Z世代、ミレニアル世代が集まるコンテンツ作りのポイントとは? 動画制作ノウハウをEC運営に生かした「McGuffin STORE」のノウハウ | ネットショップ担当者フォーラム

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動画メディア「McGuffin(マクガフィン)」と連携したECサイト「McGuffin STORE」。動画コンテンツ制作ノウハウやコンテンツをECサイト運営+商品開発に生かし、Z世代・ミレニアル世代を中心に支持を集めている。動画活用のポイントや成功の秘訣とは?

EC事業者が取り組む施策として「ファン作り」は重要だ。自社商品やサービスの認知度を高め、優良顧客やリピーターを増やすために、EC事業者を含め多くの企業が取り組んでいる施策の1つに「動画」活用があげられる。動画活用で重要なのは単なるファン作りではなく売り上げを伸ばすことだが、どのように運用すればいいのか悩む事業者も多いのではないだろうか。動画メディア「McGuffin(マクガフィン)」を運営し、動画コンテンツ制作のノウハウや強みを生かしたEC運営を行うニューステクノロジーの林慎哉氏に、動画コンテンツを活用したECサイト運営、ECと親和性の高いコンテンツなどについて取材した。

メイン視聴者が“尖ったもの”を好む、動画メディア「McGuffin」

ニューステクロノロジーは2014年創業、モビリティプラットフォーム・メディアを中心に事業を展開している。動画メディア「McGuffin」の他にも都内最大級のタクシーサイネージメディア「GROWTH(グロース)」などを企画・運営。そんなニューステクロノロジーは、「McGuffin」運営で培った知識やノウハウ、強みを生かした商品作り、ECサイト運営で、売り上げやファン数を伸ばしている。

「McGuffin」は、「YouTube」をプラットフォームとして展開する動画メディア。2024年8月19日時点でチャンネル登録者数39万人以上、音楽、ファッション、アートなどのユースカルチャーを中心に、Z世代やミレニアル世代に向けたコンテンツを提供している。

めざすコンセプトは「若い世代の人たちの人生が進むようなきっかけになるようなメディア」で、若者が普段触れないような世界を提供。興味・関心をひきつつ、学びを得られるようなコンテンツを制作・配信している。

動画メディア「McGuffin」 ニューステクノロジー YouTubeチャンネル動画メディア「McGuffin」(画像は「McGuffin」からキャプチャ)

制作・運営体制は社内の編集部3人、ECのデザインなどを行う外部委託を含めると10数人。動画のクオリティや配信頻度、本数を考えると少数精鋭だ。

人気が高いシリーズは「知的好奇心探求企画」で、最も再生回数が多い動画は284万回を超える。

動画メディア「McGuffin」で人気のシリーズ「知的好奇心探求企画」 ューステクノロジー YouTubeチャンネル 「McGuffin」で人気のシリーズ「知的好奇心探求企画」(画像は「McGuffin」からキャプチャ)
最も再生回数の多い動画「【ルームツアー】呪物コレクター田中俊行の呪物ガイド!」

「McGuffin」の視聴者層は、動画によって多少ばらつきはあるものの男性8:女性2で、20代~30代の男性がメインだ。全体の年齢比率はZ世代、ミレニアム世代と呼ばれる20代が多数を占めている。

「McGuffin」の視聴者は、ややマイナーなものや少々尖ったコンテンツを好む傾向があるというか、物事にこだわりの強い人が多い。日頃触れる機会がない物事や、皆が知らないことを知ることが好きな人が多い印象だ。ECの購入に際しても、「流行ではない、尖っている。それでも自分が気に入ったものを持ちたい、買いたい」という人が多い。(林慎哉氏)

ニューステクノロジー McGuffin 林慎哉氏ニューステクノロジー McGuffin 林慎哉氏
動画と連動したオリジナルアパレルを主力とした「McGuffin STORE」

ECサイト「McGuffin STORE」は2023年10月にスタートした。「McGuffin」を7年間運営し、2023年にチャンネル登録者数が30万人を突破するなど数字の伸びが見えてきたこともあり、「何かコミュニティのようなものを作っていけたら」(林氏)という思いがあったという。

動画コンテンツと連動したアイテムも販売 McGuffin STORE 動画メディア「McGuffin」 ニューステクノロジー YouTubeチャンネル 動画コンテンツと連動したアイテムも販売している「McGuffin STORE」
(画像は「McGuffin STORE」からキャプチャ)

そうしたなか「McGuffin」のユーザー文化・嗜好にもマッチしそうだと考え、アパレル商品の製造・販売をスタート。海外ではメディアがアパレル商品を展開する事例も多いこと、チャンネル登録者数と再生数が伸長し続けていたことから、ある程度の人数にリーチできると予測した。さらに熱量の高い動画ファンが多く、購入につなげられるチャンスがあるという見込みもあった

こうして始まった「McGuffin STORE」は、「Shopify」で構築している。その利用している理由は動画との連携のしやすさだ。「Shopify」では「YouTube」動画の下部に商品を掲載できる「YouTubeショッピング」機能を利用でき、ユーザーをECサイトに誘導しやすいというメリットがある。

最初は別のECサービスを利用していたが、「McGuffin」が動画メディアである強みを生かすためにも、「Shopify」の活用を決めたという。

動画メディア「McGuffin」 ニューステクノロジー YouTubeチャンネル 「YouTube」動画の下部に商品を掲載できる「YouTube」動画の下部に商品を掲載できる(画像は「McGuffin」からキャプチャ)

「Shopify」に移行した結果、「McGuffin STORE」への流入数は以前のECサービス利用時と比べて2倍に増加した。以前はオーガニック検索やSNSからのみだったアクセスが、「McGuffin」のさまざまな動画から流入するようになった。

これまで1200本弱の動画を公開していますが、そのすべての動画に商品をタグ付けするようにしている。たとえば240万回再生されている動画があるが、それはシンプルにそれだけのインプレッションがあるということ。商品を目にしてもらう機会が多いというのは、ECサイト成長にとって大きな影響力がある。(林慎哉氏)

動画から印象的なシーンや言葉をデザインに落とし込んだ「video series」を展開

ECを展開していくなかで、「McGuffin STORE」における工夫点や注力したポイントを紹介していこう。

「McGuffin STORE」のなかでも注力している商品「video series」は、2024年4月からスタートした、動画と連動したオリジナルのアパレルアイテムラインだ。「McGuffin」で公開している動画内の印象的なシーンや英訳した台詞をデザインに使用している。ピックアップする基準は「ある程度視聴回数が多い」「デザインとして成り立つか」「人に『これは何?』と聞かれて説明したくなるか」という点だ。

例をあげると、人気インフルエンサー・経営者である森下直哉氏の動画から作成したアイテムがあるが、これは森下氏が所有する車の画像を使用している。本人自身の人気は高いが「McGuffin」のファンであり購入するユーザーの心理を考え、あえて人物の写真は避けたという。

森下氏のTシャツを購入しようと思うユーザーにとって、ストレートすぎる表現はネガティブだと判断した。「顔が入っていると少しミーハーに感じる」「バズった人のTシャツはどうなの」などとマイナスな感情をもたれる可能性がある。(林氏)

森下氏の動画から作成したアパレル商品 McGuffin STORE 動画メディア「McGuffin」 ニューステクノロジー YouTubeチャンネル森下氏の動画から作成したアパレル商品(画像は「McGuffin STORE」からキャプチャ)
ファン層の心理を理解した編集部や、ユーザー層と近い年代のスタッフが商品の見せ方を考える

「McGuffin」のファン層と編集部の心理はしっかりイコールになっている。編集部は他のメディアでは目に触れないような人物・事柄にアンテナを張ることを重要視しており、自分たちが好きなモノを動画で発信している。そして同じモノを好きになってくれるファンがついているのだ。

商品やECサイトのコンテンツ制作時は、視聴者層や購入者に近い年齢のスタッフの意見も重視している。大学生であるインターンの意見に耳を傾け、「何を魅力的だと感じるのか、何が流行っているのか」という情報を収集するのだ。また、彼らに企画を立案してもらうこともあり、ECサイトに掲載している商品写真のディレクションはインターンである彼らに相談しながら制作したという。

大学生のインターンの人たちに、コーディネートや撮影場所などを相談して決めていった。彼らと同世代の人が欲しくなるような絵作りをしたいからだ。またSNSの発信の方法なども参考になる。たとえば、タグ付けはどのようにしたら良いなど、いろいろな意見をあげてくれる。(林氏)

ファンと同年代である大学生のインターンの意見を取り入れた商品写真 McGuffin STORE 動画メディア「McGuffin」 ニューステクノロジー YouTubeチャンネルファンと同年代である大学生のインターンの意見を取り入れた商品写真
(画像は「McGuffin STORE」からキャプチャ)

なお、SNSでECに関する発信回数は月1~2回程度とあえて少なくしている。「McGuffin」のカルチャーを好きなユーザー、特に男性は「SNSで自社商品について発信しすぎること」を“ダサい”と感じる傾向があると感じているためだ。

EC運営はゼロからのスタートも、動画やコンテンツ制作のノウハウ・強みを生かす

ECの運営で苦労している点について林氏は、「『McGuffin』は動画制作のメディアであり、ECはもちろん、アパレル商品の企画・製造・制作のほぼすべてについてノウハウがなかった」ことだと話す。

しかし、長年培ってきた動画やコンテンツ制作のノウハウはあった。商品の宣伝動画などを作れる強みがあり、動画出演者がモデルをしてくれるコンテンツも比較的容易に制作することができた。こうした強みを生かし、主力アイテム「video series」の売り上げは発売から2か月程で約3倍に伸長。動画コンテンツの広告収益の半分くらいまで利益を確保できるまでに急成長を遂げている。

ECと親和性の高い動画とは?

動画コンテンツ制作のノウハウを生かしたECサイトを運営し、売り上げアップにつなげている林氏が考える、ECと親和性の高い動画とはどのようなものなのだろうか。

林氏が例としてあげたのは「インテリア系」だ。部屋とインテリアを見せる「ルームツアー」はTikTokやInstagramのリールでの人気が高い。「McGuffin」でもルームツアーシリーズは人気が高く、企業のタイアップ案件も多い。

企業のタイアップ案件であるルームツアー動画 動画メディア「McGuffin」 ニューステクノロジー YouTubeチャンネル McGUffin STORE企業のタイアップ案件であるルームツアー動画(画像は「McGuffin」からキャプチャ)

家具やディフューザーなどの家電はクライアント企業からの依頼が多く、動画の再生回数は何十万にも及ぶという。「フレグランスなどは動画内でさりげなく商品をアピールし、直接の販促というよりブランド訴求、ブランディングに向いている」(林氏)。

「インテリアジャンルでは、動画内でさまざまなアイテムを紹介していくなかで1~2つほどPRしたい商品を取り入れ、アピールしすぎない方がユーザーに刺さる傾向がある」と林氏は話す。動画内に商品を自然と取り入れやすく、広告であることが強調されにくいのがインテリア系動画のメリットといえるだろう。

要約を冒頭に入れ、しっかりとブランドイメージやこだわりを伝えることが重要

EC事業者が動画コンテンツ活用時に気をつけるべきポイントとして、林氏は「動画の長さ」をあげた。昨今、切り抜きやショート動画が流行っているというイメージを持つ人は多いかもしれないが、林氏は異論を唱える。

動画の尺が短いと、ユーザーは「誰の動画かわからない」「どこの媒体で見たのか覚えていない」となりやすい。私たちは「McGuffin」というチャンネルをしっかり覚えてもらいたいので、長尺の動画、1時間を超えるものも多い。動画が長ければ、視聴時間維持率、滞在時間が増えるのでプラットフォームのアルゴリズムにも良い影響を与える

長尺でしっかりブランドのイメージやこだわりを説明していくのも良い方法だと思う。ただ、長尺にする場合は、冒頭で動画の見せ場や要約を入れて最後まで見てもらいやすくする工夫が必要だ。(林氏)

動画メディアとEC、双方を高め合うための施策とは

「McGuffin STORE」の今後の展望について、林氏はアイテム数の拡充をめざしていると話す。「McGuffin STORE」ユーザーの9割が新規顧客となっており、これは商品展開の少なさに起因するとみているためだ。現在はアイテム数を少しずつ増やしており、その影響もあってか徐々にセット買いも増えてきているという。

「video series」の単価はおよそ6600円。それにもかかわらず、2024年6月の平均単価は1万5000円前後なので、複数アイテムを購入しているお客さまが増えている。動画を公開したらすぐに関連商品を購入できるという仕組みと流れを構築し、展開するアイテム数を増やしていきたい。(林氏)

アパレル以外のカテゴリにも注力していく方針だ。2024年7月には使い捨てのフィルムカメラとステッカーのセット商品を販売した。

2024年7月から販売開始したフィルムカメラとステッカーセット McGuffin STORE 動画メディア「McGuffin」 ニューステクノロジー YouTubeチャンネル2024年7月から販売開始したフィルムカメラとステッカーセット(画像提供:ニューステクノロジー)

「McGuffin」では、動画出演者にこのステッカーを持ってもらい、フィルムカメラで撮影した画像をSNSにアップしている。“エモくてレトロな雰囲気”――こうした雰囲気を持つ写真の投稿を、開設当初から続けている。こうした写真が「McGuffin」にプラスの影響をもたらしていると考え、ユーザーが同じように撮影できるセットとして販売を開始した。

ファン拡大に向け、メンバーシップを開始。チャンネル登録者数100万人もめざす

「McGuffin」の目標としては、チャンネル登録者数100万人をめざしている。「そのために連載の強化、“番組感”を強化していく」(林氏)。動画の本数を増やしていくにあたり、これまでは単発の企画が多かったが、連載企画、番組として楽しめる企画に注力していくという。

閲覧した番組を好きになってチャンネル登録してもらう、といった点をより意識していきたいし、その番組のグッズも制作していきたい。また「デザインが良くて欲しいと思ったアイテムが、動画のグラフィティだった」というように、「McGuffin STORE」や商品から「McGuffin」を知る流れも構築できれば理想的だ。(林氏)

2024年5月から新規企画としてメンバーシップを開始、コミュニティ感をより押し出していく狙いだ。また、オンライン以外でファンとの接点を増やすオフラインイベントの開催や、メンバーシップ限定の商品割引も検討している。

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オリジナル記事:Z世代、ミレニアル世代が集まるコンテンツ作りのポイントとは? 動画制作ノウハウをEC運営に生かした「McGuffin STORE」のノウハウ
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