間 ago

パルグループホールディングスは7月18日、香港に雑貨ブランド「3COINS」(スリーコインズ)の1号店となる「3COINS Hysan Place(ハイサンプレイス)店」をオープンする。

パルグループホールディングス 「3COINS」Hysan Place店 イメージ
「3COINS Hysan Place店」のイメージ

「3COINS」が出店する「ハイサンプレイス」は、香港の不動会社Hysan Developmentが展開する大型ショッピングモール。MTR銅鑼湾(コーズウェイベイ)駅に直結し、アクセスもよく多種多様なショップやレストランが入居する人気の商業施設とという。

「3COINS Hysan Place店」は売り場面積が約175平方メートル、日本国内で取り扱う生活雑貨・服飾雑貨のラインアップに加え、香港限定商品も販売する。

パルグループホールディングス 「3COINS」Hysan Place店は香港限定商品も販売する
パルグループホールディングス 「3COINS」Hysan Place店は香港限定商品も販売する
「3COINS」Hysan Place店は香港限定商品も販売する

香港の出店については、香港で最大規模を誇る日本商品専門のECサイト「YAICHI谷日百貨」や実店舗を展開するNEXT81グループとタッグを組み、今後香港でのリテール市場の活性化に取り組む。ECサイト「YAICHI谷日百貨」での販売は7月17日から予定している。

大嶋 喜子

カウネット、「カウネット」の注文履歴ページで検索機能の強化+再注文の時間短縮を実現

6ヶ月 2 週間 ago

コクヨグループのカウネットは、自社ECサイト「カウネット」の注文履歴ページを大幅に改善した。「カウネット」ユーザーからのフィードバックを基に、注文履歴ページの検索性、再注文の利便性を強化(注文履歴の保持期間延長、初期表示件数の増加、検索・絞り込み機能の強化、再注文機能の追加、値下げ商品やPB商品のレコメンド機能の改善など)した。

「カウネット」注文履歴での検索・再注文の手間を削減

オフィス用品通信販売サービス「カウネット」は、現在2600万点を超えるオフィスに必要な商品を取りそろえ、ユーザーの購買業務の効率化を追求し、継続的な機能強化、商品・サービスの拡充に注力している。

今回の注文履歴ページの大幅改善は、「カウネット」ユーザーの声をもとに、注文履歴から商品を検索・再注文する際の手間を削減する目的で実施した。主な改善ポイントは次の通り。

① 検索機能の強化

  • 直近1年分までの注文履歴を検索せずに確認可能
  • 独自のWeb検索辞書の活用により、検索ヒット率が向上
  • 絞り込み機能を改善し、特定の条件での注文履歴を見つけやすくした
カウネット 注文履歴の大幅改善 検索機能を強化するため、絞り込み機能を改善
検索機能を強化するため、絞り込み機能を改善

② 再注文機能の強化、商品別ビューの改善、レコメンド表示を最適化

  • 商品別ビューを構築し、特定の商品を再注文しやすいUI(ユーザーインターフェース)に
  • 値下げ中の商品やキャンペーン商品の情報を注文履歴ページで確認でき、過去に注文した商品をお得なタイミングで再注文可能
  • プライベートブランド(PB)商品のレコメンド機能を改善し、再注文の利便性を向上
  • 注文履歴の商品が欠品している場合に代替品を表示
カウネット 注文履歴の大幅改善 再注文機能の強化でカートに入れやすい仕組みに
再注文機能の強化でカートに入れやすい仕組みに
大嶋 喜子

政府備蓄米は出品禁止!「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」で備蓄米の転売対策

6ヶ月 2 週間 ago

LINEヤフーは5月28日、「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」において、政府備蓄米の出品を禁止する措置を講じると発表した。転売による価格高騰や供給不足を防ぎ、生活者に安定した価格での米の提供をめざすとしている。

現在、米価格の高騰や供給不足が社会問題となっており、随意契約による政府備蓄米の小売り業者を通じた販売の検討が進んでいる。LINEヤフーは政府備蓄米の転売行為が発生する懸念を踏まえ、出品禁止措置を講じることにした。

具体的な出品禁止措置は次の通り。

  • 備蓄米の出品の削除対応
  • 備蓄米の出品行為を行うユーザーのアカウントを停止
  • AIなどを活用した備蓄米の出品のパトロール強化

LINEヤフーでは、今後も市場の健全化を推進するため、必要な措置を講じ、引き続き安心して利用できるプラットフォームの提供をめざし、取り組みを進めるとしている。

鳥栖 剛

楽天グループ、政府備蓄米を「楽天生活応援米」として「楽天24」「Rakutenグルメ館」「楽天マート」で販売

6ヶ月 2 週間 ago

楽天グループは5月29日、米の品不足や価格高騰による消費者の米離れを防ぐ農林水産省の方針に賛同、自社グループの販売チャネルと配送網などを活用し、政府から購入した備蓄米の販売を始めた。

備蓄米を精米し「楽天生活応援米」として商品化。「楽天市場」で楽天が直営店舗として運営する「楽天24」と「Rakutenグルメ館」、楽天マートが運営するネットスーパー「楽天マート」の販売チャネルで順次販売していく。

楽天グループのサービスや物流倉庫、配送網などを最大限に活用、政府備蓄米を全国に向けて早期に供給する。

「楽天生活応援米」特設ページのトップ画面 楽天グループは5月29日、米の品不足や価格高騰による消費者の米離れを防ぐ農林水産省の方針に賛同、自社グループの販売チャネルと配送網などを活用し、政府から購入した備蓄米の販売を始めた
「楽天生活応援米」特設ページのトップ画面(画像は編集部がキャプチャ)

商品概要

  • 商品名:楽天生活応援米
  • 容量:5kg/袋
  • 販売価格:1980円(税抜)

「楽天24」「Rakutenグルメ館」では送料込みの価格。「楽天マート」では他の商品とあわせて3500円(税込)以上の買い物をすると送料無料になる。

販売概要

▼楽天24

  • 販売方法:通常販売
  • 販売開始日:5月29日(木)午後
  • 発送開始日(予定):6月7日(土)から順次

▼Rakutenグルメ館

  • 販売方法:予約販売
  • 予約開始日:5月29日(木)午後
  • 発送開始日:入荷次第、順次発送

▼楽天マート

  • 販売方法:入荷後に通常販売を開始
  • 販売開始日:入荷次第
  • 発送開始日:順次発送

なお在庫に限りがあるため、販売および予約上限に達した際には一時的に受付を終了することがある。在庫が追加され次第、順次販売するとしている。今後の販売予定についても、順次特設ページにてお知らせするとした。

鳥栖 剛

Amazonがネットスーパー事業を拡大している理由は? アマゾンの責任者と協業先の宮城県・伊藤チェーン専務に聞いた。

6ヶ月 2 週間 ago
Amazonが地域企業と連携し、ネットスーパー事業を全国で拡大しています。伊藤チェーンと組み仙台で生鮮食品の最短2時間配送を開始しました。アマゾンジャパンと伊藤チェーンの責任者に話しを聞きました。

アマゾンジャパンがネットスーパーを強化している。自社の直販型によるネットスーパーは関東圏を、他社との協業で関東・関西、東海、北海道、福岡の12都道府県で展開。このほど、宮城県に拠点を置く伊藤チェーンとの協業で、宮城県仙台市および一部周辺エリアでのネット-スーパーを始めた。アマゾン提携ネットスーパー アジアパシフィック事業部長のシン・ミニョン氏、伊藤チェーンの伊藤吉信専務取締役に話しを聞いた。

Amazonがネットスーパー事業を拡大している理由は? アマゾンの責任者と協業先の宮城県・伊藤チェーン専務に聞いた

Amazonが日本各地で地域企業とのネットスーパー事業を拡大する戦略的な意図は

アマゾンジャパンは、自社仕入れによる直販型の「Amazonフレッシュ」を関東圏で、。ライフとの「ライフネットスーパー」で関東圏・関西圏、バローとの「バローネットスーパー」で東海圏を、成城石井との「成城石井ネットスーパー」で関東圏・関西圏、アークスとの「アークスネットスーパー」で北海道、マルキョウとの「マルキョウネットスーパー」で福岡県でネットスーパーを展開している。

今回、伊藤チェーンとの協業で「Amazon.co.jp」上に「イトーチェーンネットスーパー」をオープン。仙台市と周辺の一部エリアで生鮮食品などのオンライン販売・配送サービスを開始した。東北地域で生鮮食品のオンライン販売・配送サービスを提供するのは初めて。

Amazonがネットスーパー事業を拡大している理由は? アマゾンの責任者と協業先の宮城県・伊藤チェーン専務に聞いた

このように日本各地で地域企業とのネットスーパー事業を拡大している背景には、多様化する顧客のライフスタイルやニーズへの対応、より利便性の高い買い物体験の提供という戦略的な意図がある。

アマゾンジャパンのシン・ミニョン氏は、「近くのスーパーマーケットの食品を買いたいというお客さまも多い。普段の買い物で購入している商品をネットを通じて届ける。そのために、各地方でお客さまから信頼を集めている企業との連携を進めている」と言う。

地域で長年、消費者との信頼関係を築いてきたスーパーマーケットと提携することで、アマゾンジャパンは地域住民にとって馴染みが深く、品質の高い生鮮食料品などを提供できるようになる。商品を売って届けるだけでなく、「安心感」という付加価値も提供することにつながるという。

地域企業との協業を進める上で重視しているのはその「安心感」と「豊かな品ぞろえ」。「お客さまに安心して生鮮食品を購入してもらいたい。地場のお客さまが利用されるので、豊かな品ぞろえを重視している」(シン・ミニョン氏)

こうした地方の食品スーパーとの協業は、深刻化している「買い物難民」という社会問題の解決にも貢献できる取り組みという。

伊藤チェーンの伊藤専務は、アマゾンジャパンとの協業でこれまで店舗に来店できなかった顧客、買い物が困難な状況にある消費者に商品を手軽に届けられるようになるのではないかと考えている。

宮城県内は高齢化が進み、「買い物難民」と呼ばれる方々が増えてきている。伊藤チェーンでは以前から「お買い物バス」の運行などを実施してきたが、今回のネットスーパー事業を通じて、さらに地域社会に貢献できるものと考えている(伊藤専務)。

アマゾン提携ネットスーパー アジアパシフィック事業部長のシン・ミニョン氏、伊藤チェーンの伊藤吉信専務取締役
アマゾンジャパンのシン・ミニョン氏(写真左)と伊藤チェーンの伊藤吉信専務取締役

シン・ミニョン氏はネットスーパー事業の拡大を踏まえて、Amazonのネットスーパーは「仕事や育児で忙しい、悪天候や体調不良で外出が難しいといった消費者、そして高齢者など、さまざまな事情で実店舗での買い物が難しい顧客層に対して大きな利便性を提供している」と言う。

「重くてかさばるものをまとめて購入したい」「小さな子供から目が離せない」といった具体的なニーズにも対応できるのがネットスーパーの強み。Amazonはこうした多様なライフスタイルや買い物シーンに合わせて、より快適な買い物体験を提供することをめざしている。(シン・ミニョン氏)

「イトーチェーンネットスーパー」で展開するサービスは

伊藤チェーンは、「生鮮食料品、特に青果、鮮魚、精肉、惣菜のウェイトが高いスーパーマーケット」(伊藤専務)。「『伊藤の牛タン』といった自社ブランド商品、地元の生産者の方々と直接連携した産直部門」(同)も強みで、他のスーパーマーケットとの差別化要因になっているという。

「イトーチェーンネットスーパー」では実店舗で取り扱っている数千点の商品をネットスーパーでも販売する。人気商品の「イトーの牛タン」、手作り惣菜の「はらこ飯」、旬の野菜や果物、新鮮な肉や魚、地元の生産者と直接連携した産直品、日用品なども含む。取扱商品数は順次拡大・変動する予定。

産直品に関しては、天候に左右されやすく安定供給が難しいモノは、慎重に検討するとしている。

特色ある商品を、ネットスーパーを通じてより多くのお客さまにお届けできることを期待している。(伊藤専務)

なお、伊藤チェーンのスタッフがネットスーパー用の商品をピックアップし、Amazonの配送網で商品を届ける。なお、伊藤チェーンがネットスーパーを手がけるのは初。

リードタイムは注文から最短2時間で商品を届ける。時間帯は12時~20時の間の3つの時間帯(12~14時、16~18時、18~20時)から、当日、翌日、または翌々日の2時間単位で指定できる。追加料金400円(税込)を支払うと、1時間単位での配送時間指定も可能。

伊藤チェーン、アマゾンジャパンは今回の協業に関する期待を次のようにコメントしている。

Amazonのプラットフォームを活用することで、これまでリーチできなかった顧客へ自社の強みである生鮮食料品や独自商品を提供できるようになる。そしてそれが地域社会への貢献にもつながることに大きな期待を寄せている。また、消費にとってより手軽で便利な買い物手段を提供できることにも期待しています。(伊藤専務)

伊藤チェーンの伊藤吉信専務取締役
伊藤チェーンの伊藤吉信専務取締役

 

東北地方へのサービス提供拡大という目標に加え、地域で信頼されている伊藤チェーンとの協業を通じ豊富な品ぞろえとブランド力を生かし、顧客に高品質で便利な買い物体験を提供できることに期待しています。また、多様化する顧客ニーズに応え、生活をサポートするサービスとしてネットスーパーが活用されることを期待しています。(シン・ミニョン氏)

アマゾン提携ネットスーパー アジアパシフィック事業部長のシン・ミニョン氏
アマゾン提携ネットスーパー アジアパシフィック事業部長のシン・ミニョン氏

 

瀧川 正実

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